前ページ 家に着き、匂い付きの消しゴムをテーブルに並べて眺めてみる。 ……何をしているんだろう。 冷静に考えたら、これは食べ物じゃない、消しゴムだ。 どうしろと言うのだろうか。 どうしようもないので、暫く惚けた。 少し間を...
前ページ 家に着き、匂い付きの消しゴムをテーブルに並べて眺めてみる。 ……何をしているんだろう。 冷静に考えたら、これは食べ物じゃない、消しゴムだ。 どうしろと言うのだろうか。 どうしようもないので、暫く惚けた。 少し間を...
前ページ 3回。 3回だ。 3回も僕は裏切られた。 カレーにもラーメンにも鉄人にも裏切られた。 何なんだ。 4時頃に飯を食べたいと思うことが、そんなに罪なのか? 昼飯の時間も惜しんでセコセコ働い...
前ページ 確かこの先を曲がると定食屋があったはず。 そこでいい。 わりともう、何でもいい。 腹を満たすことを優先しだした事に少なからず本末転倒感は感じたが、そもそも少し早く仕事が終わっただけで別に何か良い事があったわけでも何かの記念日で
前ページ 結局、この世で一番旨いのはラーメンなんじゃないだろうか。 旨くない麺類なんてこの世に存在しないし、そんな麺類の中での圧倒的覇者がラーメンである以上、最高の夕食を望むのであればラーメンこそが常道な気がする。 ウナギだのステーキだ
前ページ 立ち止まって少し考える。 ウナギとカレー。 高いウナギと安いカレー。 なんだかんだでお財布に優しい方がいい。 良い匂い。 すごく良い匂い。 あともう空腹が限界だ。 空腹時にカレーの匂いを嗅がせることは軽犯罪...
前ページ 僕は道を歩きながら、更に考える。 ウナギを食べる。そこは揺るがない。となると今度はどう食べるかが問題となる。スーパーマーケットで買ってくるか、それともウナギ屋へ食べに行くか。 やはりここはウナギ屋へ出向き極上のウナギを召したい
前ページ いや、この際、金銭的な懸念はどうでもいい。お金なんかを出し惜しみをしていたら最高の夕食など程遠いし、そもそも金額的な高低は僕の欲求には何の関係も無いのだ。食べたいものがたまたま贅沢なものだった、ただそれだけの事で。 問題は、ウ
他作品へ ウナギなのかステーキなのか。 2つを同時に食べられない僕は、なんて不自由なんだろう。 日が少しだけ傾きだした彼岸の頃。秋風が静かに土の匂いを運んでくる。 どういうわけか仕事が昼過ぎに片付き、僕は早めの帰宅を許された。特に何か
前ページ 「あの、ナスガキさん」 彼の愚痴の合間を縫って、僕は切り出す。「はい?」「地球征服には何が必要なんでしたっけ?」 今一度、確認をする。「さっきも言いましたが、約1億の宇宙人と、大量のUFOです」 大量のUFO。 1億人...
前ページ 「いやね、さっきも言いましたけど、税金が急に値上がったんですよ。あと数ヶ月のうちに払わないと焼かれるようで、蓄えがあまりないもので焦ってるんです」 もうこの際彼が本気なのかどうかはさておいて、彼の愚痴に乗る。「どの界隈も同じですね
前ページ 僕の沈黙を無視し、ナスガキは続ける。「そうですか…… いや、良い商売だと思ったのですが、まだ地球人には早かったようですね……」 少なからず可哀想にも見えてしまったので、僕は少しだけフォローする。「何が早いのかはわかりませんが、料
前ページ 「まぁ大変なのは理解しましたが、宇宙人にもお金が必要なんですね。もっとこう、科学の力で、お金なんか無くとも色々できるのかと思ってました」 何故僕は話を合わせているのだろうと、ふと思ったが、なんだかもう僕の彼に対するスタンスもよくわ
前ページ 僕が少し考えていると、ナスガキは続けた。 「まぁそれだけ宇宙人が集まると、やっぱり社会形成といいますか、地球に住むうえではどうしてもお金が必要なんですよね」 なんだか話が戻ってきた気がした。「なので宇宙人の複製レンタルで商売しよ
前ページ とりあえず僕は聞く。「えっと……ちょっと混乱してはいるんですが、あなたは宇宙人で、以前から地球に住んでいた、ということでよろしいですか?」「そうです。ちなみに産まれも地球です。地球で繁殖した世代ですね」「はぁ……そうですか」 僕
前ページ ショボくれる丸顔を見ていると、何だか少しナスガキが可哀想に思えてきたので、僕は当初より気になっていた話を振ってみる。「いや、というか、それはそもそも本物の宇宙人なんですか?」 僕がそう聞くと、少し沈黙が流れる。 流れる。 暫
