この世には、後から考えて、奇縁と云うか宿縁と云うか?不思議な出会いというものがある。青年期を過ぎてからでは滅多に得られない友人を得たのは、初老と言われる50代を目前にした年頃のことである。ある年の秋、私は幾度か山行を共にしたことのある知人と2人で、北遠のさる山に登った。その山は、私は30代の頃に、知人はもっと早く高校生の頃から、登頂を念願していた山だった。共に旧い案内書で知ったその山は、藪漕ぎに難渋する上級者向きの山と謂われていた。私も知人も臆して、ついつい登るのを躊躇って時機を失していたのである。登山道は思いのほか整備されていて歩行は捗り、難なく目的の山への主稜線分岐に出た。目的の山はその分岐から3kmほど北にある。密生しているはずの稜線道のスズタケは、綺麗に刈り払われ、我々は拍子抜けした思いがした。ハ...出会い