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創作SF・FT小説を書かれた人はトラバして下さいね!
テーマ投稿数
7,189件
参加メンバー
273人

創作SF小説・創作ファンタジー小説の記事

1件〜50件

  • #朗読講師葉月のりこ
  • #創作
  • 2022/06/24 16:56
    番外編 公爵家の次期当主は最愛の妻をエスコートしたい

     リチャードは支度部屋の扉を開けるなり息を飲んだ。 そこに盛装したシャーロットがいることはわかっていたはずなのに、それでも圧倒されてしまった。言葉をかけるどころか息をすることさえ忘れたまま、ただただじっと見入ってしまう。 まるで天から降臨したかのようだ。 淡いアイスグレーに星々のようなきらめきが鏤められた、ふんわりと豪奢なドレス。その胸元は大きく開き、いとけない彼女もいつもよりすこし艶やかに見える...

  • 2022/03/24 06:46
    番外編 妃殿下は公爵家の新妻をかわいがりたい

     エリザベスは頭が痛かった。 王妃として、ウィンザー公爵家の跡取りが結婚したことはめでたく思うが、その経緯と相手のことを考えると手放しで喜んではいられない。国王たる夫も一枚噛んでいるというのだからなおのこと——。「そんなことより用件をおっしゃってください」 そう言い放ったのは、件のウィンザー公爵家の跡取りであるリチャードだ。 近況を尋ねたのだが答える気もないということだろう。侍女が淹れた紅茶にも軽く...

  • 2022/02/27 14:25
    まぼろし 第三話 「亡霊大統領」その1

    特撮で有名な円谷プロの元スタッフのブログです。面白くてためになる「小説」や「お話」「詩」をお届けします。【通常ブログ画面】 からお入り下さい。

  • 2022/02/27 14:25
    まぼろし 第三話 「亡霊大統領」その2

    特撮で有名な円谷プロの元スタッフのブログです。面白くてためになる「小説」や「お話」「詩」をお届けします。【通常ブログ画面】 からお入り下さい。

  • 2022/01/31 15:36
    番外編 公爵家の騎士団長は新妻のいとこを牽制したい

     それは、休日の朝に響いた呼び鈴から始まった。 常識的にいって来客にはすこし早い時間だ。約束もなかったので、執事に対応を任せて妻のシャーロットとゆっくりダイニングを出ると、そのとき玄関のほうがやけに騒がしいことに気がついた。「さっきの来客か……君はここにいて」「はい」 シャーロットを残し、いささか緊張しながら玄関の様子を見に向かう。よほどの馬鹿でもないかぎり、正面きって公爵家に殴り込みには来ないだろ...

  • 2022/01/03 16:33
    「伯爵家の箱入り娘は婚儀のまえに逃亡したい」番外編 公爵家の次期当主は愛する新妻とデートしたい

    結婚式のあと、ウィンザー公爵家の若夫妻となったリチャードとシャーロットは、しばらく領地で過ごしてから王都のタウンハウスに戻った。この地で、この家で、これから二人の新たな日常が始まるのだ——。「数日したら非番だから、そのときは二人で街に遊びに行こう」結婚休暇を終え、久しぶりに騎士団の仕事に出かけようというところで、リチャードは見送りのシャーロットにそう言った。唐突だったせいか、彼女はすこし驚いたように目をぱちくりとさせる。「お仕事のほうはよろしいのですか?」「ああ……」タウンハウスに戻ってからの三日間は、不在時にたまった書類などを処理するのに必死で、とても遊びに行くどころではなかった。だが、もうあらかた片付いたので一日くらいなら問題ない。「急ぎの面倒な案件さえ来なければな」「ふふっ、では祈っておきますね」シャーロ...「伯爵家の箱入り娘は婚儀のまえに逃亡したい」番外編公爵家の次期当主は愛する新妻とデートしたい

  • 2021/12/17 00:52
    番外編 公爵家の次期当主は愛する新妻とデートしたい

     結婚式のあと、ウィンザー公爵家の若夫妻となったリチャードとシャーロットは、しばらく領地で過ごしてから王都のタウンハウスに戻った。この地で、この家で、これから二人の新たな日常が始まるのだ——。「数日したら非番だから、そのときは二人で街に遊びに行こう」 結婚休暇を終え、久しぶりに騎士団の仕事に出かけようというところで、リチャードは見送りのシャーロットにそう言った。唐突だったせいか、彼女はすこし驚いたよ...

