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2021/10/09

  • Coincidence49

      ムカつくほどの良い天気の日曜日。本来なら久しぶりの休日で、牧野に会えるはずだったかもしんねーのに…。それこそ『次』になる、可能性があったかもしんねー休日だっつーのに…。俺は朝早くから神奈川県にある道明寺カントリークラブに向かっている。 牧野に会いたい気持ちばかりの俺が、ここに来た理由は…。どうしても仕事を進めたいからだ。 今日、道明寺カントリークラブで開催されるのは、英徳学園によるチャリティーゴルフ。ババアが英徳の理事のメンバーだっつーのもあり、俺も毎年参加している。今日、参加したのはただ一つ。資材不足で遅れている、駅前の再開発を何としてでも進めたいからだ。 駅前の再開発が思うように進まなくなり、1か月と少しが経ってしまった。つまり、それは…。牧野と会えなくなって、1か月以上になるってことだ。 同じ会...Coincidence49

  • Coincidence48

      仕事で近所の山坂銀行の本店へ行った日。あの日は、前日から弱い雨が降っていた。 山坂銀行の本店の床は、ツルツルと光っているタイルの床だった。だから、照明で光っているのか、雨で濡れているのかが、歩くまでわからなかったんだ。 残念ながら、山坂銀行の本店の床は、雨で濡れていた。銀行に来た人が、滑って転んでしまうかもしれないのに…。ここの銀行の人は、濡れている床を拭くことすらしないんだなって、嫌な気持ちで番号札を取ったのを覚えている。 私が椅子に座っていると、杖をついたお爺さんが銀行に入ってきた。あっ!って、思った時には遅くって…。入って直ぐの所で、お爺さんは滑って杖を落としてしまった。 私でも、歩くまで雨なのか光なのかを、判断しにくかったから…。年をとっているお爺さんなら、尚更だよね。 そんな濡れた床に落ちた...Coincidence48

  • Coincidence47

      「つくしのことを、気に入ってくれている人がいてね。お見合いしてみないか?」パパからの突然の言葉。 えっ…。全く予期していなかった言葉に、私の頭は真っ白になった。 私のことを気に入ってくれているって、なに?その人とお見合い? 私、支社長と付き合っているんだよ。お見合いなんて、出来ない…。 パパとママに、支社長と付き合っていることを言った方がいいかな。でも、道明寺ホールディングス東京支社の支社長と自分の娘が付き合っているなんて、そんなこと、信じてもらえないよね…。 パパとママに、どう伝えるべきなのか─────。私が考えている間にも、パパとママは私に話しかけてくる。 「つくし。好きな人も、素敵だなって思っている人もいないって言っていたでしょ。」ママの言葉に、確かにそんなことを言ったことを思い出した。 あの時...Coincidence47

  • Coincidence46

      初めて一日デートした日に、支社長にした私の宣言。「次、私も楽しみにしてる。」恥ずかしくて、顔から火が出そうなくらいの気持ちで言った言葉。だから、言って直ぐに家の中に逃げ入ったほど…。 これ以上ないってくらい、恥ずかしい気持ちで言ったのに…。約束の《次》は、なかなかやってこない。 理由はすごく簡単で、支社長と私の仕事が忙しくなったからなの。支社長に比べると、私の忙しさなんて大したことなんて無いんだけど…。それでも、私の秘書課への異動が決まったってのもあって、いつもの通常の仕事をしながら、私が担当していた仕事の引き継ぎに追われた。新入社員の私で、これだけ大変なんだから、ベテランの人の異動はもっと大変なんだろうな。 支社長が忙しいのは、一年中らしい。それでも、今は同時に色んな事が発生しているって言っていた。...Coincidence46

  • Coincidence45

      いつものように「おやすみなさい。」と言ってから、支社長の車を降りる。 今日はパパとママが留守だからって、玄関の前まで支社長がついてきてくれた。「家の中に入ったら、直ぐに鍵をしろよ。」なんて言ってくる支社長は、すごく心配性みたい。 だって、家の明かりをチェックして「弟は、もう家にいるんだろうな?」なんて言ってくるほどなんだよ。 本当に今日は楽しかったから…。あって言う間の一日だったから、本当に支社長と離れ難い。 玄関のドアに、鍵を差したものの─────。差し込んだ鍵を、回せないまま。 そんな私に、支社長が悪戯っぽい口調で言ってきたの。「次、楽しみにしてる。」恥ずかしくて、一気に頬が熱くなる。 そんな私の頬を、支社長は優しく撫でて─────。「もう家に入れ。直ぐに鍵をしろよ。」なんて言ってきて、家に入るよ...Coincidence45

  • Coincidence44

      付き合い出して約一か月半後。やっと俺たちは、一日デートをすることが出来た。 「遠出してもいいぞ。」っつー俺の意見は、 「支社長が疲れたらダメだもん。」って、牧野の一言で却下された。 俺は遠出くらいで、疲れたりしねー好きな女と、一日一緒にいられるんだ。 長距離運転なんて余裕だと伝えたが─────。「やっぱり疲れたらダメだもん。」と、牧野が選んできた場所は、近郊の海辺の公園だった。 なんでも俺と夜景を見に行った時に、明るい時間帯にも来てみたいと思ったらしい。あの時─────。ライトアップされた橋や観覧車に、牧野が喜んだんだ。 その牧野の顔がスゲー可愛くて、思わず俺はキスした。最初は啄むようなキスだったのが、どんどん深くなって…。 牧野が酸素を求めて口を開いた隙に、俺は初めて牧野の口内に舌を入れた。この瞬間...Coincidence44

  • Coincidence43

      今日は、支社長と初めてのデート。やっと、一緒の日にお休みを取ることが出来たのっ。いいお天気で良かった。 支社長が、家まで迎えに来てくれる。その時に、パパとママに付き合っている挨拶をしたいって、支社長は言ってくれたんだけど…。今日に限って、パパとママが朝早くから、親戚の法事で出掛けることになってしまったの。夜も遅くなるから、向こうで泊まってくるらしい。 私としては、パパとママへの報告は焦らない。だって、付き合っている人がいるとか紹介するのって、なんとなく照れくさいでしょ。 それに、道明寺ホールディングスから、パパに仕事の話がきているみたいなんだよね。そんな時に、私が支社長と付き合っているなんて話してしまうと─────。 工場を閉めるって決めたのに、また余計なことでパパが悩んでしまうかな?なんて思えてきて...Coincidence43

  • Coincidence42

      付き合いだして直ぐ─────。なかなかデートが出来ないからって…。支社長は『仕事帰り、タイミングが合えば送る。』って言ってくれたの。 だから、タイミングが合えば送ってもらえるのかなーくらいに思っていたんだけど…。殆ど毎日送ってくれるようになったの。 支社長が私を送れない日は、商談が夕方から入っていたり、パーティーに行ったりする日で…。それ以外の日でも、私を送った後に、支社長は会社に戻って仕事をしているみたいだったの。 送ってくれるのはすごく有り難いし、一緒にいられて嬉しんだけど…。そんな事をしていたら、支社長の体調を崩してしまうって心配になってしまって─────。『支社長が、疲れてしまいます。』とか、『私より支社長の方が、忙しいと思います。』だとか、『大丈夫です。一人で帰れます。休める時に、休んでくだ...Coincidence42

