「骨董商Kの放浪」(10)
才介は、帰りの車のなかで、終始不機嫌そうだった。しばらく続く一本道を片手ハンドルで進めながら、「あのジジイ、ろくな仕事もってこない上に、手当も少ねえ、いっつもだ」才介はちらっと助手席の僕に目をやったあと「あんたも、そのつもりでやるんだな」と言う。「知り合いの人が、目利きだって言ってたけどな、師匠のこと」この僕の発言に才介はふっと笑って、「目利きには間違いないだろうが、商売の仕方がきれいじゃねえ」バックミラーをちらっと見たあと「おれは正直組みたくねえんだ」と、アクセルをやや踏み込む。それから、急に顔つきを変え「ただな、ちょっとした噂を耳にしてな」才介の細い眼がうっすらと輝く。「先月新券が出ただろ…
2022/05/23 16:19