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躁鬱の会社員です。お散歩と旅行と読書、思考の記録など。

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千野
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2022/01/28

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  • お話に登場する木こりの規則正しい生活、その健全さに感じるフェティシズム

    ふと、質実剛健な木こりのことを考える。いろいろな物語に登場する彼ら。その人たちは別に、ここで私が言うところの規則正しい生活を熱望しているわけではないだろう。単純に、それが最も理に適っているからそうしているだけで。こちらからすると、その精神性にこそ、何か「たまらない」感覚を煽られる。

  • うろこの家(旧ハリヤー邸)の外壁を覆う薄い石の板、人魚の尾鰭|神戸北野異人館

    神戸の異人館街には、瀟洒な下見板張りや、暖かみを感じさせるハーフティンバー風の外壁を持った近代の洋館がたくさん建っている。だから初めて「うろこの家」を目の当たりにしたとき、きっとこの邸宅の特徴的な壁——愛称の示すとおり、魚の鱗に似ている——も、きっと木でできているのだろうと考えていた。灰白や灰褐色と絶妙な色の違いを持ち、半円を引き伸ばしたような形の木の板を丁寧に重ねて、建物を覆ったものに見えたのだ。あとで、実はその「うろこ」が木ではなく、ごく薄い石、屋根に使われることもあるスレートを用いた意匠なのだと知って、それまで胸に抱いていた邸宅への印象がすっかり四散するのがわかった。

  • 山本亭 - 大正末期から増改築を重ねた和洋折衷の館|東京都葛飾区・柴又の有形文化財

    京成電鉄金町線、柴又の駅から徒歩約6分。東京と千葉の境を流れる江戸川、その矢切の渡しにほど近い、柴又寅さん記念館と通りを隔てて建っている施設が「山本亭」だった。もとは、合資会社山本工場を創立し、カメラの部品を製造していた山本栄之助という人物により建てられた邸宅になる。基本は大正時代末期の建築で、以前の彼の家は台東区浅草にあったのだが、関東大震災を期にこの柴又に移転することになったという。大正15年から昭和8年頃に至るまで、都度新しい要素を取り入れて増改築を重ねた素敵な建物。決して敷地は広くないのに沢山の見どころが凝縮されている。

  • いつしか所帯じみた蒼白のお城

    当時からおもしろかったのは、何の施設でもない一般の家のはずなのに、ずいぶんと特別な雰囲気を醸し出す建物が教会のはす向かいに鎮座していたこと。2階建てで壁は蒼白く、正面から見たつくりは左右対称、中央に位置する玄関の上には半円に突き出したバルコニーがある。それを支える柱は太く、柱頭はドリス式のように簡素に処理されているものの、柱身に縦の溝が彫刻されていて遠方の神殿を思わせた。素材が石ではないのに、つめたい感じがする

  • 【宿泊記録】プリンス スマート イン熱海 - シンプルな次世代型のホテル、朝食付き

    // 公式サイト: 古いものと新しいものがごった煮のように混在する最近の熱海にて、2021年の春にできたばかりのホテル「プリンス スマート イン」に泊まってみた。株式会社プリンスホテルが経営しており、この熱海にあるのは、東京都・恵比寿に続いて2番目に開業した店舗。 かつて最も栄えていた頃の温泉街の名残に触れ、レトロな建築物や喫茶店、近代遺産などを見て回るかたわら、あえて新興の宿泊施設に滞在してみるのはむしろ風変わりでけっこう面白かった。 ひとこと感想として、友達と一緒に利用してみて快適だったし、単独でも過ごしやすそうなホテル。 料金には朝食が含まれている。 まず、入り口からすぐのロビーはこんな…

  • プラトン装飾美術館 / イタリア館(旧アボイ邸)には今も実際に人が住んでいる|神戸北野異人館

    受付に座っていたのは、随分とクラシカルな服装に身を包んだ小柄なメイドさんだった。彼女の佇まいに少し驚きつつ入場券を買ったとき、「この異人館には、他とは大きく違う特徴がひとつございます」と言われて、まばたきをする。さて一体なんのことだろうか。建築年代? 様式? 展示物?正解はどれでもなかった。神戸、閑静な不動坂の中腹に建つプラトン装飾美術館には、今も実際に人が住まわれているのだそうだ。オーナーご夫婦とそのご家族、加えて大きな3匹の愛犬が。その自宅である、大正4年に竣工した旧アボイ邸の一部が、こうして一般の見学客にも公開されている。