  • Coincidence41

      「そうですか?今から思うと、付き合う前後が一番緊張感があり、ドキドキしたように思います。結婚すると家族になり、緊張感は安心感へなっていきますから。」この西田の言葉に、俺は度肝を抜かされた。 マジか?能面アンドロイドの仕事の鬼の西田に、女がいただと…しかも、結婚すると家族になりって─────。西田、お前は結婚していたのか…?っつーか、付き合う前後が一番緊張感がありって、西田が女と付き合うとかありえねー! 西田の妄想か?それとも、オーバーワークで頭がおかしくなったのか? 西田を不憫に思った俺は、「西田、しばらく仕事を休むか?」こんな風に、気を使いながら声を掛けた。 っつーのに、西田からの返事は、「何を仰られているのですか?仕事が滞っていると言ったばかりですよ?」これだった。 「お前、仕事しすぎなんだよ。だ...Coincidence41

  • Coincidence40

      唇を合わせただけのキス。たったそれだけのキスだったが─────。俺の体に、衝撃が走った。 好きな女とのキスは─────。スゲー甘くて、これ以上ないくらい幸せを感じた。 が、同時に、牧野の全身から、スゲー緊張が伝わってきた。今日は、これ以上は仕掛けられねー。 名残惜しい気持ちで、ゆっくり離れると────。目を潤ませ、恥ずかしそうな表情の牧野と目が合う。 この牧野の表情がスゲー可愛くて─────。もっと見ていてーだとか、このまま連れ去りてーだとか、もう一度キスしたいだとか…。こんな思いばかりが、俺の中で湧き上がってくる。 そんな思いを吹っ切るように、牧野を家に帰るようにそっと背中を押す。「おやすみなさい。」っつー牧野の言葉に────。 牧野からのその言葉を、同じベッドで聞いてみてーなんてこと思いながら、牧...Coincidence40

  • Coincidence39

      支社長とは、パパとママへの挨拶を別の日にするってのと…。会社の人には、しばらくは内緒にするってことを約束した。 その後直ぐに、支社長は、「じゃ、ここからは俺のお願い。」なんてことを、言ってきた。 えっ。支社長からのお願いって、どんなお願いなんだろ。私で出来ることかな? 何を言われるのかと、ちょっと緊張。ドキドキしながら、支社長が話してくれるのを待っていると─────。 「俺と牧野の二人の時は、敬語禁止。」って、支社長が言ってきたの。 それは、無理でしょ。支社長だよ。敬語で話さないなんて無理だよ…。 そんなことを思っている私に─────。「敬語を使ったらペナルティな。」なんてことを、支社長は言ってきた。 そんなぁ…。敬語を使うとペナルティ!? 困っている私に、「俺たち、付き合っているんだよな。」こんなこ...Coincidence39

  • Coincidence38

      「牧野…。今、返事を聞いていいか?」支社長の声。 ドキン、ドキン、ドキン…。見上げた支社長の顔は、切なそうで─────。思わず私の心臓がキューンってなる。 好きな人に告白してもらえたのは、奇跡。私の気持ちをきちんとつたえなきゃ。でも、どうして…?こんなに素敵な支社長が、私を好きになってくれたのかな。 緊張の返事は─────。「私も…、好きです…。」こんな風に、かなり小さな声になってしまった。 こんな返事になってしまったのに…。支社長は、少年っぽい満面の笑みをしてきたの。支社長でもこんな顔するんだぁ。支社長のこの笑顔を、忘れないでいたい。 「スゲー嬉しい。」こう言った支社長は、私を強く抱きしめてきた。 支社長の香りに包まれる。ドキンドキン…ドキンドキン…。早鐘のような私たちの心臓の音が、重なってリズムに...Coincidence38

  • Coincidence37

      牧野でも飲みやすいかと頼んだスパークリングの日本酒。どうやら飲みやすかったみたいで、顔をほころばせながらグラスをマジマジと見つめている。 少しくらいは俺の方を見ろっつーんだ。こんな思いで発した言葉。「間接キス、だな。」 この俺の声に、牧野は漸く視線を俺に移してきた。と、同時に─────。顔中を真っ赤にさせ、恥ずかしそうにしてきたんだ。そして、下を向いたと思ったら、その恥ずかしそうな顔のまま俺を上目遣いで見てきた。 これには、俺が参ってしまった。なんでお前はそんなに可愛いんだよっ!!お前の上目使いは反則だっ。 このタイミングで─────。俺たちの目の前の鉄板に、黄色の炎が上がった。驚いた牧野の目が、見開いてますますデカくなった。 俺にとっては、ただのフランベだったが…。牧野はそうじゃなかったようで───...Coincidence37

  • Coincidence36

      一週間ぶりに支社長に会えたのに─────。なんとなく気まずい。 時々チラって見上げると、支社長は難しそうな顔をしている。それでも、支社長と私の手は繋がれていて…。こんな時ってどうしたらいいのかな? もしかしたら…。私の返事が遅いのを、怒っているのかな?でも、返事ってどのタイミングでするの?聞かれてもいないのに、『私も好きです。』なんて言えない…。そんな勇気も無い。 車に乗ってからも、支社長と私は気まずい雰囲気。それに気付いてくれた菅山さんが、気を使って色々と話しかけてきてくれた。もちろん、話しているのは菅山さんと私の二人。支社長は、何かを考えているように前をジッと見ている。 先週のデートのときは、恋人繋ぎだった手も────。繋がれてはいるけど、今日は普通に繋がれているだけ…。 ちょっと悲しいな…。でも...Coincidence36

  • Coincidence35

      先週末、好きな女と初めてデートした。牧野を、他の男に盗られたくないっつー思いだけになった俺は─────。人生で初めて女に好きだと伝え、付き合いたいと伝えた。 固まった牧野を見て、返事は次でいいと言ったものの…。スゲー後悔している。 あいつの返事はどっちだ?直ぐにでも聞きたいような…。聞くのが怖えーような…。 牧野が断ってきたらっつーのが、頭に過ぎる。断られたからといって、牧野のことを諦められるわけでもねーし…。正直、仕事でもこんなに緊張したことなんてない。 次をいつにするかだ。仕事より牧野だ。この際、西田の視線なんて無視だ。牧野の返事が気になって、仕事どころじゃねー。なんとか、金曜の夜に仕事を調整することに、俺は牧野にメールを送信した。今日は、支社長との約束の日。前のデートから、ちょうど一週間。そして...Coincidence35

  • Coincidence34

      翌週。いつもなら、仕事が終わると直ぐに家に帰る私も…。どうしても進のお泊りのことが気になって、毎日のように下着屋さんへ向かった。 下着屋さんってどうしてこんなに可愛いのかな?なんとなく気恥ずかしいような気持ちで、私はお店の中へ入って行った。 白、ピンク、赤、水色、黒…。色とりどりの下着がたくさんっ!スケスケじゃなく、露出も少なくて、私に合うもの。色々見ているうちに、どれが良いのかわからなくなってきた…。 悩んでいるこのタイミングで、まさかのパパから着信。このタイミングで電話って嫌がらせみたい…。なんとなく出たくないって思いながら出てみると…。 パパは急いでいるのか、一気に話し出した。【つくし、パパだ。今から銀行の人と食事なんだ。本当ならママと二人で行く予定だったんだけど、ママの都合が悪くなってしまった...Coincidence34

