chevron_left

メインカテゴリーを選択しなおす

cancel
うさぎの時代庵 https://jidaian.net/

時代小説の感想を書いています。ブログ。新選組、幕末維新物が中心です。司馬遼太郎作品、海音寺潮五郎作品が大好きです。土方歳三ファンなので、歳三礼賛目線の本の紹介が多いです。旧「時代庵」から、記事を更新してアップしています。

うさぎ
フォロー
住所
未設定
出身
未設定
ブログ村参加

2022/06/04

arrow_drop_down
  • 「神剣 人斬り彦斎」葉室麟 角川春樹事務所

    幕末京都で人斬りと恐れられた中村半次郎、田中新兵衛、そして河上彦斎(げんさい)。 彦斎の幕末から維新、西南戦争の直前までの人生を描いた力作です。 彦斎が、中村半次郎、田中新兵衛と違ったのは、彼が林桜園という日本神道の大家の弟子であり、かなりの論客であったこと、あくまでも「神意」によってその人を斬るか斬らないかを決断したこと。 彦斎といえば佐久間象山を斬ったことで知られていますが、象山を斬るにも彼なりの論理(佐久間象山が日本を西欧化しようとしているのは攘夷に反し、神の意に反する)に基づいて斬ったということなのです。それが正当化されるとは思いませんが、彼は誰か上役に言われて人を斬ったのではなく、あ…

  • 「姫の戦国」上・下 永井路子 文春文庫

    今川義元のお母さん、悠姫、後の寿桂尼が主人公。京都の中御門家という公家のお姫様が、駿河の大名、今川氏親に嫁いでからの波乱万丈の人生を描いています。 今川義元といえば、織田信長に桶狭間の戦でけちょんけちょんにやられて、敗死した間抜けな大名・・・というイメージを持っていた私ですが。事実はそうではなく、今川義元も立派で剛毅な大名だったけれども、今川家にとっての不運(当日豪雨が降ったとか)、織田家にとっての幸運が重なって、今川義元は打ち取られてしまったのだなあとわかりました。 この小説の主人公はあくまでも義元のお母さん、悠姫なので、桶狭間の戦いは小説の最後の方に出てくるのですが。 この小説は女性でない…

  • 「天地明察」 沖方丁 角川書店

    囲碁がテーマ? いや、和算がテーマ? いや、天文(星)がテーマ? いや、暦がテーマ? いや、やっぱり、恋愛がテーマ? この本の半分くらいまでは、いったいこの本のメインテーマは何なのか、よくわからず、話も数学中心で漢字が多く(笑)、読み進むのにけっこう苦労しました。半分くらいを過ぎると、この本の面白さがわかってきて、3分の2ほどを過ぎると、恋愛も前面に出てきて、一挙に読み進みました。結局、いろいろなテーマがごっちゃになって、天の理を明察するという一つのテーマに集約されていきます。 渋川春海という大和暦を作った人が主人公。どうやら実在の人物のようですね。この春海さん、碁をもって徳川家に仕える家に生…

  • 「新選組剣客伝」山村竜也 PHP研究所

    山村さんは学生時代から新選組研究会を作られた方ですから、新選組大好き作家さん。そんな山村さんが新選組のスター剣士たちの生涯を解説してまとめた短編集。 これも史実だったかなあ?と、ちょっとクエスチョンマークが付くところもあるにはあるのですが、山村さんのそれぞれの人物への思い入れの激しさにより、断定的な表現が多くなっていると思いましょう。この方、本当に新選組が好きなのですよねえ・・・。 紹介されている人物は、近藤勇、土方歳三さま、沖田総司、山南敬助、原田左之助、永倉新八、藤堂平助、斉藤一、です。それぞれの最期まで書かれていますので、小説などで途中までしか書かれない事が多い人物たち(斉藤さんとか、原…

  • 「頼朝の死を廻って その虚実の世界」 永井路子「続悪霊列伝」より

    永井路子さんの「続悪霊列伝」の中の一遍。 源頼朝の死は謎が多く、どう死んだかについての確実な記録がないのです。 永井さんによれば頼朝の死の原因を推察できる材料は幾つかあるということで、当時の公家の日記や藤原定家の日記、明月記には「飲水の重病」(糖尿病のこと)で死んだと書かれている。 ところが「吾妻鏡」には相模原の橋供養の帰りに落馬した事が原因で死んだと書かれている。でもこれは後から振り返って書かれた部分で、頼朝の死の当時の記録はないのです。 「吾妻鏡」はところどころ抜け落ちていて、頼朝の死の前後の部分が脱落しているのです。 「吾妻鏡」は鎌倉幕府の公式見解といえるものなので、それなのに肝心の頼朝…

  • 「執念の系譜」永井路子 講談社文庫

    鎌倉政権の重鎮、三浦一族の密かな政争を、三浦義村、光村親子の二代に渡って描いた中編小説。鎌倉幕府初期の政争を、三浦一族の側から描いたという意味でとても面白いです。「鎌倉殿の13人」の三浦義村の暗躍、葛藤、権謀術数をこの作品で堪能できます。 クライマックスは源実朝の暗殺です。殺したのは公暁、源頼家の息子ですが、公暁を駆り立てた人物は、公暁の乳母父であった三浦一族。しかし、三浦一族は、実朝暗殺事件で誅せられていません。すんでのところで三浦義村は公暁を捨て、北条一族に味方し、家を存続させました。 三浦義村の息子、三浦光村は公暁に味方しようとしたのに父に止められ・・・。 その時から、光村の屈折した思い…

  • 柳広司「ダブル・ジョーカー」角川書店

    「ジョーカー・ゲーム」の続編。 「ジョーカー・ゲーム」は第二次世界大戦直前、日本が中国との戦争を始めた頃の出来事を描いたスパイ小説。日本陸軍の異端的機関、D機関。いわゆるスパイ養成学校。このD機関のスパイたちの暗躍を描いた作品でした。D機関を率いるスパイの天才のような人が結城中佐で、この人のキャラが強烈でしたねえ。冷血、冷徹であることを求められるスパイ達。金も名誉も愛も縁がない。そういうスパイとしての生き方に、情熱を燃やすのはなぜか?スリル?プライド?使命感?しかたなく?そういうスパイの本質に迫るという楽しみも、このジョーカー・シリーズにはありますね。 「ダブル・ジョーカー」も前作と同様、とて…

