友達のひとりにSnow Manの熱心なファンがいる。なかでも目黒蓮さんがとても好きらしく、それなら絶対にお土産を買って行かなければ……! と私は胸に誓っていた。なぜなら彼が午後ティーのCMで訪れた場所にはスリランカのヌワラエリヤが含まれ、【午後の紅茶「紅茶の聖地」篇 60秒】を視聴してペドロ茶園を訪れていたと判明したから。
躁鬱の会社員です。お散歩と旅行と読書、思考の記録など。
実績・寄稿記事一覧: https://www.chinorandom.com/archive/category/%E5%A4%96%E9%83%A8%E5%AF%84%E7%A8%BF%E8%A8%98%E4%BA%8B
【宿泊記録】はやし別館 - 滲み出る古さ・渋さ・緩さの中に「地味な良さ」を感じる老舗旅館|四国・徳島県ひとり旅(3)
とても……良い。照明器具も、ソファの色も布地も。客室に関してはいずれも普通の和室で、ひとり部屋でも8畳程度の面積があって広そう。もとより扉にきちんと鍵がかかりさえすれば(かなり重要、私はどうしても施錠可能な場所以外では眠れない)多少のことは気にならない性質なので、詳細を再確認し、予約をしてみたのだった。メインの客層はビジネス、観光、お遍路などであるらしい。レビューを見ると何組か家族連れもいる。JR徳島駅から、徒歩約6分の距離。散歩しているとあっという間。
山裾に広がる街で喫茶店を巡ってみる - JR徳島駅から半径1km圏内|四国・徳島県ひとり旅(2)
最近、自分だけでも喫茶店の空間や、そこで過ごす時間を楽しめるようになってきた。とても良いことである。誰のことも気にしない気儘な喫茶店巡りは本当に楽しい。特に長く続いている、それなりに古いお店は。まず場所というものがあって、周辺に人間がいて、それぞれの辿ってきた歴史が背景に流れている。実際に行ってみて、他に気を取られずじっくり味わってみないと、触れられないものが確かに存在している……。今回の徳島駅近くで巡った5つの喫茶店も、いずれも素敵なところだった。
ギャラリー喫茶「グレイス」の出来たてで美味しいピザトースト|徳島県・徳島市
JR徳島駅から徒歩約12分。駅出口から南に進んで新町川を越えた先、「銀座商店街」周辺にあるギャラリーの、2階部分に趣ある喫茶店が存在しているのだった。ちなみに前回紹介した「喫茶びざん」からも近い距離にあり、いずれも両国橋を渡ってすぐの場所。このあたりは居酒屋、寿司屋、ラーメン屋と、夕方以降に賑わいそうな多種多様な飲食店がひしめいている。商店街のアーケードから逸れて少し歩くと、お目当ての建物があった。正面右側に細い階段が伸びていて、そこを上がると喫茶店の入り口。足を掛ける前に庇の上を仰ぐと大きなガラス張りの窓が見える。
創業昭和63年、JR徳島駅前の森珈琲店 - 2段のクリームソーダとモーニングセット|徳島県・徳島市
駅前に、朝の比較的早い時間(8時台)から営業している喫茶店があるか、ないか。この意外と重要な問いに「ある」と返してくれる徳島駅はとても良いところだ。ただし、今回足を運んだ「森珈琲店」は2023年時点で水曜が定休日となっていたので、もしも街頭の曜日に当たってしまった場合は他を探すか、チェーン店のお世話になろう。バスロータリーの西側。JR徳島駅前ターミナルビルの1階。少し奥まった位置にある入口の扉を開けて入店すると、細長い店内が視界に飛び込んでくる。机が並び、座席が一直線になっていて、椅子の反対側は隙間なく横並びになったソファなのが面白く興味を惹かれた。まるで、路面電車の座席みたいだ。このままどこへ運ばれていくのか。
喫茶 びざん - 前身は昭和2年創業の西洋料理店、同12年に改称して受け継がれてきた老舗|徳島県・徳島市
両国橋……と聞いて何を脳裏に浮かべるかは、その人が日本のどの地域に住んでいるかによってかなり異なるのではないだろうか? 有名なのは東京都・墨田区で隅田川にかかる、袂の不思議な球体飾りが特徴的な両国橋だが、ここ徳島市にも同じ名前の橋がある。欄干に立っているのは女性と男性の銅像、いずれも阿波踊りの衣装に身を包んでいるものだった。無論、そのポーズも阿波踊り。周辺は祭の時期に非常に賑わうのだという。喫茶店「びざん」は橋の南に伸びる通り、歩道に屋根がある商店街の一角で営業していた。
