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躁鬱の会社員です。お散歩と旅行と読書、思考の記録など。

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千野
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2022/01/28

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  • 修善寺駅前の純喫茶と奇妙な資料館、極楽苑|静岡県・伊豆市

    駅の前にある喫茶店は、ときどき安心の象徴みたいに思える。バスや電車が来るまでの暇つぶしに、あるいは不意に降ってくる雨の冷たさを避けるのに便利な場所というのは当然なのだが、もっと、それ以上の恩恵を与えてくれる「何か」が確実にあると感じずにはいられない。内部に満ちている雰囲気によるものなのか、素朴なメニューに宿った力なのかは、わからないけれど。

  • 白い湖 - 北西イングランド・冬Ⅱ

    いわゆる「湖水地方」として知られている、イングランド北方の国立公園。その一帯の地図をはじめて眼前に広げてみたとき、果たしてどこに湖があるのやら、私にはさっぱりわからなかった。視認できる名前はスカーフェル・パイク、ヘルヴェリン、それにフェアフィールド・ピークなど……聳える山々と、比例して深い谷。あとは遊歩道の印。それしか無いではないか、と。しばらくして気が付いた。この目は湖を探していたつもりで、その実、自分の中にある湖という名の幻を追いかけていたに過ぎなかったのだ。

  • 夜の村 - 北西イングランド・冬Ⅰ

    大通りにも路地にも人っ子一人歩いていない。「静かに。隠れていて」「悪いひとが来るよ、怖いものも来るよ」村の家という家がそう人々に囁いて、門や戸口の奥に、すべてを鎖し籠めているみたいだった。クリスマスリースの形をした扉の護符とともに。あれは強力な魔除け。棘が特徴的なヒイラギの葉に、赤いリボン、あとは小さなベルも添えられ綺麗な円環に閉じられている。だから、目的地を持たぬ私たちはそこへ入れない。扉へ近付くことすら難しい。

  • 昭和への懐旧を抱いた宇宙船、ハトヤホテルの廊下を渡る|伊東のレトロ豪華な大型宿泊施設

    伊東のハトヤホテルに泊まってみようと思ったのは、今度は営業中の豪華ホテルの館内を見て回り、感想を綴りたくなったから。その存在は友達に教えてもらって知った。立地的に、ニューアカオが海なら、ハトヤは山……そんな印象を受ける。ちなみに昭和50年に新しくできた、全室オーシャンビューのサンハトヤは本当に「海ハト」とも呼ばれることがあるそう。ハトヤホテルに宿泊すると、そちらの日帰り温泉にも入浴できる券が、チェックアウト時にもらえる。水槽を眺めながら温泉のお湯を楽しめるお魚風呂も、結構おもしろかった。

  • 旅館時代のバーを利用した喫茶室「やすらぎ」- 起雲閣・再訪の記録|熱海の近代建築(大正~昭和初期)

    先日、熱海の起雲閣にもう一度足を運ぶことができた。ちょうどよい機会があって。内田信也の別邸として大正8年に竣工、その後、根津嘉一郎の手に渡ってから大幅な増築が行われた和洋折衷の館は、玄関にあたる表門から庭園に至るまで余さず魅力だらけの場所。やがて桜井兵五郎に所有権がわたり、この建物が旅館「起雲閣」としての営業を開始したのは、昭和22年のことだった。太宰治や谷崎潤一郎をはじめとした文豪の数々に愛され、令和になっても日々多くの見学者を迎えている。

  • 思考の放棄と存在の死 / 何もしていない自分を好きになれない理由はなんなのか

    自分が自分をじっ……と見ている。四六時中、いつでも。たまに、何もしないでぼんやり過ごすのがわりと好きだった。文字通りに何もしないこと。例えば休日の昼ごろ、遅い時間に目が覚めても布団から出ないで、カーテンの隙間から外の明るさを感じつつ、枕に頭を預けてもういちど微睡むような行為が。そこには安息がある。素足に触れる毛布の感触や、水飴を垂らしたみたいにどろどろ滲んでいく意識がただ、心地よい。扉の鍵は閉めているから誰も入ってこない、だからこの身は誰かと会話したり、外を警戒したりする必要と心労からとても遠い。手も足も頭も働かせなくてよい。そして眠り、意識を失う瞬間は何も考えなくていいのだ。胸中は凪いで、安らぎを感じ、どこまでも穏やかになる。考えなくてもいいとは、即ちそういうこと。

