「この辺りでいいだろう」 俺は砂漠の真ん中で立ち止まって振り向いた。「弱っちい神原かんばらがわざわざ一対三で戦おうなんて、頭おかしいんじゃねえのか? ボコってやるよ!」 権藤ごんどうの言う通り、俺は砂漠の熱で頭が沸騰しているのかもしれない。
「安置室」は、管理人の標葉実則が執筆した小説を公開するサイトです。ダークファンタジーやホラーなどのジャンルを中心に執筆しています。エログロオカルトが好きな読者に向けて刺激的な表現をご提供します。
「この辺りでいいだろう」 俺は砂漠の真ん中で立ち止まって振り向いた。「弱っちい神原かんばらがわざわざ一対三で戦おうなんて、頭おかしいんじゃねえのか? ボコってやるよ!」 権藤ごんどうの言う通り、俺は砂漠の熱で頭が沸騰しているのかもしれない。
西に傾きつつある太陽に向かって、俺たちは三十分以上歩き続けた。 恥ずかしい縛られ方をした川口かわぐち先輩の案内でたどり着いたのは、巨大な柱が何本も立ち並んだ神殿跡だった。「バットを構えろ!」 五十嵐いがらし先生が叫んだ直後――。 野球ボー
カナに案内された部屋は広かった。中央の石造りのテーブルを囲んで、ダークエルフ三人とリザードマン三人が座っていた。ダークエルフの一人は東城とうじょう先輩で、リザードマンの一人は五十嵐いがらし先生だ。残り二人のリザードマンのうち一人は体を縛ら
遺跡の外ではダークエルフとリザードマンがニワトリの群れと戦っていた。バットでニワトリをぶっ叩いたり、吹っ飛ばしたり――スポーツ用品の使い方が明らかにおかしいが、そんなことを言っている場合ではなさそうだ。 リザードマンのユニフォームは黒と白
バジリスクの死骸から抜き取ったロングソードはボロボロだった。「これじゃあ、もう使い物にならないな。どうしたらいい、リュディ?」「こちらの世界の金属はバジリスクの体液に耐えられないのでしょう。それならば、アトラム界の素材を使って、新しい装備
「助けてっ!」 ドラクウァ砂漠を一人の女の子が走って来る。 輝く金髪、小麦色の肌、日本人離れした目鼻立ち、とんがった耳、しかし――。 この子が着ている服は見たことがあるぞ。赤と白を基調としたユニフォーム――楢華高校ソフトボール部のユニフォー
竹刀が宙を舞う。 勝負はついた。元村もとむら先輩の竹刀が弾き飛ばされたのだ。 俺とミサキは二人のやり取りを見守るしかなかった。「やっぱり多部たべは強いなぁ。俺じゃあ、勝てそうにもねえや」 元村先輩がニヤリとした。しかし、獰猛さは消え失せて
「二階の生物実験室へ来るがよい」 魔女の声が響き渡った。 二階への階段前に群がっていたウェアラットたちが一斉に逃げ出す。もはや俺たちのことは眼中にないのか、散り散りになって、物理実験室や地学実験室へ入っていった。 ネズミ退治は消耗戦だった。
「我が住処へようこそ」 理科棟に入った俺たちの頭上に魔女の声が降り注いだ。 歓迎されている……のか? オレンジ色の火の玉がいくつも浮遊し、廊下をぼんやり照らす。 奥から人影がぞろぞろ近づいてきた。 チュウチュウ……チュウチュウ……。 二足歩
「七瀬ななせ先輩と神原かんばら君は外の様子を見てきましたよね? 校庭だった場所はドラクウァ砂漠になってしまいました。砂漠には、あらゆる食べ物を穢けがす魔王の呪いがかかっています」 俺とミサキは多部たべ先輩と向かい合って座り、先輩の話に耳を傾
昇降口を出るとそこは見慣れた校庭だった――。 そんな「当たり前」がまたしてもぶっ壊れることは覚悟していた。……が、覚悟が足りなかった。 校舎の前に広がっているのは広大な砂漠だった。 校庭に点在していた照明は消え失せ、唯一の光源は月明かりだ
七瀬ななせ先輩がこちらに歩いてきて、手に持っていたものを放り投げた。「私の方は終わったわ。花守はなもりさんはこうなったわよ」 俺の前に転がったのは――。 凍り付いたミサキの頭! 俺は地面に手と膝を突いてゲエゲエ吐いた。黄色くて酸っぱい液体
