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月夜の猫-BL小説です バレンタインバトル7 BL小説 「はい、何とか、例の二人がまた見解の相違とかで三十分ほど中断した程度です」 むしろいろいろあり過ぎて電話なんかでは話せないというのが本音だが。 「フン、あんまり長引かせるなよ。これから釧路に移動して今夜はそっちに泊まる。何かあったら携帯に入れろ」 すぐに切
月夜の猫-BL小説です はっぴぃばれんたいん1 BL小説 広告代理店プラグインのオフィスがある表参道のビルから浩輔が出てきたところへ、ピカピカの濃いブルーの車が停まった。 「お出かけかな? 浩輔ちゃん」 ドアが開いて降り立ったのは、ラクダ色のコートに渋いモスグリーンのマフラーをきっちり巻いているが、雰囲気の華やかな
月夜の猫-BL小説です はっぴぃばれんたいん(河崎×浩輔) BL小説 船出したばかりのプラグインで浩輔は仕事に追われていた。プラグインを構成するのは四人。全員が元大手広告代理店英報堂の社員で、代表の河崎は浩輔の上司だったし、藤堂のことも知っているつもりでいたが、いざ一緒に仕事をしていると、二人に関してあまりにも
射貫かれた、碧生の心のいちばんやさしい場所が血を流している。生絹への純粋な恋情のある場所。それなのに、こんなに痛いのに、碧生の口からはすらすらと言葉が紡がれる。まるで事実にすぎない言葉を読み上げる機械のように。「いちどだけ、生絹に用事があって和夏さんといっしょに帰るところを追いかけたんだ。飲み屋街の端っこのホテルに入っていくのを見た」 無表情のままだった生絹がかすかに唇の両端を持ち上げ、うっすら...
月夜の猫-BL小説です かぜをいたみ5 BL小説 番組で取り上げる原夏緒のいくつかの絵について、ここでは彼女の息子である小林千雪に語らせることになっていた。 ミステリー作家としてだけでなく、警視庁に協力してこれまで幾度となく難事件解決に貢献し、そちらの方が有名になってしまったせいで、千雪はテレビ出演など時折依頼さ
月夜の猫-BL小説です 花さそう47 BL小説 良太と森村は朝飯前とばかりに、早朝森村の車で慌てて工藤の別荘に向った。 「やっぱり平さん、もう雪除けしてるし」 別荘に着くと、シャベルで門のあたりの雪を避けている平造がいた。 「平さん、俺らやりますから」 良太が降りて平造に声を掛けると、「これしきの雪、お前さんらの
月夜の猫-BL小説です バレンタインバトル6 BL小説 良太は一呼吸置いてから監督と脚本家を振り返った。 年代もキャリアも似通っているこの二人は、まさしくああいえばこういうで、原作の解釈の違いとかの段階などではなく、ただ互いを貶しあっているだけなのだ。 一応双方の言い分を聞き、二人を宥めすかして数カットを撮り
ついに決定的な言い争いをしてしまったのは、窓の外に細かな雪がちらつく、凍てつくほどに寒い日の放課後のことだった。この冬一番の冷え込みだといって朝からテレビがにぎやかに騒いでいたあの日。 教室に最後までふたり居残って、碧生の家で売り出されたばかりのゲームソフトで遊ぼうと攻略法を話し合っていた。生絹はいつになくよく笑っていた。めずらしく生絹が見せた年相応の子どもっぽい笑顔が碧生にはうれしかった。 教...