前ページ 僕は言う。「ナスガキさん、あのですね。僕は別に話し相手が欲しいわけではないんですよ。ほんのちょっとだけでいい、ちょっとでいいので、世の中に対して何かチョッカイを掛けて、憂さ晴らししたいくらいなんです」「ちなみに言語が異なりますの
前ページ もはや面倒臭くもなってきたのだが、上手く追い払う口実もないので、僕は少し話を促す。 「……ちなみに、宇宙人1人だと何ができるんです?」「宇宙人単体で、ですか…… そうですね、キャトルミューティレーション、あの家畜を拐ったりするや
前ページ 「いや、あのですね。1億人をレンタルしたら、5兆円ですよ、いや合ってます? 計算。いやそんなことより、そんなお金があったら別に地球征服なんかせずとも幸せなうちに暮らせますよ」 話にならない。 騙すのなら、もう少し上手く騙してほし
前ページ 僕はナスガキの丸い顔に向かって聞く。「えぇと、もう宇宙人を貸す、というのがもうよくわからないのですが、5万払えば1週間、宇宙人を借りられて、なんか好き放題できるということですか?」「その通りです」 実に胡散臭い。「いや宇宙人って
前ページ しかし、やっぱり僕はさっぱりわからないので聞いてみる。 「あの、宇宙人を貸す、とは? よく意味がわからないのですが」 ナスガキは僕を見上げながら答える。「そのままの意味です。宇宙人を貸します。おそらく、あなたは宇宙人を呼んで、人
前ページ 途端に僕は恥ずかしくなる。 雑居ビルの屋上に不法侵入した挙げ句、宇宙人でもない男に宇宙人かと聞いてしまった。 よく考えると、意味がわからない。 僕は一体、何をしているのだろう。 少し我に帰ると何故か焦りが出てきて汗が流れる。
前ページ そうして夜空に願い続けてから何日目だろうか。 夜風が少し乾き始め、いつの間にか半袖のシャツのもとに虫も寄ってこなくなった頃合いだったと思う。 僕は日課のように8階建ての雑居ビルの屋上に忍び込み、人知れず大手を広げて宇宙の果てへ
前ページ かいつまんで言えば、良いことが何一つとして無い。 女にはフラれるしギャンブルも勝てないし友達もいない。金も無い。なけなしの金で風俗へ行けば、大抵写真と違う女が出てくる。かろうじて職だけはあるのだが、薄給過ぎて反吐が止まらない。
他作品へ 宇宙人が必要だ。 今の人類には、宇宙人が不可欠なのだ。 つまり危機感が無い。 今も世界のどこかで戦争が行われ、世界のどこかは飢餓で苦しんでいるというのに、この国の連中ときたら、自分だけは関係が無いと思っている。...
前ページ しかし、このままにしておくのも忍びない。 僕はどうしようかと少し考えを巡らせ、声を掛ける。「ナスタニさん、なんかすみません。でも、たぶんもう僕には無理です。大根でダメなら、もう無理です」「おぉぉいマジかよ無責任かよ、余計酷くなっ
前ページ 「いやいや、ちょっと待て、でも鼻はたぶんヤバいって!」「いや大丈夫ですって。祖母が言っていたんです。祖母を疑うんですか?」「いや、そういうわけでは……」 疑わないなら、従うべきだ。 「じゃあちょっとやってみましょうよ。先人の教えに
前ページ 日が暮れるのを待ち、再び墓地へと向かう。 墓地へ着くと、ナスタニさんはまた唸り声を上げながら苦しんでいた。「ナスタニさん、薬、効きませんでしたか」 僕は声を掛ける。 ナスタニさんは呻き声の合間に返事を返してきた。「いや、よく考
前ページ しかし翌日、依頼主から再度連絡が入る。 昨晩、またうるさかったらしい。 僕は少しげんなりする。 どうするべきだろうか。 少し考える。 考えた結果、この際、本当に医者を連れていくしかないと思い、総合病院から町医者、往診対応の.
前ページ 適当な胃薬を購入し、僕は再び墓地に戻る。 相変わらずナスタニさんは唸っていた。「ナスタニさん、薬、買ってきましたよ。飲めます?」「助かる! 礼を言うよ」 腐ったお酒を飲めた以上、薬だって飲めるはず。僕がペットボトルの水と一緒に
前ページ 「あの、どうして痛むのか、わかりますか?」 僕は少し話を聞いてみる。「ちょっと前に、他の墓にお供えしてあったお酒を飲んだら、それから痛む! あれ、腐ってやがったよ、ふざけんなよ!」 わりと自業自得だとは思った。 もう夏場も近く、す
前ページ 「君、俺が見えるんだろ!? だったら頼むから医者を呼んでくれ!」 幽霊はしきりに、がなりたてる。 しかし、僕は困る。 ――医者を連れてきても、幽霊が見えないと、どうしようもない。 そう思ったので、僕は返す。「いや、ちょっと申.