  • 「私学校蜂起 小説・西南戦争」尾崎士郎 河出文庫

    「人生劇場」で有名な尾崎士郎が、西南戦争をテーマに「私学校蜂起」「可愛嶽突破」「桐野利秋」「波荒らし玄洋社」の4編を書いたもの。それぞれが、西南戦争の様相を丁寧に臨場感を持って描き出しています。それぞれの現場、というか現地の様子が丁寧に描かれていて、その場の情景が目に浮かんでくるよう。ここらへんは、さすが、尾崎さん、うまいなあって思いました。 桐野利秋びいきの私としては、「桐野利秋」だけで一編あるのが嬉しい。桐野利秋の生き様、死に様を描いた短編で、桐野利秋について書かれた小説としては、私は尾崎さんのこの短編が一番好きです。尾崎さんは愛知県出身で、鹿児島とはゆかりのない作家ですが、薩摩隼人の魂み…

  • 「紅の肖像 土方歳三」 遊馬佑 文芸社

    戦って戦って戦いぬく男、土方歳三。鬼のように書かれることが多い歳三様ですが、実際にはいろいろ悩んだり、揺らいだり、落ち込んだり、弱気になったり、泣きたくなったりしたでしょう。そういう人間らしい悩みの部分までも書いた歳三様のお話です。 弱さをみせた歳三様の姿に賛否両論あるでしょうが、私は好きです。悩んで、落ち込んで、でも、最後にはぎゅっと歯をくいしばって、戦いぬくわけですから。 けっこう現実の歳三様も、決断するまでは、この本の中のように、悩んだのではないでしょうか。あれだけ時勢が大きく変わっていくなかで、まったく揺るがない、まったく落ち込まないって人がいるはずないでしょうし。ましてや、新選組は、…

  • 「新選組の舞台裏」菊池明

    「新選組の舞台裏」はノンフィクション(98%は)。いろいろな物証をもとに、新選組の意外と知られていない事実を語る短編集です。新選組ファン、特に土方歳三ファンにはたまらない一冊になっています。 例をあげれば・・・ ・土方歳三が暮らした家 ・土方歳三は強かったのか ・土方歳三の写真 ・五月十一日 土方歳三が駆けた道 ・土方歳三 一本木関門離脱の謎 ・土方歳三の辞世 など。どうです?歳三様ファンならばぜひ読んでみたい内容でしょう? ドラマや小説の中の歳三様ではなく、実際に生きていたリアルな歳三様の姿を垣間見ることができるのです(リアルでも歳三様はやっぱりかっこいいのです)。 歳三様の最期の地、北海道…

  • 「夏草の賦」司馬遼太郎 文春文庫

    「戦雲の夢」で長宗我部盛親を紹介しましたので、お祖父さんに当たる長宗我部元親のお話も紹介したいと思います。「戦雲の夢」に続き、この「夏草の賦」も私の中では司馬遼太郎作品ベスト5に入っています。 土佐の長曾我部元親の一生を描いた作品です。土佐の傍らから芽吹いた野望の男、元親が、四国を支配するまでの策謀と闘いの前半生。そしてその後、織田信長、豊臣秀吉という天下人にとって、半生の業績を無にされ、すべてを空しくした後半生。前半と後半でこれだけ落差がある戦国大名も珍しいと思います。 おそらく、豊臣秀吉が天下をとった時点が頂点で、そこからは降下するばかりだった元親の人生だったと思います。最後に、元親は妻を…

  • 「戦雲の夢」司馬遼太郎 講談社文庫

    長曾我部元親の孫、長曾我部盛親の一生を描いたお話。 私としてはこの作品、司馬遼太郎作品のベスト5に入る傑作だと思います。司馬作品のエンディングは、「そしてすべて消え終わった」という、時代の空しさを感じさせるものが多いけれど、この作品は違います。盛親がどのような最期を迎えたのか、読者にその結論をゆだねる、司馬さんにしてはめずらしく余韻のある終わり方です。司馬さんの長曾我部盛親への愛情が感じられます。 戦国の謀略者、元親を祖父に持つ盛親ですが、関が原の戦いの後、京都に軟禁され、男として空しく朽ちていくしかない人生を送っていました。女遊びに明け暮れ、自暴自棄な日々。昔からの長曾我部の臣下たちはそんな…

  • 「世に棲む日々」 司馬遼太郎 文春文庫

    幕末の長州藩の狂騒たるや、小説でもこういうわけにはいかないというほど、変化に富んでいて、ドラマティックで、登場人物たちが激情家ばかりで、藩まるごと発狂したとしか思えないような展開です。でも、その発狂のおかげで、日本は明治維新へと向かい、近代国家へと発展していくわけです。 私は新選組のファンですが、日本が西洋国の植民地にならずに近代独立国家として立っていくためには、やっぱり徳川幕府はいずれは倒さなくてはいけなかっただろうと思っています。幕末の長州藩の狂乱状態は、維新に向かうエネルギー源となったという意味で、すごく興味深いです。 この「世に棲む日々」は、幕末の長州で何が起こったのかを克明に描き出し…

  • 「十一番目の志士」司馬遼太郎 文春文庫(上・下)

    天堂晋助という長州藩の人斬りが主人公の幕末時代小説。 この晋助さんは、実在の人物ではありません。この小説を読んでいると、まるで晋助さんが実際に存在したような書き方で、司馬さんの術中にはまってしまいますが、全くの架空の人物。高杉晋作と知り合ったことにより、高杉の指令を受けて動く人斬りとなり、高杉の死と共に自分の居場所を失う。晋助さんは実在はしなかったけれど、おそらくこういう人はいただろうという、いわば幕末長州藩の人斬りの象徴のような人物なのでした。 この晋助さんが、もう、大変な女好きで(笑)。そこら中で女性に手をつけ、一緒に寝ることでしか女性とコミュニケーションできないような人でして。私は途中ま…