月夜の猫-BL小説です 花さそう46 BL小説 「くっそ、俺負けてるぜ!」 小笠原が喚いた。 「俺もちょっと鍛えないとな」 人と比べても仕方がないとは思うのだが、良太にしてみればかつては野球少年だったとかこれでは口にできたものではない。 沢村や森村の鍛え方は生半可なものではないとは思うが、アラフォーなんてとても
月夜の猫-BL小説です バレンタインバトル5 BL小説 「ちょっと、今井、どこ?!」 ただし、休憩中時折聞こえる芽久のヒステリックな声は、スタッフの精神状態にも悪影響を及ぼしそうだった。 「はい! ただ今!」 コーヒーを手に慌てて芽久に駆け寄ったのは彼女のマネージャー、今井だ。 「どこ行ってたのよ!」
月夜の猫-BL小説です かぜをいたみ4 BL小説 「にしてもあの工藤の下でやっていこうやなんて、一体どんな猛者が入ったんや?」 ほんまの試練は入った後やで? 工藤が中山組組長の甥や、でビビっとるくらい大したことやないて思い知らされるで。 何せ鬼の工藤、横暴、パワハラ、且つ策士やからな。 千雪は密かにその新入社員が
月夜の猫-BL小説です バレンタインバトル4 BL小説 良太は翌日の早朝から『花の終わり』の横浜ロケに同行し、仕事はまたフル回転となった。 「考えてみればこの仕事、あくまでも工藤がプロデュースで、俺はアシスタントなんだからな」 なのに、特別なことがない限りお前の判断で動け、だもんな。 ったく! 工藤がこの仕事を
和夏さんとのことが日常茶飯事だということ、そしてふたりがつきあっていることを碧生が知っていることに生絹は気がついてもいないこと、さらには碧生の気持ちにのほうには生絹が気がついていることをすこしずつ碧生は察していった。 放課後に和夏さんと帰っていく生絹の背中から、生絹の言葉の隙間から、態度にちらちら垣間見えるものから、自分にむけられるまなざしから。生絹の言動のあいだからそっと生絹の心をうかがってい...
月夜の猫-BL小説です 花さそう45 BL小説 「サプライズ、よかったで? しんみりし過ぎず騒ぎ過ぎず、平造さんも喜んでたし」 「ありがとうございます」 佐々木にそう言われると、良太もホッとする。 「なあなあ、俺ン時はどんなサプライズやってくれんの?」 小笠原がウキウキと聞いてくる。 「サプライズつきはアラフォー
月夜の猫-BL小説です バレンタインバトル3 BL小説 さらに暮れには、まるで小公女セーラかってくらい、良太の部屋が豪華に一掃されていた。 パイプベッドなんかまだ使えるのに勝手に捨てるなんてと口喧嘩になってしまったものの、一応礼は言ったし、工藤の誕生日やクリスマスには、前田の店に工藤の好みの酒を置いてもらうこと
月夜の猫-BL小説です バレンタインバトル2 BL小説 外に出るとびゅうびゅう刺すように冷たい風が吹きつけ、あっという間に体温をさげてしまう。 「うう、寒ぅ…………」 良太はマフラーで口元辺りまで覆った。 短いダウンジャケットではあまり防寒対策にならないくらいだ。 数センチ積もった雪は、影になっているところには
月夜の猫-BL小説です 花さそう(工藤×良太)44までアップしました BL小説 花さそう(工藤×良太)44までアップしました。バレンタインエピソードアップしています。小草生月某日(京助×千雪)、バレンタインバトル(工藤×良太)1までアップしました
冷たく細い雨の降っていた翌日、生絹と顔を合わせるのが怖かった。もし、もしも、生絹の碧生に対する態度がなにかしら変わっていたらと思うと、胸の底で無数の羽虫が羽ばたくように不穏な、そわそわと落ち着かない気持ちがする。 たくさんの傘の花の咲く正門まえでは会えないまま、教室まで行っても生絹はいなかった。めずらしいな、と思いながらCDを手のなかでもてあそんでいた。 予鈴が鳴る。遅刻ぎりぎりで教室に滑り込んで...