前ページ 夜9時。 幽霊もそろそろ呻く頃合いかと、僕は再び現場へと向かった。 車を依頼主のアパートの横へ止めさせてもらい、僕は墓地へと向かう。 墓地の周辺まで来ると、声が聞こえた。 低く、不気味に這いずり回る、濁音混じりに伸びた震える声
前ページ 現場に入る前に、僕は依頼主と会う約束をしていた。直接、状況を聞いておきたいし、前金も受け取っておきたい。 現場の墓地の前で、夕方に待ち合わせた。 僕が到着すると、既に依頼主と思わしき人物は待っており、見て、僕は驚く。 ――か
前ページ 少し、依頼主とメールでやり取りをした。 会話を重ねると、少なくともまともな人間には思えてくる。 少なくとも文面上では礼儀正しく、腰も低い。 僕はその依頼主が頭のおかしい人間ではないことを理解し、依頼を受けることにした。 メー
前ページ 僕には昔から霊感がある。 霊感というか、幽霊と話が出来る。 僕の祖母も幽霊と話せたらしく、生前は霊媒師を生業にしていたので、もしかしたら遺伝的なものなのかもしれない。 むしろ考えてみれば、どうして今までそっちの道を選ばずに過酷な
他作品へ 「医者を呼んでくれ!」 ……そう言われても、僕も困る。 「なんでもいいから医者を呼べ!」 困惑していると、更に言葉を重ねられた。 しかし僕はどうしたものか、本当に困ってしまう。 とりあえず無視して帰るかと、心は揺らいだ。...
前ページ やがて公園の砂塵は立ち消え、かつてロボットだったものの残骸が姿を現す。 ロボットは負けた。少年達の夢は、ミサイルという非人道的な科学の前にひれ伏した。 タダシはもう、何もかもが嫌になった。 ロボットの残骸の上で1人の老人が右手
前ページ カッコいい。 現れた人型巨大ロボットにタダシは眼を輝かせた。全ての少年がかつて憧れた巨大ロボット。それが今、タダシの目の前に降り立ったのだ。 アパートの3階から見つめるタダシと、人型巨大兵器との目線が重なる。ゆうに10メートル
前ページ 戦車対ロケットランチャー。 勝てるのか、ロケラン老師は。 タダシは先の戦いでの火力に魅せられていた。戦車がいかに堅牢であろうとも、全てを殲滅させる圧倒的な力を、ロケットランチャーに信じた。 いけ、ロケットランチャー、僕らの想
前ページ 初めて見る実物のロケットランチャーに、タダシは興奮していた。今までゲームの世界でしか見たことのないそれがそこにある。それだけでタダシは嬉しくなった。どうせこの2人も戦うのだろうから、ロケットランチャー老師を応援しよう。タダシは老
前ページ 戦うのだろうか。これは流石に無理なのではないか。タダシは老師Aの危機を感じた。 だがそれでも、タダシは格闘術の可能性を信じたかった。槍を前にしても怯まず立ち向かった老師A。逆境にも負けず武器という暗愚な企みを打ち破った老師A。タ
前ページ 老師Aが勝った。 タダシは嬉しかった。老師Bの無念を背負い、武器という残忍な企みを正義が打ち破ったのだ。喜ばずにはいられない。 やがて卑怯老師がよたよたと立ち上がり、老師Aと握手をする。 卑怯者のくせに潔ぎが良い。タダシは心の
前ページ 老師Aは腰を落とし両の拳を胸の前へと持ち上げ、再び構えた。槍を持つ老師もまた腰を落とし、その下から槍の先を老師Aへと向け、戦いの意思を示している。 戦うのだろうか、老師Aは先ほど壮絶な戦いを終えたばかりだというのに。それも、素
前ページ 数秒だろうか、タダシには長く感じたが、少しすると老師Bはゆっくりと起き上がり、老師Aはその側へと歩みを詰める。2人は熱い握手を交わし、抱擁する。 なんて美しいんだろう。 タダシの心は揺れ動いた。 こんなに美しい光景に、結果
前ページ ただ、タダシにはよくわからない。 何故、朝の公園で老人が2人で殴りあっているのか。よくわからなかったが、タダシは少し見守ることにした。彼らの動きはそれ程魅惑的で、かつて少年だった者が等しく目指した最強という言葉を2人の老人が体現
前ページ 白く長い髭。禿げ上がった頭。 この人達は仙人です、と言われれば、迷わず信じてしまうような、そんな外見。老人には似つかわしくない爆裂的な筋肉の量だけが仙人らしさからかけ離れ、違和感を放っている。しかしその鍛え抜かれた肉体に、タダ
他作品へ タダシは困惑していた。 早朝、という程ではないが、目覚まし時計に頼ることなく自然と目を覚ました休日の早い時間。見ていたであろう夢をすぐに忘れ、少し空腹すら感じるような、気持ちの良い寝起きだった。そんな日は真っ先にカーテンを開
前ページ 船は落下速度を抑え、水平飛行に移る。 僕は携帯電話の電波状況を確認し、電話を掛けた。 「……眼科、終わった?」 通話が始まるとほぼ同時に、彼女は言う。 僕は返す。「そうだね、ちょっと時間が掛かったけど、終わったと思う」...
