視野の左から雨乞岳と綿向山 正面から右に高畑山から油日岳への南鈴鹿連山 右に飯道山と阿星山、そして右隅に三上山 尾根上の大岩の上から眺める山々の並び 古代の人たちも眺めたに違いないこの景観 氏長の墓を造るため幾度も幾度も目にしたであろうこの広がり 山頂空間は前方後円の型をな...
視野の左から雨乞岳と綿向山 正面から右に高畑山から油日岳への南鈴鹿連山 右に飯道山と阿星山、そして右隅に三上山 尾根上の大岩の上から眺める山々の並び 古代の人たちも眺めたに違いないこの景観 氏長の墓を造るため幾度も幾度も目にしたであろうこの広がり 山頂空間は前方後円の型をな...
火口に向かう水平道から揺蕩う雲海を眺めた ガスの隙間から差し込む光の中それは生き物のようであった 斜面の下方にある街は雲に蓋をされ望むことが出ない かわりに雲海の上にいく筋もの光柱が賑やかな空を作っていた 黒い礫の流れる斜面にオンタデの点在 雲間から差し込む光に黄葉は輝き ...
ザックザク 踏みしめる一歩ごとに軋る音 踏み出した足は流され労力と歩速の半分は削がれる たどり着いた石炭のボタ山のような丘から眺める荒涼感 ここは我が国由一の「砂漠」 通称「裏砂漠」 この砂漠は黒い 砂漠の正体はスコリアと呼ばれる玄武岩質の礫 火山からの噴出物である 黒土に...
私は老木。 老化のせいで樹皮の入れ替えが遅くなり彼等に住われてしまった。 言ってみれば我が身は無断借用されている状態なのだが おかげで老樹としての威厳という利益は得られていると言って良い。 苔に便乗して着生しているヒゲのようなノキシノブも より厳粛さを増すのに一...
身の丈を超える笹をかき分け三角点に這い出た その時目に飛び込んできたのは 深く遥かなやまなみ 遠くに御在所岳、雨乞岳、綿向山、イブネにクラシに御池岳 私が見た最高の水墨画 午後の陽に照っている生命感のある笹の向こうに 薄墨で引いた見事な稜線の重なりとグラデーションがあった ...
(再掲) 夏が来れば思い出す遥かな涸沢、青い空 私の場合、夏は尾瀬ではなく穂高である 遠い夏の遠い穂高 40年前に出会ったこれ以上のない夏の色を思い出す 明神、徳澤を過ぎ 3つめの分岐の横尾で川を渡ると涸...
広い平野に残る孤立丘とも呼ばれる小山 視認は近江の各地にとどまらず古都や摂津の山からも容易い 季節は夏、ある日の気まぐれな登山 三上山肩の東光寺に抜ける峠に出るとぐるりが展け 南に緑濃い左右対称の見事な三角錐が迫っていた 頂点の上には梅雨明けの抜けるような青空が深く 明確な...
行く先は 朝霧の中 樹間より差し込む光の筋の中で 白霧が揺らいでいる 濃霧の林道はどこに通じているのだろうか ひんやりとした空気の中、歩を進めると ふと午前か午後かも不確かとなり 自身の見当識が失われていることに狼狽えてしまった 谷を遡り尾根に出る頃 霧は朝日の温もりの中...
妙光寺山 谷を遡りびわ峠に出ると西風がそよと吹き 首筋の滲んだ汗を飛ばしてゆく 扇に広がるびわ湖の方面を望むと 薄光る湖面の上に薄墨の比良山が映し出されていた 古代峠の噴石によじ登り近江富士を仰げば シンメトリーな三角は一段と明確だ 裾の流麗な曲線が気品良く優雅で この地の...
乳白の視界の向こうにうっすらと揺らぐ木立の影 幽玄な里の朝霧は次第に晴れゆき渓谷に入るともう空は青かった 小橋の下から水量の伝わる轟音が響き 花崗岩の白い川底の上を澄んだ碧水が流れ下る 林道の瑞々しいアザミが足元に棘葉を伸ばし早る気持ちを鎮めてくれた 尾根へのつづら折りに蝮...
山は城で城は山 観音寺城は山の上、最古の山城だと言う 雑木の中の急登を大石垣に向かう 木漏れ日にシマヘビが体を温め 幾つかの朽ちた切り株からシロアリが飛翔 上空では燕が群れ舞っていた 東の箕作山との間は枡目の田畑 麦畑は濃い緑の敷物で 水張りの田は空を写す水鏡となる 両者の...
広い平野に残る小山 孤立丘とも呼ばれる 視認は近江の各地にとどまらず 古都や摂津の山からも容易い この地の旅人には 旅の帰途に安堵を与える釣鐘となる 一年の計をこの山から始める人は多い かつては私自身もそうであった 冷気が顔を刺す薄闇に 昨夕より降り積もった雪を踏みしめなが...
雪のあるうちに登ってみたかった 諏訪から遠望する焼けた冠雪のそれは 美しく荘厳に輝いていた 朝日に照る眼前の阿弥陀岳は絵画のようにおさまり 登攀の意欲を高める 澄んだ空気の中息を切らして地蔵峠に這い上がった ピッケルとアイゼンを効かせ硬い雪面を踏みしめる 山頂上空の薄曇は低...
雑木が両側から生い茂り屋根を作る林道 角を回ると見通しの良い直線に出た 薄暗い林道の先に光の柱が一本 歩を進め近づくと光柱の中に無数の点滅する光が舞う ゆっくりとゆっくりと煌めく映像 やがて光の粒は波のように密度を変え舞い落ちる まるでイリュージョンのようであった 光の差し...
岩目は青空を透かし 白い岩肌は水を欲す この岩を見た時「ジャミラ」だと思った 孤独で哀しい過去を持つ 悲しきウルトラ怪獣 水の侵食に脆い石灰岩 ジャミラは待ち焦がれた水をたっぷりと得ると 皮肉にもその身を溶かしてしまうのだろう ああ哀しい物語り ...
島牧村は海岸線の崖の薄い縁にある小さな村 その外れの漁港近くにモッタ温泉はある 一軒宿である 小さめの浴槽ながらラジウムを含む泉質が良く ぬるめの露天で1時間以上も浸かって海を眺めた 裏山の海岸線に並行する崖の上で地質調査を手伝った 40分程崖を巻く山道を登り調査にかかる ...