  • 旧山邑家住宅(ヨドコウ迎賓館)- フランク・ロイド・ライト設計の見学可能な建築 (3)|兵庫県・芦屋市の重要文化財

    大昔の遺跡か、未来の何かの基地。面白いことにどちらともとれる外観の建物は、海の側から川に沿って道を歩いていくと、丘の中腹に見えてくる。不思議な四角い形の塔がその屋根から空に伸びていた。ざらついた大谷石の部分に施された、幾何学模様の装飾がすばらしい効果を発揮していて震える。かつては個人の別邸として建てられた旧山邑家住宅。現在はヨドコウ(株式会社淀川製鋼所)の迎賓館として公開されているこの建物は、フランク・ロイド・ライトによる設計で、彼が米国に帰国してからも弟子の遠藤新と南信の施工監理によって建設が進められた。

  • 【おすすめ短編など】敬愛する夏目漱石先生のお誕生日を祝って - 2022年2月9日

    今日、新暦の2月9日は私の敬愛する小説家、夏目漱石のお誕生日です。それでも2022年現在、ここに彼と彼の作品をこよなく愛していることを綴り、なかでも繰り返し頁をめくって参照している短編の好きな部分も併せて紹介したく、誕生日のお祝いとして当ブログに記事を投稿します。

  • 旧帝国ホテル中央玄関 - フランク・ロイド・ライト設計の見学可能な建築 (2)|明治村に移築された重要文化財

    // 前回の記事: 公式サイト: 博物館明治村 愛知県犬山市の野外博物館 大正12年に竣工した、フランク・ロイド・ライト設計の帝国ホテル中央玄関。 開業日はなんと関東大震災の当日だったというから驚きだ。 これは当時、東京都千代田区……かの鹿鳴館の真横に位置していたが、解体に伴って玄関のみ明治村に移設された。 かつては全長150メートル、3階建ての客室棟、と大きなスケールを誇っていたホテルの全貌を目の当たりにできないのは残念であるものの、ライトのデザインの白眉である玄関部分だけでも残っているのは素敵なことだと思う。 建物が国の有形文化財に登録されたのは、平成16年のことだった。 旧帝国ホテル…

  • かつて花の蜜を吸っていたな、と思い出す

    人間でも花の蜜を吸えるのだと教えてくれたのは祖母だった気がする。私は基本的にずっと預けられていて、たまにその後ろについて散歩に出掛けた。ちなみに、住んでいたのは「住所だけが都会」の結構な田舎である。かなり深い森があり、山があり、なんなら大きな池もあった。はじめに覚えたのは確か、ツツジ。

  • 自由学園明日館 - フランク・ロイド・ライト設計の見学可能な建築 (1)|東京都・豊島区の重要文化財

    JR池袋駅、山手線のホームから改札を出て大通りを渡ったら、少し入り組んだ細い道を進む。この先数百メートル……という看板は親切に出ているものの、本当にこんな住宅街の中に学校が建っているものなんだろうかと訝りつつ、曲がり角が多いので対向の車や人間に気を付けて歩いた。1997年に国の重要文化財に指定された、自由学園の旧校舎、明日館を探して。

  • 夜にしか朝食を食べようと思えない

    本を読んでいて、いかにも美味しそうだと思う食事の描写に出会うとき、作中の時間帯はだいたい朝なのだ。上で引用した「斜陽」の一場面もそう。満開の山桜が見える窓際に座り、かず子と母はスープと、海苔で包んだおむすびを食べている。そのスープというのが、米国からの配給で手に入れた、缶詰めのグリーンピースを裏ごしして作ったとろみのあるポタージュ。ひらりひらり、と形容される軽やかな仕草でスプーンを操り、唇の間にスープを滑り込ませる母の描写が美しい。そこから、薄く塩味のついているであろう液体の、なめらかで少しざらついた舌触りまでもが克明に想像できてしまう。

  • 鳩山会館|東京都・文京区音羽に建つ洋館と庭園

    鳩山会館も、時に音羽御殿と呼ばれることがある。大正13年に竣工、空襲被害や老朽化を受けて大幅に修復され、現在も文京区に建ち一般に公開されている邸宅。地下鉄護国寺駅の5番出口から、講談社、光文社と有名な出版社のビルが両脇に並ぶのを過ぎて、関口台公園の先……鳩山会館の門は左手にあった。印象よりも傾斜の度合いが大きく、U字を描いた坂。上ると目当ての建物が視界に姿をあらわす。

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