chevron_left

メインカテゴリーを選択しなおす

cancel
骨董商Kの放浪 https://kottousho.hatenablog.com/

大学卒業後1年もたたずに退社し、その後骨董商をめざす主人公Kが、美しくそして妖しげな骨董品をとおして、それに関わるさまざまな個性的な収集家、同業者などの人たちと織りなす創作小説。魅惑的な骨董品を巡る群像劇をお楽しみください。

立石コウキ
フォロー
住所
未設定
出身
未設定
ブログ村参加

2022/03/17

arrow_drop_down
  • 「骨董商Kの放浪」(13)

    3月の初旬の或る日の午後、三代目の次の講義に向けて予習をしていた僕は、気がつくと、うたたねをしていた。その心地よい眠りを、携帯の着信音が妨げる。見ると才介からだ。僕は少々ムッとしながら「何だよ」と出ると、才介は大きな声で「寝てたのか?おい、K!寝てる場合じゃねえぞ。朗報だ!」と興奮している。訊くと、福井の最初の旧家から仕入れてきた掛軸の一本が高く売れたらしい。「どういうこと?」の問いに「だから、残りもんに福があったってこと!」と依然興奮気味。よく訊くと、師匠が、知り合いに頼んで美術俱楽部の市(いち)に出品したところ、10点のなかの1点が中国の古画だったようで、これが何と600万で落札されたとの…

  • 「骨董商Kの放浪」(12)

    師匠は、軸を箱に戻すとそれを手にし、土蔵の入口に立っている当主のところへ行き頭を下げた。「どうか、これを譲ってください」当主はあきれたように、「さっきも言ったじゃない。何ひとつ売るつもりはありゃせんよ!」中肉中背の50代半ばの当主は、毛皮のコートに手を突っ込みながらぞんざいに言いはなつ。「あっちの方は、たたむようですがな。こっちは跡取りもおるし、そんな気、毛頭ないので、早よ、お引き取りしとっけんか!」と土蔵の扉を開けた。師匠は回り込んで、当主の前で土下座をした。「お願いいたします!」それを見て当主は苦笑し、「どもならんよ。突然来て」当主が歩を進めると、師匠は這いつくばるようにしてそれを追う。「…

  • 「骨董商Kの放浪」(11)

    ひと月前に、才介から言われた「あんた、中国美術を学んでくれよ」の提案を受けて、僕はそれを実行に移そうと考えていた。日曜日になると余計に届くチラシのなかから、或る文化講座のお知らせをみつけたのが、先月の中旬である。『中国陶磁勉強会』と題した講座が、1月から3月にかけて、隔週で計6回行われる。第1回が「古代」、続いて「隋・唐時代」、「宋(そう)時代」は2回にわたり、「元(げん)・明(みん)時代」、最終回が「清(しん)時代」と中国1万年ともいわれる陶磁史をわずか三カ月で修得できる、何と効率の良い講座があることを知り、早速に申し込んだ。講師は、大学の教授でもなく、美術館の学芸員でもなく、骨董商であるこ…

arrow_drop_down

ブログリーダー」を活用して、立石コウキさんをフォローしませんか?

ハンドル名
立石コウキさん
ブログタイトル
骨董商Kの放浪
フォロー
骨董商Kの放浪

にほんブログ村 カテゴリー一覧

商用