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2022/03/03

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  • 伯爵と少年 34

    「アンディ、アンディ――戻っていたのか?どうして言わない」 部屋に入るとアンディはベッドにいた。上掛けをすっぽりとかぶり、エドワードが入って来るや頭を少し出して言った。 「すみません、エド……ワード様。少し疲れたので休んでいました」よそよそしい物言い。心配そうに寄るエドワードを牽制するように「もう大丈夫です」と暗に退出を求めた。 アンディは傷付いて、しかも泣いている。 エドワードはそれに気付き部屋を出て行こうとしたが、振り返り、今にもアンディが起き上がって抱きついてくるのを期待して待った。 しかしアンディは少しも動かなかった。エドワードは静かに部屋を出た。 仮にも結婚をほのめかすような相手の訪問だ、アンディが気にしないはずない。しかもアンディを追い出すような形で訪問者を招き入れた。 そう、最初からすべてが間違っていたのだ。 勘違いからアンディを傷付け..

  • 伯爵と少年 33

    マーガレット・グリフィス伯爵夫人と令嬢の訪問の日がやってきた。 「この度はお招き頂きありがとうございます」 上品なドレスに身を包んだ、愛らしさに溢れる夫人――マーガレットがエドワードに挨拶をする。 その横にはマーガレットよりも少し背の低い、同じような雰囲気を持った少女がいる。 「キャサリンと申します、スタンレー伯爵様」少女は顔を上げにっこりと微笑み、ドレスの裾を少し持ち上げるようにして挨拶をした。 エドワードはその少女に見惚れた。母親と同じく輝くような金色の髪、深く澄んだ青い瞳、その唇はほんのりピンク色に艶っぽく濡れている。 「スタンレー様?」 「いえ、すみません。あまりにお美しいので見惚れてしまいました。初めまして――」でよかったのだろうか?あのパーティーではやはり会った記憶がない。「キャサリン嬢、エドワードとお呼び下さい」 なぜそう言ってしま..

  • 伯爵と少年 32

    スティーヴンの仕事は早かった、翌日には庭師が二人雇い入れられた。しばらく使っていなかった番小屋も住むには問題なかった。 家事使用人はメアリと相談した結果、今まで通いで来ていたヘレンとルーシーが住み込みで働くことになった。 あとは、御者を一人、これはスティーヴンの希望だった。スティーヴンは執事に従僕、御者まで勤めていたのだ。これからの事を考えて雇い入れたのだと。 難航しているのはアンディの近侍選び。こればっかりは慎重に慎重を重ねなければ、あとあと問題になりかねない。それだけ繊細な問題だ。 エドワードは密かに安堵していた。 ヘレンとルーシーか、これなら安心だ。 ヘレンは未亡人だし、ルーシーは、いやちょっと若いか?確か、二十二,三歳だったか……。 まさか、アンディが惹かれることなんてないだろう。私を愛していると言っていた。 新しく入ったものはみな相応に歳をとったものだ..

  • 伯爵と少年 31

    翌日、エドワードは上機嫌だった。 しかしそれとは対照的にアンディは熱を出し、今朝は一緒に朝食を取ることも出来なかった。 やはり後のあれは余計だったか……。あのまま身体を拭いて着替えさせて寝かしつけておけば、朝からメアリの非難の視線を浴びることもなかっただろう。何の事情も知らないくせに、よくも主人にあんな目を向けられるものだ。 アンディはかなり無理をしていたのだろうか。逆らわないのをいい事に調子に乗ってしまったのか。 エドワードは反省しつつも、アンディが初めて自分を受け入れその身を悶えさせ、喜悦の声をあげたこと(エドワードにはそう聴こえた)を思い出し頬を緩ませた。 午後になりエドワードはスティーヴンを書斎に呼んだ。 「スティーヴン、ここの使用人を増やそうと思うのだが――」 少し前から考えていたことだが、ここはもうエドワードが一人引きこもり誰とも会わなかったこ..