  • 「史談 切り捨て御免」海音寺潮五郎 文春文庫

    海音寺さんといえば、西郷隆盛。私の中ではそういうイメージです。この本は海音寺さんの歴史上の人物に対する考えとか、自分の創作についてのお話、それに故郷、薩摩への思いを集めた短編集です。 海音寺さんはこの本の中で一章を割いて、「大西郷そのほか」というタイトルで8編を納めています。特に「西郷隆盛とぼく」という短編は、海音寺さんが西郷さんの伝記を書き始める前に、なぜ、自分が西郷さんを好きなのか、なぜ西郷さんのことを書くのか、という西郷さんへの思いがぐっと詰まっている作品です。 その短編の書き始めが「ぼくは先祖代々の薩摩人で・・・」であり、ホント、海音寺さん、「薩摩」が好きだなあ、と冒頭より薩摩愛がまぶ…

  • 「禁じられた敵討」中村彰彦 文春文庫

    中村さんは明治維新の敗者側を主人公にした作品を多く書いています。この本はそんな中村さんの初期の作品ながら真骨頂。傑作短編集です。しかも、すべて史実をもとにして、実際に存在した人物を主人公にすえて書かれたお話なのです。 お話の最後に中村さんが主人公にした人物のお墓などゆかりの土地を訪ねたエピソードが添えられていて、ああ、歴史って現代までつながっているのだなあ、いろいろなことを時間が押し流すけれども・・・としんみりした気持ちになります。 ほとんどの人物は幕末維新史の中において大物というわけではなく、当時のフツーの人々なのですが、あの激動の時代に生きたということによって、フツーの人生が狂っていくので…

  • 「豊臣家の人々」司馬遼太郎 角川文庫

    豊臣家の人々といっても、豊臣秀吉その人ではなく、秀吉を取り巻いた人々のお話。 でも、周囲の人々を描くことによって、その中心にいた秀吉の姿も浮かび上がってくるというしかけ。 登場するのは、摂政関白と呼ばれた秀吉の甥、秀次、ねねの甥の小早川秀秋、宇喜多秀家、北の政所(ねね)、秀吉の父違いの弟、小一郎(大和大納言)、秀吉の父違いの妹で徳川家康の奥さんになった駿河御前、徳川秀康の息子で秀吉の養子になっていた結城秀康、天皇の子ながら一時秀吉の養子みたいになっていた八条宮、そして淀殿と秀頼。みんな、秀吉と血縁関係があるか、奥さんになったり養子になったりして、秀吉との関係が生まれ、人生が二転三転した人々。い…

  • 「土方歳三・孤立無援の戦士」 新人物往来社編

    私は15歳から土方歳三さまファン。このまま、たぶん、死ぬまでファンです。 だから、土方歳三さまが登場する本や映画やテレビは全部見たい、読みたい。歳三さまの生き様を調べたい。歳三さまが生きてきた道をたどって、京都だろうと函館だろうと多摩だろうと、跡地を訪ねたい。その空気に触れたい。 そんな気持ちを、この本は思いっきり受け止めてくれます。 16名の歳三さまファンが、いろいろな角度から歳三さまのことを書いています。それぞれのパッションをぶつけています。ああ、私と同じ思いを持つ人達がこんなにいるのだなあって嬉しくなります。エッセイだったり、小説だったり、旅行案内だったり、漫画だったり。どんな形であって…

  • 「新選組裏表録 地虫鳴く」木内昇 集英社文庫

    「新選組 幕末の青嵐」に続く木内さんの新選組もの。 今回の主人公は、わりとマイナーな新選組メンバー、阿部十郎(近藤さんを墨染で銃撃したといわれている)、尾形俊太郎(山崎さんと一緒に監察方だった)、篠原泰之進(伊東甲子太郎の腹心)の3人。いえ、主人公というより、語り手ですね。この本の主人公は伊東甲子太郎のように思えます。 この3人の目を通して、伊東と土方歳三さまとの暗闘が語られていき、時世の変遷がそれにまとわりついていく。この本を読むと、伊東さんの悪戦苦闘がちょっと気の毒な気もしてきます。 前作でもそうだったけど、木内さんの描く新選組メンバーはみんなキャラがたっていて、それぞれが興味深いので、読…

  • 「天主信長 我こそ天下なり」上田秀人 講談社

    まったく新しい視点から本能寺の変を描いた作品。 なぜ、明智光秀は本能寺で信長を殺したのか? なぜ、秀吉が信長の後継者となりえたのか? なぜ、信長はキリスト教布教を許したのか? なぜ、信長の遺体が見つからないのか? 本能寺にまつわる様々なナゾに対して全て答えることができるストーリーを、上田さんは創り上げました。そう、きたか!という感じです。キリスト教のことを多少知っていて、でもキリスト教信者ではない私みたいな人間には、すごく納得しやすい、わかりやすい、謎解きでした。 そして私の好きな竹中半兵衛が、前半の主人公なのも面白かったです。信長と、秀吉のことをいろいろと考える、いわば狂言回しの約が半兵衛さ…

  • 「歳月」司馬遼太郎 講談社文庫

    私はこの「歳月」というタイトルが好きです。「時世」といいかえてもいいかもしれない。この本の主人公は、江藤新平。明治維新政府の司法卿であり、佐賀の乱を起こしてあっけなく敗死してしまった方の生涯を描いた作品。 江藤さんという人は卓越した秀才であり(幕末の佐賀藩は藩士を秀才教育していた)、おそらく当時の日本では右に出るものがいないほど西欧の法制度に通じており、維新直後の司法制度はこの江藤さんが考えて作ったものでした。そのまま長生きしていれば、明治政府の行方も、もしかしたら西南戦争を起こした西郷さんの趨勢も変わっていたかもしれない・・・。 江藤さんは、秀才型ですから、戦争の将のタイプではなく、佐賀で乱…

  • 「異説幕末伝」 柴田錬三郎 講談社文庫

    柴田さんは痛快でちょっとニヒルな時代小説を書かれますね。けっこうエログロナンセンスみたいなシーンも描くけれど、女性への永遠の憧れみたいなものを隠しつつ、という感じがいいです。 歴史の王道を歩く人物ではなく、クールに時代に背を向けて生きる主人公を多く描いています。眠狂四郎はその典型。 この短編集も、ちょっと時代の主流から外れた人たちを描いた物語で、テーマを幕末にとっております。等々呂木神仙なるおじいさんが語る幕末史の秘話という形を取っているのですが、そこはやっぱりシバレンなので、けっこうエロっぽい話もちらほら(笑)。でも、最後には感動の涙が出てきます。私もこの本を読んで何回も泣きました。 「会津…