  • 2021/11/02 17:30
    「伯爵家の箱入り娘は婚儀のまえに逃亡したい」番外編 伯爵家の次期当主はすこしだけ恩人の恋心に報いたい

    「おまえ、来週末から里帰りするんだってな」文官のアーサー・グレイが王宮にある事務室で書類仕事をこなしていると、騎士団所属のリチャード・ウィンザーがいつものようにふらりとやって来て、締まりのない笑顔でそんなことを言う。こう見えて彼は公爵家の嫡男である。おそらくいずれ爵位を継ぐのだろうが、にもかかわらず騎士という危険な職業に就き、二十代後半になるのにいまだに結婚もせず自由にしているのだ。そんな彼に思うところはありつつも嫌いになれない。アーサーにとってはパブリックスクール時代の同級生であり、誘拐された娘を救出してくれた恩人でもあり、いまは友人とも呼べる間柄だ。ただ——彼のほうは、どうやら友情以上の感情を持っているらしいのだ。あまりにも態度がわかりやすくて周囲はだいたい察しているのだが、それでも本人は何も言おうとしない...「伯爵家の箱入り娘は婚儀のまえに逃亡したい」番外編伯爵家の次期当主はすこしだけ恩人の恋心に報いたい

  • 2021/10/26 15:52
    源義経黄金伝説■第65回1199年(正治2年) 鎌倉 大江広元の屋敷に磯禅師が訪れていた。磯禅師は京都の総意をつげる。

    本田トヨタ作品YG源義経黄金伝説■一二世紀日本の三都市(京都、鎌倉、平泉)の物語。平家が滅亡し鎌倉幕府成立、奈良東大寺大仏再建の黄金を求め西行が東北平泉へ。源義経は平泉にて鎌倉を攻めようとこの小説のURL:https://ncode.syosetu.com/n1703dc/64/源義経黄金伝説■第65回1199年(正治2年)鎌倉大江広元の屋敷に磯禅師が訪れていた。磯禅師は京都の総意をつげる。源義経黄金伝説■第65回作飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所MangaAgency山田企画事務所●http://www.yamada-kikaku.com/yamadakikaku2009-youtube1199年(正治2年)鎌倉「大江広元様、この鎌倉の政権をひぎたくはございませぬか」磯禅師が告げた。鎌倉広元の屋敷である...源義経黄金伝説■第65回1199年(正治2年)鎌倉大江広元の屋敷に磯禅師が訪れていた。磯禅師は京都の総意をつげる。

  • 2021/10/26 15:51
    夢王たちの宴■第27回■ ジェイポラード博士と仲間「夢結社」が世界に対するテロ活動で、国軍はじめ多くの国のミサイルがJP359を搭載していた。

    THESEIJI作品YK夢王たちの饗宴--(ドリームドラッグ・ウオーの跡)夢世界の入り組んだ異世界、最高の夢王は、だれなのか?なぜ、この夢世界はできたのか?ドリームドラッグ・ウオーとは?この小説のURL:https://ncode.syosetu.com/n7285dc/27/夢王たちの宴■第27回■ジェイポラード博士と仲間「夢結社」が世界に対するテロ活動で、国軍はじめ多くの国のミサイルがJP359を搭載していた。夢王たちの宴ードラッグ戦争の痕でー■第27回■1975年作品飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所●http://www.yamada-kikaku.com/yamadakikaku2009ーyoutubeワルシャワ条約軍、ポーランド国軍ソネ将軍は、慌てる。「何だって、それはどういう意味だ」[すでにJ...夢王たちの宴■第27回■ジェイポラード博士と仲間「夢結社」が世界に対するテロ活動で、国軍はじめ多くの国のミサイルがJP359を搭載していた。

  • ブログみる効率的にブログをみる - キャンプの時間
  • 2021/10/26 00:38
    番外編 伯爵家の次期当主はすこしだけ恩人の恋心に報いたい

    「おまえ、来週末から里帰りするんだってな」 文官のアーサー・グレイが王宮にある事務室で書類仕事をこなしていると、騎士団所属のリチャード・ウィンザーがいつものようにふらりとやって来て、締まりのない笑顔でそんなことを言う。 こう見えて彼は公爵家の嫡男である。おそらくいずれ爵位を継ぐのだろうが、にもかかわらず騎士という危険な職業に就き、二十代後半になるのにいまだに結婚もせず自由にしているのだ。 そんな彼...