  • 伯爵と少年 30

    エドワードはお湯に浸したタオルでアンディの身体を丁寧に拭いていた。 アンディは「んんっ……」と少し声を出しただけで眠ったままだ。 そっと体を動かし秘めた部分をあらわにする。酷使されたそこはまだ腫れぼったく赤みを帯びていて痛々しいほどだった。けれども見ようによっては熟れた果実のようでもあり……まさに先ほど美味しく頂いたわけだが――ダメだダメだ! エドワードは邪念を払うかのように頭を振った。今夜は何があってももうここを汚してはならない。 先ほどまで落ち着いていたはずの昂りが頭をもたげる。アンディの中は想像以上で、そのことを考えずにいろと言うのは無理な話だ。けれども、これ以上あの時の悦楽を少しでも思い出そうものなら、アンディの中に入りたくて疼くコレをどうもできなくなってしまう。 いっそアンディのようにあの冷泉に浸かってこようか。 エドワードは気持ちを静め、乱れたま..

  • 伯爵と少年 29

    アンディは疲れてしまったのか眠ってしまった。 それもそのはず、もうとっくに今日という日は終わっているし、エドワードに好き勝手されまだ目を開けていることなど出来るはずがない。 出来るだけ優しくはした、つもりだが……。如何せん最後には我を失うほどの激しさでもって絶頂を迎えた。ひとりで。あるまじきことだが、こちらも経験不足が故、アンディを悦ばせ一緒に高みへと上り詰める技など持ち合わせていない。まるで十代の頃のような一方的な行為だった。 反省の言葉はあれこれ出てくるものの、エドワードは満足していた。 冗談みたいな話だが、いまだ正体の知れない目の前の少年を愛している。少し前までは自分の傲慢さから、アンディを服従させたいだけだと思っていたが、無理矢理従わせたからといって満足などできなかっただろう。 『ぼく出て行きます』から始まった長い夜だった。 今では気持ちが通じ合い、..

  • 伯爵と少年 28

    「エディィ!」アンディはとうとう叫んだ。 どれだけ気持ちよくしてもらっても、秘められた場所への圧迫感はどうしようもない。指の一本や二本ならこんな大げさに騒いだりしなかった。でも今はエドワードの恐ろしく大きな一物がアンディに突き刺さっている。これでもまだ半分ほどだと言うのだから、エドワードがもうひと突きでもしようものなら―― 「ひっ!――」逃げる間もなかった。エドワードは昂りのそのすべてをアンディの中へ埋めてしまった。 エドワードさ、ま、ぼくもうむり……。 ぎちぎちに満たされアンディの目から涙がこぼれる。 けれどやめて欲しいなんて思わない。苦しさと心地よさの狭間でアンディは戸惑ってはいたが、これがエドワードと自分とを繋ぐとても大切な行為だと理解しているから。 「アンディ、きついな……わかっている。やめて欲しいんだろう?」 「ちがっ――」アンディは小さく首..

  • 伯爵と少年 27

    エディという愛称はエドワードが幼いころ特に気に入っていたものだ。 今はもう感じることのなくなった愛情を感じることができていた頃のこと。今またエドワードは紛れもなく愛と呼ぶにふさわしいものを受け取っていると感じていた。 アンディも私を愛してくれている。まだ愛と呼ぶには早すぎるかもしれないが、好いてくれていることは確かだ。 エドワードはアンディの耳朶に噛みつくと耳元で囁いた。「力を抜いてごらん」 アンディはその言葉にさらに身を固くしたが、まもなくふっと脱力した。 従順でいい子だ。だからより一層愛おしい。 エドワードはアンディの負担を軽減するために用意した、薔薇の香りのする香油を秘部に数滴垂らした。ロンドンで購入したもので、店主はまさかこんなことに使うとは思いもしなかっただろう。 「エディ、今のは?」アンディの不安そうな声。いくらエドワードを信頼していたとしても..

  • 伯爵と少年 26

    アンディは生まれたままの姿になっていた。 いつの間にか脱がされていたのだが、ただそうとも言い切れない。シャツを脱ぐにもズボンを脱ぐにもアンディがちょっと体を動かす必要がある。エドワードが脱がせたいと思っている以上、アンディはそれに従うまで。 体のあちこちにキスをされ、優しく撫でられ、それからまたキスをされる。変な声が出て恥ずかしいのにエドワード様はやめてくれない。 「エドワード様」声がかすれている。「ぼくもなにかした方がいいですか?」それでもなんとか訊くことができた。もしも何かしないといけないなら知っておかなきゃ。たとえば以前お金のためにしていたようなこととか。 エドワードに比べるとアンディは幼い。 けれども何も知らないままぬくぬくと育ってきたわけではない。今はもうあの男がアンディにさせていた行為がどういったものかも、理解している。あれはとても親密な行為で、自分が望ま..

