主に1950~80年代の海外ミステリの所感です。”時代遅れ”という自虐的な表現には二つの意味があり、まず50~80年代というのは率直にいってやはり”時代遅れ”であること。しかし、年月を経てなお古びないものもある、というのが二つめの理由です。
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特にこれといった理由はないのだが、このところ立て続けに飛行機にまつわるミステリを再読した。それらのなかから、あらためて印象深かった作品をとりあげてみる。 手はじめは、ギャビン・ライアルの『もっとも危険なゲーム』。 …
ディック・フランシスの二作品をとりあげる。”女王陛下の騎手”というニックネームをもつこの作家も、第二次大戦中はイギリス空軍の飛行機乗りだった経歴をもつようで、航空機が登場するミステリを書いている。 まずは、比較的初期…
われわれ日本人が大晦日から正月を特別な思いで過ごすように、ヨーロッパやアメリカなどではクリスマスを特別な気持ちで迎えるということはよく知られている。ここで言う「特別な気持ち」とは、「神聖」とか「神への感謝」、「つつま…
飽きっぽい性格にもかかわらずディック・フランシスの作品は全作を読んでいるというのが、何よりもこの作家の作品の面白さを証明しているようなものだ。さすがに晩年の十作品近くは年齢的な衰えなどからくる質の低下を感じざるを得な…
英国スパイ小説の系譜 ージョン・ル・カレ『寒い国から帰ってきたスパイ』ー
スパイ小説といえばイギリス、イギリスといえばスパイ小説、といわれるほど英国ミステリはスパイ小説の本家本元である。古くはジョン・バカンの『三十九階段』、サマーセット・モームの『秘密諜報部員』、そして『ヒューマン・ファク…
英国王室の桂冠詩人セシル・デイ=ルイスがニコラス・ブレイクの筆名で書いたミステリが『野獣死すべし"The Beast Must Die"』である。いつか読もうと思いながらも、何十年もの間本棚の重しになっていた一冊だ。 英国の作家や詩人と…
国内では内田康夫や西村京太郎などの作家が名を連ねるが、海外ミステリで頭に浮かぶのはやはり大御所アガサ・クリスティとパトリシア・モイーズのお二人だろう。 旅という日常を離れた時間がなせるわざなのであろう、旅行ミステリに…
タイトルから思いうかぶ作家は人それぞれかもしれないが、オーソドックスなところでウイリアム・アイリッシュ、別名コーネル・ウールリッチといえば、おそらくどなたも否定はされないだろう。 『幻の女』の冒頭は次のように書き出…
無許可の私立探偵マット(マシュウ)・スカダーが主人公のローレンス・ブロック『八百万の死にざま』をとりあげる。 マット・スカダーは刑事だった何年か前、拳銃強盗との銃撃の際、撃った流れ弾が誤って幼い女の子の命を奪ってしま…
古い読書歴を振り返って、当時思ったことやもう一度読み返した結果あらためて感じたことなどを書きつづるのがこのブログの主なテーマなので、おのずから対象はかなり以前の作品にならざるをえない。そのために、今回はサブタイトルに…
ミステリといえばそれこそ数多くの私立探偵が登場するが、その皮切りとしてロス・マクドナルドのリュウ・アーチャーとレイモンド・チャンドラーのフィリップ・マーロウをはずすわけにはいかないだろう。 ずいぶん昔のことになるが、…
記憶に残る刑事または警官の2回目は、マイクル・Z・リューインの『夜勤刑事』の主人公、リーロイ・パウダーだ。物語後半で明かされるある理由から19年間も夜勤部屋のチーフを続けさせられてきた中年警部補である。これといって抜群…
日本では刑事はデカ、警官はおまわり、アメリカではコップというように、たいがいは蔑みを込めて呼ばれる対象であるが、ここでとりあげた刑事や警官たちはむしろ誇り高い人々とさえいえる。 まずは、少し変わったところでジョン・…
まずは、エド・マクベインの八十七分署シリーズ。警察小説の代表格として厳然たる位置を占めるシリーズとして名前だけは挙げておかなければ礼を失することになるが、今回は先を急がせていただく。 次は、1970年代の一時期を席巻した…
世に有名なアンソロジーはあまたあって、とても全部は読み切れるものではないしもとよりその気もないが、それらのなかから気に入ったものをとりあげてみたい。 まずは、礼を正してエラリー・クイーン編『黄金の十二』から。よく知…
エド・マクベインも長いシリーズものを持つ作家のひとりだ。 1956年発表の『警官嫌い』に始まる87分署シリーズは約50年の長きにわたって続き、日本国内で翻訳されている作品だけで50作以上にのぼるらしい。最近、第一作『警官嫌…
多作シリーズといっても、競馬シリーズで知られるディック・フランシスのように、数作を除いて作品ごとに主人公が異なるシリーズもあるが、ここでは一貫して同じ主人公やメンバーによる連作ものを対象としてみる(ディック・フランシ…
いわゆる”巻き込まれ型サスペンスミステリ”の代表といえばかなり多くの方がエリック・アンブラーを挙げるのではないだろうか。この作家は『ディミトリオスの棺』に代表されるスリラーや、スパイ小説のジャン […]
短編集、それもちょっと奇妙な味やしゃれたヒネリ、苦い毒をもつ短編集とその作家たちを取りあげてみたい。といっても変化球や隠し玉はありません、誰もがうなずかざるを得ないほどよく知られた短編の名手たちに登場いただく。 まず […]
アームチェア・ディテクティブ、いわゆる安楽椅子探偵にふれてみたい。 バロネス・オルツィの隅の老人、アガサ・クリスティのミスマープルなど安楽椅子型の名探偵は古くからずいぶんいらっしゃるが、ここでは個人的な好みにまかせてい […]
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