  • Coincidence33

      なんだかんだと時間が合わねーっつーので、俺が牧野の親父さんの工場へ行けたのは、翌週の月曜日だった。 帰国後、西田は牧野の親父さんとのアポイントメントを第一に調整した。が、牧野の親父さんが忙しいっつーので今日になった。 工場を閉鎖するかもしれねーのに、なんでそんなに忙しいんだ?こんな疑問を抱きながら─────。西田と一緒に、牧野の親父さんの工場へ入った。 牧野の親父さんは、工場の奥で、必死な表情でネジを見ては機械で調整していた。微調整か?俺には、その差は全く分からねーが…。親父さんのその目は完全に職人の目で、俺と西田が入ってきたことすら気付いてなさそうだった。 その間に、俺はぐるっと工場を観察した。小さな町工場。どこの町にもありそうな工場だ。 でも、どの機械も年季が入っている割に手入れされている。そして...Coincidence33

  • Coincidence32

      西田side昨日、私の上司は全く仕事に集中出来ませんでした。何故なら─────。意中の相手との初めてのデートだったのです。 お相手の方は、わが社の新入社員の牧野つくしさん。偶然知り合った牧野さんに、司様は恋をされました。司様にとって初めての恋です。 女性に興味が無いと諦めていた司様のご両親も、これには大いに喜ばれました。そして、何故か─────。お二人は私に、司様の初恋を見守るように…。出来ればその恋を成就させるようにと、言われてきたのです。 このニュアンス、どう思われますか?『見守る』までは、納得できます。しかし、司様のご両親は、『成就させるよう』求めてきたのです。いや、求めてではなく、命令と思った方が正しいのでしょう。 ご存知の方も多いかと思われますが…。司様のご両親は、ニューヨークを拠点に世界の...Coincidence32

  • Coincidence31

      お礼のメッセージを送ってからは─────。読んでくれたのかな?とか返事があるかな?とか、思ってしまって…。何度もスマホの画面を見てしまった。 お風呂から出ると、直ぐにスマホのチェック。歯磨きをしても、スマホのチェック。 いつもならお休み3秒の私も、支社長のことを考えてなかなか寝付けない。もう少しすると日が変わるって時に─────。♪ピロンスマホから小さな機械音が鳴った。 ガバって起き上がって、ベッドの上で正座して深呼吸。でも、気持ちは急いでいるから、ここまでの動作は一瞬。そして、急いでパスワードを入力して画面を開く。 支社長のアイコンの所に数字の1。支社長から返事が来たー!ドキドキしながら、私はもう一度スマホをタップする。 そこには、【俺も楽しかった。またな。】って文字。 キャー! しかも、『俺も楽し...Coincidence31

  • Coincidence30

      「ただいまっ。」バタバタってしながら、自分の部屋へ向う。 早く、早くっ。頭がパンクする。自分の部屋で、一人になりたいっ。 「あら、つくし。おかえり。遅くなるなら…」こんなママの小言に、 「はーい。ごめんなさーい。」これだけ言って、私は自分の部屋へ急いで入った。 バタン!思いっきりドアを閉めて─────。 その場に座り込んだ。キャー!今のなっ、な、何っ!? ギャー!心臓が今日一番?ううん。今まで生きてきて一番ドキドキしている。 私、人生で初めて告白された。しかも、自分の勤めている会社の支社長に…。 それに…。支社長に軽く抱きしめられなかった?抱き締められてはいない。軽くふわって包まれたような…。 キャー!どうしようっ。本当にどうしようっ。 思いっきりベッドにダイブして、手足をバタバタさせて…。今のドキド...Coincidence30

  • Coincidence29

      俺が送ろうとすると─────。牧野は、「そんなの申し訳ないです。私の家、ここから直ぐです。だから、大丈夫です。」こんなことを言い出した。 牧野…。お前は、マジでわかってねー。いくら月夜だからといって、好きな女をこんな時間帯に1人で帰らせねーだろ。 「俺が送りたいんだ。お前が家に入るギリギリまで、一緒にいたい。」っつー俺の言葉に、牧野は恥ずかしそうに俯いた。 俺が歩き出そうとすると────。牧野は急に車に戻って、菅山に礼を言い出した。 うぉっ!俺とお前の手は繋がれているんだよっ。引き摺られるように歩く俺。この後、俺は牧野と連絡の交換に成功した。 コンビニから牧野の家までは、ほんの数分。日本に帰国して直ぐ、この辺りを仕事でウロウロしたような記憶がある。 牧野の家は、この辺りだったんだな。駅からだと歩いて1...Coincidence29

  • Coincidence28

      渋くて地味にライトアップされたメープルの庭。牧野が『素敵』だとか『優しい光に癒される』なんて言ってきた途端。 そうか。この地味さも渋さもこれはこれでいいのかと、納得してしまうから不思議だ。 この素敵に地味な庭を、二人きりで歩く。牧野が俺を見上げると─────。こいつのデケー目がキラキラしていて、思わず胸に閉じ込めたくなった。 好きな女と二人きりっつー時間は、俺にとってあっと言う間に過ぎ去っていく。21時に正面玄関に行くと─────。既に菅山がスタンバっていた。 菅山ー!少しくらい気を利かせて、遅れてくるっつーことくらいしてくれ。心の中で悪態をつきながら、菅山をジト目で睨んでみたが…。 菅山は俺のジト目になんて全く気付かねー。ただ、俺と牧野の手がしっかり繋がれているっつーのは気付いたようで、ガン見した後...Coincidence28

  • Coincidence27

      牧野は、やっと俺のことを意識しだしたみてーだ。が、顔や首、耳まで真っ赤にさせて下を見ているだけで、俺の方を見ようともしねー。 どんな顔しているんだ?願わくば─────。嬉しそうな顔でいて欲しい。 困った顔とかしてねーよな?とか、泣いたりしてねーよなっつー不安が過る。 俺と繋がれた牧野の手は─────。握り返してくれているような…。そうじゃねーような…。 俺は自分の指を、牧野の指に絡めた。絡めた途端─────。 下を向いていた牧野だったが…。上目使いをしながら、俺を見上げてきた。 牧野の表情が気になっていたが…。目が合った瞬間、俺はビックリすることになる。 うおっ!なんだよっ!牧野の顔は、茹蛸みてーに真っ赤になっていた。 そして、嬉しそうな顔でも無ければ、困った顔でも泣いてもいなかった。スゲー恥ずかしそ...Coincidence27

  • Coincidence26

      デザートを食いだしてから、牧野の様子が変だ。急に頭を振ったかと思うと、顔を真っ赤にさせたり…。俺のデザートまで食って、腹を壊したのか? 会計はしねーで、俺と牧野のコートを受け取る。店を出る前に、牧野の後ろにサッと回り、牧野にコートを着せ────。ようとすると、驚いた牧野が、デケー目で俺を見上げてきた。 店に入る前も、俺がお前のコートを脱がせただろっ。ま、その時も、こいつは驚いた顔をしていたな。 こんな店なんだ。男が女のコートの脱ぎ着を手伝うなんて、フツーだろ。ましてや、俺はお前に触れたくてしかたねーんだ。 コートを、脱がせた時も思ったが…。細い肩だよな。腕なんて折れそうだ。 コートを着せていると─────。牧野の細くて白い首が、ほんのりピンクに色付いた。 思わず目が奪われる。スゲー綺麗だ。思わず手を伸...Coincidence26

