視野の左から雨乞岳と綿向山 正面から右に高畑山から油日岳への南鈴鹿連山 右に飯道山と阿星山、そして右隅に三上山 尾根上の大岩の上から眺める山々の並び 古代の人たちも眺めたに違いないこの景観 氏長の墓を造るため幾度も幾度も目にしたであろうこの広がり 山頂空間は前方後円の型をな...
梅雨明けを狙って後立山の縦走を企てた 八方尾根から唐松、五竜、鹿島槍、爺へと2泊3日の行程 もう何年も前のこと 初日の八方尾根では降られた 結構な太い雨に耐えながら登っていると ドカ〜ンと一発振動が降ってきた 身をすくめしばらく足が出なかった 2発目の雷鳴はなかったが 肝は...
高度な技術をもった名人のはずがどうしたことか わが身の特徴を知って木の根に重ねたのは見事だ 色目にも問題はない しかしバレバレなんだ 目がいけない 目が それにしてもはるか磯から こんな町中のお堀にまで 何をしようというのだ まさか 幕府の隠密なんてことはないだろうな
♪♪♪ ゾ〜ウさん ゾ〜ウさん お鼻が切れたのね そうよ シカさんが齧ったのよ ♪♪♪ ちょいとふざけてみました 鈴鹿の山を登っている時 登山道脇のそれと目があってしまいました 目が「つれて行って欲しい」と訴えるようでしたが 頂上に急ぎました 帰りにはもう見当たりませんでした
峠から少し足をのばした稜線上の小さな丘に腰をかけた 西側に広がる広大なスクリーンは 刻々と色を変化させながらゆっくりと幕を下ろしていった 立ち上がって後ろを振り向くと 煌々と冷たい白光を放つ月が昇っていた 月は見る見る膨張し やがて東の空一面を埋めつくしてしまった 僕は膨れ...
天地逆転? いや、写真の向きはこれで合っている。 此処は、北アルプス鏡平にある鏡池 山と空は池に映ったもの 現実のものよりコントラストが良くクリアだ 粒子の細かい良質のポジフィルムのような池面である このルートは東となりの上高地に比してマイナーで登山者も少なめ 槍、穂高の連...
これから歩く道 不安がよぎる すでに山の半分が無い 尾根道を渡っている間に こちら側も消されないかと 霧の正体は微小な水滴 水蒸気じゃないから巻かれると寒い 皮膚を通じた寒さは心を不安にする 身体は正直だ 心の正体は身体感覚じゃないかと思うぐらい しかし 僕はこの半消失の世...
遊歩道から山道に入り、古代峠と名付けられた鞍部に出た。正面には両側から流れる山裾が一重の広い襟を合わせている。手前に近江南部の平野、そして霞がかかった琵琶湖の帯の背後には比叡山の屏風が立つ。眼前に広がる逆三角形の織物の真ん中を登りの新幹線が裁断するように通り過ぎていった。 ...
渓流の大きな岩を背にたき火をしながら夜を過ごしていた ふと背後に動きを感じたので振り返ると岩肌に照らされた自分の影が映っていた 何気なく影に右手を振ってみた。 影は同じように右手を振った 僕は焚火のほうに向きなおそうとしたとき 何かしら違和感を覚え岩肌のほうに向きを戻した ...
ここは私の実験室である 実験室は矮小であり、広大でもある 実験はある可能性を実証するために1年前から行っている 結果は10か月を待たずに得ることが出来た そして、今、実験の状況は私の想定を越えようとしている 実験はシンプルなものである。 私は、実験室内のある一点にエネル...
時間が始まって138億年 この地が出来て46億年 私が私を意識し世界を知覚できるのはどれくらいだろう 80年あればよしとしよう 138億分の80年 46億分の80年 秒針のひと目盛りもないこの儚い刹那 私の生のうちに生き物の新種は生まれるだろうか 島は幾つできるだろうか 陸...
今日も眺めていた 西の空を 幾千年 いや幾万年 こうして眺めているのだろう 視線の先の白山は 今日も同じ座りで 白く輝いていた そこに何かこがれる者でもいるのだろうか 木曽谷から風が吹き上がる 伊那谷から風が這い上がる 合流する風にその音を聞きながら 激しく打ち付ける雨雪に...