八幡山 二の丸 登山道はふかふかの落ち葉道 神社の裏手を尾根まで登ると小楢の大木が待っていた 木々の間は明るく気持ち良い尾根道が続く 苔むした石垣の立ち上がり 一輪のショウジョウバカマが木漏れ日に首を伸ばし 冬の終わりを宣言していた 瑞龍寺境内の切り開きに立つと一気に世界は...
積雪の後をねらい峠を目指した 雪の国道をひたすた登る 遡るにつれ谷は深く、流れる水は深く碧い 雪で閉ざされた道に人気はなく鹿の足跡が寂しい 国境の峠にスキーをデポしつぼ足で山頂を目指した 雪の急登は消耗した体力を容赦なく奪い取る だが、頂まで意欲は削げることはなかった 白く...
私は今「時間」を見ている 目を見張るこの断面 一層が150年から200年と言う 眼前にはいったい何年分の時が積まれているのだろう 各層の堆積は火山の噴火によるもの 褶曲によるものではないとのこと 見る部分、角度によって印象が変わる 正面に立つと樹木の年輪や愛称どおりバームク...
黒磯と黒砂の浜、そして黒い砂漠 地下深くからの噴出物が作った黒の世界 マグマは斜面を流れ下り黒磯と浜を作る 山上ではカルデラを埋め我が国唯一の砂漠を作った 炭のような黒磯の波打ち際 おろし金のような鋭利な岩の刃先が流木を擦りおろしていた 痛みが身体を走り背が震えた 黒砂の浜...
山頂の切り開きに立つ 北に残雪の縁取りが強調された比良連山が見渡せる 南に深皿を伏せたような十二坊山 西には近江富士の三上山が大きい 近隣の低山から遠く琵琶湖を挟んで遠望する湖西の山々まで 痩せ尾根の一角のような頂にしては格別の眺望なり 比良を眺るに 薄霞のかかった琵琶湖の...
道は花崗岩の沢を縫うように渡る 岩盤の表面を洗う流れは盤上を滑らかに研ぎ 曲線美が心地よいU字の水路を穿つ 流れの時はゆっくりゆったり のどかに音楽を奏でていた いつの間にか気づいた 急く気持ちも気負いも消えていることに 滑沢は私の中の起伏をも研いでいたようだ ゆっくり歩け...
武奈ヶ岳 ある日、淡い緑が八雲が原を埋め、あちこちの枝にモリアオガエルの泡が垂れていた ある日、山頂の空を埋め尽くさんがごとく赤とんぼが舞っていた ある日、金糞峠をアサギマダラが飛んでいった ある日、流れる湿原の流れにイワナを見た その日、コヤマノ岳のブナ林は輝く霧氷の花が...
岩を見たくなったら金勝山に登る 新緑の頃が良い 淡い緑が芽吹き始めると足が向く 天井川の土手を遡り 落が滝線の登り口から切り通しを抜け沢を遡る 水は花崗岩の一枚岩の川底を穿ち 柔らかく心地よい曲線をいく所にも描いている 滝は滝壺から見上げるもよし 落ち口から見下ろすもよし ...
残雪に足をとられ半日 山頂には私ひとり 広い空、大きな山の上で白いアルプスを眺めた 孤独など一切なく昂りだけがあった 盛夏の室堂にコザクラが咲き乱れ クロユリがアクセントを作る 岩場ではオコジョも人も駆け回った 辺りは活き活きとしていた 台地の縁から見上げる秋晴れの丸い頂 ...
林床に差し込む陽を浴びるこれを見た時 格好の良さに綺麗だと感じた なんでもない木の根は 日の当たり具合によって美術的な様相に変身する シンメトリーな放射は鋭利な生き物でもあり 未知の生命体にも見えてくる シャッターを切った直後 身の危険を感じた私は一歩下がった するとそれは...
芝の広場を覆う雪面に足跡はない 一面は無垢の白 雪面のスクリーンに欅の影が投影されていた 欅はその立ち姿が良い 幹の立ちが良い、枝振りが良い さて、この雪面を舞台に これからどんな物語が映し出されるのだろうか そんなことを空想していたら カラスの影が欅の上を過ぎ去った
軍艦と呼ばれることもある 台形の大きな山だ 上辺にはカルストの台地が広がる 点在するカレンフェルトは 墓石と言うより庭園の置き石のようである 積雪時には白砂の寺院庭園さながら 残雪時には白兎に黒兎、白燕など雪形が賑やかである 台地の一頂点である鈴北岳からの眺望は鈴鹿一 北部...
深く雪が積もった冬 何度かスキーをつけて登った 峠に上がる斜面には北畑の廃村 唯一残る小さな寺にも厚い雪がかぶっていた 樹上に猿の群れ 真冬のそれらは愛おしく胸を締め付けさえする ブナの尾根を過ぎ、笹峠に出る 峠から見上る南霊仙の斜面を前に 覚悟を決め一足一足板をすり上げ雪...
登るにつれ辺りは暗くなる 八号目から上は雲の中 深い積雪に足取りは捗らない 立ち止まり上方を仰ぐと 黒雲のすぐ下を一頭のカモシカが目に入った 足が腹まで埋まる深雪の急斜面をゆっくりと横切って行った 寒気に冷えきったせい私が感じたのは 野生への感動でも自然の厳しさでもなく 胸...
夜明け前の無風に揺蕩い静かに下界を覆う 青く薄暗い視界に雲の海は谷を埋めていた 朝日がその高みを増すと蠢き始める白雲の群れ 斜面を舐め上がるそれはやがて岩塔を飲み込み 沸々と尾根に湧き上がる 私は足元を脅かす雲を眺めながら行く先の細尾根を眺めた 雲の先陣は西風に煽られ上空に...
削ぎ取られた礫が流れる大斜面 中央の凹部に雪渓が流れ 流れを挟んでオレンジと濃赤の帯が沿う 広大な箕のような地形の底で見上げる秋は 絶妙の配置とコントラストの芸術劇場となる 赤が映える 黄が映える 緑が映える 色映えの下地は灰色の濃淡 配置の妙は岩が成し 圏谷の主役は岩であ...
かつての旗振り中継地、岩戸山に立つ 岩に掘られた矢印の先は甲山 背後は霞の帯に浮かぶ比叡山 旗振り基点はその遥か向こうにある 米の相場は堂島を発し 平野に点在する孤立丘を伝わる 野洲から此処に 荒神山、佐和山に そして終点長浜に 秋の実りの後には こんな壮大で愉快で緊迫した...