  • 「新撰組捕物帖 源さんの事件簿」秋山香乃 河出書房新社

    面白かったです!秋山さんの新選組モノでは私はこの本が一番好きです。 通常、新選組ものでは主役にならない井上源三郎さんが主役で、しかも「捕物帖」ですから、探偵チックなのです。 新選組の歴史を時間をおって書いていくのではなく、源さんの京での日常の中でミステリーを解いていくうちに、新選組の様子や登場人物が描かれていくという、ちょっと面白い構成。これが効いてます。 そして新選組のおなじみの登場人物たちがイキイキとイメージできて、こういう書き方もあるのだなあと感心しました。裏側から見ているっていう感じなのですよね。裏から光をあてて影絵のようになった土方歳三さまや近藤勇や沖田総司を描き出している。「垣間見…

  • 「天まであがれ!」木原敏江 秋田文庫

    号泣新選組漫画。何回読み返しても、ラストで号泣。もう泣けて、泣けて・・・。 1975年、週間マーガレットに連載された作品なので、かなり昔の作品です。名匠木原敏江先生の入魂の作品。でも、連載は7ヶ月で打ち切りになり、木原先生はかなり悔しかったよう。今だったら、3年でも5年でも続けられましたよ(←渡辺多恵子さんの「風光る」を見よ!) ちょっと時代が早すぎた、あるいは週間マーガレットの読者にはちょっと重すぎたかなあ?!木原先生自身が、新選組大好きってこともあって、気魄を感じるストーリー展開です。 でも少女向けですから、そりゃやっぱり乙女チックな恋愛要素も満載です。一応主人公は沖田総司です。剣の天才で…

  • 「レトロ・ロマンサー弐 いとし壬生狼」 鳴海章

    これは、歴史SFともいうべきジャンルですかね。 主人公の桃井初音さんは、古い物に触ると、その過去へ意識が飛んでしまうという、意識だけタイムトラベラーのような能力があります。彼女が新選組ゆかりの古い備忘録に触れて、幕末の池田屋に意識が飛び、松次郎という隊士(隊士というよりも見習いのような立場ですが)に憑依して、沖田総司や土方歳三に会うというストーリー。 池田屋、千駄ヶ谷での沖田総司の病床、箱館と、数回、初音は過去へ飛びます。そこで、沖田総司の死に様や、五稜郭での土方歳三の様子を、松次郎を通して、じかに見ることになるのです。そこに初音自身の出生の秘密も絡んできて・・・。 私は、一巻目を読んでいない…

  • 「王城の守護者」司馬遼太郎 講談社文庫

    いまも松平容保の怨念は東京銀行の金庫に眠っている。 東京銀行ということは、今の三菱UFJ銀行ということですね。 「王城の守護者」とは幕末、京都守護職にあたった会津藩の松平容保のことです。嫌だったけど無理やり幕府の命により、幕末京都の治安維持にあたらされた会津藩。もともと松平家というのは、徳川秀忠の浮気から生まれた藩だったわけですが、徳川宗家に絶対服従という家訓だったから、断り切れなかったのですね・・・。結局幕末の混乱の中で会津藩は貧乏くじをひかされたようなもので。 そんな会津藩、松平容保の数奇な運命を司馬さんが独特のタッチで小説にしています。容保公はとても寡黙な人で、維新後もほとんど沈黙してい…

  • 「土方歳三散華」広瀬仁紀 小学館文庫

    アマゾンプライムで岡田准一が土方歳三様を演じる映画「燃えよ剣」の配信がスタートして(2022年6月22日現在)、最近土方歳三熱がぶり返している私です。 この「土方歳三散華」は土方歳三様の、池田屋事変後から、五稜郭で戦死するまでの生き様を描いたものです。沖田総司が池田屋で血を吐いて、自分がどうも労咳らしいと気づきはじめた頃からお話が始まります。だから、はなばなしい新選組の活躍というよりも、新選組に影がさし始めて、だんだんとその影が濃くなっていく過程のお話です。 そんな中、歳三様は喧嘩剣法で、時代の流れに逆らい、自分のやり方を貫き、最後は五稜郭にたてこもった主要人物の中で、ただ一人戦死します。土方…

  • 「人斬り半次郎」池波正太郎 新潮文庫

    幕末編と賊将編の2冊です。 幕末に人斬り半次郎と言われた薩摩の中村半次郎。維新後の名前が桐野利秋。半次郎の一生を描いた池波先生の力作です。司馬遼太郎先生が書く半次郎と、全然違うのですよね。池波作品の半次郎は、半分は女性と戯れております(笑)。そして、あとの半分は西郷隆盛を犬っころのように尊敬し、まとわりつくことに費やしています。 西南戦争で敗走し、薩摩まで戻ってきて最後の夜を城山で迎えた時、西郷さんに半次郎が心で叫ぶセリフがこれ。 しかし西郷さんは何もかも見透かしたように、「よか、よか。」と半次郎に言うのでした。 いかにも池波さんらしい、ふわりとした人間くさい中村半次郎。 幸江という故郷の女(…

  • 「土方歳三無頼控 六 バラガキ・旅立」「土方歳三無頼控 五 バラガキ・苦悩」潮美瑶 文芸社

    土方歳三無頼控、六巻で一応終わりのようです。六巻で、土方歳三たちは、京都へ旅立ちます。京都へ旅立った後は「新選組」として忙しい日々が始まりますから、謎解きをしている暇は歳三様にはなくなりますから、ここで「無頼控」はエンドということなのでしょうね。 五巻では歳三様の若い頃の色恋ざたが関係してくる「横恋慕」、芳春先生大活躍の「巧名」、そして山南敬助の「弱さ」と「過去」が浮き彫りになる「血闘」の3つの作品が含まれています。相変わらず半七捕物帳のような江戸風謎解きの面白さが楽しめます。それとこのシリーズ独特のブラックさも健在ですね。おどろおどろしいというか。人間の内面の怖さにぞっとするというか。 謎解…