  • Coincidence25

      前の料亭でも思ったんだけど…。マナーだけは、本では無理。 特にお食事のマナー。こればかりは、頭で覚えるだけじゃダメだなって思う。実践していかないと、身に付かなさそう。 支社長は、本当にすごいの。所作が綺麗すぎる。思わず見惚れてしまうほど。お箸の上げ下げだけで、男の人がこんなに綺麗で良いのって思えてしまうくらい。 支社長は、私の微妙なニュアンスに気付いてくれた。私の『言葉って不思議』って言葉に…。「他にも不思議なことがあるのか?」なんて聞いてきてくれたんだ。 ポルトガル語を勉強しだした私が、不思議に思っていたこと。どうして日本ではそのまま残ったのに、ポルトガルでは消えたのかってこと。そんな思いが、私から出ていたのかもしれないんだけど…。それでも、そんな私の何気ない気持ちを汲んでくれるなんて、スゴイなとか...Coincidence25

  • Coincidence24

      ポルトガル語の話が終わると、今食っているメシの話。メシの話が終わると、ポルトガル語の話が始まる。 おい…。デートだぞ。なんで会話が、メシとポルトガル語なんだよ。 頼む。少しは俺を意識してくれ。 なんて思いながら食っていると─────。牧野の食前酒が、空になっていることに気付く。 まさか、こいつ…。『うーん。』っつー微妙な評価をしながら、少しずつ飲んでいたってことか?顔を見ると、頬と目の回りがほんの少し赤いように思う。「食前酒、飲んだのか?」俺の質問に、 「はぃ。折角なのでぇ、少しずつ飲みましたぁ。」っつー返事。 何が折角なんだよ。話し方はゆっくりなっているし、甘えたような語尾になっているぞ。 あれだけの量でこんな風になるのか?口当たりが軽すぎたか? 「大丈夫か?無理だと思ったら飲むなっつっただろ。」っ...Coincidence24

  • Coincidence23

      料理が運ばれてくる直前─────。マナー通り、牧野は、ナプキンを綺麗に二つ折りにし膝に置いた。 食前酒に関しては、最初に恐る恐る口を付け「うん?」なんて言いながら、首をかしげてグラスを戻した。 一口もねーじゃねーかっ!しかも、その『うん?』ってなんだよ。殆ど飲んでねーし…。それで味がわかるのか? 食前酒だぞ。食前酒つーのは、アルコールの度数が低いく食欲を促す為にある。それすら飲めないんだな。 確かに…。牧野には、食前酒なんてものは要らねー。食前酒なんて飲まねーでも、モリモリ食っているからな。 少しだけでも酔ったところを、見たいなんて思ったが…。それは、無理そうだ。 牧野はミネラルウォーター。俺は、アルコール度数の低いワイン。 今夜の牧野も、目の前の皿に並んだ芸術品っつーのに夢中だ。少しは俺を意識してく...Coincidence23

  • Coincidence22

      次は、ハンドケアで後悔したくない!支社長とまた手を繋ぐなんてきっと無いけど、ハンドケアは必要なんて思ってしまった。 次に私が、誰かと手を繋ぐ…。その人は、どんな人なのかな?全く想像できない。 支社長が綺麗な女の人と、手を繋ぐことはあるだろうけど…。こう思った時、心の奥がズキってした。 なに、このズキって…。私、今─────。支社長が女の人と手を繋ぐのが、嫌だとか思わなかった? そんな事を思いながら─────。オーダーしてくれている支社長を見る。オーダーしているだけなのに、支社長ってカッコいいの。 このタイミングで─────。支社長が目を通していたメニューから顔を上げて、私に目線を合わせて笑ってくれた。 ボッ!私の頬が、一気に熱を持ったきっと、顔が真っ赤になっているはず。もしかすると、耳まで赤いかも…。...Coincidence22

  • Coincidence21

    今日のメシは、メープルのフランス料理。これも西田チョイスだ。 なんでも、『社会人になったばかの牧野さんは、これからマナーなどを身に付けていきます。その為、肩の張ったお料理より、楽しんでお食事できることが大切です。』っつーので、西田が勝手に予約を入れた。 「メシ、ここのフランス料理でいいか?」「はい。大丈夫です。」こんな返事をしながらも、牧野の顔が急に強張ってきたのがわかる。 そんな顔をしている牧野に「大丈夫だ。ここのフランス料理は、箸で食える。」こう言ってやると─────。こいつは、一瞬で顔をぱーって顔を明るくさせニコって笑ってきた。 そうだよ。前の料亭の時でも同じことを思ったが…。俺は、こいつのこんな顔が見てーんだ。俺の隣で、ずっとこんな顔でいてもらいたい。 まずは─────。なんとか、俺のことを男とし...Coincidence21

  • Coincidence20

      俺と牧野を乗せた車は、目的地であるメープル東京へ着いた。ここに着くまで、牧野と楽しそうに話していたのは俺じゃなく菅山。俺にとって居心地が良かった空間は、いつの間にかアウェイ感だらけになってしまっていた。 が、西田が話していたことを思い出す時間となった。『牧野さんにとって、司様は、勤務先の支社長なのです。新入社員が支社長と同じ車に乗るというのは、緊張しかございません。』だとか、『初めてのデートは、二人きりにならない場所がいいのです!』とか、『なので、本日は司様が運転するのではなく、ドライバーに車を運転してもらうべきです。もちろん、運転席と後部座席はオープンで!』っつーことや、『あー、そうですね。運転手は、気さくな菅山さんの方が良いでしょう。邸への連絡は、今から私がします。』こんなことを、西田はクドクドと...Coincidence20

  • Coincidence19

      「西田さん、遅いですね。呼んできましょうか?」この私の言葉に、支社長はジト目で睨んできた。 えっ…。どうして?なんで私、睨まれているの?何かしたのかな…。 このタイミングで、運転手さんが降りて来てくれたんだけど…。支社長が手で止めた。 支社長がリムジンのドアを開けてくれて、座るように促してくれた。これって、エスコート? って、私がエスコートされてどうするの!?普通なら、社員の私が支社長にドアを開けたりしないといけないよね。でも、この車は支社長か、会社のモノだと思う…。それなのに、私が座る場所を決めていいのかな…。 どうしたら良いの!?この状態で、私が先に乗ってしまうと、私が運転席の後ろ側に座ることになる。って事は、私が上座になってしまうよ。 この車、どっち側がハンドルなのっ?日本車、外車?どっち??外...Coincidence19

  • Coincidence18

      重役専用のエレベーターは、どんどん地下へ向かってくる。どうしよう…。口から心臓が出そうって表現が、ピッタリな状態。 いつもなら、気が付かないくらいの小さなモーター音。ブーン…私一人ってのもあって、すごく聞こえる。 ブーン、ドキドキドキ、ブーン、ドキドキドキ…エレベーターの音と、私の心臓の音がうるさい。 ブーンとドキドキで、これ以上無理ってなった時。エレベーターから≪ピン・ポン≫の下がり音が聞こえた。 重役専用のエレベーターが着いた。なんとなく…。ショルダーバックを肩から下し、胸の前で抱きしめた。 そして、後ろに一歩下がったと同時に─────。エレベーターの扉が、ゆっくり開いた。 支社長が一人で降りてきた。西田さんはどうしたのかな?なんて思っていると─────。支社長は、私に綺麗に笑ってくれたんだ。 支...Coincidence18