蒲生野に雪が降り積もり 街も田畑も白化粧 白い矩形の田畑の辺を車が流れ 雪面に浮かぶ霧も流れていった 大岩の上に立ち寒風を背に東空を見やると 鈴鹿全てが視野に収まり 眼前の白い平野の広がりはどこまでも続く 綿向山の背後に座る雨乞岳はいっそう白く 御池岳の山肌は流れる白縞が心...
緩やかな曲線を描く雪面と深く濃い青空 シンプルでいて十分な色の2元世界 青白の境の心地よい曲線に向かって 風に洗われたまっさらな雪面を登る快感 雪庇の曲線は生理的な快を生起し 踏み込む一歩を躊躇わす 汚さぬようにと吹き付ける横風に抗い回り道 厳しく鋭い襞状の風紋を踏み進む ...
草木が霜で薄白い朝、鏡山の麓を歩いた 霜柱を踏む足裏が心地よい 沢沿いの池は凪ぎ 薄氷が張る池面を瑠璃色の光が切り裂いた 高速の光は枯れた池畔の葦の中に消えていった 宝石のようなカワセミの滑空は 落葉の林と枯れ葦の色の中 異次元から現れたかのようだった 新羅からの渡来人の鏡...
切り開かれた山頂の切り株に腰掛け 青い細帯の琵琶湖と比叡山を眺めている 暖かな陽は地面を照らし足元から我が身を温め 私は眠気と戦いながら上着を一枚脱いだ 冬は去ってはいない ただ、見渡す世界は霞で覆われ つかぬ間の陽気は里山の季節と時を惑わす 私はいつの間にかまどろみ、空想...
山頂は小春日和の陽光に包まれ我が背をあたためる 切り開かれた先には伊吹山と霊仙山が夫婦のように並び 見事なまでに輝く白さで薄霞の上に浮いていた 前景にある杉のてっぺんにメジロが2羽 交互に幾度も飛びたっては戻る行為を繰り返す 意味や目的はわからないものの楽しそうである 私も...
雪の森中で出会う雪坊主 淋しげにこちらを見ている 何か訴えているようで無さそうで こちらも愉快で切なく複雑な心中に戸惑う 雪の森中を歩いているといろんな坊主に出会うのですが その度に目と耳を奪われるのです
迎える朝日は奇岩をオレンジに照らし 頬刺す冷気の中それは暖かだった 遠望するアルプスの山々は薄白の肌を輝かせ 寒々しい頂群も温められていた 石灰岩の巨岩の大きな壁に陽光が当たり 私の幻影が映し出されていた 私は手を振ってみた 呼応するようにそれは手を振った 影の動作は妙に嬉...
位が原までくると息切れが強くなった 1から50カウント そして1から10カウントへ 肩の小屋に向けて スキー板をスライドする動作の連続は 登るにつれ途切れ途切れとなる 胸の鼓動が上着を揺らすとまで言えば大袈裟か 立ち止まる度前屈みで数回喘ぎ そして大きく長い息を吐く 反動で...
溶岩が作ったという台地の上には 分厚い黒い雲が垂れていた 大きな霜がびっしりと張り付いた凍てた岩の上に立つと 雲に手が届きそうだった 岩を降りた私は 大地と黒雲の天井の狭い隙間を横岳に向かって歩を進めた ところどころにある登山道両側の岩には 渦を巻くようにエビの尻尾が張り付...
東北のとある谷深い山 初めて出会った人と山を歩いた 地下たびに倒木にテープを巻いた杖を持ち 立ち姿が真っ直ぐでキリッとしていた 痩せた身体にこけた頬 不安の一抹も感じさせない表情に深い皺が刻まれている 林道をしばし登る 淡々と歩くその動作に無駄は一切ない 沢を下る 頭の位置...
林の手前の川べりで 吹雪に出会った 雪の一片を手にとると 綿毛をつけた虫だった この地に居住経験を持つ人が言った 「もうすぐ雪が降るよ」 虫の名は「雪虫」だと言った 黄金のカラ松の林の中に入った そよっと風が吹き 小さく細い葉が雪の如く林内を舞う 私は降り落ちる葉を首をすく...
ある年、年末に八ヶ岳の天狗岳に登った。 山頂への尾根からヘリコプターが旋回するのが見えた。間もなくヘリから下降する人。 その人が地上に降りるとヘリは行ってしまった。 頂上は強風。5分も居ず下山。 すると先ほどの尾根辺りでヘリが戻ってきた。 ホバリングしながらロープが降ろされ...
陶芸の技に飛びカンナなるものあり ロクロで回転させた皿などの表面に弾力のあるカンナを等リズムで弾ませ削る するとちょうどこの空のような模様ができる この大地のこの空 飛びカンナの模様が奥行きを作り 散策の意欲を高める 急がず焦らず ゆっくりと 模様の始まりを目指して歩いてみよう
綿向山から見た雨乞岳と鎌ヶ岳 霧氷の山として冬季でも県内外からの登山者は絶えない 木々の幹には等間隔に雪がデザインのように貼りつき 枝枝に貼り付いた霧氷は晴天の空に繊細に輝く 遠目には開花した白桜の群落となる この山の標高は覚え...
一年はたったの365日 10年でも3650日 人生100年時代とはいうものの 大病はするし、持病もある あと36年も生きれるはずもなし 親兄弟の例からもよくて10年程度とみている では、どう生きよう 見たいものを見 聴きたい音を聴き 歩きたいところを歩く 出来るだけそうしよ...
北の大地の年若い火山の風景 大きく柔らかい立体感のある曲線が重なり 気持ちの良い奥行きを持った空間を作っている 右手で大きく左から右へ線描するようになぞってみた その腕の動きも心地よい 砂漠のような溶岩台地の向こうには森が始まる 森の境はこれからもゆっくりと近づくのだろうか...
捻くれ者なのに柱状節理が好き 整然と規則正しい様 そういうのに好意を感じる自分がいる 私もこの岩と同じ多面体だからだろう
能郷白山は奥深い山だ。 早朝まだ薄暗いうちに車を走らせ岐阜の揖斐川を遡る。まだ徳山の集落がダムによって湖底に沈む前の頃だった。季節は秋。登山口まではかなり長い道のりだったと記憶している。 登山口の空き地に車を置いて一路前山に登る。これも結構な登りだった。2時間前後かかったの...
