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32通のメールが 振り分けられている ご丁寧に “彼女の嫌いな愛の言葉” なんて名付けられたフォルダに 届かないから即座に戻ってくる 戻ってきては振り分けられる 送信箱のは捨てるけど フォルダはいつまでも捨てられない 喧嘩もだいじ 笑い話も大切よ そんな夢物語は いつかあたしたちの間で 何もかも虚しくなった 32通のメールが 振り分けられている ご丁寧に “彼女の嫌いな愛の言葉” なんて名付けられたフォルダに ランキング参加中詩
声をかけない 話しかけられない空気感を めいっぱい纏う ショートヘアにピンクを入れて 後ろ姿であたしだと悟らせない SNSは 報告してブロックね(あんまし効果ないけども) 長い付き合いだったけど 無理して「嫌悪」を受け取る必要ないんだもの 幸せになろう 幸せでいよう 互いに、ね ランキング参加中詩
子どもの頃、チーズケーキが苦手だった。 思春期の頃、アップルパイが苦手だった。 大人と呼ばれる間際、自分が苦手だった。 大人を通り過ぎた今、チーズケーキに目がない。 ランキング参加中詩
ソフトクリーム色の 空が落ちた 今朝はだから なんの音がしなかった 声を上げず 瞳も上げず あたしはただその光景を うけとめる ソフトクリーム色の 空が落ちた 今朝はだから もうさびしくならなかった 綺麗でちょっと嘘つきで 隠した愛憎なんかをひっかきまわした そんな色だった ランキング参加中詩 ソフトクリーム色の 空が落ちた 今朝はだから もう怖くはならなかった あたしは見事に 空の下 今朝はだから もう眠ったままでよかった
木枯らしが吹いた。 なんとなく、この間ドアから無理やり剥がしたものが影響してるのかとソワソワしたが、そうではなく本格的な冬の到来であるらしい。 たかだか扉一枚分の“冬の入り口”をどうこうしたからと言って、その地方一帯の天気予報になるほど大それたことは、そもそもできないのである。 あれは単なる気配でしかないから、そうそう悪さをするものでもないはずだ。 詩人さんが木枯らしを吹かせた! 詩人さんが寒くした! 詩人さんのせいで冬になった! …などと噂されても、困るのだ。 人らより、猫に嫌われてしまいそうで困るのだ。 まあ「いらっしゃい、詩人さん」と出迎えてくれる、猫そっくりの店主は気にしてないようだか…
嘘をつくなら にっこり微笑んで フェイクな通知に リボンをかける(すっかり束ねて燃やすのよ) 受け取るのも手渡すのも 愛だけでいい 未来、だけでいい 今日なんていらない 昨日なんていらない 明日を呼び戻せるなら 未来を信じられるなら 愛だけでいい 今、だけでいい ランキング参加中詩
へろへろと帰宅した。 冬の入り口は相変わらず見つからない。ほんの欠片を見つけては、誰にも知られぬよう空に返すくらいのもので、霜も手の冷たさもその時に一瞬味わうくらいである。 今夜はどうだろう、と若干身構えつつ、ドアの前に立つ。 街灯にキラキラと反射する扉。やれやれ。思い切り息を吹きかけ飛び退いた。 びよぉぉぉ〜 ひんやりした何かが鼻先をかすめ、空にのぼっていく。 早朝、霜くらいはおりるかもしれない。 冬の入り口なんてものは、詩人には見つからない場所に隠しておけばいいのに、といつも思う。 雪が降り始めるまでは、こうして相手をしなくてはならないのだが。 そうそう、言っておくが詩人は嘘つきだ。 実は…
詩人が嘘をつく速度と SNSで嘘が流れる速度と どちらが罪深いのだろうか 時折そんなことを 比べても比べ足りない 紡いでも紡ぎ足りない そんなことを時折 やや真面目に思うのである あ そうだ 冬の入り口は見つけ次第空に返しておりますので ご心配なく