  • 言葉を奪われたような気がしてしまう

    綴られる言葉を前にして、共感に似た思いを抱き頷いているときの私は、すっかり影が希薄になる。彼女がこうだと言ったものに半ば身をゆだねて、わかる、という感覚にあらゆる情動を押し込めて、しばし口をつぐんでいる。言葉を奪われたような気がする、というのは要するにそういった現象に対してで、私は怖くなってしまう。自分は自分の語れる言葉を失いたくないのだ、多分。仮に誰かが私とほとんど同じ(に見える)意見や感覚を持っていたとして、それを表明していたとして、こちらだって確かにそういう思いを持っていたのだとわざわざ記録しておくことは意味のある行為だと信じている。誰かがすでに語っていたからもう自分は言わなくてもいい、なんて、そんなことはないと私は考える。

  • 用法、用量、際限のない読書による効果・無窮の酩酊とか

    先日某所に足を運んで、自分の子どもを本好きにしたい、と思う人間の数はそれなりに多いらしいと気が付いた。幼少期からこの絵本でひたすら文字に触れさせ、何歳になったらこれを読ませ、さらに就学したらこれを順に読ませる……云々と書かれた商品ポップ。現代社会は随分と大変だ、大人も子どもも。だが、大人たちは本当の意味で、子どもをいわゆる「本好き」にしたいなどと望んでいるのだろうか。

  • 牛久シャトー(旧牛久醸造場・シャトーカミヤ)の見学 - 近代化産業遺産・国指定重要文化財|茨城県

    伝兵衛が東京都浅草で「みかはや銘酒店(現・神谷バー)」を開業してから、かねてより計画していた醸造場の建設に踏み切り、それを完成させたのが明治36(1903)年のこと。彼は茨城県、牛久市の一角(昔の稲敷郡岡田村、女化原)を開墾してブドウ園とし、醸造設備には最新の様式を取り入れて、まるで小さなボルドー地方ともいえる世界を作り上げた。実際にフランスへ婿養子の伝蔵を派遣し、多くの資料や知識を持ち帰らせたのも功を奏したのであろう。現在ではそのうち、旧事務室のあるシャトー本館、旧醗酵室、そして旧貯蔵庫の3棟が国の重要文化財に指定され、牛久シャトー全体も経産省の近代化産業遺産に認定されている。

  • 悪い夢を見ない方法 / 記憶にだけ住む人の影

    私は父の顔や名前を思い出すことができない。特に名前の方は思い出す以前に、そもそも知っていたかどうかすらもわからない。彼とともに時間を過ごした数少ない記憶(と呼ぶのも気が引ける、あのボタンを押して絵を変えるおもちゃのフィルムじみた、静止画に近い一場面)のうちに、「悪い夢を見ない方法」について教わった際のものがある。

  • 葡萄の意匠とタイルが光る旧神谷伝兵衛稲毛別荘、そして電気ブランのこと|千葉県にある国の登録有形文化財

    稲毛に別荘を建てた神谷伝兵衛(傳兵衛)は牛久シャトーや、電気ブランで名を馳せた神谷バーの創設者であり、商才を持つと同時に洋酒への比類なき情熱を抱いて生きた実業家だった。建物は平成9年に国の有形文化財に登録されている。正面の外観を視界に収めてみて受けた印象は、几帳面な感じ。並ぶトスカーナ式の柱が支えるアーチや部分的な装飾は規則正しく並び、けっして退屈ではないながらも、視覚的に整い瀟洒なすまし顔で佇んでいる。

  • サマセット・モーム《月と六ペンス》ストリックランドは何に「成り果てようとしていた」のか

    ウィリアム・サマセット・モームの著した「月と六ペンス」は昔、まだ大学を辞める前に人に薦められて読んだ小説だった。作者はフランス生まれのイギリス人で、10歳の頃に両親を亡くし、パリからイングランドのケント州に渡って学校に通った。過去に医療助手として勤めていたことがあり、その経験を活かして書いた小説の発表から、本格的な作家活動を始めることに。「月と六ペンス」の構想を練っていたのは肺病の療養期間中だといわれている。

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