前ページ 自室で必要な荷だけを簡単にまとめ、エレベーターで最下層に降りる。 最下層は緊急脱出用のハッチだけしかなく、エレベーターを降りると、目の前には小型の脱出艇が肩身狭そうに待っていた。 操縦席に潜り込み、タッチパネルへ地球の座標を入
前ページ 「それに」 彼は続ける。「お前がどれだけ何を頑張っても、結果は変わらない。そこは理解と覚悟をしておいたほうがいい」「何もしませんよ、僕は。誰にも言いませんし、逃げもしない。故郷の人に生きて欲しい、それはやっぱり本心です。ただ、皆の
前ページ 僕は続けた。「異星人である僕をどう思うかなんてわかりません。わからないし、興味もない。この先、僕の素性を告白するかどうかも決めていない。でも、彼女は僕を祝いたいと言ってくれたんです、今、僕を。他の星から来たとか、そんな表面上の事
前ページ 彼は新しい煙草を一吸いし、眉間に少し皺を寄せながら煙を吐き出す。気持ち良いのかどうか、表情からではよくわからない。 煙を吐き切ると、彼は続けた。「ということで地球人は殲滅しなければならん。我々が生きるために、だ。例えお前の彼女で
前ページ 「それはわかってますよ。受け入れてくれない以上、殲滅する他ないです。でも何ででしょうね? 皆、良い人なのに」「まぁ、良い人ばかりだとは俺も思うよ。でも個々人では良い人だけど、彼等は群れると妙に他集団を毛嫌う傾向があるって、わかった
前ページ 「いや、まぁ、姿形はほぼ同じだからさ、そういうこともあるのかもしれないけどさ……でも理性というものがさ、許さないと思うんだよ、俺はさ、普通」 彼は狼狽している。でも、別にそんなに変な事だとは、僕は思わない。「でも、祝ってくれたんで
前ページ 「いやもう無理だけど、何で? 何かあったの?」 彼は僕に聞いてくる。一応、理由くらいは聞いてくれる時点で、やっぱり悪い人ではない。悪い人ではないが、もう少しくらい融通を効かせてくれたなら、もっと悪い人ではない。「いや、彼女がですね
前ページ エレベーターを降り、廊下の突き当たりの喫煙室に進むと、やはり彼はいた。ガラス戸の向こうで、旨そうに煙を吐き出している姿が見える。 彼は灰皿の前で天井を見つめ、だらしなく開いた大口から白い煙を立ち上ぼらせている。その至福そうな姿を
前ページ しかし、どうしたものだろうか。 まさか今日を僕の誕生日にしていたとは、完全に忘れていた。暫く会えていないこともあり、少し怒らせてしまっている気もする。でも、それでも祝ってくれるというなら、やっぱり祝ってもらったほうがいい気もし
他作品へ 「今どこにいるの?」 ……どう答えるべきだろう。 電話口で、僕は悩んでいた。 「歯医者だよ」 少し考えた結果、とりあえず僕は嘘をつくことにする。 「……もう少し考えて嘘をついてよ。歯医者で3日もいなくなるなん...
前ページ 息子は続ける。「もう少しすると、ヘロドトスに所縁のある土地の遺跡から、古代のウィルスが付着した遺物が掘り起こされてインフェクションスプレッドするんだけど、ヘロドトスもインフェクションスプレッドも何だったのかが思い出せないんだ」
前ページ 「アポロエピクリオスって何処だっけ?」 ……だから何なんだそれは!? 何処も何も、僕はそれが何なのかもわからない。 こいつは本当に僕の知らない次元へと旅立ってしまっている。息子と僕の立つステージが違いすぎて、もう僕は彼を息子と認識
前ページ 息子が中々に頭の悪いことを口走っている。 しかし安心した。やはり、子供はこうでなくては困る。もしかしたらゲームや漫画のやり過ぎで、空想と現実の区別がつかなくなっているのかもしれないが、これでいいんだ。子供はわけの解らない頭のおか
前ページ とにかく調べる時間を稼ぐ。 となると、僕の返事はこれしかない。「ほう……お前もそんなことに興味を持つ年になったか。後でゆっくり語ってあげるから、取り敢えず風呂にでも入っておいで」 ばっちり決まった。 文句が言えるものなら言ってみ
前ページ 「あのさ、お父さん」 息子は再び、僕を名指しで声を掛けてくる。僕は身震いした。「インフェクションスプレッドって何だっけ?」 ……何だそれは? 天才の疑問に答えられる知識など、僕にあろうはずがない。 僕は焦って妻を探す。少し離れたソ