「気を付けてください。これで終わりではありません。他のヴァンパイアの視線を感じます」「そんなこと言われなくてもわかっているよ、おばさん。さっきからず~っと見られているよね」 俺だけが視線に気づいていなかったらしい。冷汗が噴き出した。「やはり
「机の上に乗るなっ!」「三浦みうら先生も今、机の上に乗っているんじゃね?」「生徒の分際で、先生に口答えするなっ! おまえらは黙って私の言うことに従っていればいいんだよ!」 俺の指摘で三浦はさらにヒートアップした。 二十代の三浦は生徒たちから
「やっぱり職員室に入るときは緊張するな……」「そう? あたし、全然緊張しないんだけど。いっつも職員室に呼び出されているし」「それは君が……」 俺は「問題児だからだろ?」という言葉を飲み込んだ。「あたしが何だっていうのよ? そんなことより、さ
ズシャッ! ロングソードを握る手に、肉と骨をぶった切る衝撃が伝わってきた。 ゾンビの首が俺の足元に転がった。 露わになった歯茎、崩れ落ちて穴だけになった鼻、飛び出した眼球――ボロボロに朽ちかけた顔が俺を見上げている。 首無しの胴体はその場
「解毒できないのか?」「まずはアルラウネを倒すことですね」 ぼやける視界に飛び込んできたものがあった。廊下の隅に落ちているライターだ。こそこそタバコを吸っていた谷中やなかの愛用品が、こんなところに――。「リュディ、火があれば何とかできるんだ
「ねえ、キスしない?」 教室のドアを開けた俺を花守はなもりがいきなり誘ってきた。 花守は、俺が谷中やなかを倒し後教室へ入ってくるのを予想していたのか? 廊下とは違って教室は明るかった。 机の上に座って、わざとらしく足を組み直す。丈の短いスカ
「危ないから、教室の中にいろ」 俺の言葉を聞いた花守はなもりはコクンと頷いて、近くのドアから教室内に入った。 ここで逃げるわけにはいかない――。 ドアが閉まる音を聞きながら考える。 俺が逃げれば、花守が危険にさらされる。勇者がパシリから逃げ
「テルはだいぶモンスターを倒しましたから、かなり強くなったと思いますよ」「俺もそう思う。今までの俺とは違う」 時間はかかったが、俺は一階にたどり着いた。ここに来るまでにコボルトなら一撃で殺せるようになった。コボルトとの戦いはもはやただの作業
「ゴグォッ……」 コボルトが階段を転がり落ちていく。胸の傷から血を噴き上げながら。 グキッ! 硬いものが折れる音が響いた。 階段を下りた俺は、首が直角に折れたコボルトの死体を確認した。「まだ三階か……」 ここまでたどり着くのに随分時間がかか
屋上からの階段を降りるとそこは見慣れた校舎内の廊下だった――。 そんな「当たり前」がぶっ壊れた。 俺が半年間通った楢華ならか高校の校舎内って、こんなんだったっけ? 教室のドアや窓はあるし、白い床や壁も学校のものだが、何かが違う。 廊下の突
「それで、えっと、精霊様……」「私の名前はリュディヴィーヌです。リュディと呼んでください」「あっ、はい、リュディ様……」「気色悪いので、『様』は要らないです」「じゃあ、リュディ、さっき君が話していたユウシャとかテンイとか、よくわかんなかった
「この世界に俺の居場所は無かった」 生まれてから十五年間、公衆便所の床にこびりついたウンコのような人生だった。 みんなから嫌われ、バカにされる存在――それが神原輝道かんばらてるみち。 言いたいことを言えず、嫌なことに抵抗できず、もう何もかも
「さすが勇者です」 精霊が俺を優しく包み込んだ。軟らかくて暖かな光が全身の傷を癒していく。 ともに戦ってきた仲間――いや、この女とはもっと強い絆で結ばれている。肉体同士の交渉が不可能なだけだ。 街はどこもかしこもいかれてしまった。学校も公園