月夜の猫-BL小説です 花さそう44 BL小説 平造にはこの軽井沢で吉川や杉田らとたまに顔を合わせながら野菜作りをしたりして安穏に暮らすのが一番いいのだろう。 工藤は平造の胸中を思いやる。 「平造は自分から何がしたいとか言わないからな。お前でも何か聞いたらまた教えろ」 「……はあ………」 良太は良太で
月夜の猫-BL小説です バレンタインバトル(工藤×良太) BL小説 良太が京助が主催するスキー合宿に初めて参加したすぐ後のエピソードです。沢村に散々振り回されたものの楽しかった休暇が終われば、またてんこ盛りの仕事が待っていた。一段落するとを終えて外に出ると、バレンタインデーなる文字が目に入る。そう言えばそろそろ
月夜の猫-BL小説です バレンタインバトル1 BL小説 小林千雪に誘われた軽井沢のスキー合宿から良太が戻ったのは昨日の夕方だったが、オフィスの上に住居があるお陰で、合宿に行っている間猫たちの世話をしてくれた鈴木さんに、お土産のお菓子をお礼に持って行った。 ついでに、気になっていた仕事があり、結局夜八時頃までオ
うそだった。ぜんぶうそだった。生絹の母親の恋人だと名乗った和夏さんも、「碧生だけがいればいいんだ」と言った生絹もうそつきばっかりだ。知っていたはずの現実がとけるように見えなくなっていく。わからなくなっていく。 頭のなかで整理しようと糸を引っ張ると余計に絡まっていくので、碧生は思考を放棄した。 左手首の火傷の痕がひどく疼いた。秋の夕暮れの弱い光が碧生を照らしている。泣きながら路肩にへたり込んでいる...
月夜の猫-BL小説です かぜをいたみ3 BL小説 空き巣、引っ越し騒動、その他もろもろですっかりつむじを曲げた千雪に、なんとかドキュメンタリーへの出演を承諾させるべく、工藤はあの手この手でそうでなくてもマスコミへの露出を嫌う千雪を揺さぶった。 今回のドキュメンタリー番組では、そもそもが原夏緒の作品を語るというの
月夜の猫-BL小説です 花さそう43 BL小説 今夜は戸川には工藤の別荘に泊ってもらうよう、杉田が部屋を用意していた。 和やかな中で会はお開きとなり、出席者の車はそのままに、タクシーに乗り合わせて帰っていく。 平造と戸川は工藤と一緒にタクシーで別荘まで行くと、工藤は平造に明日からの二泊三日の温泉旅行のクーポンを
漠然と、灰色がかった雲のような予感が胸に広がる。だいじょうぶ、だいじょうぶ、すこし寄り道して帰るだけなんだ。なにに対してだいじょうぶと言い聞かせているのかもわからず、碧生は必死にそう思った。 ゆっくりと先を歩くふたりはとても仲良さそうになにか話している。この先を見てはいけない、ここから先は見たくないと思いながらも、碧生の足は自然に和夏さんと生絹を追いかけてしまう。 生絹の名を呼べばいい。わかって...
月夜の猫-BL小説です 花さそう42 BL小説 「何せこの平造ってやつは、中学を卒業するとふいっと水戸を出て行ってそれっきり。もともとむっつり一人でいるようなやつで、まあ、両親を早くに亡くして親戚を転々としてたらしくて、捻くれてもしょうがないかってとこだったんですが、とにかくかわいげのないやつで、それでも野良猫を
生絹の新しい父親になる和夏さんは、週に二回くらいのペースで生絹を学校まで迎えに来る。 シフト制勤務の会社に勤めていると語り、「生絹くんとふたりで話す時間がほしくて」と言う正門のまえの所在なさげな姿が、むしろ碧生たちよりおさない生きもののように思えた。けれど、生絹くん!と呼ぶよく通る涼やかな声も、碧生に対する丁寧な挨拶もにこやかな接しかたも、いつもはじめて会ったときの礼儀正しくておだやかな印象を崩...
