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骨董商Kの放浪 https://kottousho.hatenablog.com/

大学卒業後1年もたたずに退社し、その後骨董商をめざす主人公Kが、美しくそして妖しげな骨董品をとおして、それに関わるさまざまな個性的な収集家、同業者などの人たちと織りなす創作小説。魅惑的な骨董品を巡る群像劇をお楽しみください。

立石コウキ
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2022/03/17

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  • 「骨董商Kの放浪」(10)

    才介は、帰りの車のなかで、終始不機嫌そうだった。しばらく続く一本道を片手ハンドルで進めながら、「あのジジイ、ろくな仕事もってこない上に、手当も少ねえ、いっつもだ」才介はちらっと助手席の僕に目をやったあと「あんたも、そのつもりでやるんだな」と言う。「知り合いの人が、目利きだって言ってたけどな、師匠のこと」この僕の発言に才介はふっと笑って、「目利きには間違いないだろうが、商売の仕方がきれいじゃねえ」バックミラーをちらっと見たあと「おれは正直組みたくねえんだ」と、アクセルをやや踏み込む。それから、急に顔つきを変え「ただな、ちょっとした噂を耳にしてな」才介の細い眼がうっすらと輝く。「先月新券が出ただろ…

  • 「骨董商Kの放浪」(九)

    この秋、東京国立博物館で開催されている『中国国宝展』に出向いた。この展覧会には、仏教彫刻を中心に、近年中国本土で出土した国宝級の文物が出品されている。なかでも、僕の目を惹いたのは、むき出しに展示されている、3メートルを超える巨大な如来三尊の石彫であった。何しろでかい。その大きさに驚く。キャプションには、「山東省青州(せいしゅう)出土・東魏(とうぎ)(6世紀)」と書かれている。仏像は、何カ所かに壊れていたようで後でついであり、左の脇仏は上半身が丸々欠損している。本尊の顔は残っているようだったが、僕の眼は、聳(そび)え立つような光背に向かっていた。光背の両端には、飛天が左右三個ずつ配されている。光…

  • 「骨董商Kの放浪」(八)

    昨年同様、10月開催の骨董イベントに、ネエさんの店は出展した。三日間、僕はその手伝いで参加。この一年で知り合いもずいぶんと増えた。先だっての骨董フェスティバルに出ていた面々もいる。初日の飾り付け終了後、僕はぶらぶらと敵情視察。何かないだろうかと歩いていると、迷彩柄のバンダナが目に入った。 U氏は僕を見るなり開口一番、「K君、並んだらしいね」と訊く。「はあ」と僕は後頭部を掻く。「結局、あの山形の方がお買いになったんですよね?」の問いに「うん。会場内は拍手喝采だった」と答えた。僕は、黒いジャージを着て背中を丸めて座っている、その男の茫洋とした姿を思い浮かべた。U氏は続ける。「あの人、初めて骨董を買…

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