  • Coincidence17

      牧野に内線する直前。俺は、約束の時間を何時にするかで悩んでいた。 俺はなんとかなる。なんとかならなかったとしても、西田がするはずだ。っつーか、絶対になんとかさせる。でも、牧野はどうなんだ? こんなことを、思っていると────。西田が、信じられねーことを口にしたんだ。「牧野さんの退社時刻ですか?本日はノー残業ディですので、17時半には大丈夫かと思われます。」 あ?ノー残業ディだと…。そんなものがあるのか? っつーか…。俺にはノー残業なんてねーぞ。エブリディ残業だぞ!なんて思いながら西田を睨んでいると…。 「私もノー残業ディは、ありません。毎日残業しております。」なんてことを、西田が言ってきた。 『残業になるほどの仕事を、渡してくるのはお前だっ!』なんてことを、大声で言ってみてーが…。牧野とのデートの為に...Coincidence17

  • Coincidence16

      西田の機転で、牧野と二人きりになれた俺。しかも、エレベーター内っつー密室。 だが、総務の5階までって、これ一瞬じゃねーの?故障で止まったりしねーかなっつー期待も虚しく…。エレベーターは、いつもより異常な速さで5階へ向かっている。 ヤルじゃねーか、うちの重工業。なんて、感心している場合じゃねー! エレベーターが速い上に、牧野まで話し出す。俺を見上げてくるのが、スゲー可愛いが…。今は、俺の話を聞いてくれっ! 牧野が言葉に詰まった瞬間─────。俺が先に話し出した。 俺が『牧野』って言葉を俺が口にした途端。キョトンとした顔のこいつが、首を傾げてきた。5階っつー俺の言葉に、こいつのデケー目がますますデカくなる。 自慢じゃねーが…。俺は、出張中も(西田の冷めた目線に堪えながら)お前の履歴書と社内データを見続けた...Coincidence16

  • Coincidence15

      「し、支社長…。」「ま、牧野っ…。」 支社長と私の声が、重なった。重なってもなんでも、謝らないとっ。 でも、でもでもでも!!こんな綺麗な顔の支社長を目の前にしてしまうと、緊張するっ! 「あっ、あ、あ、あ、あのっ。えー、えっと、私。えっと…、料亭で…。1か月前に…。」私、なに話しているのっ!?焦ってばかりで何を喋っているのか、自分でもわからない。 私のバカー。どうして話し出す前に、言葉をまとめ無かったの!?これじゃ、何を話しているのかわからないじゃないっ!! どうしよう!ぎゃー!!どうしよう!! 私、スゴク焦っている。落ち着こうって、思っているのに…。頭で伝えたいことを考えてって、わかっているのに…。わかっているのに、全然出来ない。 そんな私から、出てきた言葉が─────。「あ、あの…、あ、あのっ。」ま...Coincidence15

  • Coincidence14

      「待ってー。」っつー声と同時に、前髪全開でエレベーターに乗り込んできた女。そいつは、俺がずっと会いたかった女だった。 「やったー。間に合ったぁ。待ってもらって、ありがとうございます。」頭を下げながら言ってきた牧野は、 顔を上げた途端─────。目をデカくさせたままで、顔が固まった。 そして、首を傾げながら、ブツブツと独り言を言い出したんだ。「あれっ?私、役員専用のエレベーターに乗ってしまったのかな?」 ま、いつもなら、俺と西田が一般のエレベーターに乗るなんてことはねー。それよりも、今のは独り言か? 『やったー。』っつーのも、会社でのエレベーターで言うのはどうかとも思うが…。スゲー可愛らしかったから、言うのは俺だけの前にしてもらいてー。 こんなことを思っている俺に、西田が、驚くようなことを言ってきた。「...Coincidence14

  • Coincidence13

      牧野は、どこでポルトガル語を覚えたんだ?まさか、付き合っている男がポルトガル人とかじゃねーよな? なんとなく男に慣れてねー感じがして、今まで安心しきっていたが…。あいつだって成人した女なんだ。付き合っている男がいたとしてもおかしくねーし、付き合っていた奴がいてもおかしくねー。これは、(勝手につけた)SPに、確認しねーとな。 その前に、俺より牧野のことを知っているムカつく秘書に確認だ。「牧野は、ポルトガル語をどこで覚えたんだ?」 俺がこう聞いたっつーのに!西田からの返事は、「支社長は、ネジが日本に、いつ、どこの国から入ったかご存じですか?」だった。 西田…。テメーは、俺と会話をする気があるのか?会話が成り立ってねーだろ。なんて思ったりもしたが、牧野は、自分の父親はネジを愛してやまないって言っていたことを...Coincidence13

  • Coincidence12

      牧野の履歴書がバレてしまった俺は…。西田からの長くてくどくて鬱陶しい説教を、聞く破目になってしまった。 あまりに長い西田からの説教に、疲れた俺は反抗する気力すら無くしてしまい、目の前にある仕事を片付けることにした。西田の指示のまま仕事はしているし、西田の案で牧野をデートに誘うが…。この履歴書だけは絶対に返さねーと、決めている。 シンガポールに着いてからも、ことあることに、西田の説教が始まったが…。とりあえず、聞くふりしながら聞いてねーを繰り返した。何度か反論もしたが、西田の前には意味が無かった。 仕事がはかどらねーのは、西田の長い説教が原因だと俺は分析した。こいつの説教を聞きながら、マジで2週間で日本に帰れるのかっつー不安。 それでも、俺はソッコーで日本に帰るんだ。早く帰らねーと、あいつに悪いムシが付...Coincidence12

  • Coincidence11

      今の時点で、パパの工場は─────。受けている注文の製造・発送が終わり次第、閉鎖となってしまう。 私が子供の頃から、パパはネジのことばかりだったんだけど…。正直、私や進よりネジのことの方が好きなんだろうなって思った時もあったんだけど…。それでも、複雑な気持ちになってしまう。 ただ…。ネジを異常に愛しているパパが、家族のことだけは、きちんと考えてくれていたことにホッとした。工場だけが抵当に入っているっていうのにも、安心した。 でも、ママは「工場が人手に渡ってしまったら…。パパも、辛いと思うの。だから…、いずれは家も手離して、引越ししないといけない日が来るかもしれないわね。」なんてことを言ってきたの。 えっ!?この家まで、手離してしまうの…?私たちが引っ越すってことだよね。流石にそれは、ショックが大きすぎ...Coincidence11

  • Coincidence10

      なんだったのかな?あの履歴書。私のだけが、カラーコピーだったんだよね。 仕事帰りに、何度考えても納得できない。駅からとぼとぼと歩いていたら─────。思ったより、時間が掛かってしまっていた。 きゃー!早く帰らないとっ。 遅くなるとパパが『迎えに行くから、電話してきなさい。』とか『女の子の一人ある気は危険だよ。』なんて、毎回うるさく言ってくるんだよね。 私の家は、表通りに面している所はパパの工場。そして、その奥が私たちの家になっているの。小さい頃、奥にある家まで行くのが面倒で工場から入ってしまって、パパにスゴク怒られたんだよね。あまり怒らないパパだったけど、それだけは許してくれなかった。 工場には高温になったり、危険な物もたくさんあったから、子供には危ないって事もあったんだろうけど…。 『仕事場は、通路...Coincidence10