  • 2021/09/30 21:50
    「伯爵家の箱入り娘は婚儀のまえに逃亡したい」番外編 騎士志望の少年はいとこの少女を幸せにしたい

    「シャーロット!!!」アレックス・グレイは見晴らしのいいところに立つ大樹を見上げて、大きく手を振った。その先には、立派な枝に腰掛けているシャーロット・グレイがいる。彼女はひらひらと手を振り返すと、軽やかな身のこなしで幹を伝って芝生に降り立ち、ふわりと愛らしい笑顔を見せた。「久しぶりね」「うん、元気そうでよかった」「しばらくこっちにいるの?」「二週間くらいかな」アレックスはエヘヘと笑い、半年ぶりの再会となった彼女にあらためて目を向ける。以前に会ったときはすこし見上げるような感じだったのに、いつのまにか同じくらいの高さになっていた。アレックスは、昔からずっとシャーロットのことが好きだった。二歳上のいとこである彼女とは、まだ物心もつかないくらい幼いころから交流があり、だいたい週に一度は弟とともに家に遊びに行っていた。...「伯爵家の箱入り娘は婚儀のまえに逃亡したい」番外編騎士志望の少年はいとこの少女を幸せにしたい

  • 2021/09/12 00:37
    エデンに還る(5)地球温暖化

    特撮で有名な円谷プロの元スタッフのブログです。面白くてためになる「小説」や「お話」「詩」をお届けします。【通常ブログ画面】 からお入り下さい。

  • 2021/09/02 22:12
    「伯爵家の箱入り娘は婚儀のまえに逃亡したい」エピローグ 〜 公爵家の幼妻は旦那様と仲良くしたい

    宴が一段落すると、シャーロットは夫のリチャードとともに引き上げた。すぐに侍女の手を借りながら湯浴みをして寝衣に着替える。公爵家が用意したそれは膝下丈のゆるりとしたドレスで、薄地のシルクながらも身頃の透け感はそれほどなく、繊細なレースやフリルがあしらわれた上品で可愛らしいものだ。「若奥様、緊張なさってますか?」「平気よ」気遣わしげな侍女にニッコリと微笑んでみせる。さすがにこういう状況なのですこし緊張しているものの、落ち着いてはいると思う。ただ若奥様と呼ばれることにはまだ慣れておらず、何となくむず痒いような気持ちになってしまった。「行ってくるわ」そう言い置き、侍女に見送られつつ寝室へつづく扉を開ける。明るい——。てっきり薄暗くなっているものとばかり思っていたが、普通に灯りがついていた。寝台にはリチャードがひとりで腰...「伯爵家の箱入り娘は婚儀のまえに逃亡したい」エピローグ〜公爵家の幼妻は旦那様と仲良くしたい

  • 2021/08/23 15:50
    エピローグ 〜 公爵家の幼妻は旦那様と仲良くしたい

     宴が一段落すると、シャーロットは夫のリチャードとともに引き上げた。 すぐに侍女の手を借りながら湯浴みをして寝衣に着替える。公爵家が用意したそれは膝下丈のゆるりとしたドレスで、薄地のシルクながらも身頃の透け感はそれほどなく、繊細なレースやフリルがあしらわれた上品で可愛らしいものだ。「若奥様、緊張なさってますか?」「平気よ」 気遣わしげな侍女にニッコリと微笑んでみせる。 さすがにこういう状況なのです...

  • #ミステリー
  • 2021/08/13 13:27
    エデンに還る(4)環境破壊

    特撮で有名な円谷プロの元スタッフのブログです。面白くてためになる「小説」や「お話」「詩」をお届けします。【通常ブログ画面】 からお入り下さい。

  • 2021/08/12 09:14
    「伯爵家の箱入り娘は婚儀のまえに逃亡したい」第5話 伯爵家の堅物当主は元同級生から離れられない (前編)