創業昭和30年、いかりや珈琲店 - 山盛りアイスクリームのコーヒーゼリー|徳島県・徳島市
落ち着いたテールベルトのタイルが敷かれた床。席の片側、ガラス張りになっている壁の向こうには、謎の中庭みたいな空間がある。平日の午後は空いていた。少し前にお昼を食べたので、うーんどうしよう……と迷い、ホットコーヒー(ブレンド)とコーヒーゼリーを注文してみることに。温かいものと冷たいもの、特に後者は看板に書かれていた名物らしいので、かなり楽しみにしながら。机を挟んで見える赤い革張りの椅子に視線を向けたり、本を読んだりしながら待っていると、来た。
入口の前に差し掛かると、出されていた看板の上にある、黄色いランプが点灯していた。導きのようにくるくる回る光……ドアの前で耳を澄ますと音楽か人の話し声か、何らかの音が聞こえてくる。これはもしかしたら営業しているかもしれないと一気に期待が湧き上がってくる。果たして、ドアは施錠されてはいなかった。チリンチリン、と大きな風鈴の音が響く。店内は心地よい程度の薄暗さで、外の明るさから目が慣れるまでに数秒の時間を要した。手前のテーブルに碁盤を挟んだ2人客。カウンターで(おそらくは)店主ママさんと話している人が1人。後者はやがて支払いを済ませて、もうひとつのドアから退店した。店主さんに会釈して、空いているところに着席。
暮れの春にはオーシャン東九フェリーに乗って - 真夜中の海の虚を果敢に揺蕩う船|四国・徳島県ひとり旅(1)
オーシャン東九フェリーのうち一隻「しまんと」を利用した感想を綴る。こうしている今も凪いだ海原の上で穏やかに揺られる感覚が残っていて、夜、布団に入ってからそれを思い浮かべると、陸地でもよく眠れた。波の音はもう遠いけれど、瞼を閉じれば耳朶の奥に蘇ってくる。低く。夜は空よりも暗く黒い、あの太平洋のうねりと一緒に。
エッセイ集「一杯のおいしい紅茶」は当時のイギリス情勢が生々しく伝わる灰色の味 - ジョージ・オーウェルの本
ふと思ったのが、これと同著者の小説「1984年」を並べてみた時にどちらが好みだと思うかは、読者によって真っ二つに割れるだろうということだった。もしも選ぶとしたら私は随筆が断然好きで。彼が自分の実体験をもとに撚り合わせた糸で紡いだ『お話』より、新聞や雑誌の仕事で書いていた『思想』そのものの方が、ずっと高濃度で興味深いと感じさせられた。でも……。
60年以上続く「純喫茶 若松」- 家紋風の装飾があやしく光るレトロ喫茶店|千葉県・松戸市
本当にここに喫茶店があるのだろうか?というのが第一の印象で、地図が示す建物の前へと足を運ぶと、真っ先に目に入る言葉は「不動産」とか「豚串」なのだった。しかし落ち着いてビル全体を視界に収めると、確かに右のところから細く階段が伸びているし、ぼやけてはいても「純喫茶 若松」と書いてある。2階の壁には舵輪を思わせる何かと、くすんだ赤色のオーニング。確かに若松は存在していた。階段の上の照明も灯されていて、どうやら普通に営業しているようだった。ならば行くしかない……入店。そのためにわざわざ松戸まで来たのだから。1961年か1962年、そのあたりの頃に創業した老舗だと聞いている。
旧秋田銀行本店本館(赤れんが郷土館)を見学 - 塔の天辺のベレー帽|秋田県・秋田市の近代建築
明治45(1912)年に竣工した近代建築。クリームチーズやスポンジで構成された断面を連想させる、層の重なり。灰色の部分を縞模様に露出して、それ以外の部分に白い磁器タイルを張って覆った、1階の外壁。なめらかなババロア。対比となる鮮やかな2階部分は化粧赤煉瓦によるもので、こんがりと焼いたビスケットのようだった。正面玄関のある側から見ると綺麗な四角に収まっている印象を受けるが、角度を変えて眺めてみると、また異なる表情を見せてくれる。あの塔。横に立つと建物の両端に2本(写真だともう1本は隠れている)、上へ突き出た塔があると分かる。
それなりに可哀想なヒンドリーと「もういないはずの者」の名を持つ魔物 - エミリー・ブロンテ《嵐が丘》Ⅱ|19世紀イギリスの文学