  • Coincidence9

      俺は、不本意ながらジェットに乗った。なんでシンガポールに出張なんだよ。せっかく、一緒の会社で働いているつーのに会えねーじゃねーかっ。 西田から「少しでも、帰国を早める為です。」っつー理由で、ジェットの中でも大量の仕事を渡された。 クソっ。俺は、西田が渡してきた書類の間に、牧野の履歴書を忍び込ませた。今の俺にとって、これだけが癒しだ。 そして、もう一つの俺の癒しは、牧野のハンカチ。俺は、ジャケットの内ポケットに大切に直している。ビールを溢してしまったあいつが、俺のジャケットを拭いた記念のハンカチだ。 牧野に会いてーな。あいつは、今、何しているんだ? 日本に帰ったら、牧野とメシに行きてーな。でも、どうやって誘うんだ?なんて言うんだ?メシ食いに行くっつーことは、デートになるのか? ・・・・・。あいつら、いつ...Coincidence9

  • Coincidenc8

      この日の夜遅く─────。俺は、西田から牧野の履歴書奪還に成功した。 牧野の直筆だぞ!しかも、大学生の頃の写真付。 今と同じ顔だ。いや、少しだけ今の方が大人っぽいか?字も、綺麗な字を書くんだな。 俺が、牧野の履歴書を見て感動しているっつーのに…。「それでは、総務部に返却しますので返してください。」なんてことを、西田が言ってきたんだ。 あ?牧野の履歴書を返すだと…? 常識的には、返却するのが当然なんだろう。そのくらい俺にもわかっている。でも、返したくねーんだ。俺が持っていたい。 西田が席を離したすきに、俺は牧野の履歴書のカラーコピーを取った。そして、西田が戻ってくる前に、履歴書を本来あるべき場所に戻した。 気にすることはねー。数年後には、間違いなく履歴書もデジタル化されている。 翌朝。西田はしれっとした...Coincidenc8

  • Coincidence7

      手持ちの仕事が一段落した時に、秘書課から内線。【すみません。手が空いた時で結構ですので、本年度の新入社員の履歴書を秘書課まで持ってきて下さい。】 こんな依頼が入った。なんで履歴書?しかも、秘書課。 もしかして…。私のことを調べられたりとかするのかな?社員ってことを黙っていたなんて、絶対に印象悪くなってしまうよね。今更なんだけど、やっぱり後悔っ。 新入社員が、支社長のジャケットにビールをかけて…。その上、社員のこと黙っているなんて、最低な社員じゃないの…?私。 朝と同じように心臓がバクバクと動き出す。でも、朝とは全く違って嫌なドキドキ。 どうしよう…。私、明日も出社できるのかな? 不安な気持ちで、私はエレベーターに乗った。私の気持ちとは裏腹に、エレベーターは最上階を目指して上昇している。私の気持ちは、一...Coincidence7

  • Coincidence6

      翌日8時過ぎに、西田と共に出社する。俺は、まだ昨夜の牧野との楽しい一時の余韻に浸っていた。牧野の父親と会う時は、あいつも来るように言わねーとな。 ロビーに入るなり─────。「キャー!!支社長よ!」「素敵!朝から会えるなんて最高。」こんなバカな女社員たちの声。 お前ら社会人だろ!毎朝、毎朝、ロビーで叫ぶなっ!支社長が出社したっつーのに、挨拶もしねーって何考えているんだ。うちの社員教育どうなってんだ? 辟易しながら、視線を西田に移すと、「社員教育を、一から見直しさせます。」っつー返事が返ってきた。 西田から向こうへ視線を移した、その先に─────。あいつが…。牧野がいた!! また、会いたいって思っていたんだ。この時間にここにいるっつーことは…。あいつ、道明寺ホールディングスの社員だったのか? バクバクと...Coincidence6

  • Coincidence5

      本夕より支社長は、ネジ工場の牧野社長と会う約束でございました。あいにく牧野社長は体調を崩された為、日を改めてもらいたいと、社の方に連絡があったのですが…。残念ながら、こちらとは入れ違いになってしまいました。 電話連絡をして下さった牧野社長のお嬢様の牧野つくしさんは、入れ違いになったと察知し、わざわざ料亭まで謝りに来て下さりました。実は牧野社長のお嬢様でいらっしゃる牧野つくしさんは、弊社の従業員であります。 申し遅れました。私、道明寺ホールディングス日本支社:道明寺支社長の秘書を務めております西田と申します。 電話連絡だけでなく、自ら出向いて謝罪をしてくださった牧野さんですが…。その誠意が、女性嫌いの支社長に通用するかどうかを心配しておりました。 軽くあしらった後に悪態をつき、直ぐにでも部屋から出てくる...Coincidence5

  • Coincidence4

      フツーなら─────。女将が飲み物を瓶で運んできた時点で、注ぐだとか酌しねーとっつーことを思いそうなんだが…。目の前のこいつは、そんなことなんて全く思いもしねーみたいで、モリモリ食っている。 女だから酒を注ぐべきだなんて、俺は思っていない。どうでもいい女に酒を勧められても飲みたくもない。 でも、こいつにだけは注いでもらいてーって思うんだ。こいつが俺の隣で微笑みながら、ビールを注いでくれたらっつー俺の妄想が止まらねー。こんな風に俺が思うのは初めてだ。 気付けよ…。お前にビールを注いでもらうことだけを、俺は期待して待っているんだぞ。 ビールを注ぐっつー事に気付かねーっつーことは、こいつは社会人じゃねーってことか?高校生に見えねーこともねーが…。大学生か専門学生か?俺や女将、料理長に対応していた時、社会人ぽ...Coincidence4

  • Coincidence3

      全く想像していなかった女の言葉に、俺は唖然としてしまった。しかも、この女は他の女と違って、俺に色目を使わねー上に全く興味がなさそうだ。 何度も頭を下げながら、          『すみません。』だとか、『申し訳ございません。』なんて言っている。 このタイミングで、女将と料理長がいつものように挨拶をしに部屋へ入ってきた。直ぐに女将と料理長の元に駆け寄った女は、また「すみません。」って、言いながら頭を下げた。 そして、二人に向かって、「折角、作って頂いたお料理なのですが…。父の体調が悪くなってしまって…。」こんな風に謝りだしたんだ。 さっき、俺に謝った時と同じように、何度も謝罪の言葉を入れ、その都度頭を下げている女。こいつが頭を下げる度に、こいつの黒髪が室内の照明に反射して綺麗に光る。 思わず俺が、その髪...Coincidence3

  • Coincidence2

      もうっ!パパのバカー!! どうして新入社員のわたしが、よりによって勤めている会社の支社長と会わないといけないのよっ!もうっ!どうしようー!! 私は今、ある料亭へ向かっている。そう…。今夜、パパと支社長が会うはずだった料亭。 なんで私が、支社長に会う為に料亭に向かっているかって? ・・・・・。パパったら!パパったら!!緊張しすぎてお腹が痛くなって、トイレから出られなくなってしまったのっ! しかも、約束の時間の半時間前に、そんな連絡が来るんだよ。今日に限って、ママもお弁当屋さんの残業が入ってしまって…。その時間だったら、会社に連絡しても支社長も出てしまっているって時間だったから、私が謝りに行くことになったの。 うちみたいな零細?先細り?倒産直前の工場がっ!道明寺ホールディングスっていう大企業の支社長さんと...Coincidence2