    アーサー・グレイは、同級生のリチャード・ウィンザーが嫌いだった。彼はウィンザー公爵家の嫡男である。公爵家というのは王家に連なる血筋で、他の貴族とはいささか性質や役割が異なっている。国が安泰であるためには、公爵家が安泰であることが重要になってくるのだ。それゆえに責任が重い。なのに彼はその責任を軽視している。公爵家の人間ともなれば公の場に出ることも多いのだが、彼はごくたまにしか姿を現さない。未成年のうちだけならまだしも十六歳で成人になってもだ。それはすべて彼個人のわがままだという。学業においても真摯に取り組んでいる姿勢が見えない。自主的に勉強している様子はなく、授業中でもぼんやりと窓の外を眺めていることが多い。ときには目をつむって微睡んでいることさえある。「いまは自習の時間だ。居眠りをしていいわけじゃない」「んだよ...「伯爵家の箱入り娘は婚儀のまえに逃亡したい」第5話伯爵家の堅物当主は元同級生から離れられない(前編)

  • 2021/07/29 02:03
    第5話 伯伯爵家の堅物当主は元同級生から離れられない

     アーサー・グレイは、同級生のリチャード・ウィンザーが嫌いだった。 彼はウィンザー公爵家の嫡男である。 公爵家というのは王家に連なる血筋で、他の貴族とはいささか性質や役割が異なっている。国が安泰であるためには、公爵家が安泰であることが重要になってくるのだ。それゆえに責任が重い。 なのに彼はその責任を軽視している。 公爵家の人間ともなれば公の場に出ることも多いのだが、彼はごくたまにしか姿を現さない。...

  • 2021/07/24 16:21
    エデンに還る(3)世界大戦

    特撮で有名な円谷プロの元スタッフのブログです。面白くてためになる「小説」や「お話」「詩」をお届けします。【通常ブログ画面】 からお入り下さい。

  • 2021/07/16 17:34
    エデンに還る(2)産業革命

    特撮で有名な円谷プロの元スタッフのブログです。面白くてためになる「小説」や「お話」「詩」をお届けします。【通常ブログ画面】 からお入り下さい。

  • 2021/07/10 12:40
    エデンに還る (1)

    特撮で有名な円谷プロの元スタッフのブログです。面白くてためになる「小説」や「お話」「詩」をお届けします。【通常ブログ画面】 からお入り下さい。

  • 2021/05/18 15:04
    第4話 侯爵家の気弱な従僕は先輩侍女に逆らえない

    「ジョン、服を脱げ」 豪奢な椅子にゆったりと座している美しい男性が、尊大に命じる。 その正面に立たされていた八歳のジョンはビクリとして固まるが、すぐ後ろに控えている叔父夫妻に脱ぎなさいと促されて、おどおどしながらシャツ、ズボン、靴下とひとつずつ脱いでいく。 やがてパンツ一枚になった。恥ずかしいというより、何をさせられているのだろうという不安のほうが大きかった。うつむき加減のままチラリと視線だけを前...

  • 2021/05/18 15:04
    第3話 侯爵家の強がり夫人は元婚約者を忘れられない

     そのときまで、ロゼリアは世界でたったひとりのお姫さまだった。 貴族の中でも裕福なクレランス侯爵家に生まれ、蝶よ花よと育てられ、いつどんなときもロゼリアを中心に世界がまわっていた。そして、それをあたりまえのこととして享受していた。けれど——。 それは、五歳になってまもないころのことだった。 ロゼリアは両親に連れられて初めてパーティに行った。敷地外に出るのも初めてだったので、馬車から見える光景にわくわ...

  • 2021/05/10 17:59
    「伯爵家の箱入り娘は婚儀のまえに逃亡したい」第4話 侯爵家の気弱な従僕は先輩侍女に逆らえない

    「ジョン、服を脱げ」豪奢な椅子にゆったりと座している美しい男性が、尊大に命じる。その正面に立たされていた八歳のジョンはビクリとして固まるが、すぐ後ろに控えている叔父夫妻に脱ぎなさいと促されて、おどおどしながらシャツ、ズボン、靴下とひとつずつ脱いでいく。やがてパンツ一枚になった。恥ずかしいというより、何をさせられているのだろうという不安のほうが大きかった。うつむき加減のままチラリと視線だけを前に向けると、彼は冷ややかに言い放つ。「下着もだ」言い知れない恐怖にぞわぞわと肌が粟立った。それでも叔父に早く脱ぎなさいと言われると逆らえなかった。全身にまとわりつくような視線から逃げるように目を伏せ、いつのまにか小さく震えていた手をおずおずとパンツにかけた。ジョン・グラミスは、貴族とは名ばかりの貧乏男爵家に生まれた。領地も持...「伯爵家の箱入り娘は婚儀のまえに逃亡したい」第4話侯爵家の気弱な従僕は先輩侍女に逆らえない