散歩先の林道でのこと オニヤンマが水のにじむ地面で踊っていた ちょうどサッカー観戦のサポーターが縦跳びするように オニヤンマはこちらには気づいていないのか 気づいていても無視していたのか スマホで撮影する僕のことはお構いなしで 縦跳びを続けている スマホで様子を収録すること...
10月の下旬だったか、散歩先の森の中の小川をまたぐ橋の上で川面を眺めていると一匹の飛翔体が視界を横切り水面に落ちた。カマキリだと直感した。 ハリガネムシの仕業がすぐに頭をよぎったからだ。 橋から川べりに降り水の中に落ちた生き物を確認した。間違いない、カマキリだ。 カマキ...
昨年、秋も半ばを過ぎた頃、よく行く森の中を歩いていると、視界の右側に背後から前方に一枚の葉が一直線に飛ぶのが見えた。ほとんど風が吹いていなかったこともあり、葉は進路を変える様子もなく僕の目の前5~6メートル先の地面に落ちた。 この時期早い樹種は紅葉し落ち始めている頃。し...
初めて雷鳥を見たのは南アルプス北岳の稜線だった。登山道脇の岩と草の中を集団で歩いていた。親子連れで、雛の母親を追って歩く様は可愛くて愛おしさも感じた。ただ、親の方は地味でウズラみたいな鳥、というのが印象で特別な感情は起きなかったと記憶している。 以後、主に北アルプスで何度か...
石念記強雨 大正十三年八月 昇天之際 赤稔倉田利方 於此石光祈願 読み取りは不確かなれど遭難者の鎮魂のためだろう 所は木曽駒ヶ岳隣の中岳山頂 此処で最も空に近い花崗岩の大岩 百年もの雨雪に、強風に 灼けと凍れの繰り返しに耐えてきた刻字 とても容易には彫れる場所でない 余程の...
褶曲地層を見るがよい 侵食崖を見るがよい 溶岩ドームを見るがよい そして、この節理を見るがよい 人が想像するエネルギーなどしれたもの トコロテンのように いとも容易く岩壁から押し出された岩柱 大地の力のいたずらは 夜の花火に負けず劣らず美しい 規則正しい自然のハニカムは 1...
芒秋と言う言葉はあるのかしら 麦の穂が黄金になる麦秋は夏の初め 風に揺らぐ麦穂の波は美しい 秋も最中、高原の斜面に広がる芒(ススキ)の 黄金の波もまた美しい 高山を越え、盆地を越えた風は 緩やかな高原を這い上がり 波打つススキにそれを表す そして 午後の逆光は煌めきと陰影の...
蒲生野は広い 空も広い 蒲生の名はこの地をおさめた蒲生氏由来かと思いきや 日本書紀にもうその名があることからもっともっと遡るようだ 白村江での敗戦後、百済の人たちが700人もこの地に入植したのだとか ひつじ雲が蒲生野の空を埋める 秋の空の醍醐味だ 百済の人も蒲生氏も この空...
美ヶ原に奇妙な地名あり 王ヶ頭(おうがとう)に、王ヶ鼻(おうがはな) 台地が王様でその頭と鼻、ということなのか なぜに美ヶ原が王なのか 由来は知らねどそこから望む山々の見晴らしは良い とりわけ大地の突端にせり出した王ヶ鼻は 北アルプス方面の遠望に優れる ちょいと外れにあるの...
気持ちの良い秋晴れに並ぶ岩 ゴリラとフランケンシュタインに見えないこともないが なんと言うことのない岩 だけど何かしら 心地よさを感じる 形が良い 並び姿が元気だ 空は青くて 足元は盛る紅葉に深い緑 明快さは生理的な心地よさを生む グループ化(群化の法則) 単離(対象の強調...
錦秋の月山で修験者の一団に会った 登山靴やリュックは一見ミスマッチながら 白装束で木の杖を持つ姿はなんとも厳粛な雰囲気を持つ 中には鼻下、顎に立派な白髭を蓄えた年配者がいたりするとより一層厳かである 以前御嶽山では「六根清浄」を唱和しながら登る一団を見かけたこともある 身近...
後方の名峰に張り合うかのように屹立する岩峰 此処を起点に これから奥の先鋒まで歩く 空気は澄み凛と冷える 見渡す周囲の頂の薄化粧が朝の斜光に輝き 薄白にオレンジの色重ねは朝の目に暖かい 長い尾根道を進むとあたりの化粧はいつの間にか溶け 地肌が昨日までの色に戻っている 左右に...
双六岳の砂漠を歩いた 緩い半円丘に上がり水平道で振り返ると まさにこの山ならではの景観があった 円と三角錐 緩い曲線と鋭角な岩峰 対照的な山の景観で知られた地 再び向き直り頂上を目指す どこがトップかわからぬが 早く登ってこいと 雲が催促していた
双耳峰として思い浮かぶのは 鹿島槍に谷川岳 それにこの山 それぞれ単独の山としてあるものの こうして見る限り 二山に勝る立派な双耳峰である 大きな山だ 澄んだ秋の空気の高山の稜線は気持ちが良い 長い道のりも苦にならない この先、南岳を下り天狗原に出る モレーン末端の池あたり...
錦秋とはよく言ったものだ 錦の敷物を敷き詰めた斜面に 分厚い雲の間から陽が差し込んだ 錦の尾根に扇状谷が「流れ」を作る 雲間に差し込む刹那の光景は 晴天下のそれよりも迫力で印象が強い ここは立山、雷鳥沢 三山縦走後に下った沢で見事な秋に会い 足の疲れを忘れてしまった
夜明け前に小屋を出た 今朝の目的は登る朝日の反対側 澄んだ空気の中、紅葉期の赤みを帯びた槍がドンと迎えてくれた 私は今、ピラミダルな影の頂点にいる 朝日を浴びて背中が暖かい しばらくの間、岩に座して眺めていると 影の背は縮んでいった そろそろ僕は影の頂を下ろうと思う さて、...
三十数年前、山登りを始めて数年経った頃、鈴鹿の雪山の峠で一服しているとすぐ数メートルの眼前を立派な角のある鹿が雪を蹴って跳ね去った。 野生との出会いの感動の一瞬で、厳しい環境に生きる生命の厳かさを感じる瞬間だった。 その後、登ったあちこちの山で出会ってきた鹿。今では増えすぎ...