へろへろと帰宅して、いつものようにキーケースを取り出す。 深く考えもせず、定位置に鍵を突っ込みドアノブの手をかけようとして、「おお」と思わず声が出る。 「冬の始まり」がドアノブに貼りついていた。 去年より、だいぶ遅めのお出ましだ。ただ、明日はまた夏日の予報なので、昼までには風にさらわれてしまうだろう。 そういえば、マンションの掲示板に「冬の気配は資源ごみの日に出しましょう」とあったっけ。 いつからこんな窮屈な時代になったのだろう。 冬の入り口を探したり隠したり散らかしたり(!)しているのは、詩人(だけ)じゃないと思うのだけれど。 しかし、このままにしておくわけにもいかない。 指でチョン、と突っ…
へろへろと帰宅して、いつものようにキーケースを取り出す。 深く考えもせず、定位置に鍵を突っ込もうとして「え!」と思わず声が出た。 このところ、探しに探していた冬の入り口がへばりついているではないか。 灯台下暗し。 お前が隠したに違いない、とよく言われるのだが、本当に詩人の住む家で見つかるとは。 刺激せぬよう、用心深く鍵を突っ込む。 指先がひんやりした。風もないのに。 いずれはその辺の雲に溶けてしまうのだろうが、何はともあれ、ようやくこの暑さも人々に忘れ去られていくことだろう。 今夜はさつま汁にするかな。 詩人は、もう少しだけ冬ごしらえを進めておこうと決めた。 ランキング参加中詩
探す 探している 今こうして半袖…は流石に控えるとして 七分袖のTシャツを選び 薄手のカーディガンを羽織る いつもなら手招きするほど明らかな 冬の入り口が見つからない 造作もない 道を曲がったその向こうだと 詩人が言うので ついうっかり信じてしまった 深々と吸い込まれた季節は 二度と現れず 今年も待ちぼうけの立ちぼうけ 詩人はどこかへ消えたので 次の季節はやっぱりさっぱり見つからない ランキング参加中詩
詩人は、幸せだと嘘をついた。 だから、ひとときだけでも誰かが笑ってくれたのだ。 詩人は、不幸だと嘘をついた。 だから、ひとときだけでも誰かが寄り添ってくれたのだ。 詩人は、全て嘘だよと言った。 夢かうつつか、あなたにはわかっているはずだ。 ランキング参加中詩
パラパラとおこぼれを あたしにとって愛はそれっぽっちの 飢えるを知らず 乾くを知らず パラパラ降りかかるのを あたしにとって愛はそれっぽっちの 与えるでなく 満たすでなく パラパラ剥がれていく あたしにとって愛はそれっぽっちの ランキング参加中詩
まずは服を脱ぐ 上着も下着もすっかりと それからおもむろに背中に指をかけ あとはいつもと同じように 綺麗な感情と汚れた感情を 少しだけ残して あとは記憶の底に沈めた それから 自分も同じように湯船の底に沈んで ふわふわと眠る まずは服を脱ぐ 上着も下着もすっかりと それからおもむろに背中に指をかけ あとはいつもと同じように ランキング参加中詩
しまいこんだのはちょうど去年の今頃 わたしはまだ はじめましてを知らなかった とりだしたのはちょうど半年前のこと わたしはまだ その言葉を知らなかった かたづけようと決めたのはちょうど3日前のこと わたしはまだ その時間を抱きしめていたかった ランキング参加中詩
褒められることなく大人になった せめて笑っていようと決めて 隠れるように大人になった そのうち 人になりすますのも猫になりすますのも 詩人になりすますのも すっかり飽きた それでも死に物狂いで 幸せな人になりすます ランキング参加中詩
歪んだ風が春を呼ぶのは 重ねた愛が崩れるから 軋んだ手首が持ち上げるのは きみのつぶしたクリームいちご 荒んだ部屋をふんわり染めて ふたりはふたりにモドラナイ