大雪の御鉢平を訪れるのはおよそ40年ぶりになる。大学生の時、友人と北海道をバイクでツーリングした時に立ち寄って以来である。9月の中旬なのに、大雪では赤すぎるほど赤い紅葉のすごみに驚き、そして山の大きさに驚いた。 2人の体力は余るほどあった。黒岳の登り下りにはロープウ...
霧は湖面を流れ 山頂への斜面には日が差している 柔らかく丸い曲線の外輪山 それだけで遠足気分 山腹を斜めにひっかく直線 登山道の先端が 青い空に触れるところにたどり着く 目の前にはたった今突き出たかのような 黒いドーム 噴気が上がっている 時空を破り出た噴出物は かのモノリ...
この岩を見た時 すぐに硯石を連想した 小学生の頃、仲の良かった友達に誘われて習字を習った 自分で言うのはなんだが なかなか筋がよかった 確か最終は特待生だったと記憶する そんなことで硯石にも親しんだ 郷里特産の那智黒のも持っていた 連想はそう言う体験に基づいていたのかどうか...
青空に顎を突き上げて 何を競い合っているのか 岩の付け根から見上げると そんな様子に見えた 岩間に切れ入った空が モニュメントのアクセントを作る 雨雪に洗われた花崗岩 一様に肌は滑らかで さながら抽象アート 角が取れた丸みと曲線が 登山者の気持ちを緩めてくれる
もう時効もとうに過ぎたことなので書くのですが、鈴鹿の山中でササユリを盗掘したことがあります。鈴鹿のどの山だったかまでは覚えていない。 ササユリは山の会のメンバーから綺麗で香りが良くそして希少な百合だと教えてもらったことで関心をもった花だった。 たまたま山中で開花後の一本の...
数日前、那須が原山で見事なオオナルコユリに出会った。 退屈な檜の植林帯の急登の後 鹿害防止の金網の戸を開け植生保護エリアに入る 雑木に道脇の野草 ホッとすると同時に草いきれに汗が滲み出した しかし、このオオナルコユリは保護エリア出口の外に咲いていた 登山道に覆いかぶさるよう...
天山からの三上山 琵琶湖方面 西に三上山、東に鏡山、その間にちょうど両親に守られるかのように天山はある。 散歩のついでによく登る里山の一つだ。 山頂に続く尾根に見晴らしの良い岩がある。その展望岩の上に立つと琵琶湖の南端から...
見る、聞く、嗅ぐ、味わう これらは特殊感覚と言うらしい それぞれ、特定の感覚受容器で感じ取る感覚だから 原生林で聞き耳をたてるタブノキの大木を見つけた あれはまさに感覚受容器だと言って良いだろう これは進化なのか それともその名残だろうか いずれにしてもあの大きな器官は 空...
原生林を歩いていると ふと何処からか見られている気配 周囲のタブノキの木々を見回すと その視線の元が目に止まった 僕の感覚には間違いはなかった 一本のタブノキが僕を見ていたのだ 見るという機能は レンズとフィルムだけでは成り立たない 取り入れた光を一旦電気信号に換え 再構築...
恨めしや〜 私たちにないのは脚じゃない 色の素 そう、葉緑素 いらないから捨てちゃった でも、脚(根)はちゃんとありますよ 光は眩しいから嫌、日焼けもするし 美白にはとってもこだわっているの この白体、他では見られないでしょ 栄養? 栄養はパパ(菌)からもらっているから大丈...
なんとなく悲しく愛おしい そんな感情が湧く山焼き後の高原斜面 波打つ焼け肌に獣道が炙り出されている 鹿や狐や狸たち 此処を通る獣たちを想像する 白日に晒された道を前に 彼らは何を思うだろう 戸惑い、落胆、新芽への期待(ごちそう) いずれにしても 火傷を負った獣革のようなこの...
これほど人の手が入ったことがあからさまな山も珍しい 尾根筋を境に片面が見事に剥ぎ取られている しかし、何故かヒリヒリするような痛々しさは感じない それどころか美しい のっぺりと若い緑が張り付いた人工自然の奇景が 非現実的でアートのようでもある 毎年春に焼かれることで斜面一面...
徳島の剣山は別名「太郎笈」と言う 尾根続きの隣の山は「次郎笈」と言う この次郎笈が前から気になっていた 奇名と笹が綺麗なたおやかな山容に惹かれて いつか登ってみたいと 先日、青天が間違いないとわかり急遽出掛けてみた 初めて明石大橋を渡り、初めて徳島に入る そして、国道、いや...