ヒンドリー・アーンショウ。キャサリンの兄であり、フランセスと結婚してヘアトンの父となった人物……。妻が亡くなってから、すっかり飲んだくれになってしまった暴力男。実のところ、ヒンドリーに対する自分の感覚にはずっと疑問を抱いていた。普段なら多分、私は「嵐が丘」という作品に描かれた彼の姿を、「かなり同情されるべき存在」として捉えていたと思う。不運で不遇な者、かつ悲劇に巻き込まれた側であると認識して。
東京、墨田の旧本所で「豆板」というお菓子を作っている会社の、周囲から会長と呼ばれていたおじいさんと話した。初めて訪れた喫茶店の常連さんだった。会長……とは何をする役職なのだろう、私はよく知らない。その人のお父様が昭和2(1927)年に創業した製菓会社だと仰っていたので、もしかしたら2代目社長で、今は席を後継の3代目に譲って会長を務めているのかもしれない。
【墨田区】ゲーム「パラノマサイト FILE23 本所七不思議」ロケ地の散策メモ
今年の4月は、昭和後期×オカルトブーム要素が取り入れられたゲーム「パラノマサイト FILE23 本所七不思議」のおかげで趣味の散歩がさらに楽しくなった。ありがたい。東京都墨田区内でゆかりの地をぶらぶら巡り、記録しました。公式からロケ地として公表されている場所もあればそうでない場所(作中の背景グラフィックから個人的に予想・特定した)もあり、後者の場合は実際の施設名や場所名を伏せ、詳細が分からないよう番地部分などをモザイク処理した写真を掲載します。
喫茶店 フローラ - 豊穣の女神のサロンに並ぶしましまの椅子|東京都・墨田区
フローラ(Flora)。聞くと、梶井基次郎の小説「城のある町にて」の一節が頭に浮かぶ言葉。これは春の季節と豊穣を司る女神の名前で、さらに、墨田区東駒形に存在している小さな喫茶店の店名でもあるのだった。開業する時お店の繁栄を願いつつ、占いの結果をもとにして選ばれたという「フローラ」のカタカナ4文字は、女神の纏う衣がなびくような曲線を描いて外の看板に刻まれている。
// 風に散らされた花びらの滞空時間は意外と長い。 無為に眺めていると、いつまでも地面につかずに漂っている。ひとつに視線を注ぐのに飽きる暇もなく、今度は別の一枚が、また斜め上から降ってきて………そんな風に延々と絶えることがなかった。 遊歩道と言ってよいのか分からないが、近隣の住宅地の裏にある、舗装された一角に沿って桜の樹が植えられている。 歩行するための狭い道なので、敷物を広げられるような面積はなく、ゆえに昼間は花見目的の人間が集まらない区画。そこを誰もが通り過ぎていく。わずかに湾曲して屋根のようになった枝の、花を溢れるほどに抱えた腕の下を。 周辺の様相が変化し始めるのは、陽が落ちてしばらくし…
洋燈の花、旧津島家新座敷「太宰治疎開の家」- 不可視の渡り廊下を歩いて|青森県・五所川原市の近代遺産
// 家へ帰って兄に、金木の景色もなかなかいい、思いをあらたにしました、と言ったら、兄は、としをとると自分の生れて育った土地の景色が、京都よりも奈良よりも、佳くはないか、と思われて来るものです、と答えた。 (新潮文庫「津軽」(2022) 太宰治 p.158) この照明器具は後から見学展示室の方に取り付けられたものであって、別に昔からあるものではないのだけれど、佇まいが好きだった。 燭台を象った光源部分をガラスの板が囲み、何かの儀式みたいな様相を見せている。全部で12枚、焚き火の周りに人が集っているような。そうして下からよく観察してみると、ひとつひとつの板の真ん中には星の意匠が施されていた。 植…
宇田和子「ブロンテ姉妹の食生活:生涯、作品、社会をもとに」プディング、は料理かデザートか?|ほぼ500文字の感想
イギリス文学に頻繁に登場するプディング(pudding)とは一体何なのか。物語の舞台や年代によって、それは肉料理であったり、デザートであったりする。基本的に「蒸した料理の総称」であるプディングはどちらの姿でもあり得る。私が現地で食べたヨークシャー・プディングはローストビーフの付け合わせで、まるで、ふわふわしたパンのようだった様子を思い出せる。