冷たい言葉と熱いハグを 同時にやってのける それは人でなしじゃなく人たらしの端くれだ ジンピニンの端くれときたら 温かい言葉にそっとトゲをこめる いつかあなたが深く傷つくように いつかわたしが正しく泣けるように
「いつき、です」 昨日も。 一昨日も。 その前も。 下の名は、さらさ。 歌いはしないんだけども、なぜか同じ名前。 あの素敵な歌いびと、と。 それはそうと。 「開けて」 あしたも。 明後日も。 明明後日も。 空を、宇宙を。 ことばを尽くしても、 ことばを編んでも、 愛だけがすり抜ける。 「おはよう」 こんなに暗い足元を、猫だけが照らす。 猫、が照らす。
鼓動擦り傷常套句 奏で蜂蜜眠る猫 されど季節は曖昧に 夏と冬とを繰り返す 雨も雪も見分けやすく 予報もずいぶん簡素になって 幼き頃とは段違い 鼓動擦り傷常套句 奏で蜂蜜眠る猫 されど季節は確実に 激夏厳冬繰り返す
時計は狂うことを忘れたよ 時間は狂いっぱなしだけど 約束は昔より気安くなったよ 束縛の意味は恋だけじゃなくなったけど 宇宙は広がることをやめないよ わたしたちが「閉じ込められてる!」と ざわつかないためだよ
ストラップが邪魔くさくて 僕は猫のように不機嫌になる 画面のヒビは誰のせいだ なじる相手も今はない 割れそうな指先 割れそうな心 甘さと苦さは今日も背中合わせに 肉体が邪魔くさくて 僕は×××のように不機嫌になる 画面のヒビは誰のせいだ なじる相手も今はいらない
自分と折り合いがつかなくなっているとき 季節の変わり目 人との別れ目 そんな折、決まって心身ともにデトックス状態に陥る 体調が落ち着く頃 酔いからさめるような後悔が走ったり かと思えば妙に体が軽く 次の段階へ何かが進むことも多い 心と体は密接だというけれど そうだね、と納得しているのに そうかな、と走りはじめながら笑ってみたりする テレビもラジオもスマホとも縁を切り 今はただどこまでも走る
音律も拍動も届かない場所なら あるいは あまりの暑さとあまりの悲哀に なんだか そんなことを夢想する 遠くて美しいものは 世の中あふれかえっているけど 触れるほど身近になれば すっかり慣れ親しんでしまうのだ 音律も拍動も届かない場所なら あるいは 孤独を知りたくてもがいているなど あなたに想像つくのかね そんなことを呟いてみる
秒針がスキップするのを 確かに見届けて わたしはスマホをオフにする 日付をまたぐ瞬間に スキップに出会うことは珍しく 隣で眠る連れ合いに気づかれぬよう 「あなたよりちょびっと得したわよ」などと ニンマリしてしまう 起床時には忘れているが 就寝時に魔法が解けるように思い出すのは いつか誰かを呪った報いなのか 秒針がスキップするのを 確かに見届けて わたしはスマホをオフにする それが何を意味するのか まだ思い出せない
言語化できない声を 掬い上げて紡いでいる (抱えた感情の癒しになるなら) …高尚な思いはない (抱えた思いの糧になるなら) …背中すら押せない それでも 言語化できない声を 掬い上げて紡いでいる 幾度もぶつかり 幾度も傷つき 幾度も間違え 幾度も迷う 伝わるものは伝わりすぎて 伝わらないものは忘れ去られ やがて紡ぐ言葉を手放せば そこに初めて言霊が生まれる それを詩と呼ぶ
つぶれた葡萄の匂いに 目を伏せる 怒号を避けて 陽射しを避けて 押し入れに逃げ込んだ 名をきちんと呼ばれるのは 叩かれる時だけだ それは愛なのだろうかと 今でも思う 本気で聞いてはくれなかったと 今も思う 葡萄を潰して言いがかりをつける そうまでして家族でいたかったのかと 苦く思う