前ページ くだらないこと、とか言ってしまった。 全然くだらないことではなかった。むしろその興味を伸ばしてあげたい。やってしまった。 いや、しかし、これは世界史の人物だ。何故10歳の子供が世界史の用語を知っていたのか。中学か高校の知識では
前ページ 少しだけ考える。 息子は『何だっけ?』と言った。 過去形だった。 『ヘロドトスって何?』ではない。 つまりは、過去に息子はヘロドトスを経験している、ということだ。既にヘロドトスは通った道なのだが、何かのきっかけで思い出しそうで
前ページ 魔王が少し考えていると、秘書が急かしてくる。「でも、もうそこまで勇者は来てますよ。早く決めてください」 魔王は急かされて、少し苛立つ。「と言われても……大事なことなんだから少し迷わせてよ。ごめんだけど、ちょっと待つよう勇者に伝え
他作品へ 「ヘロドトスって何だっけ?」 ……何だっけ? 夕方過ぎの家族の 団欒《だんらん》。エビフライを旨そうに頬張りながら、10歳になる息子がそんなことを聞くものだから、僕は少し口ごもった。 ……ヘロドトス。聞いたことはある気がする
前ページ ミサイルランチャーを担いだ勇姿を鏡に写し、魔王がうっとりとしていると、何だか玉座の間の外が騒がしい。魔物達が騒いでいるようだ。「何かあったのかな……ごめんだけど、ちょっと見てきてよ」「かしこまりました、勇者様」 魔王は秘書に様子
前ページ 「じゃあミサイルランチャーとかどうですか? ミサイルランチャーなら簡単なレクチャーを受ければ、撃つだけで強いですし、純粋な殺意の塊ですよ。さすがの大魔王もミサイル当たれば死ぬでしょ」「そうだね……たぶん大魔王もミサイルなら粉々にな
前ページ 「じゃあ、やっぱり大魔王をぶっ飛ばしてくださいよ、そうすれば自然と私の格付けも上がります」 秘書は本気になってきたようだ。そんなに自分の立ち位置が気になるものだろうか。意外と自尊心が高い秘書の一面に、魔王は少したじろぐ。「でも、そ
前ページ 十数分後、魔王が玉座の間に戻ると、待っていた秘書が声を掛けてくる。「どうでした?」「ミサイルランチャーを見せつけたら、ビビって帰っていった。やっぱり凄いね、ミサイルランチャー」「それは良かったです。でも勇者を倒してしまった以上、
前ページ 「じゃあ暫くは勇者が来ないってこと?」 魔王は溜め息混じりに秘書に確認する。「まぁ、そうですね」「じゃあ僕の活躍の場は、どこにあるんだろう?」 魔王は相談した。秘書は少し考えてから答える。「そうですね……アレはどうですか? たまに
前ページ 「カッコいい散り様ってどんなのですか?」 欠伸を噛み殺した以上、おそらく興味が無いであろうことは魔王にも容易に想像できたが、せっかく聞いてくれたので魔王は答える。「そうだな……仁王立ちで往生するとか……こ、こいつ……立ったまま死ん
前ページ 「何で勇者は来ないんだろう……」 魔王は呟くように秘書に投げ掛けた。「逆に何で来てほしいんですか? 来ないほうが楽でいいじゃないですか」「いや、だって暇じゃない?」 秘書の疑問に魔王は返答した。「まぁ、貧乏暇なしって言いますからね
魔王は焦っていた。 大抵の地図では端に描かれている世界の果て。 魔王の居城の最深部に位置する玉座の間で、今日も魔王は待っていた。 人類に対して侵攻を始め、5年。世界征服の計画は万事滞りなく進んでいた。魔王の配下の魔物達は次々に人間ども
前ページ バンダル・スリブ・ガワンとバンダル・スリ・ブガワン。 この違いは大きい。 語感が全然違う。 となると、もう僕はバンダル・スリ・ブガワンに失望するしかない。 ……いやでも、ブガワンはブガワンでアリかもしれない。むしろブガワンだけ
前ページ よくわからないが、取り敢えず声に出す。 バンダルスリブガワン。 バンダルスリブガワン。 バンダルスリブガワン。 よくわからないが、癖になるかもしれない。 もはや何なのかは全くわからないけど、とにかく響...
前ページ 声に出して言ってみる。 リフレクソロジー。 リフレクソロジー。 リフレクソロジー。 カッコ良すぎる。 これはもう、何らかの特殊能力の名ではないだろうか。もはや哲学的な響きすら感じる。 ...