御嶽山でのこと。頂上には昼の早い時間に着いた。このまま頂上付近の小屋に泊ったのでは時間をもてあます。そこで五の池まで足をのばし、そこの小屋に泊ることにした。 頂上より賽の河原を経て五の池方面に。下りとはいえほどほどの疲れが出ていた。小屋に着きやれやれ。土間を箒で掃いているお...
一の越から雄山に登り別山まで縦走してきた 秋の澄んだ空気に明瞭な威厳を表していた剱岳 ようやく近づいたかと思うといけずをして霧の中 濃さを増すにつれ諦め下ろうかと思っていると うっすらと八峰の一部が明けきた ドキリとした 2列の支尾根がゴジラの背だった 背ビレが霧の中で動い...
黒部三山と勝手に名付けた 三俣蓮華岳からの三山の並びが気に入っている 鷲羽岳、ワリモ岳、水晶岳 北アルプスの奥、ど真ん中と言ってもいい 黒川源流の山々 谷底は黒部川の源流 頂上から下界を俯瞰するのもいいが 僕はやはり山の連なりを見るのが好きだ それもこのような立派なのが並ん...
僕の縦走計画を聞いた知人は言った 「黒部五郎のカールではしっかり時間を取りなさいよ!」 山頂からカールに降りると知人の言った意味がよくわかった すばらしい庭園だった 岩の形と配置が絶妙で禅の香りも感じる空間 まるで誰か達人がコーディネイトしたかのような気持ちの良いすり鉢の中...
薬師は大きい山だと聞いていた 太郎平から北ノ俣岳に向かう尾根から見たそれは その通りのどっしりとした見事な座姿だった これは山の写真を始めた頃の気に入りの薬師岳 実際に登ってみるとさらに大きさが体感できる 久しぶりにこの写真を見た時 山頂近くのコアラに気づいた 何度も見てき...
「富士には月見草がよく似合う」 太宰治 「白山にはナナカマドの実がよく似合う」 私
雪に匂いはあるだろうか。雪の降らない故郷を出て以来幾度も降り積もる雪を体験し、また雪山に登るようになって20年以上が経つが雪というものの匂いを感じたことはない。雨に匂いを感じてこなかったように。 しかし、どうも雪には匂いがあるようなのだ。 長男が5歳になるかどうかという時...
山を登っていてあるところまで登るとそれまで聞こえていた下界の音がすっと聞こえなくなる。逆に山頂から降りていてあるところまで降りると急に電車や車の音が聞こえ出すということがある。聞こえる聞こえないの境目が割とはっきりしているのだ。 空気の振動が山の斜面を這い上がるうちに拡...
夕暮れの尾根で見る広大なスクリーン一面の赤、夏の濃緑と雪渓の白に空の青、山腹の花畑に咲くチングルマの白やフウロの薄紫、深い暗闇にきらめきながら降って来る星々、山で見る光景と色には強く心を動かされる。それが山登りという行為への最大の動機であろう。 内に深く作用する世界は単に視...
廃村の今畑より登り笹峠でいっぷく 南霊仙山頂への急登の中ほどにこの遺跡がある 神事に被るマスクのような顔 未知な動物の骨 辺りはこのような出土物が無数に晒されている 石灰岩の墓跡群が風化されたなれの果て 荒涼感さえ感じる斜面の遺跡は 朝陽の中、人知れず琵琶湖を遠望する
時が止まり 物質の相転移が起こった 斜面を這い上がる波は石化し 地の隆起とともに平野を見下ろす尾根となる 琵琶湖を見下ろす此処には 長い旅路の過去が今も残っている ※琵琶湖はおよそ400万年前より三重県伊賀の地から現在の地まで移動してきたとのこと
ロックバランシングという石積みアートがある これを見た時そのアートのことを思い出した 足指に大きな岩を乗せてバランスを取っている 誰かがバランス遊びをしているよう 隣の松も呼応してクネっているのがまた面白い 青空下のなんとも陽気な光景に下山の脚を止めて微笑んでしまった
何なのだろう? 多分、「左義長」関連のつくりものだとは思うんですが... 以前の勤め先にあったモニュメント 同僚は「ジブリ」と呼んでいたけどジブリに関係あるものなのかな? 近江八幡の河原ミュージアムの枝垂桜の下にあった顔 ユーモラスでかわいい 以上3枚、組写真とし写真展に応...
西に三上山、東に鏡山、その間にちょうど両親に守られるかのように天山はある。散歩のついでによく登る里山の一つだ。 山頂に続く尾根に見晴らしの良い岩がある。その展望岩の上に立つと琵琶湖の南端から北端までが見渡せる。南は瀬田あたりから、手前の山にところどころ分断はされるものの奥...
隣の国見岳の頂上近くにはナマズがいた こっちの頂上にはスッポン 西の峠をみじろぎひとつせず見張っている 鈴鹿御在所岳の番人は2匹の亀さんでした 亀といえば外来種アカミミガメがこのほど特定外来生物に指定され 野外放出の規制や駆除がより進められるようである 滋賀県でも湖沼や川で...
鈴鹿、武平峠より御在所岳に登る 半ばにあるガレ場の岩頭に立つと 谷を挟んだ向こう斜面にウイスキーの顔があった あのおじさんの名は「アンクルトリス」 この間、アンクルトリスの絵が欲しくてトリスクラシックを買った 中身はもちろん数日で無くなり、今は瓶だけを飾っている 日頃からウ...
山頂から東の空を望む あの立派な輝きは我が星の兄弟、金星だろうか もう間も無く光の源球が茜の縁から登ってくる そうすればあの星の輝きは青空に溺れ消え 地上の街の灯も白光にのまれてしまうだろう この刹那の光景を見る間 展望者の心は寝起きの揺らぎを鎮め、感度を研ぐ そして、星も...
もうかれこれ30分 霧の中を歩いている ブナ林に入った 幻想的でありとても趣きがある 晴れているよりいいかも と、思ったもののなんとなく不安にもなった この先この霧界を進んで良いものか 戻れるのだろうか 何かが出てきたらどうしよう この先が、今日でなかったらどうしよう 山...
「んっ 歯が痛むの? どれどれ口をあけてごらん」 「あ〜ん イタッ イタッ」 「ほお 奥歯が虫食っておるわい こんな山の中に甘いものでもあるのかね?」 「甘かったよ 登山者が落とした茶色い板」 「それはチョコレートというのじゃ」 「チョコレット?」 「チヨコレイト!」 ...
