「骨董商Kの放浪」(19)
濃紺に白い小さなドット柄のワンピース姿が目の前にあった。立った襟がクラシカルな雰囲気を醸し出している。彼女は、いったん赤絵の皿に目を向けたあと、ゆっくりと僕の顔を見た。「とても気に入ったので、これをいただけますか?」唖然としていた僕は我に返り、「あ、ありがとうございます」と慌てて頭を下げる。彼女はクスっと笑って、名刺を差し出す。名前をSaeと名乗った。名刺の下には電話番号が記されてある。「ここに連絡ください。すぐにお支払いしますから。そうしたら、届けてくださるでしょ?」僕は両手で名刺を掴みながら「は、はい」と答える。僕が「あの…、眼鏡…」と言うとSaeは「普段はコンタクトなの」と笑い、「では」…
2022/08/26 19:29