擬態などと言っているようじゃ まだまだだ 俺を見な こんなことは そうそう出来るものじゃない 全くうまくいった ええっ 食べ物はどうしてるだって? 栄養はすべて木からもらっているから 心配ご無用 もうネズミを探して飛び回らずに済むんだ 合理的だろ 後悔はないかって? あるは...
笑っていいのか 痛々しく感じるべきなのか 受難の修復だろうか 病気や変異の一種? いずれにしても アニメのキャラクターばりのこの大木 存在を消すかのように控え目に他木の後ろに立っていた 僕は通りからしばらくそれを眺めていたんだが 過ぎゆく人の視線はそれに向けられることはなか...
上から読んでも下から読んでも「やまもとやま」 海苔のコマーシャルではない 近江湖北にある里山の名称だ 古戦場で知られる賤ヶ岳から 琵琶湖に沿って伸びる細い尾根の南端にある 端正な形で湖北を象徴する山だ その山頂下にある寺の前に この石仏がある 左はお地蔵さん 右はおじさん ...
鈴鹿一笹が綺麗な山だ 遠足尾根から眺める草原の如き山容は アフリカのサバンナの如し 笹原に立つ低木たちはシロヤシオ 清楚な白い花が気持ち良い この花もこの山も 青空にとてもよく似合っていた
晴れ渡る空 陽光は山肌の若緑を照らす 風は斜面を駆け上がり 鳶たちは舞う のどかな里で 御神体は上機嫌だ
仙人と言われた画家の熊谷守一の絵に 山容が女体になった絵がある 景色を見ていると女性の体に見えてくるらしい 丸く穏やかな曲線の山だったのだろう 「女体山」という名の山は結構各地にある 山名の由来は山容にあるようだ 何とも生々しい命名なんだな、と思った 日光の「男体山」という...
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視野の左から雨乞岳と綿向山 正面から右に高畑山から油日岳への南鈴鹿連山 右に飯道山と阿星山、そして右隅に三上山 尾根上の大岩の上から眺める山々の並び 古代の人たちも眺めたに違いないこの景観 氏長の墓を造るため幾度も幾度も目にしたであろうこの広がり 山頂空間は前方後円の型をな...
火口に向かう水平道から揺蕩う雲海を眺めた ガスの隙間から差し込む光の中それは生き物のようであった 斜面の下方にある街は雲に蓋をされ望むことが出ない かわりに雲海の上にいく筋もの光柱が賑やかな空を作っていた 黒い礫の流れる斜面にオンタデの点在 雲間から差し込む光に黄葉は輝き ...
ザックザク 踏みしめる一歩ごとに軋る音 踏み出した足は流され労力と歩速の半分は削がれる たどり着いた石炭のボタ山のような丘から眺める荒涼感 ここは我が国由一の「砂漠」 通称「裏砂漠」 この砂漠は黒い 砂漠の正体はスコリアと呼ばれる玄武岩質の礫 火山からの噴出物である 黒土に...
私は老木。 老化のせいで樹皮の入れ替えが遅くなり彼等に住われてしまった。 言ってみれば我が身は無断借用されている状態なのだが おかげで老樹としての威厳という利益は得られていると言って良い。 苔に便乗して着生しているヒゲのようなノキシノブも より厳粛さを増すのに一...
身の丈を超える笹をかき分け三角点に這い出た その時目に飛び込んできたのは 深く遥かなやまなみ 遠くに御在所岳、雨乞岳、綿向山、イブネにクラシに御池岳 私が見た最高の水墨画 午後の陽に照っている生命感のある笹の向こうに 薄墨で引いた見事な稜線の重なりとグラデーションがあった ...
(再掲) 夏が来れば思い出す遥かな涸沢、青い空 私の場合、夏は尾瀬ではなく穂高である 遠い夏の遠い穂高 40年前に出会ったこれ以上のない夏の色を思い出す 明神、徳澤を過ぎ 3つめの分岐の横尾で川を渡ると涸...