月夜の猫-BL小説です 花さそう41 BL小説 平造は誕生日の食事会に工藤や良太、それにアスカや小笠原ら社員が集ってくれているとだけ秋山から聞いて、ジャケットを羽織っただけでやってきた。 「お誕生日おめでとうございます!」 だからドアを開けた途端、大勢の歓迎を受けるとは思ってもみなかった。 拍手の嵐にしばらく呆
きっと、碧生は呆けたような顔で生絹を見ていたことだろう。ちょっと笑った生絹は手を伸ばして、碧生の左手首に指先でそっと触れた。ほっそりした指先がたどる、生絹がつけた碧生のちいさな火傷の痕。碧生が生絹といっしょにいるための傷。生涯消えない傷は、どんな約束より強固な絆に思えた。「なんだってできるよ、俺たちふたりなら。進学しても、就職しても、いっしょにいような。碧生と俺でいろんなことをしよう」 碧生を覗...
月夜の猫-BL小説です かぜをいたみ1 BL小説 青山プロダクション社長の工藤から電話が入ったのは、小林千雪が午前の講義を終えて腹が減ったことを漠然と思い出した、その時だった。 「は? やからテレビなんかに俺が出るとかほんまに思うたはります? ギャラなんかその辺のタレントさんにバラまきはったらええんちゃいます
月夜の猫-BL小説です かぜをいたみ(京助×千雪) BL小説 京助と千雪、そして研二の思いが絡むエピソード。 「メリーゴーランド」から数年後になります。 二年間のアメリカ留学から帰ってきた京助と千雪。 また懐かしいアパートで暮らしていくのだ、と思っていた千雪だが、千雪を出迎えた部屋はとんでもないことになっていた。 工藤と青山
月夜の猫-BL小説です 花さそう(工藤×良太)40までアップしました BL小説 花さそう(工藤×良太)40までアップしました。今回、モブシーン? が多くてすみません。 時々、誰がここにいるのか、わからなくなりそうです。
月夜の猫-BL小説です 花さそう40 BL小説 二人のコートを受け取ると、吉川はクローゼットへ持って行く。 「工藤さん、平さんへのプレゼント、どうしました?」 所在なく二人は入り口近くのソファに座ると、良太が聞いた。 「いつもと同じだ。明日から温泉二泊三日。あんまり遠くない方がいいっていうから、蔵王の温泉旅館の
第一回の進路希望調査票が配られたのはその翌日だった。生殺与奪の権をたった一枚の紙に握られた気分になる。理不尽だ。これから数か月、答えのない迷いに悩まされるのかと思うと一気に憂鬱になってしまう。自分の行く道なんていったいどうやって決めればいいんだろうか。この紙切れ一枚に書く内容で、人生が変わってしまうなんて。 生絹に「進路のことを考えるとお腹痛くなりそう」と碧生がこぼすと軽やかな笑い声が降ってきた...
月夜の猫-BL小説です 花さそう39 BL小説 良太は工藤を振り仰いだ。 「だから、工藤さんも一緒に驚いてくださいよ。時間まであと少しなんですから」 フン、と工藤は鼻で笑う。 「驚くって言っても、そんな驚くような企画じゃないんですよ。まあ、平さんから以前ちょっと聞いた話を思い出して」 良太は言った。 「杉田さん
「生絹くんから碧生くんの名前はよく聞いてます。いつも生絹くんがお世話になってます。それで、えーっと……」 生絹が『和夏さん』と呼んだ男性の笑顔が、すこし照れたようなものになった。「僕は生絹くんのお母さんの恋人で婚約者です。村岡和夏といいます」 丁寧でおだやかな物腰が、どことなく相手を安心させる人だった。こんな人があたらしく生絹の家族になるのなら、それはとてもいいことだと思えるような。碧生は和夏さんに...