  • 「土方歳三無頼控 一 バラガキ・参上」潮美瑶 文芸社

    とても面白かったです! 新選組モノの快作に出会えました。三つの連作で、二巻は「覚悟」で、三巻は「奮闘」です。 京都時代の新選組については冒頭池田屋事変の場面が出てくるだけで、あとは江戸の試衛館時代の土方歳三様の成長し、覚悟を決めて、自分の道を決意する姿が描かれています。 そして、この本は、推理小説のように、事件が起こっていってその謎解きを歳三様がしていきます。その歳三様に子犬のようにまとわりつく、まだ十六歳の沖田総司くん。物語は、歳三様と総司くんのコンビを中心に進んでいきます。 江戸の頃の話で、京都時代の新選組と全然関係ないフィクションの世界なのですが、そこかしこに、歳三様がだんだんと、愛想の…

  • 「忍びの国」 和田竜 新潮社

    大盗賊になる前の石川五右衛門(この本の中では文吾)の話かと思いきや、和田さん創作の無門という名の忍者が主人公。 和田さんの一作目「のぼうの城」の方が評判高いようですが、私は物語の深みとしてはこちらの「忍びの国」の方があると思います。「のぼうの城」は痛快エンターテイメント。哀しさはあまりなし。でも「忍びの国」は人間の悲哀や忍者の不気味さ、情を持つ者と持たない者との乖離など、けっこう深い人間ドラマとしての見方も成り立ちます。 伊賀忍者を単なる忍びとして描くのではなく、人間的感情のない「ひとでなし」として描き、かつ忍者の世界にも地侍(百地三太夫のような)と下人(文吾や無門のような)のヒエラルキーがあ…

  • 「明智左馬助の恋」加藤廣 日本経済新聞社

    加藤さんの「信長の棺」は面白かったですねえ。本能寺で明智光秀に攻められて死んだ織田信長だが、実は本能寺で「是非におよばず」とかいって自殺したわけではなく、抜け穴から本能寺を逃れたが、しかし結局・・・。そして、信長の死の真相は豊臣秀吉が知っていた・・・。発想が面白いし、いかにもありそうな話で、現地取材も綿密で、人をうならせる内容でした。 第二弾として、信長の死の真相を知る豊臣秀吉サイドの話「秀吉の枷」が出て、信長を攻めた側の明智サイドからのストーリーがこの「明智左馬助の恋」なわけです。(しかし、この本でも、全部のナゾは明らかにされません) 明智左馬助は、明智光秀の娘婿であり光秀の腹心の一人でもあ…

  • 「手堀り日本史」司馬遼太郎 文春文庫

    この本は司馬さんが自分の歴史観や歴史上の人物についての思いや、自分の作品の成り立ちなど、さまざまに語ったものを編集したもの。司馬さんのナマの声がたくさん詰まっていると思います。土方歳三様のこと、坂本竜馬のこと、西郷隆盛さんのこと、織田信長のこと、もう、いろいろ。この本を読んでいると、司馬さんがどうしてあの作品を書いたのか、書きたいと思ったのか、そのきっかけがわかったりして、司馬作品のファンであれば見逃せない話がいっぱいです。 この本の中で、司馬さんは自分の一番好きな作品を聞かれて、長編では「燃えよ剣!」「新選組血風録」をあげています。(そうでしょう~!そうでしょう~!!) ちょっと意外だったの…

  • 「田原坂」海音寺潮五郎 文春文庫

    西南戦争についての小説集。もう、この本ほど、当時の薩摩の実情、人々の気持ちを表現しえた本があるだろうか!?いや、ない!と、私は思います。もう、涙なしには読めませんよ、この本は。西南戦争に関する時代小説の中ではナンバー1!だと思います。 この本の中には辺見十郎太は出てくるけれど、ほとんどは西郷軍の幹部以外の普通の薩摩隼人たちを主人公にしています。 ふっと笑ってしまう話もあるし、切なくてたまらない話もあるし、号泣の話もあります。鹿児島出身、薩摩をこよなく愛した海音寺先生でなくては書けないような、西南戦争当時の薩摩のリアルなお話。読んでいて、西南戦争当時の薩摩にいるような臨場感を感じさせます。西南戦…

  • 「新選組 幕末の青嵐」木内昇 集英社文庫

    「青嵐」とは俳句の初夏の季語。この作品が木内さんの処女作であり、文学賞を取った「茗荷谷の猫」という作品の前に書かれたものです。そして、この本を読んでわかったのは、木内さんが新選組大好きだってことと、沖田総司大好きだってことです。いえ、そう木内さんが書いているわけではないのですが、この本を読むとわかるのです。 この本で描かれる新選組は、司馬遼太郎さんの「燃えよ!剣」「新選組血風録」で描いたイメージを色濃く映しています。まあ、司馬さんのあの名作新選組モノのあとに、新選組を描いた作家たちの作品はほとんどその影響を受けたものになっていますけどね。「無邪気で、わけがわからないところがあり、子供っぽいが、…

  • 人斬りたちの最期-三刺客伝 海音寺潮五郎「幕末動乱の男たち 下巻」(新潮文庫)より

    前にこのブログで紹介した海音寺潮五郎先生の「幕末動乱の男たち」。その下巻の最後に、海音寺先生ならではの、幕末の人斬りと呼ばれた3人の剣客についての史伝が載っています。これが、とてもオススメなのです。 人斬り○○○と呼ばれた3人、田中新兵衛、岡田以蔵、河上彦斎(ぜんさい)。 幕末という日本全体で発狂していたようなあの時代が生んだ、人斬りと呼ばれる暗殺者達。人斬りを必要とした人がいて、時代があった。しかし、時代の狂騒が静まったあと、人斬り達に待っていたのは悲惨な最期でした。この3人の生き様、死に様を、海音寺先生は丁寧に描きだしています。 海音寺先生自身は決して暗殺をよしとせず、井伊直弼と吉田東洋の…