  • 伯爵と少年 25

    初めての夜は特別なものにしたいと思っていた。 けれども成り行きから今夜がその日になってしまった。なんの準備もなく――準備をしていなかったのはアンディだけなのだが――性急にことを進める気はないと言いきれたらどんなにいいか。 それもこれもエドワードの性格の問題だ。元々エドワードは気の長い方ではない。だが育ってきた環境で感情を抑える術は心得ている。それがアンディ相手だと通用しないだけで。 エドワードははやる気持ちを抑えつけ、アンディを抱いてベッドへと運んだ。そっと横たえるとアンディの手が離れがたそうに空を掴んだ。エドワードはその手を取り自身も横になった。 アンディはこれから起こるすべてを受け入れる気でいる。 唇が重なるとアンディはまるでもっと深くとせがむように身を寄せてきた。もしかするとエドワードの気のせいかもしれないが望むままにキスを深め、アンディのシャツのボタンに手をか..

  • 伯爵と少年 24

    キスひとつで二人がすれ違っていた時間は無駄だったとしか言いようがない。 エドワードはアンディの瑞々しい唇を丸ごと塞いだ。アンディはまるで食べられてしまうとでもいうように驚いた顔をしたが、今度は拒絶したりしなかった。 アンディの告白には驚かされたが、生きるためにしたことで仕方のないことだ。穢れているなどと思うはずがない。もちろんアンディの悩みは些細なことだと片付けられるものではなかったが、お互いの気持ちが通じている今、やはり些細なことだった。 二人にとって二度目のキスも一方的なものだったが、アンディの経験不足はエドワードを喜ばす材料でしかなかった。隅々まで舐めつくし吸いつくした後、アンディはぼんやりとした様子でエドワードに訴えかけた。 「エドワードさ、ま……こんなに、くるしいなんて」 「どうして?」訊ねずにはいられなかった。 「息が、出来なくて」 アンディの..

  • 伯爵と少年 23

    やっぱり――そうだったんだ。 アンディにはもう何も言うことがなくなった。結婚するならどれだけ一緒にいたいと思ってもどうにもならない。 「どうして、その話を?いや、私は結婚などしないし、今はそんな話をしている場合ではない」 その言葉にアンディの張り詰めていた心の糸がプツリと切れた。結婚をしないからといって何かが変わるわけじゃない。エドワード様がぼくを許してくれないから。 「でもっ――ぼくのこと嫌いになったんでしょ?ずっと目も合わせてくれなくて。あの時勝手に外に出たりして、ずっと謝りたかったのに、ずっと――ぜんぜん出来なくて……だから嫌われて……きら」 アンディはそれ以上喋れなかった。涙声が嗚咽に変わったからだ。 「アンディ、そんなに泣かないで。私が悪かった」 エドワードはアンディを胸に掻き抱いた。こんなふうに追い詰めてしまったのは誰であろうエドワードだ。アン..

  • 伯爵と少年 22

    アンディ! エドワードはソファに横たわるようにして度数の高いアルコールをあおっていたが、ドアの外で思わぬ声を聞いてうかつにも胸が高鳴った。 ずっと避けていたのに、なぜここへ来た?私が会いたかったのをわかっているのか?抱きしめてキスをして、アンディのすべてが欲しいと思っていることを知っているのか? 知っていたら来るはずがない。アンディはそんなこと望んでなどいないのだから。 あの時、アンディを門の外で見た時、体の血が逆流するほど衝撃を受けた。そのあと自分がしてしまったことも分らぬほど激昂した。これ以上そばにいればもっと傷つけてしまうと遠ざけるのに、手放すことができない。 ドアがゆっくりと開きアンディがおずおずと入ってきた。「エドワード様、お話があります」部屋の入り口に立ったままはっきりと言う。 話――いったい何の話があるというのだ、まさか……いや、そんなはず..

