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  • 好きな人が優しかった

    中学1年生のときに転校生が来た。僕の地元は地方の山奥だった。クラスメイトも先輩もみんなだいたい知った顔でだいたいが田舎特有の家族ぐるみの付き合いをしている者同士だった。 そんな田舎の中学校に転校してきた男はいわゆる不良だった。前の学校でも、その前の学校でも何かをしでかして通えなくなったらしかった。田舎だからそんな噂はすぐに広まったし、誰が言い出したのかも分からなかったけど噂はどうやら本当のことらしかった。 その転校生は山川君といった。 山川君の家は母子家庭だった。お母さんは山川君を育てていなかった。もちろん制服を買い、学校に通わせ、人並みに部活をさせ、食べ物を与えてはくれていたから山川君は育っ…

  • 正しいマスクの使い方

    マスクで顔の半分、口元が隠れていることで煩わしさや気になる人の顔の全体像を把握できなくてもどかしさを覚える。それがコロナ禍における恋愛の障害のひとつなのかもしれない。 好きだと認めたくはないけど、きっとこの気持ちを何かの単語であらわすと”好き”以外のなんでもないことは私が一番わかっていて、私が一番認めてはいけない気がして上手く誤魔化せもしないのに誤魔化すように笑って”好き”を散布する。 大人になるということは恋をするのが容易ではないということだと、容易ではない恋につまづきながらカップ焼きそばのソースが絡んでない白いところを割りばしでほぐしながら思った。 人には言えないあれやこれやが私の中に層を…

  • 映画 「わたしは最悪。」

    わたしは最悪。 どうやらアカデミー賞の脚本賞 国際長編映画賞にノミネートされた映画らしい、どうやら20代後半~30代の女性に刺さるらしい、という少ない前情報だけでなるべく知識や情報や人の感想を入れずに観に行った。 アラサー女性の主人公 ユリヤは頭がよくて、ヘルシーなビジュアルで愛嬌もよくて天真爛漫で、自分の価値を理解しているように見えた。 医学部に入ったけど肉体を切り刻むのは趣味じゃなかった。興味があるのは人の一番内側。心理学を学ぶことに決めた私は家族や友人から「いい決断だ。勇気がある。」って褒められた。デートで行ったカフェの写真を見返していたら写真の才能に気が付いた。カメラマンになる。もちろ…

  • 生きてるだけで偉いって言ってごめん

    生きてるだけで偉い。こんな言葉を聞くと こんな地獄みたいなくそな世界で、居場所も頼る人も信頼できる人も私を必要とする人も大切にしてくれる人もなく、苦しんで悲しんで息もできないほど涙を流して鼻が詰まって耳も詰まって音が遠くなって浅くなる呼吸と酸素が足りなくなってぼんやりとする脳を抱えながら生きたくないって自分に呪いをかけるように過ごした1日だとしてもか?ってお前は言い返したくなるかもしれない。 お前のそれは「生きてるだけで偉い」にあてはまらない。ごめんなさい。生きるのって簡単じゃない、つらいよな。こんな世界で生きるってほんとに簡単じゃないよな。 いろんなとこで、いろんな人が言う「生きてるだけで偉…

  • 青春だとか失恋だとか

    爪が綺麗な人が好き。深爪でも、伸びすぎた爪でもなく、指を絡めて相手の指先が手の甲に当たった時に指の腹の感触の先にほんの少し、ほんの少しだけ爪の感覚を見つけられるくらいの。 あと、ささくれはないほうがいい。ささくれは嫌い。 私より賢い人が好き。私が知らないことを知っていてほしい。それを鼻にかけずさらっと優しく話して教えてくれる人にセクシーを感じる。 恥ずかしがらないで嫌がらないで、表情を変えず困っている人に手を差し伸べる人が好き。私もそうなりたい。憧れて、憧れがいつしか恋心になっていく。 中学生の時に好きになった男の子の好きなところが今でも人を好きになる基準になっていることに気づいて恥ずかしいの…