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「この辺りでいいだろう」 俺は砂漠の真ん中で立ち止まって振り向いた。「弱っちい神原かんばらがわざわざ一対三で戦おうなんて、頭おかしいんじゃねえのか? ボコってやるよ!」 権藤ごんどうの言う通り、俺は砂漠の熱で頭が沸騰しているのかもしれない。
西に傾きつつある太陽に向かって、俺たちは三十分以上歩き続けた。 恥ずかしい縛られ方をした川口かわぐち先輩の案内でたどり着いたのは、巨大な柱が何本も立ち並んだ神殿跡だった。「バットを構えろ!」 五十嵐いがらし先生が叫んだ直後――。 野球ボー
カナに案内された部屋は広かった。中央の石造りのテーブルを囲んで、ダークエルフ三人とリザードマン三人が座っていた。ダークエルフの一人は東城とうじょう先輩で、リザードマンの一人は五十嵐いがらし先生だ。残り二人のリザードマンのうち一人は体を縛ら
遺跡の外ではダークエルフとリザードマンがニワトリの群れと戦っていた。バットでニワトリをぶっ叩いたり、吹っ飛ばしたり――スポーツ用品の使い方が明らかにおかしいが、そんなことを言っている場合ではなさそうだ。 リザードマンのユニフォームは黒と白
バジリスクの死骸から抜き取ったロングソードはボロボロだった。「これじゃあ、もう使い物にならないな。どうしたらいい、リュディ?」「こちらの世界の金属はバジリスクの体液に耐えられないのでしょう。それならば、アトラム界の素材を使って、新しい装備
「助けてっ!」 ドラクウァ砂漠を一人の女の子が走って来る。 輝く金髪、小麦色の肌、日本人離れした目鼻立ち、とんがった耳、しかし――。 この子が着ている服は見たことがあるぞ。赤と白を基調としたユニフォーム――楢華高校ソフトボール部のユニフォー
竹刀が宙を舞う。 勝負はついた。元村もとむら先輩の竹刀が弾き飛ばされたのだ。 俺とミサキは二人のやり取りを見守るしかなかった。「やっぱり多部たべは強いなぁ。俺じゃあ、勝てそうにもねえや」 元村先輩がニヤリとした。しかし、獰猛さは消え失せて
「二階の生物実験室へ来るがよい」 魔女の声が響き渡った。 二階への階段前に群がっていたウェアラットたちが一斉に逃げ出す。もはや俺たちのことは眼中にないのか、散り散りになって、物理実験室や地学実験室へ入っていった。 ネズミ退治は消耗戦だった。
「我が住処へようこそ」 理科棟に入った俺たちの頭上に魔女の声が降り注いだ。 歓迎されている……のか? オレンジ色の火の玉がいくつも浮遊し、廊下をぼんやり照らす。 奥から人影がぞろぞろ近づいてきた。 チュウチュウ……チュウチュウ……。 二足歩
「七瀬ななせ先輩と神原かんばら君は外の様子を見てきましたよね? 校庭だった場所はドラクウァ砂漠になってしまいました。砂漠には、あらゆる食べ物を穢けがす魔王の呪いがかかっています」 俺とミサキは多部たべ先輩と向かい合って座り、先輩の話に耳を傾
昇降口を出るとそこは見慣れた校庭だった――。 そんな「当たり前」がまたしてもぶっ壊れることは覚悟していた。……が、覚悟が足りなかった。 校舎の前に広がっているのは広大な砂漠だった。 校庭に点在していた照明は消え失せ、唯一の光源は月明かりだ
七瀬ななせ先輩がこちらに歩いてきて、手に持っていたものを放り投げた。「私の方は終わったわ。花守はなもりさんはこうなったわよ」 俺の前に転がったのは――。 凍り付いたミサキの頭! 俺は地面に手と膝を突いてゲエゲエ吐いた。黄色くて酸っぱい液体
「気を付けてください。これで終わりではありません。他のヴァンパイアの視線を感じます」「そんなこと言われなくてもわかっているよ、おばさん。さっきからず~っと見られているよね」 俺だけが視線に気づいていなかったらしい。冷汗が噴き出した。「やはり