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友達のひとりにSnow Manの熱心なファンがいる。なかでも目黒蓮さんがとても好きらしく、それなら絶対にお土産を買って行かなければ……! と私は胸に誓っていた。なぜなら彼が午後ティーのCMで訪れた場所にはスリランカのヌワラエリヤが含まれ、【午後の紅茶「紅茶の聖地」篇 60秒】を視聴してペドロ茶園を訪れていたと判明したから。
物語の比較研究は「こんな遠く離れた場所にも共通点を持つものが……!」という驚きをいつも与えてくれるので楽しい。もちろんこの視点に拘泥しすぎると見えなくなる箇所が多くあり、学生時代に講師から指摘された文化への眼差しを念頭に置きつつ、ここではその話はしない。今回は特にマケドニアのおはなし〈テンテリナとおおかみ〉の終盤にも "(逃走時に)背後へ投げた粘土が沼地に、くしがいばらの藪に、石鹸が高い山になる" ……という描写があると知れて面白かった。民話〈三枚のお札〉や、『古事記』ではイザナギの逃走時にもみられるその展開を。
2024年6月~12月までのおおよそ半年間で触れる機会があった紅茶の記録。各種フレーバードやブレンドを除く、単一農園(シングルオリジン)の感想を格納します。当時から各種SNSに残しておいた写真をこちらにも。
キャンディ中心部にある古い、英国植民地時代に建てられたコロニアルスタイルの宿泊施設はクイーンズホテルという。個人的に好きな「偽物の自然」の風情ある人工池の周辺を歩き回っていると大通り沿いに見えてきて、外壁が白く、規模も大きいのでよく目立った。有名なエサラ・ペラヘラ祭の時期などは特に予約で溢れ、行列が見える部屋の値段も高騰するのだろう。
以下の文章は2023年1月15日発行、大阪大学感傷マゾ研究会様の会誌『青春ヘラver.6 〈情緒終末旅行〉』に寄稿したものです。 個人ブログでの公開が可能と告知されましたのでこちらに掲載いたします。 《白昼の歓楽街、取り残された街》 特定の種類の場所に旅行で赴くと、必ず、脳裏に浮かぶ出来事がある。 「おい、ハチがいるぞ」 後部座席の方から低い声が発され、陽が落ちた田舎道を走る路線バスの車内に、困惑の一点が落とされた。 「ハチがいる」 二回目。今度はさっきよりも、明瞭に響く声量で。 バスの乗客たちが、にわかに緊迫した空気を醸し出す。どこか危機感のにじむ、擦り切れた畳の表面のように、ささくれ立った…
何の変哲もない飛行機内の紅茶から、すでに旅への期待が高まっていく。いわゆるコロナ禍の影響をずっと受けていたため、国外へ足を運ぶのすら数年ぶり、という驚きがある。それでもだんだん思い出してきた。こうした旅は、たとえ頻繁でなくても、確かに自分の日常と人生の一部であったことを。願わくは、今後もそのようにあれますよう。
今回、食事と入浴を合わせた3時間滞在のプランで利用したのは、明治35(1902)年創業の元湯玉川館。現代ではドラマ『相棒』の撮影で使われたり、過去には漫画『のらくろ』の著者である田河水泡や童謡『夕焼小焼』の作詞を行った中村雨紅が逗留していたりと、時代を超えて多くの人々に親しまれている旅館のよう。
しばらく前からこちらの方と一緒に暮らしています。関節部分が球体で、透き通るような美しい瞳は着脱可能な頭部のつくり。黒いドレスとヘッドドレスを本体とは別途で購入しました。合わせようと思ってもあまり目が合わないところが最大の魅力で、まさしく「ここ」ではなく、より洗練された世界の方をいつも眺めているのだろうと感じさせる表情には畏敬の念を抱くしかありません。
ハーディング作品で最初に手に取ったのは『カッコーの歌』だった。英国幻想文学大賞受賞、そしてカーネギー賞の最終候補作。あらすじに惹かれたのか、表紙が印象に残ったのか……もう覚えていないけれど、とにかく仕事帰りに書店で購入していて、しばらく本棚で寝かせていた。そうしたらBlueskyのフォロワーさんが感想を呟いており、内容に心を掴まれたのですぐ読み始めることにしたのだった。結果、本当に好きな物語であったので本当に嬉しい。世界から弾かれた者たちを見つめ、慈しむ眼差しがあり、さらにまぎれもなく児童書の系譜に属する要素を持ったおはなし。