広い平野に残る孤立丘とも呼ばれる小山 視認は近江の各地にとどまらず古都や摂津の山からも容易い 季節は夏、ある日の気まぐれな登山 三上山肩の東光寺に抜ける峠に出るとぐるりが展け 南に緑濃い左右対称の見事な三角錐が迫っていた 頂点の上には梅雨明けの抜けるような青空が深く 明確な...
行く先は 朝霧の中 樹間より差し込む光の筋の中で 白霧が揺らいでいる 濃霧の林道はどこに通じているのだろうか ひんやりとした空気の中、歩を進めると ふと午前か午後かも不確かとなり 自身の見当識が失われていることに狼狽えてしまった 谷を遡り尾根に出る頃 霧は朝日の温もりの中...
妙光寺山 谷を遡りびわ峠に出ると西風がそよと吹き 首筋の滲んだ汗を飛ばしてゆく 扇に広がるびわ湖の方面を望むと 薄光る湖面の上に薄墨の比良山が映し出されていた 古代峠の噴石によじ登り近江富士を仰げば シンメトリーな三角は一段と明確だ 裾の流麗な曲線が気品良く優雅で この地の...
乳白の視界の向こうにうっすらと揺らぐ木立の影 幽玄な里の朝霧は次第に晴れゆき渓谷に入るともう空は青かった 小橋の下から水量の伝わる轟音が響き 花崗岩の白い川底の上を澄んだ碧水が流れ下る 林道の瑞々しいアザミが足元に棘葉を伸ばし早る気持ちを鎮めてくれた 尾根へのつづら折りに蝮...
山は城で城は山 観音寺城は山の上、最古の山城だと言う 雑木の中の急登を大石垣に向かう 木漏れ日にシマヘビが体を温め 幾つかの朽ちた切り株からシロアリが飛翔 上空では燕が群れ舞っていた 東の箕作山との間は枡目の田畑 麦畑は濃い緑の敷物で 水張りの田は空を写す水鏡となる 両者の...
広い平野に残る小山 孤立丘とも呼ばれる 視認は近江の各地にとどまらず 古都や摂津の山からも容易い この地の旅人には 旅の帰途に安堵を与える釣鐘となる 一年の計をこの山から始める人は多い かつては私自身もそうであった 冷気が顔を刺す薄闇に 昨夕より降り積もった雪を踏みしめなが...
雪のあるうちに登ってみたかった 諏訪から遠望する焼けた冠雪のそれは 美しく荘厳に輝いていた 朝日に照る眼前の阿弥陀岳は絵画のようにおさまり 登攀の意欲を高める 澄んだ空気の中息を切らして地蔵峠に這い上がった ピッケルとアイゼンを効かせ硬い雪面を踏みしめる 山頂上空の薄曇は低...
雑木が両側から生い茂り屋根を作る林道 角を回ると見通しの良い直線に出た 薄暗い林道の先に光の柱が一本 歩を進め近づくと光柱の中に無数の点滅する光が舞う ゆっくりとゆっくりと煌めく映像 やがて光の粒は波のように密度を変え舞い落ちる まるでイリュージョンのようであった 光の差し...
岩目は青空を透かし 白い岩肌は水を欲す この岩を見た時「ジャミラ」だと思った 孤独で哀しい過去を持つ 悲しきウルトラ怪獣 水の侵食に脆い石灰岩 ジャミラは待ち焦がれた水をたっぷりと得ると 皮肉にもその身を溶かしてしまうのだろう ああ哀しい物語り ...
島牧村は海岸線の崖の薄い縁にある小さな村 その外れの漁港近くにモッタ温泉はある 一軒宿である 小さめの浴槽ながらラジウムを含む泉質が良く ぬるめの露天で1時間以上も浸かって海を眺めた 裏山の海岸線に並行する崖の上で地質調査を手伝った 40分程崖を巻く山道を登り調査にかかる ...
八幡山 二の丸 登山道はふかふかの落ち葉道 神社の裏手を尾根まで登ると小楢の大木が待っていた 木々の間は明るく気持ち良い尾根道が続く 苔むした石垣の立ち上がり 一輪のショウジョウバカマが木漏れ日に首を伸ばし 冬の終わりを宣言していた 瑞龍寺境内の切り開きに立つと一気に世界は...
積雪の後をねらい峠を目指した 雪の国道をひたすた登る 遡るにつれ谷は深く、流れる水は深く碧い 雪で閉ざされた道に人気はなく鹿の足跡が寂しい 国境の峠にスキーをデポしつぼ足で山頂を目指した 雪の急登は消耗した体力を容赦なく奪い取る だが、頂まで意欲は削げることはなかった 白く...