  • 伯爵と少年 21

    アンディはメアリから開放されると、話を思い出しながら考えていた。 結婚―― それはアンディには馴染みのないものだった。両親のことすら覚えていないのに結婚がどういうものかわかるはずもなかった。 エドワード様は伯爵家のお嬢様と結婚するのかな?伯爵夫人が乗り気だからとメアリが言っていたし――元々はスティーヴンが言っていたから間違いない、と思う。 それならぼくはここにはいられない。 ぼくみたいなのがいたらエドワード様の評判がきっと悪くなる。エドワード様には幸せになってもらいたいもの。 アンディは悩みに悩んで、そして泣くだけ泣いて、ある決意をした。 その夜エドワードが戻ってきてから初めて、アンディも一緒に食事をした。 アンディは何とか話しかけようと様子をうかがっていたが、エドワードがアンディに目を向けることはなく、無言ののちに食事を済ませるとさっさと自分の部屋に戻..

  • 伯爵と少年 20

    それから数日、アンディは部屋に引きこもっていた。 というのも、あまりのショックに熱が出て寝込んでしまったのだ。 本当はそんなに大げさなものではなかったのに、メアリは過保護にアンディを寝かしつけた。その間エドワードがアンディのもとに訪れることはなかった。 時間があるときメアリは枕元で色々な話をアンディにして聞かせた。 ほとんど一方的に喋るだけだが、アンディはヘレンとルーシーに倣って絶妙な相槌を所々いれた。 それがエドワードのロンドンでの話に及ぶとアンディは耳を塞ぐべきか悩んだ。聞きたいけど、聞きたくない。気持ちは複雑だ。 それでもアンディは耳を傾けた。エドワードのことなら何でも知りたかったからだ。 ロンドンでエドワード様は何をして、どんな風に過ごしていたのだろう。舞踏会でレディと踊ったりしたのかな?ぼくには絶対に出来ないことだけど、ぼくがもしエドワード様と同じよ..

  • 伯爵と少年 19

    アンディの傷は少しずつ癒えていったが、なかなかエドワードは帰ってこない。日課だったお茶の時間もひとりで過ごしている。いつもと同じように過ごしていれば、今にもドアの向こうから姿を現すのではないかと期待しているのに、その気配はまったくない。 ある時アンディは思い切ってメアリに訊ねてみた。 スティーヴンの手紙によればひと月は戻らないのだそう。もしかするとシーズン中ずっと向こうで過ごされるかもしれないとも言っていた。 アンディはそれを聞いて、エドワードが帰ってこないのは自分のせいだと思った。 鬱々とさせてしまったから、きっと顔も見たくないに違いない。 でも――ぼくは会いたい。早く謝りたい。 ロンドンにならなんとか辿り着ける。もと来た道を戻るだけ。でもこれ以上勝手なことをすれば、二度とここへは戻れない。だからアンディはただじっと待った。 ひと月ほど経って、エドワード..

  • 伯爵と少年 18

    アンディは重い瞼をゆっくりと上げた。夢は見ていなかったように思う。なんでそんなことを思ったのかというと、路地裏で暮らしているときには夢なんか見たこともなかったのにエドワード様のお屋敷で暮らすようになってからはほとんど毎日夢を見るから。 「いたっ!」いつものように起き上がろうとして驚いた。全身に激しい痛みが走ったからだ。 いったいぼくどうしてしまったのだろう。そばにはメアリがいた。心配そうにこちらを見ている。 「あぁ、アンディ気が付いたんだね。どうしてこんなことに……」メアリは珍しくおろおろしていた。そしてなんだか怒っているように見えた。 「メアリ……」アンディは声を絞り出した。「メアリ、大丈夫?」 「アンディ、あたしは大丈夫だよ。アンディ体は大丈夫かい?三日も眠ってたんだよ。少し熱があるみたいだから後で薬を飲もうね」メアリは薄茶色の目に涙をにじませながら言った。 ..

  • 伯爵と少年 17

    エドワードは気も狂わんばかりに怒っていた。目の前が真っ赤に染まりただ倒れるアンディを見下ろしている。 アンディは私から逃げようとした。今度こそ許すものか、絶対に―― 部屋にいないのを見て、すでに逆上していた。スティーヴンに探すように言ってもよかったが、エドワードは自分で屋敷中を探した。まさかと思って外に出てみたら、案の定アンディは逃げ出そうとしていた。どの時点で手にしていたのか分からない鞭を振り上げるのに何の躊躇いもなかった。 アンディは私の心を踏みにじった。この数か月必要なものは何でも与えて大切にしてきたというのに、たかが孤児の分際で私を捨てようとした。 いいや、アンディはアンディだ。孤児だから身分が低いからというのは関係ない。 二人は心が通い合っていると思っていたのは間違いなのか?確かに昼間のことも含め、今日起こった出来事はアンディにとって驚きだったかもしれな..