カルデスとペルシールの間に戦が起こった。放っておけば、美しき山々と魔法学院を擁する土地ショームナルド……山羊飼いやさすらい人たちの憩いの地も、間違いなく巻き込まれる戦だった。それを止めるため、通常であれば力のバランスを保つため人界にはかかわらない魔法使いの長老、アトリックス・ウルフはカルデスの陣地に赴いた。自ら王を説得するために。しかし彼の訴えはカルデス公から退けられる。ただ何かを得るための争いを正当だと思っている王に、それがどれほどの惨禍を生むのか説く、アトリックスの言葉は全く通じない。どころか「我々に手を貸してくれればショームナルドを荒らしはしない」と持ち掛けてきた王に対し、老魔法使いの怒りは爆発する。結果、雪の中に「闇の乗り手」が現れた。
// 前回「卵」の続き 風邪をひき始めた予感がする。普通の症状とは異なる頭痛がしていて、けれど発熱はない。 寝入りばなに私は特定の夢のことを思い出す。ビルの隅に産みつけられていた鳩の卵を見て思い出した、夢。それは、自分がかなり胴の太い大きな大きな蛇になって、ゆっくり鳥の卵を飲みこむというものだった。 世界には卵から生まれてくるものが無数にある中で、どうしてそれが鳥だと限定されているのかは分からない。けれど、鳥でなくてはならなかった。 夢のその卵には温かさがない。殻の内側にやがて雛となる材料を蓄えているとは思えないくらいに、重く、冷たい。土や石でできているみたいに。蛇は、巣の中にふたつ並んでいる…
2024年6月までのおおよそ半年間で触れる機会があった青茶や緑茶など、中国および台湾で産出されるお茶や、緑茶をベースに香りが付けられたフレーバードティーおよびハーブティーの記録。当時から各種SNSに残しておいた写真をこちらにも。紅茶以上に初心者の分野なので、手探りしながら道を進みつつ、またこれから新しいお茶に出会うのが楽しみ。
①に引き続き、こちらは第2弾。各種フレーバードティーや、色々な販売元が取り扱っているブレンド系の紅茶の感想を格納します。緑茶ベースのものは含まれませんので次回記事の更新をお待ちください……。当時から各種SNSに残しておいた写真をこちらにも掲載。
2024年6月までのおおよそ半年間で触れる機会があった紅茶の記録。各種フレーバードやブレンドを除く、単一農園(シングルオリジン)の感想を格納します。当時から各種SNSに残しておいた写真をこちらにも。振り返ってみると意外にもブレンド系を多く飲んでいたようで、本当に単一茶園の葉のみで構成されているものは少なめ。今後も引き続き、また徐々に手を伸ばしていければ、と思います。
ヘッセの『デミアン』が本棚にあるはずだと思ってしばらく探し、見つけられず、そんなはずはないと念のためkindleを確認したら電子版で持っていた。実際に紙で所持している同著者の作品は『車輪の下』と『シッダールタ』で、それらと混同していたらしい。卵に関して言及された部分を引用したかったのは、外で実際に卵を見つけたから。さほど大きくはない鳥の卵。巣の中に、ふたつ。場所は外出先のビルの一角であった。
もう絵を描く機会などあるまい。全くそういう気持ちになれないし、根本的に自分の生み出したものが好きになれない、とぼんやり思い、その話題から目を逸らし続けてかれこれ6年が経っていた。けれど今、私はああでもないこうでもないと言いながら鉛筆や筆を持ち、思い描いた像が画面上に実現しないと四苦八苦している。実のところ半年ほど前から。早朝や、会社から帰った後の余暇や、深夜や、休日の昼間などに。つまりはまた、絵を描き始めたということだ。
// JR高知駅に着いて、事前にメモしてあった店名のひとつを目指した。そこまでだいたい徒歩10分程度の距離らしい。 いわゆる純喫茶はこの駅の南側だと、はりまや橋停留所やその東西に多く集まっているようで、あまり足を動かしたくない人の場合はとさでんの路面電車を利用するのが便利なようだった。 私はとりあえず歩いてみる。南東の方に進むと江ノ口川が走り、平成橋を渡り切ったら右手の方角に「アンティック喫茶 ともしび」がある。 大きめの看板がビルの壁面に掲げてあるのでわかりやすい。 ドアを開くとカラカラ高い金属音が鳴る。入口のところから見える以上に店内は広くて、カウンターの他にソファが向かい合う席が複数あり…
