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2022/03/03

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  • 伯爵と少年 3

    アンディは列車の中であの目覚めた日のことを思い出していた。 まだ肌寒さの残る、少し曇った日だった。体の痛さに目が覚め、知らない場所に恐怖し、何か思い出そうにも空っぽの頭に混乱した。 どうして何も覚えてないのか?どうして捨てられたのか? もしかしたら自分で家出したのかもしれないし、悪いやつにさらわれて逃げ出したところかもしれない。本当は自分が悪いことをして逃げているのかもしれない。 けれどどんなに考えても結局は思い出せないのだ。 あの日と何も変わっていない、ひと目でここだとわかった。 すべては記憶が頼りだった。 駅で泉のことを尋ねたら、駅員さんは少し考えてからパッと閃いたようにアンディの欲しかった答えをくれた。 「少し距離はあるけど、大きな道沿いを行けば辿り着けるよ」さらには途中ホロウェルの商店街を抜けるとほんのわずかだが近道だとも教えてくれた。もし迷っても町で道..

  • 伯爵と少年 2

    老婦人マリーとの出会いはアンディにとって幸運だった。 たまたま越して来たその日『何か手伝いをさせて下さい』とアンディが家のドアを叩いたのがきっかけだった。 すでに家族がなく一人きりだった彼女は、素直で礼儀正しいアンディにすぐに惹かれた。それはきっとどこかでアンディが路上で生活をするような子ではなく由緒正しき家の出ではないかと思っていたからにほかならない。いったいどんな事情があったのかは彼女の知るところではなかったが、ちょっとした雑務の報酬として地下の物置を寝床として使うことを許した。 アンディはとてもきれいな顔立ちをしていた。鮮やかな青い瞳は田舎の夏の空を思わせ、マリーは若いころのことを思い出さずにはいられなかった。今は亡き夫と出会ったあの夏。マリーがまだアンディと同じ歳の頃のこと。きらきらと眩しいほど輝いていた。 アンディも汚れを落とし、身なりを整えさえすればこんな生..

  • 伯爵と少年 1

    十九世紀末――ロンドン 大通りから少し中へ入った薄暗い通りに、その場所にはそぐわないブルーム型の馬車がとまっていた。 貴族所有のものだろうか、それらしい紋章はロンドンの濃い霧に覆われていて見ることが出来なかったが、 時々その場所で見かけるそれと同じものだった。 「うぅっ……あぁ、いい子だ」 男は少年の頭をなでるように触りながら、恍惚の表情を浮かべている。ぴちゃぴちゃと卑猥な音が車内に響く。男はうめきながら少年の頭を強く掴んだ。「あぁぁ、もう出そうだよ。そのまま全部飲み干したら、銀貨をもう一枚追加するよ」 少年は男を上目遣いで見上げ、目で合図した。それと同時に口内に青臭い匂いが広がる。要求通りにそれを飲み下すと、男は満足のしるしに銀貨を二枚足元に放り投げた。少年はそれを手にすると顔を上げることなく素早く馬車から降りた。 それから馬車はすぐさま大通りへ向かって走り..

  • お知らせ

    ご無沙汰しております。 約5年ほど放置していたブログを再開したいと思います。 まずはブログ内を整理しつつ 『空想を枕に』を始めたときに(確か最初はgooブログだったような…) 最初に書いたお話『伯爵と少年』を加筆修正して再アップしようと思っています。 といっても、ずっと書くことから遠ざかっていたので順調にいくかどうかはわかりませんが 落ち着いたら新しいお話に取り掛かりたいと思います。 やぴ

  • 迷子のヒナ 目次

    迷子のヒナ 登場人物紹介はこちら→☆ 1~10話 / 11~20話 / 21~30話 / 31~40話 / 41~50話 / 51~60話 / 61~70話 / 71~80話 81~90話 / 91~100話 / 101~110話 / 111~120話 / 121~130話 / 131~140話 / 141~150話 151~160話 / 161~170話 / 171~180話 / 181~190話 / 191~200話 / 201~210話 211~220話 / 221~230話 / 231~240話 / 241~250話 / 251~260話 / 261~270話 271~280話 / 281~290話 / 291~300話 / 301~310話 / 311~320話 / 321~330話 / 331~338話 妄想と暴走 迷子のヒナ番外編 ジェームズ×パー..

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