  • 伯爵と少年 16

    アンディは夜中に屋敷を抜け出し、森の中の小さな泉までやってきていた。 五年前、アンディが目覚めた場所。 ランプを脇へ置き服を脱いで裸になると、泉の中に自分の身を沈めた。 泉の水はアンディの柔らかな肌に突き刺さるほどに冷たかった。この泉の水は一年を通して冷たいまま、温度はほとんど変わらない。 その痛みを我慢して水の中へ潜った。まるで自分の身体を清めるかのように。 アンディは以前から時々この泉にやって来てはその身を浸していた。メアリがここはただの泉ではなく聖なる泉だと教えてくれたから、ここに入ればきっと生まれ変わったように綺麗になれるはずだと信じた。 アンディの願いはひとつ。 もしも何もかもなかったことになったら――そんなことはありえないけれど――エドワード様ともう一度キスがしたい。もうしてくれないかもしれないけど、それならずっとそばにいるだけでいい。 冷水..

  • 伯爵と少年 15

    とにかく手を拭かなければアンディに触れることさえできない。 エドワードは手に触れた適当な布を引っ掴んで手を拭くとベッドの下にそれを放り投げた。それがなんだったのか些末なことだ。処分することになってメアリが目くじらを立てたとしても知ったことか。 アンディはあまりにショックだったのか目を閉じ涙をこぼしている。 エドワードはそっとそこに口づけ涙を拭った。 アンディへの怒りからひどいことをした自覚はある。拒絶に耐えられず力で服従させた。しかも手を縛り動きも封じた。優しくしてやりたいと思うのに、どこでどう間違ったのか気づけばこんなことになっていた。愛おしさは募るばかりなのに、なぜわざわざ嫌われるような真似をしてしまうのか、自分でも理解に苦しむところだ。 思考は堂々巡り。 「アンディ――お前は私のものだ。逆らうことは許さない。わかったな」優しさなど微塵も見せず、高圧的に言い..

  • 伯爵と少年 14

    エドワード様はどうしてこんなことを? アンディのそんな疑問もエドワードからもたらされる感覚にすぐに消えてしまう。なにか考えようとしても頭がそれを拒絶する。昂りの先からは蜜が滴り、手が上下するたび淫秘な音を立てる。 「ぼっぼく……もれちゃう。エドワード様手を退けてください、このままじゃ――」アンディは切羽詰まったように言い、エドワードに縋りついた。 手が縛られていなかったらまた押し退けてしまっていただろう。そしたらきっとエドワード様は怒って今度こそぼくを追い出すかもしれない。それにやめて欲しいと思いながらも、本当はやめて欲しくなかった。ぼくがどんな粗相をしてしまったとしても、許されるならこのままエドワード様が満足されるまで続けて欲しい。 そんなアンディの気持ちを見透かすかのようにエドワードはニヤリと笑った。「大丈夫だから出してごらん」 もう声を抑えることなんて出..

  • 伯爵と少年 13

    「違うか……もうどうでもいいことだが」エドワードは悲しげに苦笑した。 アンディがいやらしく誘ったりするはずがないことは、エドワードが一番知っている。そう、アンディのことなら何でもわかっている、と思い込んでいた。 アンディの体を仰向けにすると、その横にエドワードも体を横たえた。これから何をするのか知ったら、アンディはどうするだろう。ただ言うとおりにするか、それとも耐え切れず逃げ出すか。たとえ逃げ出したとしても、すぐに捕まえてやる。 エドワードの手がアンディの中心部へと伸びる。 「あぁ……だめです、エドワード様……そこは、あっ」ズボンの上から包み込むようにしてさすると、アンディはわずかに身をよじりエドワードの手から逃げようとした。「あぁん、だ……め……さわっちゃ」 逃がすものか。エドワードはアンディのズボンのボタンに手をかけた。焦りからか小さなボタンは指先をつるりと滑..