私は今「時間」を見ている 目を見張るこの断面 一層が150年から200年と言う 眼前にはいったい何年分の時が積まれているのだろう 各層の堆積は火山の噴火によるもの 褶曲によるものではないとのこと 見る部分、角度によって印象が変わる 正面に立つと樹木の年輪や愛称どおりバームク...
黒磯と黒砂の浜、そして黒い砂漠 地下深くからの噴出物が作った黒の世界 マグマは斜面を流れ下り黒磯と浜を作る 山上ではカルデラを埋め我が国唯一の砂漠を作った 炭のような黒磯の波打ち際 おろし金のような鋭利な岩の刃先が流木を擦りおろしていた 痛みが身体を走り背が震えた 黒砂の浜...
黒磯と黒砂の浜、そして黒い砂漠 地下深くからの噴出物が作った黒の世界 マグマは斜面を流れ下り黒磯と浜を作る 山上ではカルデラを埋め我が国唯一の砂漠を作った 炭のような黒磯の波打ち際 おろし金のような鋭利な岩の刃先が流木を擦りおろしていた 痛みが身体を走り背が震えた 黒砂の浜...
山頂の切り開きに立つ 北に残雪の縁取りが強調された比良連山が見渡せる 南に深皿を伏せたような十二坊山 西には近江富士の三上山が大きい 近隣の低山から遠く琵琶湖を挟んで遠望する湖西の山々まで 痩せ尾根の一角のような頂にしては格別の眺望なり 比良を眺るに 薄霞のかかった琵琶湖の...
道は花崗岩の沢を縫うように渡る 岩盤の表面を洗う流れは盤上を滑らかに研ぎ 曲線美が心地よいU字の水路を穿つ 流れの時はゆっくりゆったり のどかに音楽を奏でていた いつの間にか気づいた 急く気持ちも気負いも消えていることに 滑沢は私の中の起伏をも研いでいたようだ ゆっくり歩け...
武奈ヶ岳 ある日、淡い緑が八雲が原を埋め、あちこちの枝にモリアオガエルの泡が垂れていた ある日、山頂の空を埋め尽くさんがごとく赤とんぼが舞っていた ある日、金糞峠をアサギマダラが飛んでいった ある日、流れる湿原の流れにイワナを見た その日、コヤマノ岳のブナ林は輝く霧氷の花が...
岩を見たくなったら金勝山に登る 新緑の頃が良い 淡い緑が芽吹き始めると足が向く 天井川の土手を遡り 落が滝線の登り口から切り通しを抜け沢を遡る 水は花崗岩の一枚岩の川底を穿ち 柔らかく心地よい曲線をいく所にも描いている 滝は滝壺から見上げるもよし 落ち口から見下ろすもよし ...
残雪に足をとられ半日 山頂には私ひとり 広い空、大きな山の上で白いアルプスを眺めた 孤独など一切なく昂りだけがあった 盛夏の室堂にコザクラが咲き乱れ クロユリがアクセントを作る 岩場ではオコジョも人も駆け回った 辺りは活き活きとしていた 台地の縁から見上げる秋晴れの丸い頂 ...
林床に差し込む陽を浴びるこれを見た時 格好の良さに綺麗だと感じた なんでもない木の根は 日の当たり具合によって美術的な様相に変身する シンメトリーな放射は鋭利な生き物でもあり 未知の生命体にも見えてくる シャッターを切った直後 身の危険を感じた私は一歩下がった するとそれは...
芝の広場を覆う雪面に足跡はない 一面は無垢の白 雪面のスクリーンに欅の影が投影されていた 欅はその立ち姿が良い 幹の立ちが良い、枝振りが良い さて、この雪面を舞台に これからどんな物語が映し出されるのだろうか そんなことを空想していたら カラスの影が欅の上を過ぎ去った
軍艦と呼ばれることもある 台形の大きな山だ 上辺にはカルストの台地が広がる 点在するカレンフェルトは 墓石と言うより庭園の置き石のようである 積雪時には白砂の寺院庭園さながら 残雪時には白兎に黒兎、白燕など雪形が賑やかである 台地の一頂点である鈴北岳からの眺望は鈴鹿一 北部...
