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本ブログの「漢字の音訳が意味するもの」という記事では、漢字が音訳された時代(五世紀前半か?)には、あ行の「い、う、え」が存在しなかったと論じました。そうであれば、「魏志倭人伝」に登場した伊都国の伊も、や行の「い」だったはずです。そこで、「い」を表記する万葉仮名について、現代中国音を調べてみました。まず、『大日本国語辞典』によると、「い」を表記する万葉仮名は次の14文字でした。◆「い」の万葉仮名:伊、意、怡、肄、壹、以、移、夷、易、已、異、射、五十、膽ただし、射、五十、膽は訓読みなので、ここでは除外します。この11文字のうち、や行の「い」を表記する漢字は次の6文字とされていました。◆や行の「い」:以、移、夷、易、已、異つまり、残った次の5文字があ行の「い」を表記する漢字となります。◆あ行の「い」:伊、意、怡、肄、...古代歌謡の分析1
前回は、仁徳天皇の時代にも、于がわ行の「う」を表記する漢字だったということを論じました。そこで今回は、本ブログの「古代歌謡の分析1」で論じた、応神天皇の時代には伊がや行の「い」を表記する漢字であったという結論が、仁徳天皇の時代にも通用するのか調べてみました。次の歌は、仁徳天皇の四十年に、天皇が異母妹の雌鳥皇女(めどりのひめみこ)を妃にするため、異母弟の隼別皇子(はやぶさわけのみこ)を仲人として遣わしたところ、雌鳥皇女が隼別皇子と恋仲になり、皇子の舎人(とねり=従者)たちが詠んだとされるものです。なお、漢字の表記と読みについては『日本紀標註』を、意味については『紀記論究外篇古代歌謡(上)』を参照しました。原文読み意味破夜歩佐波はやぶさは隼は阿梅珥能朋利あめにのぼり天に昇り等弭箇慨梨とびかけり飛び翔けり伊菟岐餓宇倍...古代歌謡の分析4
今回からは、漢字の音訳に関する考察です。古代の日本語について調査する過程で、『日本言語学』(松岡静雄:著、刀江書院:1926年刊)という本にとても興味深いことが書かれているのを発見しました。それによると、日本語の特質の一つとして、母音が連続しないことが挙げられるそうです。(本文では、「複母韻が存立し得なかった」という表現を用いています。)これをもう少し詳しく説明すると、古代の日本人が漢字を音訳する際には、次のような特徴があったそうです。1.水(sui)を「すゐ」(suwi)、類(rui)を「るゐ」(ruwi)などと音訳したこと。参考までに、『大日本国語辞典』の「すゐ」と「るゐ」の項目をご覧ください。【「すゐ」と音訳された漢字『大日本国語辞典』より】【「るゐ」と音訳された漢字『大日本国語辞典』より】2.拝(hai...漢字の音訳が意味するもの