#59011;紙書籍 #58946;電子書籍 #59020;CD・DVD (#59101;=購入時、発売から1ヶ月未満の新刊) 色字は感想記事へのリンクです。 (文頭の数字は購入日) 01#58946;小さな恋のメロディ②/嶋二 02#58946;小さな恋のメロディ③/嶋二 03#58946;帰れない二人/嶋二 04#58946;#59101;明けの花に嘴 第4話/もちゃろ #58946;気になるあの子/嶋二 #58946;今夜、ミスターで/嶋二 05#58946;ハクメイとミコチ①/樫木祐人 #59011;#59101;ケンジとシロさん⑧/よしながふみ 06#58946;ハクメイとミコチ②③④⑤/樫木祐人 #58946;放蕩息子と恋の穴/九號 08#58946;最高の小説家②/藤河るり 09#58946;てだれもんら/中野シズカ #58946;夢中さ、きみに。①/和山やま #58946;カラオケ行こ!/和山やま 10#58946;#59101;ほんと野獣16/山本小鉄子 12#58946;#59101;ミッドナイト・ベルボーイ 松尾マアタ短編集1/松尾マアタ 15#58946;#59101;その恋、自販機で買え..
月夜の猫-BL小説です 花さそう(工藤×良太)37までアップしました BL小説 花さそう(工藤×良太)37までアップしました。氷花(京助×千雪)24(ラスト)までアップしました。 氷花、お付き合い有難うございました。 次回、ペンディング中の『かぜをいたみ』(京助×千雪)に向いたいと思います。 以前とは多少人物な
和夏(わか)さんをはじめて見かけたのは、二年に進級したばかりの春先、碧生が生絹と連れ立って帰ろうとしていたときのことだった。示し合わせたわけでもなく、入学当初から生絹も碧生も部活動の類には属していない。青春めいたものを部活動に求める気持ちがふたりとも薄かったからだ。 春の夕暮れの淡い光のなかで正門前にどこか不安そうにたたずんでいた、高校生といっても通じそうなくらい細くて小柄な男性が彼だった。また...
月夜の猫-BL小説です 氷花24 BL小説 「でかい声で騒ぐと聞こえるぜ?」 うっと千雪は口を噤む。 「いっか、聞かしてやるか、お前の可愛い声」 思わず千雪は京助の頬に平手打ちをかます。 「ざけんなや!」 「ってぇ、いい加減、素直になれよ」 エロい台詞を吐きながらも京助は手を緩めない。 あまつさえ、身体を繋がれ
月夜の猫-BL小説です 花さそう37 BL小説 「工藤さん、もしご希望なら鑑定に出しますが?」 藤堂がやんわりと問いかけた。 「沢村じゃないが、俺は本物だろうがかまやしない。騒がれるのもごめんだしな」 工藤はフンと鼻で笑う。 「そうおっしゃるだろうと思いました」 藤堂は笑みを浮かべた。 「蒐集家のターゲットにさ
月夜の猫-BL小説です 氷花23 BL小説 「公一さん、メシは?」 「あいつが近くでメシ食ってくるまで、待っててやった。お陰で俺は腹が減って」 「お前も何か食うたらよかったやん」 千雪が言うと、京助はカレーを盛り付けた皿をテーブルに置いて、一瞬、間があった。 「藤原に聞いたんだよ、お前が何か作ってるって」
生絹とは二年生に進級したときにもおなじクラスになった。心のどこかでそうなるような気がしていたから、とくに驚きもしなかった。クラス分けが張り出されている掲示板のまえで前後になったふたりの名前を見つけたとき、生絹とはこうして一生そばにいるのかなぁとひどくしずかに凪いだ気持ちで思った。それでも、春の光のなかで、おだやかな湯にたゆたうような幸福を覚えた。 生絹。傍らで「またおなじクラスだな」と言ってうれ...
月夜の猫-BL小説です 花さそう36 BL小説 みんなのあとから屋敷に入った工藤は杉田に「来てくれたのか、すまないな」と声をかけた。 「このお屋敷が賑やかになるの、あまりないことですもの」 笑顔でお茶を振舞う杉田が続けて「ぼっちゃ……」と言いかけたのを工藤は遮って「平造、好きなように見てもらうからあとはい