エビフライやカキフライにタルタルソースをかけるべきか、ウスターソースをかけるべきか、暫く悩むこと、よくあると思います。 どちらがより美味しくいただけるのか、わりと永遠の課題だとは思うのですが、それにしてもタルタルソースって美味しいですよ
前ページ もう少し調べたら画像も出てきた。 クロワッサンを丸くして、より甘く仕上げたもののように見える。 ――いや、これ、もうパンだ。 僕は愕然とする。 見る限りパンとも一概には断じることもできないが、雰囲気を察する限り、要は甘いパンだ。
こんにちは なのか こんばんは なのか、あるいは おはようございます なのか分からず恐縮ですが、とにかくご来訪いただき、ありがとうございます。 「ゆるさない」と申します。 本サイトは小説というか雑記というか、なんだかそういう文章を載せてい
こちらから投稿作品の初ページへリンクしています。 ・大まかにして朗らかな見解を優しさと共に ・想いを繋げ、カムチャッカ
前ページ 言葉に出して言ってみる。 クイニーアマン。 クイニーアマン。 クイニーアマン。 ヤバいなこれは。 クイニーアマンが一体どんなものかは知らないが、何かカッコいいロボットとかの名前だろうか。クイニーアマンの前に適当な四字熟語を付けてお
前ページ 恥ずかしい。 紅茶の名前は全部産地の名前だとばかり思い込んでいたために、僕はさっき『紅茶の本場、オレンジ・ペコー』なんて心の中で呟いてしまった。 冷静に考えたら、そんなメルヘンな地名がこの殺伐とした現代社会にあるはずがないのに、深
前ページ 少し連呼してみる。 オレンジ・ペコー。 オレンジ・ペコー。 セカンド・フラッシュ。 オレンジ・ペコー。 こいつは良い。 貴族的な響きを感じる。もしくは歴戦の競走馬の名に連なっていてもおかしくはない雰囲気だ。これはもう名前だけで有馬
前ページ 僕は少し考える。 ……さっき『日本有数の』とか思ってしまった気がする。 しかし、そもそも日本ではなかったようだ。 言葉の響きは北海道あたりのそれなので、僕はてっきり北海道のどこかだと思い込んでいたわけで。 ――なんだか恥ずかしく
カムチャッカ半島。 ……なんて響きの良い言葉なんだろう。 休日の午後、僕は誰に知られる事もなく、自室で一人、心ときめいていた。 カムチャッカ半島が一体どういう所かなんて、全く持って知らない。 でも、そんな些末なことなんてどうでもいいくらい
前ページ 次に意識が戻った時には、既に部屋の中に日が射し込んでいた。寝起きの頭でぼんやりと部屋を眺めると、友人はテレビを観ながら惚けている。眠れたかどうか確認すると、あまり眠れなかったと彼は答えた。コタツしか無くて申し訳なかった、と伝えると
前ページ そろそろ寝付けるかもしれないし、もう無理かもしれない。でも僕が諦めたらきっと世の中はとんでもないことになるし、世の中がとんでもないことになったら僕もとんでもないことになるかもしれない。僕がとんでもないことになったらもしかしたら明日
前ページ 背広のボタンを引きちぎると絶対に宝くじが当たるから何とかして上司の席の後ろに加湿器を設置してその中でミドリガメを飼わなければならない気がする。 喉元の10cm程上の辺りがそんなことを考えだした頃、何だか清らかな音楽のようなものが耳
前ページ 会社の入口前の百葉箱から2匹のドジョウが孵化したので車が合体して女子高生が銀行強盗を企み風呂の栓が外れてしまうかもしれない。 そんな事を真剣に悩みだした頃、何かが倒れる濁音に再び引き起こされそうになるが、聞き慣れた環境音にいちいち
前ページ「よくあるってお前……これ金縛りってやつだわ……どうしよう……」 何だか彼は焦っている。だが別に大したことじゃない。そんな些末なことにせっかく寝かけていた頭を覚まされたことに少し苛立つ。「大丈夫だよ……俺は3日に1回は掛かってるよ、
前ページ 冷蔵庫にあった豆腐とキムチで缶ビールを2本ずつ空けながら久々に2人でテレビゲームに興じたあと、日付が変わって暫く位の時間に、どちらとも無くそろそろ寝ようという流れとなった。「布団が1つしかないのでコタツで寝てくれ、すまんな」 寒さ
「今晩泊めて欲しい」 嫌だ、と思った。 気分の良い金曜日の夜更け。休日前の最高潮の気分に合わせ酒盛りを目論んでいた頃、学生時代の友人が唐突に訪ねてきた。 近くに住んでいることもあり、彼とは月に1度は顔を合わせる。そのため特段として郷愁心が刺
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前ページ 家に着き、匂い付きの消しゴムをテーブルに並べて眺めてみる。 ……何をしているんだろう。 冷静に考えたら、これは食べ物じゃない、消しゴムだ。 どうしろと言うのだろうか。 どうしようもないので、暫く惚けた。 少し間を...
前ページ 3回。 3回だ。 3回も僕は裏切られた。 カレーにもラーメンにも鉄人にも裏切られた。 何なんだ。 4時頃に飯を食べたいと思うことが、そんなに罪なのか? 昼飯の時間も惜しんでセコセコ働い...
前ページ 確かこの先を曲がると定食屋があったはず。 そこでいい。 わりともう、何でもいい。 腹を満たすことを優先しだした事に少なからず本末転倒感は感じたが、そもそも少し早く仕事が終わっただけで別に何か良い事があったわけでも何かの記念日で
前ページ 結局、この世で一番旨いのはラーメンなんじゃないだろうか。 旨くない麺類なんてこの世に存在しないし、そんな麺類の中での圧倒的覇者がラーメンである以上、最高の夕食を望むのであればラーメンこそが常道な気がする。 ウナギだのステーキだ
前ページ 立ち止まって少し考える。 ウナギとカレー。 高いウナギと安いカレー。 なんだかんだでお財布に優しい方がいい。 良い匂い。 すごく良い匂い。 あともう空腹が限界だ。 空腹時にカレーの匂いを嗅がせることは軽犯罪...