  • 眠るあなたの手を握って、この時間よ永遠にって祈った

    クーラーが効いた部屋で布団にくるまって冷たくなった足を絡ませて囁き合うのが好きなのよ、女は。 いや、嘘。私、ほかの女の子のことなんか分からないし興味がないし、あなたに女の子が好きなことを教えてあげるわけにはいかないんだった。私が好きなことだけを覚えて、私がされたいことを自然とできるあなたでいてほしいんだった。 私が泣いたときは理由を聞かないで抱きしめて「お腹すいたね」って言ってサッポロ一番の塩ラーメンを二人分作って目の前に出してほしい。鍋のままがいい。具なんか入れないで粉末スープだけ入れた愛嬌のないラーメンを目の前で、お味噌汁用のお椀に取り分けてほしい。「おかわりあるからな」って言ってほしい。…

  • 二トラム/NITRAM 【映画】

    映画のロケ地にもなり日本からの人気も高く、楽園とも呼ばれていた観光地で起きた銃乱射事件。 ”その日”までの彼を描いた映画「二トラム/NITRAM」を観て、自分の傲慢さに呆れた。 ママは僕のことが嫌いだ。だから、僕もママが嫌いだ。いつも僕を呆れた顔で見て、自分の思い通りになるように注意してくるから、僕はママが嫌いなんだ。 パパは優しくしてくれる。でも、好きなわけじゃない。パパは、ママが僕を嫌っているから優しくしないといけないと思っているんだよ。本当に優しいわけじゃないんだ。きっとパパも僕のことが嫌いだ。だから、僕もパパが嫌いだ。 本当はママもパパも好きなのに。本当はママもパパも僕のことを愛してく…

  • いつかこの関係を世間に公表できたなら。

    人には、人に言えないことがある。きっとみんなが言えないことを抱えている。 わたしにもそれなりにある。いつかこの関係を口外してしまいたいという欲に駆られてしまうこともある。いつか時がきたら、身バレしない程度に脚色して一つの物語にしたいと思っている。 結婚して子供ができて、あっさりと執筆活動を辞めてしまったあの人とはもう二度と会うことはないけれど、たまに連絡を取ってはお互いを必要としていると他人には読み取れないような文章で表現しあう。 彼の紡いだ物語の中の女は、いつもどこかわたしに似ている気がしていた。似ているけど似ていないその女は、いつも生きにくそうで弱くて可哀想で、それなのに何故か強くて優しく…

  • ウエスト・サイド・ストーリーの意味

    ※ネタバレ考察です スティーヴン・スピルバーグ監督でリメイクされた本作。 1950年代後半、ポーランド系とプエルトリコ系の敵対したグループとそこで生まれたラブストーリー。(あまりの名作なのであらすじなどは割愛します) ここからネタバレと偏った感想を含みます。 ヒロインのマリアが生き残った意味、彼女が生き残るのは何故なのか…。観終わったとき引っかかることはここだった。決闘を止めてほしいとお願いしたマリア。それに応えたトニー。死んだ兄。マリアに頼まれた伝言を伝えに行き強姦される兄の恋人アニタ。アニタの言葉を信じて自暴自棄になり撃たれ死んだトニー。 なぜマリアは生き残るのか。わたしは疑問だった。あ…

  • 声にできない叫びがツイートになって散る

    なんとなく眠れない夜。なんとなく開いたTwitter。 Twitterは眠れない夜を過ごしているのは私だけではないことを教えてくれた。眠れない夜に誰にも言えないような気持ちを「つぶやき」として全世界に向けて発信するツイート。それは、こんな気持ちになるのは私だけではないとどこかの誰かに教え安心させる。 ツイートは星みたいだと思う。見上げると気持ち悪いほど夜空を埋め尽くす星が輝いていてくれるからこそ夜を綺麗だと思えること、星はそんな風に思われたくて輝いているわけではないこと。それ全部がツイートみたいで、ツイートが星みたいで。 懐かしい人から届くDM 私が眠れずくすぶっていることに気づいてくれたのか…

