「骨董商Kの放浪」(二)
犬山得二の部屋で見たローマンガラスの破片に魅入られた僕は、さっそく彼に教えられた骨董店に向かった。その店は、僕の住んでいるところから二駅隣りにあった。案外近くにあるんだなと、もちろん来たことはあるが、意外に知らないその街の界隈をぶらついた。駅前はこじんまりしているが、近くの商店街は充分に機能しており、洒落たブティックやスイーツ店のなかは人で賑わっていた。10分近く歩けば、裕福そうな住宅地が広がっている。その骨董店は、駅から2~3分の、目印となるコンビニを曲がった細い路地のすぐ右手にあった。 僕は生まれて初めて骨董屋というところに入った。5坪ほどの店内には飾り棚に小さな品物が並んでいて、奥は仕切…
2022/02/25 20:35