  • 2021/03/12 17:35
    「伯爵家の箱入り娘は婚儀のまえに逃亡したい」第3話 侯爵家の強がり夫人は元婚約者を忘れられない

    そのときまで、ロゼリアは世界でたったひとりのお姫さまだった。貴族の中でも裕福なクレランス侯爵家に生まれ、蝶よ花よと育てられ、いつどんなときもロゼリアを中心に世界がまわっていた。そして、それをあたりまえのこととして享受していた。けれど——。それは、五歳になってまもないころのことだった。ロゼリアは両親に連れられて初めてパーティに行った。敷地外に出るのも初めてだったので、馬車から見える光景にわくわくしていたが、会場に入るや否やひどくショックを受けた。どうして——。そこには時間をかけて準備したロゼリアと同じように、あるいはそれ以上に、きらびやかに着飾った女の子があちこちにいた。すこし年上の子はきらきらとしたアクセサリまでつけている。まわりの大人たちはロゼリアのことを褒めてくれるけれど、彼女たちも褒めている。そして両親ま...「伯爵家の箱入り娘は婚儀のまえに逃亡したい」第3話侯爵家の強がり夫人は元婚約者を忘れられない

  • 2021/02/19 21:43
    「伯爵家の箱入り娘は婚儀のまえに逃亡したい」第2話 公爵家の騎士団長は一目惚れの少女と結婚したい (後編)

    カーディフの街に到着したのは予定どおり夜だった。ここからほど近いグレイ伯爵家にはあした向かうつもりである。今日のところは馬を預けて大通りの宿に泊まった。執事二人は隣の部屋だが、寝るとき以外はリチャードの部屋に居座った。「本当にグレイ伯爵家に行くんですか?」「あたりまえだろう」翌朝、宿の近くにあるカフェで執事二人と朝食をとった。彼らはいまだにグレイ伯爵家に行くことに難色を示している。失礼になるとか迷惑になるとかで。ここに来るまでの道中でもさんざん引き留められたのだが、気持ちは変わらなかった。「さあ、そろそろ準備をして行くぞ……ん?」カフェを出て、着替えるためにいったん宿に戻ろうとしたそのとき——向かいを軽やかに歩く少女が目に留まった。すこし距離があり顔もはっきりとは見えなかったが、それでも見紛うはずがない。「あの...「伯爵家の箱入り娘は婚儀のまえに逃亡したい」第2話公爵家の騎士団長は一目惚れの少女と結婚したい(後編)

  • 2021/02/19 21:43
    「伯爵家の箱入り娘は婚儀のまえに逃亡したい」第2話 公爵家の騎士団長は一目惚れの少女と結婚したい (前編)

    俺って本当に信用ないな——。雲ひとつない穏やかな青空の下、ウィンザー公爵家の嫡男であり王都の騎士団長でもあるリチャードは、殊更美しい白馬に乗ったままチラリと後ろを振り返ると、その光景にあらためて嘆息した。二人の執事が、それぞれ栗毛の馬を駆って着いてきている。来なくていい、その必要はない、むしろ来るなと言い渡したにもかかわらず、二人は旦那様の命令ですからと聞く耳を持たなかった。雇い主は父であるウィンザー公爵なのだから致し方ない。この二人は腕が立つので、護衛としての役割を求められることも少なくないが、今回はお目付役としてついてきているのだろう。必ずリチャードを連れ帰るように厳命されたと聞いている。しかし、リチャードにはもとよりすっぽかす気などない。自身が十年ものあいだひそかに待ち望んでいたことなのだ。だからこそ待ち...「伯爵家の箱入り娘は婚儀のまえに逃亡したい」第2話公爵家の騎士団長は一目惚れの少女と結婚したい(前編)

  • 2021/02/10 18:40
    【ストーリー】酒天童子異聞

     先日のコメントに感謝を込め、私なりの酒天童子の物語、「酒天童子異聞」をお話してみようと思います。 お楽しみあれw。 原典につきましては、くれぐれもググって下さるようお願いいたします(笑)。 なお、注釈についてはジャンプできるようにしていますw。 【酒天童子異聞】・・・ 関西地方、丹波の大江山を根城にしていた盗賊集団は周囲の人々から「鬼」と呼ばれ怖れられていた。(*1) 男は自ら「酒天童子...