「机の上に乗るなっ!」「三浦みうら先生も今、机の上に乗っているんじゃね?」「生徒の分際で、先生に口答えするなっ! おまえらは黙って私の言うことに従っていればいいんだよ!」 俺の指摘で三浦はさらにヒートアップした。 二十代の三浦は生徒たちから
「やっぱり職員室に入るときは緊張するな……」「そう? あたし、全然緊張しないんだけど。いっつも職員室に呼び出されているし」「それは君が……」 俺は「問題児だからだろ?」という言葉を飲み込んだ。「あたしが何だっていうのよ? そんなことより、さ
ズシャッ! ロングソードを握る手に、肉と骨をぶった切る衝撃が伝わってきた。 ゾンビの首が俺の足元に転がった。 露わになった歯茎、崩れ落ちて穴だけになった鼻、飛び出した眼球――ボロボロに朽ちかけた顔が俺を見上げている。 首無しの胴体はその場
「解毒できないのか?」「まずはアルラウネを倒すことですね」 ぼやける視界に飛び込んできたものがあった。廊下の隅に落ちているライターだ。こそこそタバコを吸っていた谷中やなかの愛用品が、こんなところに――。「リュディ、火があれば何とかできるんだ
「ねえ、キスしない?」 教室のドアを開けた俺を花守はなもりがいきなり誘ってきた。 花守は、俺が谷中やなかを倒し後教室へ入ってくるのを予想していたのか? 廊下とは違って教室は明るかった。 机の上に座って、わざとらしく足を組み直す。丈の短いスカ
「危ないから、教室の中にいろ」 俺の言葉を聞いた花守はなもりはコクンと頷いて、近くのドアから教室内に入った。 ここで逃げるわけにはいかない――。 ドアが閉まる音を聞きながら考える。 俺が逃げれば、花守が危険にさらされる。勇者がパシリから逃げ
「テルはだいぶモンスターを倒しましたから、かなり強くなったと思いますよ」「俺もそう思う。今までの俺とは違う」 時間はかかったが、俺は一階にたどり着いた。ここに来るまでにコボルトなら一撃で殺せるようになった。コボルトとの戦いはもはやただの作業
「この辺りでいいだろう」 俺は砂漠の真ん中で立ち止まって振り向いた。「弱っちい神原かんばらがわざわざ一対三で戦おうなんて、頭おかしいんじゃねえのか? ボコってやるよ!」 権藤ごんどうの言う通り、俺は砂漠の熱で頭が沸騰しているのかもしれない。
西に傾きつつある太陽に向かって、俺たちは三十分以上歩き続けた。 恥ずかしい縛られ方をした川口かわぐち先輩の案内でたどり着いたのは、巨大な柱が何本も立ち並んだ神殿跡だった。「バットを構えろ!」 五十嵐いがらし先生が叫んだ直後――。 野球ボー
カナに案内された部屋は広かった。中央の石造りのテーブルを囲んで、ダークエルフ三人とリザードマン三人が座っていた。ダークエルフの一人は東城とうじょう先輩で、リザードマンの一人は五十嵐いがらし先生だ。残り二人のリザードマンのうち一人は体を縛ら
遺跡の外ではダークエルフとリザードマンがニワトリの群れと戦っていた。バットでニワトリをぶっ叩いたり、吹っ飛ばしたり――スポーツ用品の使い方が明らかにおかしいが、そんなことを言っている場合ではなさそうだ。 リザードマンのユニフォームは黒と白
バジリスクの死骸から抜き取ったロングソードはボロボロだった。「これじゃあ、もう使い物にならないな。どうしたらいい、リュディ?」「こちらの世界の金属はバジリスクの体液に耐えられないのでしょう。それならば、アトラム界の素材を使って、新しい装備
「助けてっ!」 ドラクウァ砂漠を一人の女の子が走って来る。 輝く金髪、小麦色の肌、日本人離れした目鼻立ち、とんがった耳、しかし――。 この子が着ている服は見たことがあるぞ。赤と白を基調としたユニフォーム――楢華高校ソフトボール部のユニフォー
竹刀が宙を舞う。 勝負はついた。元村もとむら先輩の竹刀が弾き飛ばされたのだ。 俺とミサキは二人のやり取りを見守るしかなかった。「やっぱり多部たべは強いなぁ。俺じゃあ、勝てそうにもねえや」 元村先輩がニヤリとした。しかし、獰猛さは消え失せて