神社の祠への参道沿いにあったお供え物 なんとも可愛らしくて微笑ましい 行為の主は子供かな でなければ、その心を持った誰かでしょう
寺の入り口の水鉢に一輪 蓮の蕾が伸びていた ハッとした 蕾の先の水滴の清々しさは まさに開かんとするこの期にふさわしい輝き 門前に咲く一輪の澄んだピンクの大輪 その絵を頭に描き門をくぐった
8月の末から9月に入る頃、森の散歩道に木の葉付きのドングリが落ち始める。あるコナラの樹下の地面は、落とされた葉とドングリで敷き詰められている。それらは落葉ではなく木の病気によるものでもない、犯人はチョッキリだ。 チョッキリはゾウムシの仲間。僕が散歩する森で見かけるコナラの実...
秋口の里山を歩く時の必携道具に木の枝がある。1メートル前後の長さでやや弓なりになっている方がよい。用途は蜘蛛の巣払いだ。 この時期の山道はまさにトラップだらけである。人通りの少ない道や朝一番の通行はこのトラップの餌食になりやすい。それらの高さは道の両側の草木の張り出し方によ...
空が破れる 昔のバンドの曲にそんなような歌詞があった 茜の空を背景に岩峰を眺める すると空が破れていた 破れの奥は漆黒 果てのない闇がある 歌では破けた空は青空 裂け目からは「あいつ」が降りてくるのだと この茜空の裂け目からは 何が降りてくるのだろう
乗鞍岳の山頂 空が近い 流れる雲の合間に深い青空 その一角で見つけた指紋 誰かが青空に触れたようだ
聞こえてきませんか ファンファーレ 山の向こう側から賑やかに鳴り響いてくる 何が始まるのだろう 気持ちがはやり 足を速めて鞍部に急いだ
近江、湖南アルプス金勝山は奇岩の宝庫 風雨に洗われた奇岩群は人間の所業によるところ大なり 始まりはおよそ1300年もの前 この辺り一帯から奈良の神殿や寺院建立のため材木が切り出された 以降も伐採が続けられ、明治時代にはほぼ禿山と化してしまった この地から琵琶湖に流れ下る川が...
だんご3兄弟なる歌が流行った もうかれこれ20年も前になるだろうか タンゴ調の曲だった 高原の一角にタンポポの群落があった たくさんの綿毛の球が光り輝いていた その中にこの3兄弟を発見 タンゴの曲は聞こえなかったけど 楽しげな兄弟だったなあ (そういえば、国民年金未納3兄弟...
画像 ーウイキペディアより拝借 夏の白山、南竜山荘の玄関前でのこと。近くにいた父子の父親の方が目の前の草に飛来した蝶を見て誰に聞くともなしに「何て言う蝶だろ?」と言った。そばにいた僕はすかさず「アサギマダラ」と答えていた。すると...
馬越峠の石畳 (上下2枚) 熊野古道の一部、伊勢路の苔 さぞ多くの旅人に踏まれてきたのだろうな 赤目四十八滝は苔の名所なり (下4枚) 渓谷全体が苔に包まれる 鈴鹿、御池岳日本庭園付近 足の踏み場に躊躇いを覚える苔の台地 石川、白山神社の老木 木漏れ日がアートを作っていた...
日本には1000種以上の苔があるらしい 僕は苔男ではないが (最近「苔女」なる女性苔マニアが多いそうな) 山でふと目にした苔を写真に収めることがある ふわふわの質感が視覚を喜ばせる マニアは「モフモフ」と表現する じっくりと見ると苔はミニチュアの樹木 僕たちが杉やら檜を見...
幹を抱き抱えるに3人でもおぼつかない杉の大木 老木の皺を隠すように鮮緑の化粧苔 湿り気を帯び蝋の皮膜を纏ったかのような樹皮は その艶に反して相応の年齢を感じさせる ここは苔の世界 老木のみならず 石垣も灯籠も石仏も石畳も 瑞々しい苔を纏っている 曹洞宗大本山永平寺が苔の名所...
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視野の左から雨乞岳と綿向山 正面から右に高畑山から油日岳への南鈴鹿連山 右に飯道山と阿星山、そして右隅に三上山 尾根上の大岩の上から眺める山々の並び 古代の人たちも眺めたに違いないこの景観 氏長の墓を造るため幾度も幾度も目にしたであろうこの広がり 山頂空間は前方後円の型をな...
火口に向かう水平道から揺蕩う雲海を眺めた ガスの隙間から差し込む光の中それは生き物のようであった 斜面の下方にある街は雲に蓋をされ望むことが出ない かわりに雲海の上にいく筋もの光柱が賑やかな空を作っていた 黒い礫の流れる斜面にオンタデの点在 雲間から差し込む光に黄葉は輝き ...
ザックザク 踏みしめる一歩ごとに軋る音 踏み出した足は流され労力と歩速の半分は削がれる たどり着いた石炭のボタ山のような丘から眺める荒涼感 ここは我が国由一の「砂漠」 通称「裏砂漠」 この砂漠は黒い 砂漠の正体はスコリアと呼ばれる玄武岩質の礫 火山からの噴出物である 黒土に...
私は老木。 老化のせいで樹皮の入れ替えが遅くなり彼等に住われてしまった。 言ってみれば我が身は無断借用されている状態なのだが おかげで老樹としての威厳という利益は得られていると言って良い。 苔に便乗して着生しているヒゲのようなノキシノブも より厳粛さを増すのに一...
身の丈を超える笹をかき分け三角点に這い出た その時目に飛び込んできたのは 深く遥かなやまなみ 遠くに御在所岳、雨乞岳、綿向山、イブネにクラシに御池岳 私が見た最高の水墨画 午後の陽に照っている生命感のある笹の向こうに 薄墨で引いた見事な稜線の重なりとグラデーションがあった ...
(再掲) 夏が来れば思い出す遥かな涸沢、青い空 私の場合、夏は尾瀬ではなく穂高である 遠い夏の遠い穂高 40年前に出会ったこれ以上のない夏の色を思い出す 明神、徳澤を過ぎ 3つめの分岐の横尾で川を渡ると涸...
広い平野に残る孤立丘とも呼ばれる小山 視認は近江の各地にとどまらず古都や摂津の山からも容易い 季節は夏、ある日の気まぐれな登山 三上山肩の東光寺に抜ける峠に出るとぐるりが展け 南に緑濃い左右対称の見事な三角錐が迫っていた 頂点の上には梅雨明けの抜けるような青空が深く 明確な...