昨年の中盤……特に夏の終わり頃から少しばかり調子を崩していて、生きるのが苦しく、心身の余力を温存するためにできるだけ引きこもり気味に過ごしていた。そうしたら、かなり快適だったはずなのにとても寂しくなってしまった。自分でもびっくりした。何にも邪魔されない場所で静かに過ごしていたいのに、それにもしばらくしたら飽きてやめたくなるなんて、贅沢だ。それでもこれが己の性格なのだからどうしようもなく、考えた末に他人に構ってもらう機会を2023年の終盤にかけては増やした。手当たり次第、既知のつながりのある人と連絡を取るようにしていた気がする。あとは外出先で初めて遭遇した誰かにも、あまり内向的にならずに話しかけてみた。結果、本当に満足のいく日々を過ごすことができて、無事に2024年の元旦を迎えられたので感謝するしかない。
でんわ☎でんわ 楕円形の看板を一瞥して中に入る。日曜日の午後1時、店主氏がひとり、カウンターにもお客さんがひとり、とても静かだった。段差を下りるとボックス状の席が点々とある。4つあるうち埋まっているのはこれまたひとつ。窓際に着席して鞄と上着を置けば、メニューがやってきた。どの喫茶店でも見られるような一通りの飲み物が揃っていて……悩み、今日は泡立つ海を飲もうと決めて片手を挙げた。ソーダ水にしよう。店主がカウンターの向こうに戻ってしばらくすると、プシュ、とボトルを開ける音が響く。あれが炭酸水だと想像して目を瞑る。浜に打ち寄せる波の泡を思わせる液体がグラスに注がれるとき、何色の、そしてどんな風味のシロップが、どのくらいの分量そこへ一緒に注がれるのか。店によって結果が大きく違う難問に頭を悩ませた。
ページを開いて眼で文字をひとつひとつ飲みこみ、噛み砕き、頭の中である一幅の画を織り上げているあいだ……実際の身体の周囲にある音も、色も、暑さも寒さすらも消え失せる瞬間が確かに訪れる。それを称して「本には魔力が宿る」と比喩されるのだが、図書館のそばで拾われた孤児で、今は書記として働くネペンテスが捕らえられた魔力というのは、実は単なる例えとは種類を異にする、ある特定の魔法らしかった。茨のような形をした、文字。綴られているのは、かつて世界を征服したとされる伝説上の人物「アクシスとケイン」の物語。
ヘッセの『デミアン』が本棚にあるはずだと思ってしばらく探し、見つけられず、そんなはずはないと念のためkindleを確認したら電子版で持っていた。実際に紙で所持している同著者の作品は『車輪の下』と『シッダールタ』で、それらと混同していたらしい。卵に関して言及された部分を引用したかったのは、外で実際に卵を見つけたから。さほど大きくはない鳥の卵。巣の中に、ふたつ。場所は外出先のビルの一角であった。
もう絵を描く機会などあるまい。全くそういう気持ちになれないし、根本的に自分の生み出したものが好きになれない、とぼんやり思い、その話題から目を逸らし続けてかれこれ6年が経っていた。けれど今、私はああでもないこうでもないと言いながら鉛筆や筆を持ち、思い描いた像が画面上に実現しないと四苦八苦している。実のところ半年ほど前から。早朝や、会社から帰った後の余暇や、深夜や、休日の昼間などに。つまりはまた、絵を描き始めたということだ。
// JR高知駅に着いて、事前にメモしてあった店名のひとつを目指した。そこまでだいたい徒歩10分程度の距離らしい。 いわゆる純喫茶はこの駅の南側だと、はりまや橋停留所やその東西に多く集まっているようで、あまり足を動かしたくない人の場合はとさでんの路面電車を利用するのが便利なようだった。 私はとりあえず歩いてみる。南東の方に進むと江ノ口川が走り、平成橋を渡り切ったら右手の方角に「アンティック喫茶 ともしび」がある。 大きめの看板がビルの壁面に掲げてあるのでわかりやすい。 ドアを開くとカラカラ高い金属音が鳴る。入口のところから見える以上に店内は広くて、カウンターの他にソファが向かい合う席が複数あり…