  • 夜の雨の冷たさで私はあなたを思い出してしまう

    雨が降っていた。 雨が降ることは知っていた。 傘をさしながら人混みを歩くと自分一人だけの空間にいる気がして私は今日を思い出してしまう。 「そういう種類ではないけど、なんかそれっぽいよね」と言った友達の唇の動きが蘇ってくる夜。目を閉じてそれっぽいがどういうものか考える夜。私は傘の中、夜の雨の冷たさで意識を遠のかせながらあなたを思い出してしまう。 あの人とした会話を、あの人が言ったあの言葉の本当の意味を、噛み砕いて、噛み砕いて、噛み砕いて、あの人の顔と言葉が全て脳内でどろっと溶けてしまう。嬉しかった言葉が私に染みこんで、それにドキドキしてみたり悶々としてみたり、体の奥にあの人が巣を作りだす。 隣り…

  • ドライブ・マイ・カーの躍進劇

    アカデミー賞 きっと映画を中心に生活していない人でも一度は見たり聞いたりしたことがある賞だろう。 「アカデミー賞」の作品賞、監督賞、脚色賞、国際長編賞の4部門に日本の映画がノミネートされたらしい。それはすごい快挙らしい。 正直、細かいことや詳しいことは置いておいて近くに上映している映画館があるなら観に行ったほうがいい。アカデミー賞にノミネートされることの凄さとか、どのくらい驚くことが今起きているかなんてちゃんと理解しなくていい。ミーハー心でいい。観たほうがいい。 きっとネットには、難しいだとか観る人を選ぶだとか、映画評論家ぶった小難しい感想が投稿されていたりアカデミー賞の各部門にノミネートされ…

  • 自分が分からなくなるとき

    あなたが教室にいるとほかの子たちがみんな向日葵になる。 あなたが太陽でみんなは向日葵。 そんな風に小学生のとき先生に言われたっけ。 花に例えるならあなたはダリアね。 ぱぁっと周りを明るくしてくれる。 そんな風に中学生の頃に通っていた塾長に言われたっけ。 わたしのことは、わたしよりみんなのほうが詳しいのかもしれません。わたしはイマイチ自分のことが分からないのです。偽りすぎたのかもしれません。当たり前のようにその場の雰囲気に合わせて自分を変えながら過ごしてきたせいかもしれません。 きっと、わたしだけではないはずです。きっと、ほとんどの人が自分のことなんて分かっていないはずです。自分のことが分からな…

  • コーダ で見る障害を持つ家族を持つということ

    耳が聞こえない両親と兄と、家族で唯一の聴者の主人公ルビー。 わたしは観終わって映画館を出るのが恥ずかしいくらいに涙を流して目を腫らしたけれど、ほかの人はなにに涙を流すのか、観た人の細かな感想や感情の動きを知りたくなった。 わたしはあまり大きくない街で育った。父と母、兄とわたし。そこに視覚障害のある祖父とうつ病の祖母、知的障害のある伯母(父の姉)が加わった家族だった。わたしは家族の話をするときにこの特徴をわざわざ説明することは少ない。それは家族のそれぞれの特徴でわたしの特徴ではないから。 楽な幼少期ではなかった。 ひとりひとりのエピソードを書いていたらキリがないほどいろんなことがあった。中でも、…

  • SNSとかフォロワー数とか

    SNSがわたしの生活の一部になってもう10年くらいになる。 スマホが普及して一気に身近なものになった。Twitterは初めてわたしが始めたSNSで、これに慣れてしまっているから他のInstagramやTikTokに違和感があってアカウントを作るだけで、投稿などはほぼしていない。 3年半くらい前に、YouTuberがすれ違う女性の容姿を罵倒し「ただいまブスにつき映像が乱れております。」だとか言う動画を載せたことがある。小さな炎上が起きて、彼らのファンはそれでも守る言葉を並べていたし、彼らも罵倒している女性には動画の内容を撮影前に説明済みであることを盾にして謝罪の動画を載せて再生回数をのばしていた…

