「骨董商Kの放浪」(四)
「びっくりしましたよ。いきなり眼の前にあんなもの出すんだから」先ほど教授の与えた衝撃に、僕のテンションは高まっていた。ネエさんは笑いながら「教授、若い人が好きだから。今度お宅に誘われると思うよ」そう言ったあと「超目利きよ。凄いもの持ってる」とつけ加えた。「凄いもの?」僕が興味を示すと、ネエさんは続けた。「例えばね、私の好きなものだと」と言って、突然両腕を四十五度に差し上げ、手だけを内側に折った。「プレ・エジプト文明、紀元前3500年の加彩(かさい)の女性像。アメリカの美術館で見たことあるけど、おそらく日本にはあれしか無いわね」ネエさんは腕を下ろすと、ふーっと息を吐き、「超格好いい!もろ現代アー…
2022/03/25 22:17