深く雪が積もった冬 何度かスキーをつけて登った 峠に上がる斜面には北畑の廃村 唯一残る小さな寺にも厚い雪がかぶっていた 樹上に猿の群れ 真冬のそれらは愛おしく胸を締め付けさえする ブナの尾根を過ぎ、笹峠に出る 峠から見上る南霊仙の斜面を前に 覚悟を決め一足一足板をすり上げ雪...
登るにつれ辺りは暗くなる 八号目から上は雲の中 深い積雪に足取りは捗らない 立ち止まり上方を仰ぐと 黒雲のすぐ下を一頭のカモシカが目に入った 足が腹まで埋まる深雪の急斜面をゆっくりと横切って行った 寒気に冷えきったせい私が感じたのは 野生への感動でも自然の厳しさでもなく 胸...
夜明け前の無風に揺蕩い静かに下界を覆う 青く薄暗い視界に雲の海は谷を埋めていた 朝日がその高みを増すと蠢き始める白雲の群れ 斜面を舐め上がるそれはやがて岩塔を飲み込み 沸々と尾根に湧き上がる 私は足元を脅かす雲を眺めながら行く先の細尾根を眺めた 雲の先陣は西風に煽られ上空に...
削ぎ取られた礫が流れる大斜面 中央の凹部に雪渓が流れ 流れを挟んでオレンジと濃赤の帯が沿う 広大な箕のような地形の底で見上げる秋は 絶妙の配置とコントラストの芸術劇場となる 赤が映える 黄が映える 緑が映える 色映えの下地は灰色の濃淡 配置の妙は岩が成し 圏谷の主役は岩であ...
かつての旗振り中継地、岩戸山に立つ 岩に掘られた矢印の先は甲山 背後は霞の帯に浮かぶ比叡山 旗振り基点はその遥か向こうにある 米の相場は堂島を発し 平野に点在する孤立丘を伝わる 野洲から此処に 荒神山、佐和山に そして終点長浜に 秋の実りの後には こんな壮大で愉快で緊迫した...
蒲生野に雪が降り積もり 街も田畑も白化粧 白い矩形の田畑の辺を車が流れ 雪面に浮かぶ霧も流れていった 大岩の上に立ち寒風を背に東空を見やると 鈴鹿全てが視野に収まり 眼前の白い平野の広がりはどこまでも続く 綿向山の背後に座る雨乞岳はいっそう白く 御池岳の山肌は流れる白縞が心...
緩やかな曲線を描く雪面と深く濃い青空 シンプルでいて十分な色の2元世界 青白の境の心地よい曲線に向かって 風に洗われたまっさらな雪面を登る快感 雪庇の曲線は生理的な快を生起し 踏み込む一歩を躊躇わす 汚さぬようにと吹き付ける横風に抗い回り道 厳しく鋭い襞状の風紋を踏み進む ...
草木が霜で薄白い朝、鏡山の麓を歩いた 霜柱を踏む足裏が心地よい 沢沿いの池は凪ぎ 薄氷が張る池面を瑠璃色の光が切り裂いた 高速の光は枯れた池畔の葦の中に消えていった 宝石のようなカワセミの滑空は 落葉の林と枯れ葦の色の中 異次元から現れたかのようだった 新羅からの渡来人の鏡...
切り開かれた山頂の切り株に腰掛け 青い細帯の琵琶湖と比叡山を眺めている 暖かな陽は地面を照らし足元から我が身を温め 私は眠気と戦いながら上着を一枚脱いだ 冬は去ってはいない ただ、見渡す世界は霞で覆われ つかぬ間の陽気は里山の季節と時を惑わす 私はいつの間にかまどろみ、空想...
山頂は小春日和の陽光に包まれ我が背をあたためる 切り開かれた先には伊吹山と霊仙山が夫婦のように並び 見事なまでに輝く白さで薄霞の上に浮いていた 前景にある杉のてっぺんにメジロが2羽 交互に幾度も飛びたっては戻る行為を繰り返す 意味や目的はわからないものの楽しそうである 私も...
雪の森中で出会う雪坊主 淋しげにこちらを見ている 何か訴えているようで無さそうで こちらも愉快で切なく複雑な心中に戸惑う 雪の森中を歩いているといろんな坊主に出会うのですが その度に目と耳を奪われるのです