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骨董商Kの放浪 https://kottousho.hatenablog.com/

大学卒業後1年もたたずに退社し、その後骨董商をめざす主人公Kが、美しくそして妖しげな骨董品をとおして、それに関わるさまざまな個性的な収集家、同業者などの人たちと織りなす創作小説。魅惑的な骨董品を巡る群像劇をお楽しみください。

立石コウキ
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2022/03/17

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  • 「骨董商Kの放浪」(16)

    N婦人の一件があったあと、僕はしばらく家に引き籠っていた。婦人との出来事もあったが、あの李朝(りちょう)白磁を見極められなかったショックもあったわけで。あんなに、東博や民藝館や、大阪まで行って数多くの李朝白磁を見てきたはずなのに。「やっぱり、やきものは、手に取って見ないと駄目だ」僕は、骨董の難しさを痛感していたのである。 僕は頭を整理するために、先ず、時おり立ち寄る京橋の朝鮮陶磁専門店に電話をかけ訊いてみた。店主は、「あれか。美術俱楽部に出ていた瓶ね。あれは、悩ましいものだけど、やっぱり難しいだろうね。膚(はだ)の質感と手取りの重さがね」との感想。僕はそれを聴いて、支店長のあの瓶をもう一度見た…

  • 「骨董商Kの放浪」(15)

    僕は再び椅子に座り、長い年月をかけて磨き上げられ、艶光りしている重厚な木製のテーブルの上に両手を置いた。そこへN婦人が、古い箱を持って現れた。そして中身を取り出して卓の上にのせた。 それは、李朝(りちょう)白磁の角瓶だった。18~19世紀くらいか。この間、支店長の部屋で見たものと同じような形だ。ただ、これはちゃんと頸(くび)がともなっている完形品で、寸法もやや大きい。四面とも横15センチ、縦20センチほどの同サイズの板を張り合わせた造りになっていて、肩部は斜めにそがれ、上面の中央に2~3センチの短く細い頸が付く。面の取り方がシャープで、堂々とした風格を感じさせる。白磁の色も、この時期特有のやや…

  • 「骨董商Kの放浪」(14)

    皆の雑談がおさまった頃、いきなり司会役のあの贋物(がんぶつ)爺さんが立ち上がって挨拶。この手の爺さんはこういうときに必ずしゃしゃり出る。三代目に感謝の意を込めてのやや長めのスピーチ。僕は仕方なく聴きながら周りを見る。参加者のほとんどが女性だ。僕と同卓の向かいに、あの眼鏡の女性の姿もある。スピーチが終わり、ようやく食事が開始された。 「今日は素晴らしかったわ。清朝(しんちょう)官窯(かんよう)」N婦人は言う。「特に、あの明るい黄色一色の小さなお皿。品格があったわ」確か、三代目がその色を「レモンイエロー」と形容していた。「それと、もう一つ。鮮やかな桃紅色をした小瓶。あの色をピーチブルームと言ってい…

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