  • Coincidence1

      俺、道明寺司。高校三年の夏に、卒業を待たずニューヨークの大学へ進学した。それからの4年は、ひたすら勉強とビジネスの二足わらじ。必死で頑張った俺は、4年後、日本へ帰ってくることが出来た。 道明寺ホールディングス日本支社:支社長っつーのが今の俺の肩書き。ただ、アメリカと日本では仕事っつーか文化が全く違い、この1年は戸惑いが多かった。なんとか、日本に慣れ、仕事に手ごたえを感じだした。 今日は久しぶりに、幼なじみのあいつらと会う約束をしていたっつーのに…。秘書の西田が終業間際に言ってきたんだ。「本日は19時より、牧野ネジ工場の牧野社長といつもの料亭で会食の予定となっております。」 あ?なんだ?牧野ネジ工場?聞いた事もねーぞ。 牧野社長?誰だよ、それ。 知らねー奴と、なんで一緒にメシ食わねーといけねーんだ?俺は...Coincidence1

  • コメント返信 まやかし婚

      まやかし婚1へのコメント返信lovedoara様お久しぶりです。お元気ですか?お忙しくされていたのですね。どうしても私生活がバタバタすると、こちらがおろそかになってしまいますよね。私もまた、お邪魔させてもらいますね。まやかし婚少しずつ変わっています。新しくなったまやかし婚も楽しんで頂けると嬉しく思います。コメントをありがとうございました。  まやかし婚220話へのコメント返信ボルドー様最後のシメが西田さんの所を、笑って頂きありがとうございます。ここ笑って頂けると嬉しいなーって思っていたんです。どなたも最終話が西田さんだなんて思わないですよね(笑)司くん、話の間に成長していましたでしょうか?そのように書くことが出来ていたのなら、良かったなと思います。最後の謝罪会見は、私の中でかなり悩みながら入れました。...コメント返信まやかし婚

  • コメント返信 新年のご挨拶2023年

       あけましておめでとうございます2023へのコメント返信はるとも様楽しみに読んで頂けるのが私にとって何よりです。毎日更新出来ないのが申し訳ないのですが…。今は過去の話を修正中です。とはいっても、まだ4話なのですが(汗)新しい話もプロット作成中ですので、また楽しんで頂けたらと思っています。はるとも様もお体に気を付けてくださいね。お互いにマイペースで頑張りましょう。コメントをありがとうございましたコメント返信新年のご挨拶2023年

  • Precious name あとがき

      Preciousnameのお話にお付き合いいただきありがとうございました。昨年中におまけの話までアップすることが出来たらよかったのですが、年末ということもあり間に合わなくて申し訳ございませんでした。 この作品は、前のブログで私が初めて書いた作品です。今回、こちらへ作品を加筆修正し引越しさせてもらいました。 えっと…ですね。正直、この加筆修正するのがすごく恥ずかしかったです。きっと、皆様で表すのなら『学生時代の文集や、作文を読む。』に、近い感覚だと思います。 すごく恥ずかしく照れながら修正しまくっていました。関西弁は大量で…。しかも、日本語も間違っていたりと…。思わず『私は何人やった?』なんて、自分でツッコミしていました。  さて、この話が出来た理由っていうのが…。これは、私が学生時代の頃から『なんで滋...Preciousnameあとがき

  • Precious name おまけ

      あたしたちの一日が終わろうとした時に…。突然、道明寺が言い出した。「俺、今日からここに住むから。」 へっ?なんて言ったの?ここに住むって言ったよね…。 黙っているあたしに、道明寺の信じられない言葉。「このマンション、お前と住む為に建てたからな。」 えっ?マンションって、住む為に建てるの?いや、住む為のマンションなんだけど…。今、道明寺って『あたしと住む為に建てた』って言わなかった? 「このマンションからだと、会社もメイプルも近くて便利だろ。」なーんでご機嫌で話している道明寺。 ずっと気になっていたことを聞いてみた。「ここって、あたし以外にも誰か住んでいるの?」 実は、このマンションに住みだしてから、コンシェルジュのおじさん以外、誰にも会ったことないんだよね。 「1フロア下にSP住んでるぞ。」こんな簡単...Preciousnameおまけ

  • あけましておめでとうございます 2023

      明けましておめでとうございますいつもたくさんの応援をありがとうございます みなさまはどのようなお正月を過ごされていますか?私は、年末に大掃除を頑張り過ぎて体のあちこちが痛いです。家事の中では掃除が一番好きなので、ついつい頑張り過ぎてしまいました。  せっかくなので、少しだけお正月の話をしますね。私が子供の頃、私の家族には、お正月は祖父母宅に行ってお節料理を一緒に食べるって風習があったのですが…。私はそれが苦痛でした。 実は、私は子供の頃、お節料理が苦手だったんです。なんていっても、食べられるものがありませんでした。かまぼこばかり食べていた記憶があります。 何品ものお節料理を作ってくれた祖母に対して「お祖母ちゃん、なんかちゃう(違う食べ物)のちょうだい。」だとか「ハンバーグとか玉子焼きもお節に入れてー。...あけましておめでとうございます2023

  • Precious name18

      いつもより長いキスが終わると─────。あたしの左手の薬指には、いつの間にはめられた綺麗な指輪が光っていた。 驚いているあたしに、「ホンモノまでの予約。」いつもより甘い声の道明寺に、耳がゾクゾクしてしまう。 指輪は、ホンモノもなにも、十分すぎるくらい。シンプルで上品で、あたしの指にピッタリで…。 「ありがと。」「原田みてーな男除けだ。」 あたしがお礼を言うと、男除けなんて言い出す道明寺。道明寺は、不安に思っているはず…。道明寺に会うまでの今日のあたしと同じ気持ちなはず…。 信じているから、信じてくれているからじゃない。余計なことを言って、心配かけたくなくっても…。伝えてくれないと、伝えないとわからない。 道明寺は、あたしが話すのを待っている。原田くんがあたしを送って行ってくれたと、泣いてしまった理由を...Preciousname18

  • コメント返信 Precious name

      Preciousname13へのコメント返信しろ様早速のお返事、ありがとうございます。やはり花男のブログランキングですよね。改めて、お世話になっていて良かったと思いました。普通のランキングでは、間違いなく圏外なので(笑)本当に、見つけて頂けて良かったです。目が疲れない程度に、読んで頂けると嬉しいです。コメントをありがとうございました。  Preciousname12へのコメント返信しろ様お久しぶりです。お元気ですか?見つけて頂き、すごく嬉しいです。どうしたら見つけてもらいやすいかな?と悩み、結局、またブログ村様の方でお世話になっております。お時間がある時でも良いので、どのように探したのか教えて頂けると嬉しいです。ブログの方は、まやかし婚が終わり、小話やイベントの話の引越しが終わりました。今は、私が最初...コメント返信Preciousname

