ある責務のかたち

ある責務のかたち

「……これ、落ちましたよ」 小さな細い手が、男の落とした一枚のハンカチを拾い上げた。 振り向くと、女はそれを右手に提げたまま、小首を傾げて微笑んでいた。 「……やあ、ありがとう」 男はそう言うと、女がつまんでいた緋色のハンカチを、照れくさそうに奪い取った。 「珍しいですね、男...