  • 片想いもできなくなって。

    一目見て、なんだか苦手だと思った人に限って好きになってしまう現象になにか名前があるのか。本能が好きになるスピードのあまりの速さに恐れて「苦手」だと少しのブレーキを踏ませているのだとしたら。無意識に傷つくことを察して自分を守ろうとしているのだとしたら、好きなんて自傷行為なのかもしれない。 恋の始まりによくある気になる人を目で追いかけるそれを気づけば繰り返している自分に恥ずかしくなってしまう。視界に入るその人のことはただ気になるのか、好きになってしまっているのか。もう手遅れなのかもしれないけれど認めるにはまだ早い気がして答えを出すのを先延ばしにする。 そもそも気になる人と、好きな人の差はなんなのか…

  • ジュリア・ロバーツがプリンセスになったわけ

    プリティ・ウーマン ポスターはなぜかリチャード・ギアの髪の毛を黒髪に加工してあるので、あまり好きではありません。 プリティ・ウーマンはわたしが今世でこれ以上の恋愛映画に出会えないと思わされた作品。この作品の影響でリチャード・ギアはわたしの中で永遠の王子様になった。何歳になっても。若い素敵な俳優がどんどん出てくるけれど、プリティ・ウーマンのエドワードを演じたリチャード・ギアはいつだって完璧だった。いつも時代とともに現れる王子様のようなビジュアルをした俳優を微笑んで置いてけぼりにする。彼はずっとわたしの王子様。 そんなわたしの永遠の王子様の心を盗んだのはジュリア・ロバーツ演じるヴィヴィアン。ストー…

  • 映画好きの映画館嫌い(HSP)

    このブログの記事がほぼ映画から派生されていくものばかりなので、今更言うのも照れくさいけどわたしは映画が好きです。Amazon prime、Netflix、Disney+に入会して毎日のように映画を観ています。何度も言うけど、映画が好きです。(詳しいかは別として) 映画が好きなのに映画館に行くのはとても億劫。ここからHSPの特徴と関連していくのだけど、HSPと一言でまとめても特徴や敏感になるもの・不安になるものは人それぞれなので当てはまらない人も当てはまる人もいると思う。 映画館に行くというだけでいろんな不安が頭を駆け巡る。 ・上映時間に間に合うかとにかく不安(公共交通機関の遅延など) ・予約し…

  • ラスト・ナイト・イン・ソーホーのメッセージ

    映画になにを求めるかは人それぞれで、その映画から何を感じてどう評価するかはそれぞれの感性によるのでわたしが感じたものを誰かが感じていなくとも、誰かの感想がわたしとは全く違うものでも、それは至極当然のこと。 2022年の初映画館は2021年の作品だった。 ラストナイト・イン・ソーホー わたしは所謂フェミニストなのかもしれない。わたしは女性の無力さを知っている。それは歴史的なものでも、現代にも広がる女性差別的な社会問題でもない。単にわたしが生きてきた世界の話。単にわたしや、わたしの知る女性の日常に起こるもの。 2021年はME TOO運動に影響を受けてか、賛同する著名人が多かったためか、女性搾取を…

  • 看板になりたい

    年末年始がバタバタと過ぎて、もう2022年も5日目になりました。 新年の挨拶大変遅くなりましたが、明けましておめでとうございます。今年もどうぞよろしくお願い致します。 昨年末に考えるでもなしに考えていた2022年の豊富のような人生の目標のような、そんな大袈裟に言うのも恥ずかしいようなもの。 先にTwitterに年末の挨拶と共に載せたので。 そこにタバコ屋さんがなくなっても夜になれば光を灯し続ける小さな看板が、晴れの日も雨の日も夜の道を照らす存在であり続けるようにわたしも存在することで誰かの何かの意味になれるような者になりたいと思います🐰そんな抱負を胸に。2021年、今年も無事に仕事納めができま…

  • ヒーローは痛みを感じるのか

    生まれながらに骨が弱く、外出して怪我をしたり周りの人から陰口を言われることに怯えて家の中に引きこもる息子を少しでも外出させるために母親が計画する。外に置いたMARVELコミックを取りに行けば続きをまた外に置いてもらえる。 そうして、MARVELのヒーローに憧れた骨形成不全症の男性。 健康な人と比べると遥かに弱い自らの体を見て考える。「こんなに弱い人間がいるなら、ヒーローのように強い自分とは対極の人間が存在するのではないか…」 アンブレイカブルはMARVEL作品のヒーローのような人外な強さはなく、すごく地味で自分でもその強さに気付かず生活しているヒーローを見つけ出す。 ヒーローは私たちと同じ程度…