「二階の生物実験室へ来るがよい」 魔女の声が響き渡った。 二階への階段前に群がっていたウェアラットたちが一斉に逃げ出す。もはや俺たちのことは眼中にないのか、散り散りになって、物理実験室や地学実験室へ入っていった。 ネズミ退治は消耗戦だった。
「我が住処へようこそ」 理科棟に入った俺たちの頭上に魔女の声が降り注いだ。 歓迎されている……のか? オレンジ色の火の玉がいくつも浮遊し、廊下をぼんやり照らす。 奥から人影がぞろぞろ近づいてきた。 チュウチュウ……チュウチュウ……。 二足歩
「七瀬ななせ先輩と神原かんばら君は外の様子を見てきましたよね? 校庭だった場所はドラクウァ砂漠になってしまいました。砂漠には、あらゆる食べ物を穢けがす魔王の呪いがかかっています」 俺とミサキは多部たべ先輩と向かい合って座り、先輩の話に耳を傾
昇降口を出るとそこは見慣れた校庭だった――。 そんな「当たり前」がまたしてもぶっ壊れることは覚悟していた。……が、覚悟が足りなかった。 校舎の前に広がっているのは広大な砂漠だった。 校庭に点在していた照明は消え失せ、唯一の光源は月明かりだ
七瀬ななせ先輩がこちらに歩いてきて、手に持っていたものを放り投げた。「私の方は終わったわ。花守はなもりさんはこうなったわよ」 俺の前に転がったのは――。 凍り付いたミサキの頭! 俺は地面に手と膝を突いてゲエゲエ吐いた。黄色くて酸っぱい液体
「気を付けてください。これで終わりではありません。他のヴァンパイアの視線を感じます」「そんなこと言われなくてもわかっているよ、おばさん。さっきからず~っと見られているよね」 俺だけが視線に気づいていなかったらしい。冷汗が噴き出した。「やはり
「机の上に乗るなっ!」「三浦みうら先生も今、机の上に乗っているんじゃね?」「生徒の分際で、先生に口答えするなっ! おまえらは黙って私の言うことに従っていればいいんだよ!」 俺の指摘で三浦はさらにヒートアップした。 二十代の三浦は生徒たちから
「やっぱり職員室に入るときは緊張するな……」「そう? あたし、全然緊張しないんだけど。いっつも職員室に呼び出されているし」「それは君が……」 俺は「問題児だからだろ?」という言葉を飲み込んだ。「あたしが何だっていうのよ? そんなことより、さ
ズシャッ! ロングソードを握る手に、肉と骨をぶった切る衝撃が伝わってきた。 ゾンビの首が俺の足元に転がった。 露わになった歯茎、崩れ落ちて穴だけになった鼻、飛び出した眼球――ボロボロに朽ちかけた顔が俺を見上げている。 首無しの胴体はその場
「解毒できないのか?」「まずはアルラウネを倒すことですね」 ぼやける視界に飛び込んできたものがあった。廊下の隅に落ちているライターだ。こそこそタバコを吸っていた谷中やなかの愛用品が、こんなところに――。「リュディ、火があれば何とかできるんだ
「ねえ、キスしない?」 教室のドアを開けた俺を花守はなもりがいきなり誘ってきた。 花守は、俺が谷中やなかを倒し後教室へ入ってくるのを予想していたのか? 廊下とは違って教室は明るかった。 机の上に座って、わざとらしく足を組み直す。丈の短いスカ
「危ないから、教室の中にいろ」 俺の言葉を聞いた花守はなもりはコクンと頷いて、近くのドアから教室内に入った。 ここで逃げるわけにはいかない――。 ドアが閉まる音を聞きながら考える。 俺が逃げれば、花守が危険にさらされる。勇者がパシリから逃げ
「テルはだいぶモンスターを倒しましたから、かなり強くなったと思いますよ」「俺もそう思う。今までの俺とは違う」 時間はかかったが、俺は一階にたどり着いた。ここに来るまでにコボルトなら一撃で殺せるようになった。コボルトとの戦いはもはやただの作業