立原道造詩集より
『のちのおもいに』立原道造夢はいつもかえって行った山の麓のさびしい村に水引草が立ち草ひばりのうたいやまないしづまりかえった午さがりの林道をうららかに青い空には陽がてり火山は眠っていたーーそして私は見て来たものを島々を波を岬を日光月光をだれもきいていないと知りながら語りつづけた…夢はそのさきにはもうゆかないなにもかも忘れ果てようとおもい忘れつくしたことさえ忘れてしまったときには夢は真冬の追憶のうちに凍るであろうそしてそれは戸をあけて寂寥のなかに星くづにてらされた道を過ぎ去るであろう立原道造詩集より
2022/10/31 11:29