  • ディア・エヴァン・ハンセン

    嘘をついたことがありますか? その嘘は人を傷つける嘘でしたか、自分を守る嘘でしたか、誰かを守る嘘でしたか、結果的にその嘘はあなたを苦しめましたか。 ディア・エヴァン・ハンセン わたしは頻繁に嘘をつく。 「大丈夫です。」と元気に答えて大丈夫だったことはほとんどない。自分に素直な気持ちほど言葉にできず大丈夫という言葉に変換して声に出して、大丈夫ということにする。もう何が大丈夫ではないのかさえ分からなくなるほど大抵のことは「大丈夫」になるように、先手を打つように嘘をついておく。 本当の自分なんて自分でも分からないほどで。できるなら自己紹介してほしい。わたしを教えてほしい、嘘はなしで。わたしはいま元気…

  • M-1グランプリ 肉うどん

    今週のお題「忘れたいこと」 2021年12月19日 M-1グランプリの決勝戦。 わたしが5年ほど推しているロングコートダディが初めて決勝に進出した。 早くあのスタジオで漫才をするロングコートダディを見たいような、見たくないようなソワソワした日々を過ごした。 決勝前夜は緊張して眠れないくらいで何度も寝返りを打った。眠ることを諦めかけてiPhoneを開いたら、決勝に進出した推しがYouTubeでゲーム配信をしていた。何度も言う、決勝前夜。 笑いはバックボーンが大切だと思う。 中高生のころ、クラスメイトのお笑い担当の人気者が爆笑を生み出せたのは長い時間をかけて彼らが面白いと刷り込まれたから。今回のM…

  • 世間が求める女性像が生きにくい

    踏切の遮断機の前。開かないでいい、ずっと。耳を塞ぎたくなるはずの警報音が今日は響いてこない。遠くで聞こえているような、聞こえてさえいないような。蛍を呼ぶ童謡のそれにも聞こえる。「おいで」と言われているような気がした。行こう。 女性が生きやすい世界とはどんなものをいうのでしょう。 「すべてを捨ててあなたについていく。」は女性のセリフであることが多いから、どこまでも虚しい。 女性とはどうあるべきなのでしょう。 いつもにこにこ静かに笑っているのが理想的な女性ですか。 なにを言われても笑って受け答えして場の雰囲気を壊さないのが理想的な女性ですか。 もしそうであるなら、そんな女性たちが身近にいるのなら、…

  • 魔女の宅急便

    映画が好きだと自覚するずっとずっと前。 わたしは魔女の宅急便に出会って恋をした。 祖父が買ってくれた魔女の宅急便のVHS。何度も巻き戻して繰り返し見た。 ホウキに跨って空を飛ぶ主人公のキキに憧れた。わたしも空を飛びたかった。飛べると思っていた。親に頼んで竹ぼうきを買ってもらった。ワンピースを着て竹ぼうきに跨って坂道をジャンプしながら何度も下った。当時、実家で飼っていた猫はトラ模様の「トラちゃん」だったけど、ジジと呼んだ。慣れない名前で呼ばれるジジの顔はいつだって不機嫌だった。 わたしが猫派なのは、キキに寄り添って話しができるジジが可愛かったからだと思う。 わたしは、靴が好き。 特に赤い靴に目を…

  • 2021年の問題作

    もう12月なのかと腕時計に表示された日付が目に入り気付かされた。木の葉が地面をこする。本当は落ちたくなかっただろうに、赤や黄色に染まっているときはあんなに愛されていたんだから。まだ落ちて踏まれたくないだろうに。今年が終わろうとしている。今年が逃げ切ろうとしているのでまだ捕まえておこう。 2021年、女性の性被害がテーマとして描かれた二作品がわたしの感情を乱したので今年が逃げてしまう前に、今年が過去にされる前に刻み込んでおこうと思う。 プロミシング・ヤング・ウーマン 所謂、映画界隈の間で口コミが広がり映画館に足を運んだ人も多いのではないかと思う。 最後の決闘裁判 わたしがこのブログをスタートさせ…