  • 伯爵と少年 12

    何か気配を感じてアンディは目を開けた。少しだけ顔を動かすと、エドワードと視線がぶつかった。慌てて身を起こし、何度も練習した言葉を何とか吐き出そうとする。ただごめんなさいとしか言えないのだから、どんな反応をされたとしても言うしかない。 「エドワード様、気付かなくてすみません」そう言ってベッドの脇に降り立ち強張った体を真っ直ぐに伸ばした。「あの、先ほどはすみませんでした。ぼく、あの――」とにかく昼間のこと謝らなければ。 アンディは反応を探るようにエドワードの顔をじっと見た。 しかしエドワードはアンディのほうを向いて立ってはいたが、アンディとは視線を合わせなかった。それはまるでアンディを許さないと言っているようだった。 実際そうなのだろうとアンディは思った。どうして許されると一瞬でも思ったりしたのだろう。アンディは再び恐怖から後ずさった。 エドワードが今度は逃がすまいと..

  • 伯爵と少年 11

    エドワードは困惑していた。 どうして急に。あんなに頬を紅潮させて、潤んだ瞳で私を見つめていたのに。 あの小さな蕾の様な唇は私のものだ。ゆっくりと優しく蕾を開いてアンディのすべてを自分のものにするのはこの私のはずだ。 なぜ逆らう!なぜ拒絶する!アンディの心は私のものではないのか?あの純粋でまっすぐな青い瞳は私を好きだと言っていたのではないのか? いや、もうどうでもいい。アンディは私を拒絶したのだ。それならこちらも拒絶するまでだ。 それでも、アンディが欲しい――― エドワードの心に怒りと怯えが同居する。腹立たしいのにアンディに拒絶されることも失うことも考えられない、考えたくもない。こんな思いをするならあんな子供捨ててしまえばいいのに。元居た場所へ戻れと言えば済む話だ。でもそれができない。失うのは恐怖でしかない。 次に顔を合わせたとき、アンディはここを出て行..

  • 伯爵と少年 10

    いい子だ―― そう言われてアンディの封印していた記憶がよみがえった。 嫌だ!嫌だ嫌だ! 馬車の中で男のものをしゃぶり吸い上げ、そして男が出したものを飲み込んだ。 ぼくの口は穢れている。お金のためにあんなことをずっとしていたなんて……エドワード様に出会うまでは、お金のためなら仕方がないと思ってた。ただ少し我慢すればいいだけだと、でも違ったのだ。 あんな好きでもない、誰かも分からない通りすがりの男のものを―― そう思うと穢れた自分の唇でエドワード様も穢れてしまう様な気がして、あのまま続けることができなかった。本当はずっとエドワード様の腕の中にいたかったし、初めてのキスだってやめたくなかった。 エドワード様の唇がぼくの唇に触れたとき、ぼくはすごく嬉しかった。 エドワード様を突き放したとき告げられた言葉……。 『お前は自分の立場が分かってないようだな。ここに置いてやっ..

  • 伯爵と少年 9

    エドワードはアンディのおでこに口づけ、それから唇に口づけた。 最初はやさしく重ね、二度目は吸い付くようにアンディの唇を包み込んだ。 アンディは抵抗しなかった。それを承諾のしるしだとエドワードは受け止めた。 好きか問い、好きだと答えたのはアンディだ。拒絶などするはずがない。 エドワードの舌はアンディの唇をゆっくりと開き、中に侵入した。無理矢理ではない、お互いがこれを望んでいる。舌を絡め吸うと、アンディは力を失ったかのようにエドワードに縋りついた。キスは初めてなのだろうかと思ったところで、絶対にそうでなければならないとアンディを強く抱き、容赦なく唇をむさぼった。わざと卑猥な音を立ててアンディの羞恥心を煽る。 「はぁ……あぁっ」 息も出来ないほどの激しい口づけにアンディは耐えられなくなったのか身をよじった。 「どうした?嫌なのか」 思っていたよりも甘いささやきに、エド..

  • 伯爵と少年 8

    いつもと変わらずアンディとエドワードが午後のゆったりとしたひと時を過ごしていると、スティーヴンが大きな箱をいくつも持ってやってきた。スティーヴンがこうしてお茶の時間に顔を出すのは珍しくて、アンディはひどく興味を引かれた。 「エドワード様、仕立てあがりました」そう言ってスティーヴンは箱をテーブルに並べて置いて、主人の次の命令が出るまでそばに控えた。 エドワードは満足げな顔で、アンディの方へ箱寄せた。 「開けてごらん」 そう言われてアンディは、一番近くの箱の蓋をそっと開けた。箱の中には真新しいシャツが入っていた。エドワードが広げてみなさいと目で合図する。アンディは両手でシャツの肩の辺りを掴んでゆっくりと広げた。薄地のそれは手触りがよくあまりにも上品で、アンディはこれがまさか自分のために用意されたものだと思いもしなかった。それでもサイズはちょうど自分にぴったりで、期待せず..

