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ドキュメンタリー作家の神渡良平氏の本は、事実だけに、いつもとても感動します。そして説得力があります。氏の本に『下坐に生きる』という本があります。その中に、温かい心で孤独で寂しい少年の心を溶かした方の話があります。今日から3回に渡って、話のおすそ分けをしたいと思います。 その少年は親の愛を受ける事なく人間不信の塊でした。うどん屋の娘の所に遊びに来ていた大工との間にできた少年でした。娘が妊娠したと聞いてから大工は来なくなりました。娘は少年を産んで、そのまま亡くなったそうです。 ですから、その少年は父親も母親も知りません。天涯孤独の人生でした。施設に預けられた後、母親がいたうどん屋で働いていましたが…
少年の前に一人の人物が現れます。その人は、一軒一軒トイレ掃除をしながら訪問する事で有名な、一灯園という京都にある修養団体の、三上和志さんという方でした。この病院に有り難い話をする為に来しました。 三上さんの話が終わったあと、院長先生が、重体で個室から一歩も出る事ができない少年にも聞かせてやりたいと思い、三上さんにお願いしました。一緒に少年のいる個室に行きました。しかし少年は 「うるせー!」 と言って拒絶します。三上さんはドアを閉めて出ようとしますが、振り返ると、少年の目に、孤独なのに素直に表現できない、ひねくれた感情が見えました。 そこで三上さんは少年に歩み寄って、一晩看病する事にしました。院…
三上さんが食べたのを見届けて、少年は初めて心を開き、話を聞きます。どんなに良い話でも、人は心を開かなければ聞く耳を持ちません。三上さんは、人は誰かの役に立つように生まれてきた話をします。しかし少年はあと数日の命です。 「俺はもう明日にも死ぬ命なのに、人の役には立てない。」 と言います。しかし、三上さんは暴言を吐いたり、人を睨みつけるのではなく、「有り難う。」と言ったり、笑顔を見せるだけでも、人の役に立つという話をしました。少年は、それなら自分にもできる、という思いになりました。 最後に少年は一つお願いがある、と言います。三上さんが聞くと、 「今度子供たちに話をする時に、親に小言を言われても反抗…