行く先は 朝霧の中 樹間より差し込む光の筋の中で 白霧が揺らいでいる 濃霧の林道はどこに通じているのだろうか ひんやりとした空気の中、歩を進めると ふと午前か午後かも不確かとなり 自身の見当識が失われていることに狼狽えてしまった 谷を遡り尾根に出る頃 霧は朝日の温もりの中...
妙光寺山 谷を遡りびわ峠に出ると西風がそよと吹き 首筋の滲んだ汗を飛ばしてゆく 扇に広がるびわ湖の方面を望むと 薄光る湖面の上に薄墨の比良山が映し出されていた 古代峠の噴石によじ登り近江富士を仰げば シンメトリーな三角は一段と明確だ 裾の流麗な曲線が気品良く優雅で この地の...
乳白の視界の向こうにうっすらと揺らぐ木立の影 幽玄な里の朝霧は次第に晴れゆき渓谷に入るともう空は青かった 小橋の下から水量の伝わる轟音が響き 花崗岩の白い川底の上を澄んだ碧水が流れ下る 林道の瑞々しいアザミが足元に棘葉を伸ばし早る気持ちを鎮めてくれた 尾根へのつづら折りに蝮...
山は城で城は山 観音寺城は山の上、最古の山城だと言う 雑木の中の急登を大石垣に向かう 木漏れ日にシマヘビが体を温め 幾つかの朽ちた切り株からシロアリが飛翔 上空では燕が群れ舞っていた 東の箕作山との間は枡目の田畑 麦畑は濃い緑の敷物で 水張りの田は空を写す水鏡となる 両者の...
広い平野に残る小山 孤立丘とも呼ばれる 視認は近江の各地にとどまらず 古都や摂津の山からも容易い この地の旅人には 旅の帰途に安堵を与える釣鐘となる 一年の計をこの山から始める人は多い かつては私自身もそうであった 冷気が顔を刺す薄闇に 昨夕より降り積もった雪を踏みしめなが...
雪のあるうちに登ってみたかった 諏訪から遠望する焼けた冠雪のそれは 美しく荘厳に輝いていた 朝日に照る眼前の阿弥陀岳は絵画のようにおさまり 登攀の意欲を高める 澄んだ空気の中息を切らして地蔵峠に這い上がった ピッケルとアイゼンを効かせ硬い雪面を踏みしめる 山頂上空の薄曇は低...
雑木が両側から生い茂り屋根を作る林道 角を回ると見通しの良い直線に出た 薄暗い林道の先に光の柱が一本 歩を進め近づくと光柱の中に無数の点滅する光が舞う ゆっくりとゆっくりと煌めく映像 やがて光の粒は波のように密度を変え舞い落ちる まるでイリュージョンのようであった 光の差し...
岩目は青空を透かし 白い岩肌は水を欲す この岩を見た時「ジャミラ」だと思った 孤独で哀しい過去を持つ 悲しきウルトラ怪獣 水の侵食に脆い石灰岩 ジャミラは待ち焦がれた水をたっぷりと得ると 皮肉にもその身を溶かしてしまうのだろう ああ哀しい物語り ...
島牧村は海岸線の崖の薄い縁にある小さな村 その外れの漁港近くにモッタ温泉はある 一軒宿である 小さめの浴槽ながらラジウムを含む泉質が良く ぬるめの露天で1時間以上も浸かって海を眺めた 裏山の海岸線に並行する崖の上で地質調査を手伝った 40分程崖を巻く山道を登り調査にかかる ...
八幡山 二の丸 登山道はふかふかの落ち葉道 神社の裏手を尾根まで登ると小楢の大木が待っていた 木々の間は明るく気持ち良い尾根道が続く 苔むした石垣の立ち上がり 一輪のショウジョウバカマが木漏れ日に首を伸ばし 冬の終わりを宣言していた 瑞龍寺境内の切り開きに立つと一気に世界は...
積雪の後をねらい峠を目指した 雪の国道をひたすた登る 遡るにつれ谷は深く、流れる水は深く碧い 雪で閉ざされた道に人気はなく鹿の足跡が寂しい 国境の峠にスキーをデポしつぼ足で山頂を目指した 雪の急登は消耗した体力を容赦なく奪い取る だが、頂まで意欲は削げることはなかった 白く...
私は今「時間」を見ている 目を見張るこの断面 一層が150年から200年と言う 眼前にはいったい何年分の時が積まれているのだろう 各層の堆積は火山の噴火によるもの 褶曲によるものではないとのこと 見る部分、角度によって印象が変わる 正面に立つと樹木の年輪や愛称どおりバームク...
黒磯と黒砂の浜、そして黒い砂漠 地下深くからの噴出物が作った黒の世界 マグマは斜面を流れ下り黒磯と浜を作る 山上ではカルデラを埋め我が国唯一の砂漠を作った 炭のような黒磯の波打ち際 おろし金のような鋭利な岩の刃先が流木を擦りおろしていた 痛みが身体を走り背が震えた 黒砂の浜...
雪のあるうちに登ってみたかった 諏訪から遠望する焼けた冠雪のそれは 美しく荘厳に輝いていた 朝日に照る眼前の阿弥陀岳は絵画のようにおさまり 登攀の意欲を高める 澄んだ空気の中息を切らして地蔵峠に這い上がった ピッケルとアイゼンを効かせ硬い雪面を踏みしめる 山頂上空の薄曇は低...
雑木が両側から生い茂り屋根を作る林道 角を回ると見通しの良い直線に出た 薄暗い林道の先に光の柱が一本 歩を進め近づくと光柱の中に無数の点滅する光が舞う ゆっくりとゆっくりと煌めく映像 やがて光の粒は波のように密度を変え舞い落ちる まるでイリュージョンのようであった 光の差し...
岩目は青空を透かし 白い岩肌は水を欲す この岩を見た時「ジャミラ」だと思った 孤独で哀しい過去を持つ 悲しきウルトラ怪獣 水の侵食に脆い石灰岩 ジャミラは待ち焦がれた水をたっぷりと得ると 皮肉にもその身を溶かしてしまうのだろう ああ哀しい物語り ...