  • 「土方歳三 戦士の賦 上・下」 三好徹 人物文庫

    三好さんは幕末の人物をテーマにした小説を幾つか書いていますが(沖田総司や桐野利秋など)、この「土方歳三」が一番秀作ではないでしょうか。 本人もあとがきで「歳三からお前さんにしてはよくやったよといわれるのではないかと思っている」と書いています。 また、この小説を書いている間、土方歳三が「わたしの書斎を訪ねてきて、数日間滞在し、多くのことを語りかけた。頬をちょっとゆがめて「そんなこともあったかな」「そうだ。そのとおりだ」とか「そいつは、ちょっと違うぜ」と呟いたりして、筆者に男とは何か、あるいは男はどう生きるべきかを伝えて姿を消した」と、書いています。それだけ、思い入れが強かったのですよね、三好さん…

  • 「幕末動乱の男たち 」上下巻 海音寺潮五郎 新潮文庫

    海音寺先生の幕末テーマの史伝。有名どころからちょっとマイナーな方まで、幕末に活躍・暗躍した人たちをとりあげている史伝集。海音寺先生は素晴らしい小説も書かれますが、史伝は本当に筆が際立っていると思います。綿密な文献調査に基づき、作家としての推察も加え、幕末という時代を知るには欠かせない、読み応えのある作品になっています。 寺田屋事件の「おいごと刺せ!」のセリフが有名な有馬新七、新選組を結果的に作っちゃった清川八郎、最期が超お気の毒な小栗さんなど。史実をていねいに解説しながら、海音寺先生の見解も述べられていて、海音寺先生の真骨頂ともいうべき短編集。幕末ファン必読の書です。 どの編も素晴らしいのです…

  • 「恋する新選組 ①~③」越水利江子 角川つばさ文庫

    「恋する」という枕詞がちょっと気恥ずかしいですが、この本は、まさに青春純愛時代小説です。少女向けに書かれた本ですが、「花天新選組」と同様、越水さんの少女たちへ向けた大切なメッセージがたくさんこめられていて、大人でも読み応えあります。ぐっと胸に迫るフレーズがたくさんあって、命とは、人を恋するということとは、正義とは・・・と、いろいろなことを考えさせる内容です。 主人公は、近藤勇さんの血のつながっていない妹、宮川空。捨て子だったのを、近藤さんの実家、宮川家で拾われ、妹として大切に育てられた、という設定。新選組モノというと、よく男装した女性が入って、そこで恋愛模様が・・・という設定が多いけれど、近藤…

  • 「歳三、往きてまた」 秋山香乃 文芸社

    鳥羽伏見以後の土方歳三さまの人生を、様々な登場人物をからませながら最期まで描いた大作。この本、ぶあついです。厚さ10センチくらいあります。秋山さんの力の入れようがわかります・・・。 この本は歳三さまが主人公ですが、その周囲を過ぎていく登場人物たちが魅力的なのです。ちょっとたくさん出て来すぎではないか?という気もするけれど、近藤勇、沖田総司、斉藤一、のおなじみのメンバーだけではなく。島田魁や野村利三郎や相馬主計や、会津藩の秋月さん、大鳥圭介、西郷頼母の娘、市村鉄之助、沢忠助、まだ若い新選組見習隊士たち、などなど・・・。登場してはまもなく命を散らしていく、あるいは表舞台から消えていく人たち。歳三さ…

  • 「新選組風雲録」全五巻 広瀬仁紀 時代小説文庫

    洛中篇、激斗篇、落日篇、戊辰篇、函館篇の全5冊。広瀬仁紀先生が、新選組副長土方歳三の生涯を余すところなく描いた力作です。歳三さまの生涯を、歳三さまの小姓である忠助の目から描いています。 歳三さまが猫っかわいがりしている沖田総司も出てきますが、この小説の主人公はあくまでも歳三さまと、狂言回し役の忠助です。忠助はもと江戸を騒がせた泥棒なのですが、ふとしたきっかけで歳三さまに心服し、とうとう函館まで歳三さまについていきます。 洛中篇、激斗篇くらいまでは、京都で暴れまわる新選組の活躍で快活に読めます。しかし、落日篇から、坂道を転がり落ちるような新選組の姿に涙。 函館篇に入ると、もう涙でページが読めない…

  • 「村上海賊の娘」上・下 和田竜 新潮社

    「のぼうの城」「忍びの国」を書いた和田竜さんの四作目。織田信長が毛利を攻めている戦国時代。信長の本願寺攻めの影で、毛利家と信長の駆け引きと、毛利家についた村上海賊の娘、景の活躍ぶりを描いたお話です。 いやはや、景が、とんでもないキャラの持ち主で。時代劇のヒロインといえば、忍者か大名のお姫様か武士の娘か妻。しかしそんなお決まりパターンを完全に脱した景が大変魅力的です。 景は、能島村上家の娘。そして、この時代ではすごく醜いといわれる容貌。海賊といっても能島村上家は、地方豪族というか小大名みたいなもので。その娘の景は、一応姫と呼ばれる立場なのですが。その醜い容貌と、海賊働きをするおてんばで、嫁の貰い…

  • 「誠を生きた男たち 歳三と総司」 河原総

    私は土方歳三様が好き。そして歳三様が好きな人はたいてい、沖田総司とのコンビが好き。そう、私も土方歳三様&沖田総司コンビが大好きです。そしてこの二人のコンビが好きな人にはたまらない、この本。土方歳三様&沖田総司のキズナを感じたかったら、この本は絶対的必読本ですっ! タイトルに「歳三と総司」とあるように、この本は新選組のお話ですが、中心は歳三と総司の二人。この二人の強い絆。これがこの本のテーマであります。だから、もう、歳三と総司ペアが好きな人には、たまらないシーンがテンコ盛り。多摩の少年時代から、最期のときまで、二人の絆を中心に話が展開していきます。 ですから、近藤さんや他の隊士たちはかなり影が薄…