  • 泣き止まない子供、無視する親(HSC・HSP)

    わたしはHSCでした。 わたしはHSPです。 わたしは元々Twitterをメインに文章を投稿したり、趣味の映画アカウントで交流をしたりしていた。 今後もTwitterを辞めることはほぼないんじゃないかなと思う。趣味が突然嫌いになることはもちろんないだろうし。わたしが文章を書くのを辞めてしまうことも、今のところ不可能な気がするし。 Twitterは140字。わざわざ誰かのページを開いてわざわざ投稿文を読みに行かなくても全文が表示されタイムラインにずらりとたくさんの意見が行列を作る。 わたしに向けられた文章でなくとも、読んでしまえばわたしに向けられた言葉に感じることも多い。タイムラインを追う度に傷…

  • ずぶ濡れのブラッド・ピット

    わたしは所謂、胸糞映画が好き。 絶望や孤独はわたしの感情を育ててくれた。映画の中だけではなく、わたしは絶望と孤独の中で夢を見続てきた。その夢を追いかけて言葉を並べることが今に繋がっている気がするから、わたしはまだせめて映画の中くらいは取り返しのつかないほどの絶望を味わいたい。同時に現実ではない安心感を味わいたいのかもしれない。 ブラッド・ピットで思い浮かぶのは「セブン」のずぶ濡れの彼。額の傷。違和感なく唇の端に乗っかる短くなった煙草。だらしなく着崩したのか着崩れたのか、色気が収まりきらない彼のスーツ。濡れた靴の中で逃げることができない足の不快感は観ているわたしの足先にまで伝わってくる。 雨が印…

  • グッド・ウィル・ハンティングみたいに

    グッド・ウィル・ハンティングを観たことがある人はこの世界にどれくらいいるだろう。 幼い頃に観たグッド・ウィル・ハンティング。その幼さは年齢ではなく心の若さ。おしゃぶりを咥えている子供の目を見て、その純粋で汚れを知らない瞳に写ってしまうのが怖いと思うくらいに大人になって観るグッド・ウィル・ハンティングは全く別物だった。 子供の頃に思っていたほど大人は立派ではなかった。誰かの成功に心から拍手を送ることができるほど余裕がある大人は少なかった。その人の凶暴さは弱さを表すことができない人間のSOSだと気づいてもその傷に触れようとするほど大人は勇気がなかった。ポケットから落ちる財布を見かけても持ち主に声を…

  • ヘイト・ユー・ギブ(肌の差別)

    ヘイト・ユー・ギブ(2018年公開) 2009年にアメリカで起きた事件を基にした作品。 黒人差別と表現されるそれらは、生まれ持った肌の色だけで疑いの目を向けられる理由になるということ。これはあくまでわたしの解釈であり、ネットで検索すると出てくる正しい説明とは異なるけれど。 何人が殺されれば終わるのか。何度この話題を繰り返せば世界は変わるのか。変わらないなんて思いたくない。変わらない世界を見たくない。 私たちは、長く緩い人生という名の自殺行為をしながら生きている。アメリカの大統領だって、ノーベル賞を受賞した素晴らしい人だって、世界中に影響を与える歌手や俳優だって、名も知られていないような中小企業…

  • 人生を選ぶとき

    今週のお題「最近あったちょっといいこと」 18歳。 親元を離れて一人暮らしを始め、少し大人になった気がしている子供だった。 なにもかも、なにもかもが不完全だった。 一人分の食材はどのくらいの量なのか、キノコはどうなったら腐ったサインなのか、どのくらい溜まれば洗濯を回すべきなのか、隣の部屋に迷惑がかかる声のボリュームは、冷暖房を使うとどれくらい電気代が増えるのか。なにも知らないただの子供だった。 洗濯機が壊れたみたいだと助けを求めて、夜でも駆けつけてくれたのは一人暮らしをする友人。 真夏に40℃の熱が出て動けないと助けを求めて、アイスやドリンクを買い込んで汗だくで駆けつけてくれたのも一人暮らしを…