  • 2021/02/02 20:14
    【感謝特別企画】小説、コロナ・フィクション(2)

    【前回までのあらすじ・・・】 「ネット広告監査」とは、広告の運用を報告して適正であることを保障するビジネスだ。 私の会社は顧客から委託を受け、広告収入やネットの流れなどを監査してグーグル社に報告している。 ある日、私は、コロナに感染した前任者の交代要員として顧客企業の外部監査に入ることになった。 コロナ禍は常態化し、世の中は徐々に適応しつつあった。 顧客会社のビルの入館証をもらうためには、コロナ陰...

  • 2021/02/01 19:15
    【用紙】イラストに安価なA4コピー用紙:PAPER ONE【オススメ】

    「アナログイラストを練習したい!」一番の消耗品は紙だから安いほうがいい!選ぶときのポイントは?オススメってあるの?というわけで今回は「イラストに安価なA4コピー用紙:PAPER ONE」についてのお話。

  • 2021/01/22 19:11
    短篇小説「言霊無双」

    目の前を歩いている人がずっと後ろを向いているように見えるのは、シンプルに彼女が後ろ向きな考えを持っているからだ。人は後ろ向きな思考を続けているあいだは、文字通り顔面が後ろを向いてしまうようになった。 それに対して、先ほどから僕の右脇を歩いている男をどんなにジロジロ見つめてもこちらを振り向かないのは、おそらくは借金で首が回らないせいだろう。 ネットやSNSの流行により、言葉によって人が傷つき時には命を失うほどまでに言葉の力が増大した。その結果、言葉は人の身体を容赦なくコントロールするようになった。それは古来「言霊」と呼ばれる言葉の霊力がかつてなく強まった結果だ。 後ろ向き女と首回らな男、この二人…

  • 2021/01/20 20:33
    短篇小説「言わずもが名」

    かつてはこの国にも省略の美学というものがあった。 たとえば俳句。に限らず会話や文章、そして商品のネーミングに至るまで、語られていない行間にこそ価値がある。そこに粋を感じる悠長な時代がたしかにあったのだ。いやあったらしい。私はそんな時代は知らない。物心ついたときからすでに、省略は不誠実と見なされ罰せられる、何もかもが説明過多な時代がすっかり完成していたのだから。 もちろん説明過多というのは過去と比較しての話だ。この時代に生きる私たちはそれを説明過多と感じることはない。なぜならば目にするものも会話も文章も、すべてが常時説明過多であるからだ。 つまりそれはデフォルトであり標準仕様であって多いも少ない…

  • 2021/01/18 17:59
    短篇小説「漕ぎ男」

    男が自転車を立ち漕ぎしている。 文字通り、サドルの上に立って。ペダルまでの距離は遠いが、いまは下り坂なので問題はない。上り坂が来ないことを祈るばかりだ。 やがてサドルの上に立って進む立ち漕ぎ男の脇を、座り漕ぎ男が追い抜いてゆく。座り漕ぎ男もまた文字通り、地面に座ったまま自転車を漕いでいる。もちろん尻は熱い。 と思いきや、ボトムスの尻部分には二個のローラーがついているので熱くない。なので正確に言えば二輪車ではなく四輪車と言うべきだ。尻ローラーがうなりを上げる。 そうなると次に現れるのはもちろん寝漕ぎ男だ。寝漕ぎ男は前輪と後輪のあいだに、あお向けに寝そべってペダルを漕いでいる。なので寝漕ぎ用自転車…

  • 2021/01/17 02:12
    短篇小説「動機喚起装置もちべえ」

    私はついに動機喚起装置『もちべえ』を手に入れた。これさえあればどんな願いも叶えたようなものだ。なにしろ成功する人間にもっとも必要とされるものは、実のところ斬新な発想でも強固な人脈でも漲る行動力でもなく、それらすべての原動力であるところの「動機」であるからだ。 物事のスタート地点には、必ず動機というものが存在する。動機なきところに成功などあり得ない。明確な動機なしにはじまったプロジェクトは、内容を問わず途中で推進力を失い必ず頓挫することになっている。動機なき言動に人を動かす力など微塵もないからである。 人がことをはじめる際にもっとも持ちあわせていなければならないが、自らの意志ではけっしてつくりだ…

  • 2021/01/16 20:18
    【創作】設定:ファンタジーとはなにかを知る【幻想世界】

    『ファンタジー』と聞いて、どんな世界観を想像するでしょうか?まず思い浮かべるのは「中世ヨーロッパ」的な風景でしょう。しかし、本当にそれだけが『ファンタジー』でしょうか?というわけで今回は「設定:ファンタジーとはなにかを知る」についてのお話。