  • 「この君なくば」 葉室麟 朝日新聞出版

    葉室麟さんの2012年作品。時代小説というジャンルですが、これは恋愛大河ドラマですね。タイトルの「この君なくば」は「この君なくば一日もあらじ」という和歌からとっているのです。この本の中では「この君」=愛しい人という意味で使われ、何回もこのフレーズが出てきます。 幕末・維新の激動の時代を舞台に、九州の伍代藩という小さな藩で、楠瀬譲と、その彼の恩師の娘、檜垣栞との、恋物語が主軸です。 小さな藩にも幕末の激風はふきあれ、尊王攘夷、佐幕の対立構造は激化し血が流れていきます。伍代藩は、薩摩や長州のような列強藩ではありませんから、時代を先導するというよりも、時代の荒波にもまれて、あちらこちらに振り回されて…

  • 「死ぬことと見つけたり」隆慶一郎 新潮社

    この本は未完です。隆慶一郎先生はロマンティック伝奇時代小説ともいうべき、独特の時代小説をたくさん残した時代小説作家。でも、この作品は隆先生がおそらく最も心を入れて書いたと私は勝手に思っています。 未完であっても、その魅力が損なわれることはありません!「死ぬことと見つけたり」は隆先生の魅力のすべてが詰まった渾身の作品です。私は隆慶一郎先生の作品はほとんど読みました。読んだ中でも、この作品が一番好きです、たとえ未完であっても。 この本はタイトルからしていい。 「死ぬことと見つけたり」は、佐賀の武士道バイブル「葉隠」の「武士道とは死ぬことと見つけたり」というフレーズから取ったもの。隆先生が太平洋戦争…

  • 「独白新選組 隊士たちのつぶやき」松本匡代 サンライズ出版

    「試衛館の青春」のその後ともいうべきこの作品。驚きました。こんな新選組本読んだことない。これはユーレイの語る新選組なのです。死んでしまった後の山南さんや藤堂平助くんや、沖田総司くんや。死んでしまった後、その気持ちを語るのです。こういう切り口ですか!とびっくりしました。 でも、このやり方で、私たちは、山南さんや、平助くんや、総司くんの、本音というか、本当はどう思っていたのか、という気持ちを知ることができるのです。新選組好きなら、一度は思ったはず。脱走事件を起こして死んだ山南さん。どう思っていたのだろう?どういう気持ちで切腹したのだろう?山南さんに聞いてみたい・・・。 伊東甲子太郎について新選組か…

  • 「花天新選組 君よいつの日か会おう」 越水利江子 大日本図書

    越水さんは新選組、特に沖田総司がお好きなのでしょうねえ。この本の前編っぽい感じで「月下花伝」、それから「恋する新選組」と、沖田総司を主役級に添えた作品を書いています。 この本は、タイムとラベルもので、現代の少女、秋飛(あきひ)が、タイムとラベルして、沖田総司にあい、そして・・・というお話。しかも、少女だった秋飛が、幕末では少年になってしまいます。でも、心の中は少女のままで・・・。ただタイムトラベルして偶然沖田総司と出会ったわけではなくて、総司と秋飛の間には、もっと深い、神聖な縁が結ばれていることが、読んでいくうちにわかります。単なるタイムトラベル小説ではなく、ひとひねり加えてあります。 この本…

  • 「出星前夜」 飯嶋和一 小学館

    とにかく寝るのも忘れて、途中で頁を繰る手を止めることもできず、エンディングまで一気に読んでしまった本でした。 まずタイトルが気になりました。「出征前夜」だったらわかるけど、「出星(しゅっせい)」って?その意味は最後にわかります。ふかあ~い感動を呼ぶ本でした。 飯嶋さんの本は初めて読みますが、この方相当な下調べをしてますね。この本は江戸時代、徳川家光の時代に起こった島原の乱のお話なのですが、天草四郎が主役ではないのです。むしろ、島原の乱のきっかけを作りながら、めぐりめぐって医者として一生を終えた寿安さんのお話であり、死ぬことよりも、生きることを選んだ者の結末を描いたものです。 私たちが歴史の教科…

  • 「陽炎」朝戸夜 アスキー・メディアワークス

    新選組の沖田総司を主役にしたラブストーリーです。いまどきのワカモノ向けに新選組を書いたらこうなるかな~。女子が「こういう総司くんであってほしい!」という理想をつぎ込んだような沖田総司が読めます。沖田総司好きの女子には必読モノでしょう。 美男の土方歳三様も出てきますが、主役は沖田総司ですからね。いえ、本当の主役は、沖田総司の相手役、凪ちゃんですが。 文章が口語調で、和田竜さん(「忍びの国」の)の文章と似ていますね。今風の軽口で軽快な文章。こういう作品もあっていいかな、と思います。ワカモノにはこういう文章の方が読みやすいのかもしれない。文字も縦書きではなく、横書きでした。 しかし。ワカモノ向けのラ…

  • 子母澤寛「新選組三部作」中公文庫

    子母澤寛さんといえば新選組ブームの火付け役であり、司馬遼太郎さんが新選組モノを書く材料をたくさん提供した方です。この人の著作がなければ、私たちが今新選組に持っているイメージは大分変わったものになっていただろうと思います。 京都壬生の八木家の源三郎さんという、実際に新選組メンバーを見知っていた人が存命なうちに、貴重な聞き書きをたくさん残してくれたわけです。子母澤さんは元新聞記者だけあって、豊富な取材をもとに、新選組三部作を世に出してくれたのでした。 三部作とは「新選組始末記」「新選組遺聞」「新選組物語」。いろいろな隊士の姿が生き生きと描きだされています。 面白いのは、子母澤さんの本では、新選組は…

  • 「新選組 試衛館の青春」上・下 松本 匡代 サンライズ出版

    タイトルの通り、新選組の面々の「青春」を描いた作品です。 松本さんには「夕焼け 土方歳三はゆく」という作品があって、読みたいと思うのだけれど、古本でも2万円近い価格がついていたので手が出せず、図書館にもないし。アマゾンでも最近は出回っていません。いつか読めればなーと思っています。 そんな松本さんが2012年に新たに新選組本を出版されました。あとがきを読むと、この作品を書くに至るまで、松本さんの人生にいろいろなことがあり、この作品は松本さんの心が思いっきり込められているのだと思いました。 ただ、この作品に、いつもの新選組ムードを期待しないでください。全然別モノです。別モノですが、とても切なく、優…