  • 伯爵と少年 7

    それから寒い冬は過ぎ、暖かな春が来た。 エドワードはアンディに家庭教師をつけ勉強をさせ、図書室の本も好きなだけ持ち出して読むことを許した。 アンディは最初こそ戸惑っていたが、勉強は好きなようで字もすぐ読めるようになり、書くのも瞬く間に上達した。もしかしたら、もともと出来ていたのかもしれないとエドワードは思った。 エドワードはアンディと過ごす時間を何より楽しんだ。 午後のお茶の時間は二人でゆったりと過ごすのが日課となっていた。 アンディは紅茶よりも、中国茶が好きだった。それと薔薇のジャムが大好きだった。 エドワードはアンディに惜しみない愛情を注ぎ、アンディもそれに答えるようにいつも笑顔でエドワードに寄り添っていた。 「ほんと、あの子はいい子だよ。かわいらしくてねぇ。あんな子がロンドンの街で一人で生きていたかと思うと、なんて世の中なんだろうって思うよ。五年もだよ……そ..

  • 伯爵と少年 6

    エドワードは久しくこの領地から離れていない。不思議なことにアンディがここで目覚めたという五年前から。 理由は明確。貴族というものに嫌気がさし、社交界でのくだらない付き合いに嫌気がさし、そして自分の両親に嫌気がさしたからだ。 貴族というものは世間体だけで生きている。少なくともエドワードはそう思っている。 夫は妻に貞淑を求めながら、自分は外に愛人を作り娼館に通う。その妻も夫のいない間に家に愛人を引き込む。お互いそれに気付いているのだ。妻に求めるものは身分とその身分にあった姿形なのだ。 エドワードの父はその典型だった。 ある時事件は起きた。 エドワードの母クリスティーヌが、些細なことから父ハロルドと口論となり怪我を負わせたのだ。 些細なこと――確かに些細なことがきっかけだったが、それまでに積もり積もったものがあったのだ。 クリスティーヌはハロルドを愛していたが..

  • 伯爵と少年 5

    エドワードは書斎に入ってきた少年に惹きつけられた。 ちゃんとした身なりをするとこうも違うのか。肌は思っていたよりずっと白かった。澄んだ青い瞳は宝石のようにきらきらしていた。髪の毛はくすんだ金髪ではなく、まるで光をすべて吸収して輝くようだった。 だからどうした?たかが子供だ。 「それで、お前はどこから来た?私の領地に入り込んで何をしていたのだ。村のものではないだろう」 エドワードは侵入者に絶対的な身分の差を分からせるように、高圧的に言い放つ。束の間魅せられていたなどとおくびにも出さず。 「ぼくはロンドンから来ました。それで、あの……あの」 「ゆっくりでいい。ちゃんと聞くから、その代わり――嘘をつくことは許さない」 「ぼくはここに、いえ、あの泉の傍にいたんです。今日のことではなくて、五年前……目が覚めたらそこにいて何も覚えてなかったんです。名前だけしか……」 ふ..

  • 伯爵と少年 4

    アンディは五年前と同じく痛みで目が覚めた。唯一の違いは目覚めた場所が優しくふんわりとアンディを包み込んでいたことだ。 起き上がりそこからゆっくりと降りた。手に触れる感触の心地よさにうっとりとする。ずっと眠っていたかったけれど、そうしていてはいけないと判断するだけの分別はあった。 アンディを包んでいたふわふわのそれは、四隅に柱があり豪華な刺繍の施された天蓋の付いた大きなベッドだった。アンディが初めて見る色彩の美しさに見とれていると、戸口から声がした。 「気付いたのか」 振り返るとアンディに鞭を振るったあの男がいた。アッシュグレイの瞳に漆黒を思わせる黒髪、アンディを見下ろすほどの長身の体躯に恐怖を覚えた。 まさかここがあの男の家だなんて! 「汚い身なりをして、何か恵んでもらおうと他人の土地に入り込んだのか?どこから来た?」 男は腕を組んでアンディを値踏みす..

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