  • 2021/01/14 00:14
    第2話 公爵家の騎士団長は一目惚れの少女と結婚したい

     俺って本当に信用ないな——。 雲ひとつない穏やかな青空の下、ウィンザー公爵家の嫡男であり王都の騎士団長でもあるリチャードは、殊更美しい白馬に乗ったままチラリと後ろを振り返ると、その光景にあらためて嘆息した。 二人の執事が、それぞれ栗毛の馬を駆って着いてきている。 来なくていい、その必要はない、むしろ来るなと言い渡したにもかかわらず、二人は旦那様の命令ですからと聞く耳を持たなかった。雇い主は父である...

  • 2021/01/13 21:05
    【心理】マズローの法則の活用:欲求を満たす設計【活用】

    『マズローの法則』あるいは『マズローの欲求5段階説』という言葉を聞いたことがあるでしょうか。今回は「マズローの法則:欲求を満たす設計を意識する」についてのお話。構成する5つの欲求について解説し、応用ポイントについてご紹介します。

  • 2020/12/29 10:32
    ソレイユの森 10 蜘蛛の巣

      待機状態の中、ソレイユの中の基板の上には、わずかな電気が流れていた。 繰り返される時間の中で、大きく違っているのは、外の天気のことだった。 雨が降るのは、雲が出るから。 そんな小さな情報を、基板の電子回路がメモリに運ぶ。 雲が出ると、気温が下がる。雲が出ると、充電供給率が減る。雲が出ると……。 窓の向こうに見えていた草木が、ゆっくりだが着実に成長していった。 つぼみが膨らみ、花が開く。花が枯れ、...

  • 2020/12/28 11:04
    ソレイユの森 9 傍観者

      警官たちの黒い帽子が、夕日に艶やかに照らされている。 西日の赤い光の中で、主人のいなくなった家の中や周辺を、彼らはアリのように行ったり来たり、せわしく動き回っていた。 ソレイユは暖炉の部屋の窓際に、椅子を横向きにつけて座っていた。 この位置なら、午後からの長い陽を浴び、十分に充電することができる。 以前の失敗を活かす、自身の学習機能の結果だった。 警官たちは、ラボや温室から草花を採取したり、暖...

  • 2020/12/27 09:45
    ソレイユの森 8 命令

      丸本はしばらく身動きが取れなかった。 すべては、一瞬のようでいて、またスローモーションのようにも見えた。 頭の中で疑問と恐怖が入り混じる。 滑落した。周一さんが、事故に遭った……。 丸本は慎重に、ゆっくりと崖に近寄って行って、下を見た。 吸い込まれるような落差があった。その底で、うつ伏せに倒れている周一が、動かない。「周一さん!」、丸本が何度か叫んだけれど、答えは返ってこなかった。 携帯電話を取...

  • 2020/12/26 10:47
    ソレイユの森 7 約束

      薬は、二つ用意した。 親指ほどの、小さなガラス瓶に入れ、一つを資料と一緒に、鞄の中にしまった。 紛失を恐れて、もう一つは、ここに残して行くことにする。 もともと生えていた桜の木が、庭先やレンガの道に、柔らかな絨毯を敷いた。 暖かい日差しを浴びながら、周一はソレイユと並んで、家の回りを歩いた。 これから、しばらく留守にする。こうして二人で歩くのは、当分ないだろう。 歩きながら、家に隠した薬の場所...

  • 2020/12/25 21:44
    【X'mas感謝企画】小説 コロナ・フィクション(1)

    【第一章】 その日、私は契約会社に行ってネット広告の監査をする必要があった。 四半期ごとに外から我々ネット監査士が入っていって依頼された会社のデータを調べ、その健全性をグーグルに保障する。 それがネット広告監査の仕事だ。  私の事務所が監査を担当していたその会社は、担当者が新型コロナウィルスに感染してしまい私が交代して監査に出かけることになった。 新型コロナウィルスは欧州で変異種とな...

  • 2020/12/20 11:04
    ソレイユの森 6 目覚め

      ここのところ降り続いた雨が、冷えて雪に変わった。 降り積もる音は静寂だったが、気配で分かった。 家は白い幕に包まれ、空気が冷蔵庫のように、部屋中を低い温度で漂った。 大きな暖炉の前に、あぐらをかいて座り込み、資料をめくっていた周一の耳に、遠くの方で、ゴトン、という何かが倒れる音がした。 スリッパをはいた足音を響かせて廊下を曲がり、音の正体を探す。 中庭の温室で、水やりを任せていたソレイユが、床...