前ページ 僕は道を歩きながら、更に考える。 ウナギを食べる。そこは揺るがない。となると今度はどう食べるかが問題となる。スーパーマーケットで買ってくるか、それともウナギ屋へ食べに行くか。 やはりここはウナギ屋へ出向き極上のウナギを召したい
前ページ いや、この際、金銭的な懸念はどうでもいい。お金なんかを出し惜しみをしていたら最高の夕食など程遠いし、そもそも金額的な高低は僕の欲求には何の関係も無いのだ。食べたいものがたまたま贅沢なものだった、ただそれだけの事で。 問題は、ウ
他作品へ ウナギなのかステーキなのか。 2つを同時に食べられない僕は、なんて不自由なんだろう。 日が少しだけ傾きだした彼岸の頃。秋風が静かに土の匂いを運んでくる。 どういうわけか仕事が昼過ぎに片付き、僕は早めの帰宅を許された。特に何か
前ページ 「あの、ナスガキさん」 彼の愚痴の合間を縫って、僕は切り出す。「はい?」「地球征服には何が必要なんでしたっけ?」 今一度、確認をする。「さっきも言いましたが、約1億の宇宙人と、大量のUFOです」 大量のUFO。 1億人...
前ページ 「いやね、さっきも言いましたけど、税金が急に値上がったんですよ。あと数ヶ月のうちに払わないと焼かれるようで、蓄えがあまりないもので焦ってるんです」 もうこの際彼が本気なのかどうかはさておいて、彼の愚痴に乗る。「どの界隈も同じですね
前ページ 僕の沈黙を無視し、ナスガキは続ける。「そうですか…… いや、良い商売だと思ったのですが、まだ地球人には早かったようですね……」 少なからず可哀想にも見えてしまったので、僕は少しだけフォローする。「何が早いのかはわかりませんが、料
前ページ 「まぁ大変なのは理解しましたが、宇宙人にもお金が必要なんですね。もっとこう、科学の力で、お金なんか無くとも色々できるのかと思ってました」 何故僕は話を合わせているのだろうと、ふと思ったが、なんだかもう僕の彼に対するスタンスもよくわ
前ページ 僕が少し考えていると、ナスガキは続けた。 「まぁそれだけ宇宙人が集まると、やっぱり社会形成といいますか、地球に住むうえではどうしてもお金が必要なんですよね」 なんだか話が戻ってきた気がした。「なので宇宙人の複製レンタルで商売しよ
前ページ とりあえず僕は聞く。「えっと……ちょっと混乱してはいるんですが、あなたは宇宙人で、以前から地球に住んでいた、ということでよろしいですか?」「そうです。ちなみに産まれも地球です。地球で繁殖した世代ですね」「はぁ……そうですか」 僕
前ページ ショボくれる丸顔を見ていると、何だか少しナスガキが可哀想に思えてきたので、僕は当初より気になっていた話を振ってみる。「いや、というか、それはそもそも本物の宇宙人なんですか?」 僕がそう聞くと、少し沈黙が流れる。 流れる。 暫
前ページ 僕は言う。「ナスガキさん、あのですね。僕は別に話し相手が欲しいわけではないんですよ。ほんのちょっとだけでいい、ちょっとでいいので、世の中に対して何かチョッカイを掛けて、憂さ晴らししたいくらいなんです」「ちなみに言語が異なりますの
前ページ もはや面倒臭くもなってきたのだが、上手く追い払う口実もないので、僕は少し話を促す。 「……ちなみに、宇宙人1人だと何ができるんです?」「宇宙人単体で、ですか…… そうですね、キャトルミューティレーション、あの家畜を拐ったりするや
前ページ 「いや、あのですね。1億人をレンタルしたら、5兆円ですよ、いや合ってます? 計算。いやそんなことより、そんなお金があったら別に地球征服なんかせずとも幸せなうちに暮らせますよ」 話にならない。 騙すのなら、もう少し上手く騙してほし
前ページ 僕はナスガキの丸い顔に向かって聞く。「えぇと、もう宇宙人を貸す、というのがもうよくわからないのですが、5万払えば1週間、宇宙人を借りられて、なんか好き放題できるということですか?」「その通りです」 実に胡散臭い。「いや宇宙人って
前ページ しかし、やっぱり僕はさっぱりわからないので聞いてみる。 「あの、宇宙人を貸す、とは? よく意味がわからないのですが」 ナスガキは僕を見上げながら答える。「そのままの意味です。宇宙人を貸します。おそらく、あなたは宇宙人を呼んで、人
前ページ 家に着き、匂い付きの消しゴムをテーブルに並べて眺めてみる。 ……何をしているんだろう。 冷静に考えたら、これは食べ物じゃない、消しゴムだ。 どうしろと言うのだろうか。 どうしようもないので、暫く惚けた。 少し間を...
前ページ 3回。 3回だ。 3回も僕は裏切られた。 カレーにもラーメンにも鉄人にも裏切られた。 何なんだ。 4時頃に飯を食べたいと思うことが、そんなに罪なのか? 昼飯の時間も惜しんでセコセコ働い...