  • たかが世界の終わりの息遣い

    地元を離れた人がこっそりと感じる。 「もうここには私の居場所がない」 グザヴィエ・ドランが魅せる世界は呼吸の音が聞こえてくる。それはスクリーンに映る彼らの呼吸音なのか、見つめるわたしの呼吸音なのか。グザヴィエ・ドランの撮る世界をわたし達は体験したことがある、その世界のどこかにわたしがいる。 家族は空気がパンパンに入った風船みたいだと思う。誰かが少しでも爪を立てると簡単に破裂してしまうと分かって、指先の小さな動きを敏感に感じとっては風船を守り続ける家族。 小さな頃はなんだって話せた。話したいと欲に押しつぶされるように、追いかけまわして話しかけた相手は家族。背が伸びる毎に言えないことが増えていく、…

  • マッツ・ミケルセンの孤独

    今日も孤独を感じる。 日本は面積に対して人口が多い。人だらけの国に暮らしていても、人は孤独を感じて人を求める。きっと人は孤独ではない時間を知っているからこそ孤独を感じられる。それは会いたいと思う人がいるから寂しさを感じられるように、ある意味ですごく幸せな感覚なのではないかと思う。 マッツ・ミケルセン主演の「残された者-北の極地-」を観て絶望と孤独と死と生の極地を見た。 誰かが話す、誰かが笑う。スマートフォンから突然流れ出す音。次の駅を知らせるアナウンス。電車のドアから一斉に吐き出された人達の足音はきっと耳を塞ぎたくなるほどの大音量。道を歩けば車の音、誰かを急かすクラクション。一人になりたいと思…

  • タイタニックみたいな恋

    タイタニックという名作。 言わずと知れたラブストーリー。 タイタニックを見ていると、羨ましいと思うことがある。恋愛をするということ。好きだけで駆け抜けること。 10代の頃にしたような好きって気持ちを最優先にしてなりふり構わず駆け抜けた青い恋愛を思い出す。もうあの頃のような恋愛はできない。それをタイタニックを観ていると思い出してしまう。 会いたくて仕方ない。好きで仕方ない。親や今の恋人のことはどうでもよくなる。目の前の新鮮な恋に走ってしまう。走り出したことには気付かないのに、いつの間にか手を取り合って駆け出しているような楽しいのに苦しいような思い返せば幸せとは少し違う恋愛。 理性や倫理から遠く離…

  • MCU最新作 エターナルズを観て

    ※エターナルズのストーリーにはほぼ触れません。 エターナルズを観て思ったことが何個かあったので残しておこうと思う。 ① 聴覚障害を持つ仲間が違和感なく彼らの生活に馴染んでいるのを見ていて、先日わたしがお話しをしたご家族のことを思い出した。 そのご家族は、奥様が自閉症という病気で旦那様から「妻はコミュニケーションがうまく取れないので僕のほうがたくさん話しちゃいますね」とにこやかに説明された。その横で小学校低学年の娘様がにこにことわたしを見ていた。 カフェのメニュー表を開き、飲み物を決める。「コーヒーとジュースはどちらがいいかな?寒いから温かい飲み物がいいかな?店内は暖房が効いているから冷たい飲み…

  • 最後の決闘裁判 感想(ネタバレ有り)

    1386年フランス(ノルマンディー)で起きた強姦事件と決闘裁判。約600年前の史実映画。 本作は、騎士のジャン・ド・カルージュとその妻マルグリット、ジャンの友人ジャック・ル・グリの3人の視点で展開していく。 騎士ジャンを演じたマット・デイモンと、本作にも出演しているベン・アフレックの2人が脚本を担当。グッド・ウィル・ハンティング以来の共同脚本に期待した人も多いと思う。そして、期待を優に超えていった。期待を超えたと表現していいか分からないけど、確実に本作に心を動かされた。これに関しては本当に天才すぎて言葉が出ない。 強姦事件を巡り食い違う3人の視点を追うストーリーと聞いて、覚悟はしていた。 甘か…

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