先輩でも後輩でもなかったその人は テキパキテキパキなんでも得意で かと言って 決して背負いこみすぎず 決して押しつけすぎず 笑顔も泣き顔もあけっぴろげな人でした そんなふうに理解していたのですが 氷山の一角とはよく言ったもので あるときシュレッダー行き資料の裏側に その人の美しい文字で小さくぎっしりと あることないこと刻まれているのを 見てしまいました 先輩でも後輩でもなかったその人は やがて さまざまにバランスを崩すことになるのですが 先輩でも後輩でもなかったその人は テキパキテキパキなんでも得意で かと言って 決して背負いこみすぎず 決して押しつけすぎず 笑顔も泣き顔もあけっぴろげな人でし…
通知音をすべて 葉擦れサウンドに変更した 雨がひどくなっても ざわわわわ あの人からのLINEも ざわわわわ どこかの国での不穏な動きも ざわわわわ みんながみんなそうしたところで 心のざわわが消えるわきゃないけども 風の時代に手元から 風を吹かせるのもありだわなと ふと思ったわけですよ 通知音をすべて 葉擦れサウンドに変更した 風がひどくなっても ざわわわわ 家族からのLINEも ざわわわわ 誰かが投じたいけない言霊も ざわわわわ
激情とは経験の親であり よくよく編んだ麻紐のようである 心を縛り 肉体を縛り 知恵を遠ざけ 人の間を巡り続けるものである 激情とは経験の鏡であり よくよく燃え盛る焚き火のようである 心を引っ掻き 肉体をすり減らし 人の間を巡り続けるものである
冷凍しておいて 好きな分量削りとる 体温でゆるむ頃合いに言葉をのせる 感情クラウドを すでに体から追いやって それはそれは楽になった やさしく聡くなれぬなら せめて傷をつけぬよう 未来的技術に頼ったのである 冷凍しておいて 好きな分量削りとる 体温でゆるむ頃合いに言葉をのせる ときには計算して ときにはその中に魂を沈めて わずかながらの声を発すれば 幸せか不幸かは もう気にしなくてよくなる なにがなんでも幸せにならなくちゃ それが呪いになることもあるのだ 憂いも喜びも同じ場所で蠢くのだから
こきおろして 叩きのめしたい そんな欲望が微かにでも含まれれば それはすでに 憧れではなく嫉妬であろう 似ているのは 自分の世界が狭まりがちだということ そうして焦点が絞られたとき 自分すら見えなくなる 嫉妬は酸味と苦味が混ざっている 憧れは甘味と苦味に彩られる 屁理屈だと思うかい? 破綻した論理だと決めつけるかい? あんた次第だがね
詩人はいつか必ず 絶滅危惧種と呼ばれる日がくる すでに全ての人が “我こそは詩人なのである” そう名乗り始めた昨今なので 詩人という単語にすら 意味がなくなりそうな勢いだ そうであった 始まったものは終わりを迎えるのだ だから人らもいつかは
耳から沁み込む事象の全てが 私を形成しています そう思えば この衝動も薄らぐことでしょう ですから 心を小さく畳んで サコッシュに入れるのです 誰にも気づかれぬよう 誰も傷つけぬよう 見捨てた自分を いつか拾い上げる日まで
入れ替える、表のわたしと奥に眠るわたしを。 傍目からは暴れているようにも見えるだろうし、 随分と寂しそうに見えることもあるようだ。 入れ替える、表のわたしと奥に眠るわたしを。 何やら真面目そうだ、と信頼関係を誰かと築けるのか、 または孤独を存分に楽しむ人にも見えるようだ。 入れ替える、表のわたしと奥に眠るわたしを。 素顔は果たしてどちらか、そんなこと訊かれても。 きっとあなたに見えている、それだけの光景でしょう。 あなたは、わたしになれない。 わたしは、あなたになれない。 わかりあえる幻想は、ふむ、悪くない。 分かち合えず泣くより、も。
自分を愛するように 他人を大切にしなさい 先生は 教壇でそうお話されておりましたが 自分を愛したことがない子は どうふるまえばよいのでせう 母さまも父さまも教えちゃくれませぬ ついぞ愛してはくれなんだ わたくしの中で たまにおチビが暴れるのでございますが 素知らぬ顔して生きておりますよ まあでもね 詩人は 嘘をつくのです そうですとも