  • 「沖田総司」大内美予子 新人物往来社

    この本は、沖田総司と土方歳三さまとのゴールデンペアの切なさが遺憾なく書き尽くされた新選組本です。沖田総司好きには必読の書といえます。そして、沖田総司&土方歳三のペア好きにとっても必読の書です。 大内さんの「土方歳三」についても紹介していますが。「土方歳三」と「沖田総司」を合わせて読むことで、日野の若者たちの幕末から維新にかけての生き様、死に様がよくわかります。 大内さんは、沖田総司の書を見て、総司に興味を持ち、それ以来ずっと沖田総司というか新選組を愛する作家になりました。この本はそんな大内さんの真骨頂。江戸の試衛館のころから、千駄ヶ谷で総司が没するまでの、総司の一生を、新選組の興亡とともに描い…

  • 「松前の花 土方歳三 蝦夷血風録」上・下 富樫倫太郎 中公文庫

    「箱館売ります」の富樫倫太郎さんの「土方歳三 蝦夷血風録」第二弾。この本もよかったです。この本のラストは号泣です。 「箱館売ります」よりも、土方歳三様の登場シーンは少なく、人見勝太郎と伊庭八郎のほうが主役級なのですが。いえ、この二人よりも、蘭子という松前藩の重臣の娘、世が世ならお姫様と呼ばれた娘と、小野屋の藤吉という松前の和菓子職人が主役なのですが、歳三様の存在が、やっぱりこのお話の中核なのです。 北海道に旧幕府軍は渡り、土方歳三様は松前を征服し、人見勝太郎が松前奉行として着任した頃からこのお話は始まります。松前藩の重臣の娘、蘭子は、父を松前藩の政府側の者にむごく殺されたうらみを胸に刻みその男…

  • 「箱館売ります 土方歳三蝦夷血風録」 富樫倫太郎 中公文庫

    富樫さんは土方歳三さまを題材にした小説を数冊書いていますが、この「箱館売ります」が一番面白いと思います。特に、土方歳三様好きなら、魂が揺さぶられます。読後感がすごくいい。 土方歳三様が主人公ではないのですが、副主人公くらいの位置づけなのですが、でも、やっぱり、物語の中心なのです。土方歳三という男の在り方、精神が、この物語のキモになっているのです。 実際にあったガルトネル開墾条約事件という、箱館の土地をプロシア、影にいるロシアが、買いとろうとする事件で、これに、箱館政府と、官軍側と、そして箱館の人達が、それぞれの信念と思惑で、サポートしようとしたり、阻止しようとしたり。それは、幕府側とか官軍側と…

  • 「翔ぶが如く」司馬遼太郎 文藝春秋

    明治維新から西南戦争までの、薩摩の人々のお話。この時期、薩摩を中心に日本が動いていたようなもので、もっといえば、薩摩の西郷隆盛と大久保利通の二人に日本が振り回されたとでもいいましょうか。西南戦争で西郷隆盛が滅び、薩摩隼人が滅び、日本は維新から十年して初めて明治統一国家となったといえるわけですが。その経緯を描いた作品。司馬遼太郎先生の作品の中では、私の中では「新選組血風録」「燃えよ剣」と共にベスト3に入ります。 文庫本にして10冊の長さ。そして多分最初の1~3冊は、いろいろな登場人物が出てきて、話もややこしいし、司馬先生お得意の「余談」もたくさん出てくるし、ちょっと読みにくいかも。でも、後半はも…

  • 「土方歳三」大内美予子 新人物往来社

    大内さんは「沖田総司」という名作がありますが、それと対になる本ですね。土方歳三さまの、流山以後の闘いを最期まで描いています。だから、沖田総司さんは回想の中にしか登場しません。近藤さんともすぐに別れがきます。つまり、この本は歳三さま一人の闘いを描いたものといえます。 大内さんがあとがきで「土方歳三の生涯を考える時、皮肉なことだが、彼が生死を誓いあった盟友近藤と、別れた時点からの方が、むしろ一人の男としての本領を発揮しはじめたのではないかと思う」と書いていますが(確か司馬遼太郎先生もそのようなことを書いていらした)、男・土方歳三の本領発揮の闘いが、ロマンスをからませながら、描かれています。 ロマン…

  • 「新選組血風禄」司馬遼太郎 中公文庫

    司馬遼太郎の新選組物といえば、「燃えよ剣」と「新選組血風禄」。 「新選組血風禄」は短編集で、登場人物は様々。 「油小路の決闘」「芹沢鴨の暗殺」「長州の間者」「池田屋異聞」「鴨川銭取橋」「虎徹」「前髪の惣三郎」「胡沙笛を吹く武士」「三条磧乱刃」「海仙寺党異聞」「沖田総司の恋」「槍は宝蔵院流」「弥兵衛奮迅」「四斤山砲」「菊一文字」の15話から成る、これぞ、新選組物決定版です。 京都界隈の描写も楽しめて、私は「新選組血風禄」に書かれた場所を訪ねて京都巡りしました。土方歳三、沖田総司、近藤勇といった有名なメンバーだけでなく、あまり世に知られていない新選組隊士(フィクションも含めて)の生き様、死に様を司…

  • 「燃えよ剣」司馬遼太郎 新潮文庫

    燃えよ剣 土方歳三という男の生き様を描ききった、司馬さん渾身の一作。たしか、司馬さんが自分の作品の中で好きな作品を聞かれて、この「燃えよ剣」を挙げていました。「男の典型を一つずつ書いてゆきたい。」と司馬さんはあとがきで書いていますが、歳三さまは男の典型の中のそのまた男でしょう。 幕末、日野のお百姓さんの息子が、京都に行き、新選組を結成し、会津藩に認められて武士となり、徳川幕府で存在感をはなっていく。そして、最後は徳川幕府と共に滅んでいく。 事実は小説より奇なりといいますが、本当に、そんなことが現実に日本で起こったとは信じられないような人生を歩んだのが、土方歳三さまをはじめとする新選組の面々。 …

arrow_drop_down

ブログリーダー」を活用して、うさぎさんをフォローしませんか?

ハンドル名
うさぎさん
ブログタイトル
うさぎの時代庵
フォロー
うさぎの時代庵

にほんブログ村 カテゴリー一覧

商用