  • 2020/12/19 08:53
    ソレイユの森 5 日光浴

      ここに来て二度目の秋が訪れた。 木々は鮮やかに紅葉し、木枯らしに落ち葉がカラカラと舞う。 少し肌寒くて、人恋しくなるような季節だった。 周一は髪を切り、白髪を黒く染め、軽くクシを入れた。 髭も剃り、薄い白衣の代わりに、薄茶色のコートを羽織った。 小奇麗にする必要はなかった。しかし、毎日会う男の風貌が、自分とは不釣り合い過ぎた。 黒い、タイトなスーツを着こなす、青い眼のソレイユ。ソーラーパネルの...

  • 2020/12/13 09:54
    ソレイユの森 4 マネキン

      丸本は毎日同じ時間にやってきた。 周一の日常に食い込んでくる、丸本という男の存在。 何度「必要ない」と帰しても、次の日にはまた現れる。 その男の素性が、知りたくもないのに周一には分かってきた。 都会で生まれ育った。機械工学にたずさわってきた。物作りが好き。ビールをよく飲む。 手土産にビールの缶を何本か持ってくることもあった。 ふもとの町まで、買い出しに行かなければ手にできないので、唯一、周一に...

  • 2020/12/12 09:54
    ソレイユの森 3 訪問販売

     「ごめんください」 来客の訪問は突然だった。 長い間、誰とも話さず一人だったため、周一は声の出し方を忘れていた。「……はぃ、なんで、しょうか」 声はかすれていたが、なんとか出るということが分かってほっとした。 実験記録用のレポート用紙を、周一は小脇に挟んだまま、天井の高い玄関ホールで、久々に人と会話した。 髪は耳より下に伸び、白髪も目立ち、白衣は土に汚れている。 そんな主人を見ても、訪問者の顔はに...

  • 2020/12/06 08:52
    ソレイユの森 2 温室栽培

      山奥の開けた土地に、その廃墟を発見したのは、偶然だった。 人通りのない獣道を通って、山頂付近まで歩くと、突然、視界が開けた。 雑草が生い茂る地面の所々に、赤茶けたレンガが埋もれていた。 レンガの道のその先に、崩れかけの古びた洋館が建っていた。 外国人の別荘のようだが、すでに住居として使われていないようだった。 ツタが伝った壁や屋根は、コケに黒く汚されている。 窓は割れ、ボロボロに擦り切れたカー...

  • 2020/12/05 08:48
    ソレイユの森 1 シュー教授

      大学の研究室で教授を務めていたしゅういちは、漢字で「周一」と書く。 同僚や教え子たちは、親しみを込めて「いち」を伸ばす発音にし、「シュー教授」と呼ぶことにしていた。 歳は四十過ぎ。毛量は多いけれど、白髪を染めないので老けて見える。 しかし性格は明るく、人当たりも優しかった。 生徒の勉強を、その子が解かるまで親身になって指導していた。 親身になり過ぎたのかもしれない……。 あとになって、シュー教授...

  • 2020/11/29 10:54
    回る円盤

      その時、少年はまだ言葉も知らぬ赤ちゃんだった。 母と、ベビーカーに乗せられて、連れ出された散歩の途中で、少年はあるものに目が釘付けとなった。 ベビーカーから見上げたその先に、くるくると回る円盤があった。 なぜ円盤があるのか、なぜくるくると回っているのか、しかし少年は0歳だったので、母親に尋ねようとしても、ただ「あー!」としか言えないのであった。 円盤は回る。 ただくるくると、その場で回り続ける...

  • 2020/11/28 09:42
    3人の宇宙人

      高度な文明の発達した星から、3人の宇宙人が地球に来た。 地球人は友好をはかるため、手厚くもてなすことにした。 まず、長旅で疲れていると思ったので、マッサージを受けさせた。 すると宇宙人はこう言った。「なんてことだ、凶暴な地球人め。こんなに体をつねられて、憤慨だ!」 今まで高度な星にいて、重力も軽いせいか、体が凝ることもなかったのだ。 次に、仕方がないのでお灸士に来てもらい、お灸で和んでもらおう...

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