前ページ 確かこの先を曲がると定食屋があったはず。 そこでいい。 わりともう、何でもいい。 腹を満たすことを優先しだした事に少なからず本末転倒感は感じたが、そもそも少し早く仕事が終わっただけで別に何か良い事があったわけでも何かの記念日で
前ページ 結局、この世で一番旨いのはラーメンなんじゃないだろうか。 旨くない麺類なんてこの世に存在しないし、そんな麺類の中での圧倒的覇者がラーメンである以上、最高の夕食を望むのであればラーメンこそが常道な気がする。 ウナギだのステーキだ
前ページ 立ち止まって少し考える。 ウナギとカレー。 高いウナギと安いカレー。 なんだかんだでお財布に優しい方がいい。 良い匂い。 すごく良い匂い。 あともう空腹が限界だ。 空腹時にカレーの匂いを嗅がせることは軽犯罪...
前ページ 僕は道を歩きながら、更に考える。 ウナギを食べる。そこは揺るがない。となると今度はどう食べるかが問題となる。スーパーマーケットで買ってくるか、それともウナギ屋へ食べに行くか。 やはりここはウナギ屋へ出向き極上のウナギを召したい
前ページ いや、この際、金銭的な懸念はどうでもいい。お金なんかを出し惜しみをしていたら最高の夕食など程遠いし、そもそも金額的な高低は僕の欲求には何の関係も無いのだ。食べたいものがたまたま贅沢なものだった、ただそれだけの事で。 問題は、ウ
他作品へ ウナギなのかステーキなのか。 2つを同時に食べられない僕は、なんて不自由なんだろう。 日が少しだけ傾きだした彼岸の頃。秋風が静かに土の匂いを運んでくる。 どういうわけか仕事が昼過ぎに片付き、僕は早めの帰宅を許された。特に何か
前ページ 「あの、ナスガキさん」 彼の愚痴の合間を縫って、僕は切り出す。「はい?」「地球征服には何が必要なんでしたっけ?」 今一度、確認をする。「さっきも言いましたが、約1億の宇宙人と、大量のUFOです」 大量のUFO。 1億人...
前ページ 「いやね、さっきも言いましたけど、税金が急に値上がったんですよ。あと数ヶ月のうちに払わないと焼かれるようで、蓄えがあまりないもので焦ってるんです」 もうこの際彼が本気なのかどうかはさておいて、彼の愚痴に乗る。「どの界隈も同じですね
前ページ 僕の沈黙を無視し、ナスガキは続ける。「そうですか…… いや、良い商売だと思ったのですが、まだ地球人には早かったようですね……」 少なからず可哀想にも見えてしまったので、僕は少しだけフォローする。「何が早いのかはわかりませんが、料
前ページ 「まぁ大変なのは理解しましたが、宇宙人にもお金が必要なんですね。もっとこう、科学の力で、お金なんか無くとも色々できるのかと思ってました」 何故僕は話を合わせているのだろうと、ふと思ったが、なんだかもう僕の彼に対するスタンスもよくわ
前ページ 僕が少し考えていると、ナスガキは続けた。 「まぁそれだけ宇宙人が集まると、やっぱり社会形成といいますか、地球に住むうえではどうしてもお金が必要なんですよね」 なんだか話が戻ってきた気がした。「なので宇宙人の複製レンタルで商売しよ
前ページ とりあえず僕は聞く。「えっと……ちょっと混乱してはいるんですが、あなたは宇宙人で、以前から地球に住んでいた、ということでよろしいですか?」「そうです。ちなみに産まれも地球です。地球で繁殖した世代ですね」「はぁ……そうですか」 僕
前ページ ショボくれる丸顔を見ていると、何だか少しナスガキが可哀想に思えてきたので、僕は当初より気になっていた話を振ってみる。「いや、というか、それはそもそも本物の宇宙人なんですか?」 僕がそう聞くと、少し沈黙が流れる。 流れる。 暫
前ページ 僕は言う。「ナスガキさん、あのですね。僕は別に話し相手が欲しいわけではないんですよ。ほんのちょっとだけでいい、ちょっとでいいので、世の中に対して何かチョッカイを掛けて、憂さ晴らししたいくらいなんです」「ちなみに言語が異なりますの
前ページ もはや面倒臭くもなってきたのだが、上手く追い払う口実もないので、僕は少し話を促す。 「……ちなみに、宇宙人1人だと何ができるんです?」「宇宙人単体で、ですか…… そうですね、キャトルミューティレーション、あの家畜を拐ったりするや
前ページ 「いや、あのですね。1億人をレンタルしたら、5兆円ですよ、いや合ってます? 計算。いやそんなことより、そんなお金があったら別に地球征服なんかせずとも幸せなうちに暮らせますよ」 話にならない。 騙すのなら、もう少し上手く騙してほし
前ページ 僕はナスガキの丸い顔に向かって聞く。「えぇと、もう宇宙人を貸す、というのがもうよくわからないのですが、5万払えば1週間、宇宙人を借りられて、なんか好き放題できるということですか?」「その通りです」 実に胡散臭い。「いや宇宙人って
前ページ しかし、やっぱり僕はさっぱりわからないので聞いてみる。 「あの、宇宙人を貸す、とは? よく意味がわからないのですが」 ナスガキは僕を見上げながら答える。「そのままの意味です。宇宙人を貸します。おそらく、あなたは宇宙人を呼んで、人