島牧村は海岸線の崖の薄い縁にある小さな村 その外れの漁港近くにモッタ温泉はある 一軒宿である 小さめの浴槽ながらラジウムを含む泉質が良く ぬるめの露天で1時間以上も浸かって海を眺めた 裏山の海岸線に並行する崖の上で地質調査を手伝った 40分程崖を巻く山道を登り調査にかかる ...
八幡山 二の丸 登山道はふかふかの落ち葉道 神社の裏手を尾根まで登ると小楢の大木が待っていた 木々の間は明るく気持ち良い尾根道が続く 苔むした石垣の立ち上がり 一輪のショウジョウバカマが木漏れ日に首を伸ばし 冬の終わりを宣言していた 瑞龍寺境内の切り開きに立つと一気に世界は...
積雪の後をねらい峠を目指した 雪の国道をひたすた登る 遡るにつれ谷は深く、流れる水は深く碧い 雪で閉ざされた道に人気はなく鹿の足跡が寂しい 国境の峠にスキーをデポしつぼ足で山頂を目指した 雪の急登は消耗した体力を容赦なく奪い取る だが、頂まで意欲は削げることはなかった 白く...
私は今「時間」を見ている 目を見張るこの断面 一層が150年から200年と言う 眼前にはいったい何年分の時が積まれているのだろう 各層の堆積は火山の噴火によるもの 褶曲によるものではないとのこと 見る部分、角度によって印象が変わる 正面に立つと樹木の年輪や愛称どおりバームク...
黒磯と黒砂の浜、そして黒い砂漠 地下深くからの噴出物が作った黒の世界 マグマは斜面を流れ下り黒磯と浜を作る 山上ではカルデラを埋め我が国唯一の砂漠を作った 炭のような黒磯の波打ち際 おろし金のような鋭利な岩の刃先が流木を擦りおろしていた 痛みが身体を走り背が震えた 黒砂の浜...
山頂の切り開きに立つ 北に残雪の縁取りが強調された比良連山が見渡せる 南に深皿を伏せたような十二坊山 西には近江富士の三上山が大きい 近隣の低山から遠く琵琶湖を挟んで遠望する湖西の山々まで 痩せ尾根の一角のような頂にしては格別の眺望なり 比良を眺るに 薄霞のかかった琵琶湖の...
道は花崗岩の沢を縫うように渡る 岩盤の表面を洗う流れは盤上を滑らかに研ぎ 曲線美が心地よいU字の水路を穿つ 流れの時はゆっくりゆったり のどかに音楽を奏でていた いつの間にか気づいた 急く気持ちも気負いも消えていることに 滑沢は私の中の起伏をも研いでいたようだ ゆっくり歩け...
武奈ヶ岳 ある日、淡い緑が八雲が原を埋め、あちこちの枝にモリアオガエルの泡が垂れていた ある日、山頂の空を埋め尽くさんがごとく赤とんぼが舞っていた ある日、金糞峠をアサギマダラが飛んでいった ある日、流れる湿原の流れにイワナを見た その日、コヤマノ岳のブナ林は輝く霧氷の花が...
岩を見たくなったら金勝山に登る 新緑の頃が良い 淡い緑が芽吹き始めると足が向く 天井川の土手を遡り 落が滝線の登り口から切り通しを抜け沢を遡る 水は花崗岩の一枚岩の川底を穿ち 柔らかく心地よい曲線をいく所にも描いている 滝は滝壺から見上げるもよし 落ち口から見下ろすもよし ...
残雪に足をとられ半日 山頂には私ひとり 広い空、大きな山の上で白いアルプスを眺めた 孤独など一切なく昂りだけがあった 盛夏の室堂にコザクラが咲き乱れ クロユリがアクセントを作る 岩場ではオコジョも人も駆け回った 辺りは活き活きとしていた 台地の縁から見上げる秋晴れの丸い頂 ...
林床に差し込む陽を浴びるこれを見た時 格好の良さに綺麗だと感じた なんでもない木の根は 日の当たり具合によって美術的な様相に変身する シンメトリーな放射は鋭利な生き物でもあり 未知の生命体にも見えてくる シャッターを切った直後 身の危険を感じた私は一歩下がった するとそれは...
芝の広場を覆う雪面に足跡はない 一面は無垢の白 雪面のスクリーンに欅の影が投影されていた 欅はその立ち姿が良い 幹の立ちが良い、枝振りが良い さて、この雪面を舞台に これからどんな物語が映し出されるのだろうか そんなことを空想していたら カラスの影が欅の上を過ぎ去った
軍艦と呼ばれることもある 台形の大きな山だ 上辺にはカルストの台地が広がる 点在するカレンフェルトは 墓石と言うより庭園の置き石のようである 積雪時には白砂の寺院庭園さながら 残雪時には白兎に黒兎、白燕など雪形が賑やかである 台地の一頂点である鈴北岳からの眺望は鈴鹿一 北部...
深く雪が積もった冬 何度かスキーをつけて登った 峠に上がる斜面には北畑の廃村 唯一残る小さな寺にも厚い雪がかぶっていた 樹上に猿の群れ 真冬のそれらは愛おしく胸を締め付けさえする ブナの尾根を過ぎ、笹峠に出る 峠から見上る南霊仙の斜面を前に 覚悟を決め一足一足板をすり上げ雪...
登るにつれ辺りは暗くなる 八号目から上は雲の中 深い積雪に足取りは捗らない 立ち止まり上方を仰ぐと 黒雲のすぐ下を一頭のカモシカが目に入った 足が腹まで埋まる深雪の急斜面をゆっくりと横切って行った 寒気に冷えきったせい私が感じたのは 野生への感動でも自然の厳しさでもなく 胸...
夜明け前の無風に揺蕩い静かに下界を覆う 青く薄暗い視界に雲の海は谷を埋めていた 朝日がその高みを増すと蠢き始める白雲の群れ 斜面を舐め上がるそれはやがて岩塔を飲み込み 沸々と尾根に湧き上がる 私は足元を脅かす雲を眺めながら行く先の細尾根を眺めた 雲の先陣は西風に煽られ上空に...
削ぎ取られた礫が流れる大斜面 中央の凹部に雪渓が流れ 流れを挟んでオレンジと濃赤の帯が沿う 広大な箕のような地形の底で見上げる秋は 絶妙の配置とコントラストの芸術劇場となる 赤が映える 黄が映える 緑が映える 色映えの下地は灰色の濃淡 配置の妙は岩が成し 圏谷の主役は岩であ...