  • Precious name17

      確かに…。マスコミ嫌いの道明寺が、規制を掛けてない時点で…。何かあるってことに、気付いたら良かった。でも、落ち込んでしまって、そんなこと考えもしなかったよ。 それに、まさか魔女があたしのことを認めてくれているなんて…。付き合うことは許してもらえても、結婚は絶対に許してもらえないって思っていた。 いつか、道明寺は、良い家柄の人と結婚するって思っていた。だから、その時が来たら、どれだけ辛くても別れないといけないって思っていた。反対されてまで一緒にいると、辛くなるのはあたし達だって思っていた…。 「ババアに言われていたんだ。今はマスコミだけじゃなく、一般人にも気を付けろって。スマホで撮られて、SNSにアップされたら、お前は今の学生生活を送られなくなるからな。」この道明寺の言葉に、ゾッとした。 そうだよ。もし...Preciousname17

  • Precious name16

      「それで、今までの俺のゴジップも、ババアの指示。」この道明寺の言葉に、 「へっ!?」って、あたしの大きな声がリビングに響いた。 道明寺のゴジップが、魔女の指示ってなに?じゃあ、あたしのこと認めてくれたっていうのは?あたし、すごく苦しい思いをしたんだよ。しかも、なんで道明寺まで、魔女の言いなりになったの? あたしは、スゴイ顔をしていたんだと思う。「スゲー顔。」道明寺があたしの髪をクシャってして、言ってきた。 なんでも、魔女は─────。ずっとあたしのことを、見ていたらしい。(言えないけど、ある意味ホラー)高校・大学での出席状況に成績、授業や先生たちへの態度。もちろん、私生活も見られていて…。道明寺が学費を出してくれているのに、バイトを続けていることまで知られていたらしい。 「何年も掛けて、ババアはお前を...Preciousname16

  • Precious name15

      あたしの本心では無い言葉。でも、本当のことなんて言えない言葉に─────。 青筋だらけの道明寺が、低すぎる声で言ってきた。「てめー、ふざけてんのか?」 あまりの低い道明寺の声に、恐怖で背中がビクビクってなる。でも…。いつかこんなことを言う日が来るのは、わかってた。それが、たまたま今日だったんだ。 出来るだけ『普通』を意識しながら、あたしは話し出した。「ふざけてなんかない。いつかあんたは、会社を背負っていくんでしょ。それなのに、何も持って無いあたしと結婚とかは無理。いつか、あんたはあたしと別れて、滋さんみたいなお家のお嬢様と、結婚して幸せな家庭を作る。」 最後の方は声が震えそうになったから、早口になってしまったけど…。なんとか話せた。 その時がきてしまったら─────。きっと、あたしの心は潰れて壊れてし...Preciousname15

  • Precious name14

      目の前の牧野の肩は、小刻みに震えていた。こいつは、今までもこんな思いをしていたのか?俺の知らないところで、涙を堪えていたのか? こんな牧野を見て─────。今さっきまでの俺の怒りが、急激に冷めた。 俺は、こいつを怒りたいわけでもねーし、怒鳴りたいわけでもねー。もちろん、泣かしたいわけでもない。 「俺の女関係で報道されているのは、全部ウソだ。北大路のは、ホテルであったパーティーの後、帰るっつーのを西田に言われて玄関まで送っただけだ。」っつー俺の言葉に、こいつは小さく頷いた。 たったこれだけで、こいつが安心するっつーのに…。こいつなら信じてくれているだろっつーので、俺は大切なことを言ってなかった。なんとか一人立ちしねーとと思ってばかりいた俺は、仕事ばかり優先してしまって、こいつに電話どころか、メールすらし...Preciousname14

  • Precious name13

      カードキーをかざして、入った瞬間─────。俺は、牧野の香りに包まれた。 廊下をぬけリビングに入ると─────。そこは、俺の理想通りの落ち着ける空間になっていた。牧野が、俺好みの空間を作ってくれていたってことだ。 帰国直前に、この部屋の準備をした。会社にも邸にも、英徳にも近い場所。俺と牧野の寛げる場所。 それなのに…。俺は、牧野の引越しの日は仕事に追われ、来ることは出来なかった。その後も、仕事・仕事で、ここに来るのは今日が初めてだ。 しかも、その日に、こいつが男と一緒に歩いているのを見てしまった。俺ですら目を奪われるくらいスゲー綺麗なこいつが、楽しそうに男と歩いていたんだぞ!しかも、あの男は牧野のことを『つくし』って名前で呼んでいたんだぞ!その上、こいつは無防備に泣き顔まで見せていたんだっ! リビング...Preciousname13

  • Precious name12

      泣いている場合じゃない。ずっと我慢していたことだったとしても、原田くんの前で泣くことない。原田くんだって困っているはず。きちんと、原田くんに断ろう。 こう思って、少しだけ俯いて涙を拭った時─────。後ろを歩いていた男の人と、あたしの肩がぶつかってしまった。 ドンッ!!俯いていたあたしの体が、バランスを崩して前のめりになってしまう。 ぎゃっ!原田くんに向かって、倒れていくあたしの体。 驚いた顔の原田くんが、手を伸ばしてくれた時!!あたしは、大好きな道明寺の香りに包まれた。 「えっ?」思わず見上げたその先には、道明寺がいた。 「てめぇ。誰だよ?」道明寺の低い声。すごく怒っているのがわかる。 道明寺は、抱きしめたあたしを─────。原田くんの視界からあたしを遮るように、自分の背を向けた。「こいつは、俺の女...Preciousname12

  • ヤドリギの木の下で

      今年もクリスマスがやって来た。もちろん色男の俺は、クリスマスイブやクリスマス当日に女との約束はしねー主義。ついでに、お互いの誕生日にも会わねー。相手に『自分は特別』なんて思われたら重いだろ。 女との出会いは、一期一会その時を大切にが俺のポリシー。 そんな考えの俺だが…。俺の幼なじみの司はそうじゃない…。 恋愛なんて全く興味が無かった司は、庶民どころかボンビー牧野に恋をした。ボンビー牧野は、道明寺の御曹司だからって司に落ちなかった。いや、むしろ嫌っていた。 そんな牧野を─────。司は異常な程…。犯罪レベルで追いかけ回した。 正直、あいつが道明寺司じゃなかったら…。完全に、あの規制法に引っ掛かっていたはずだ。 異常な程の司の愛が良かったのか?いや、あれは牧野の根負けだな(笑)いつの間にか、二人は俺達にも...ヤドリギの木の下で

  • Precious name11

      ・・・・・。あたしの思考は、完全に止まっている。原田くん、なんて言ったの? あたしの聞き違いでなければ─────。告白、されたはず…。 人生初の告白。じゃ、無かった…。あいつにも、告白されたんだった。でも、なんかその前後が強烈すぎて、告白って感じじゃなかったんだよね。 いやいや、あいつのことよりっ!!原田くんは、どうしたらいいの!? 酔って理解してないふりする?ダメっ。今まで普通に話していたから、バレてしまう…。 聞こえなかったふりする?これもダメっ。さっきから、あたしは、原田くんのことジッと見てしまっていて─────、その視線は、完全に原田くんと重なっている。 何も言えないあたしに─────、原田くんは、真剣な顔で言ってきてくれた。「俺と付き合ってもらえないかな?」 好きって告白されただけじゃなく、...Preciousname11

  • Precious name10

      突然、名前を呼ばれて、驚いて振り返ってみると…。そこには、今まで一緒に飲んでいた原田くんがいた。 「原田くん…。」原田くんは、あたしに向かって軽く走りだした。 名前と呼ばれた時─────。一瞬、あいつじゃないかって思ったんだけど…そんなこと、あることない。だって、あたしは名前でなんて呼ばれたこと無い。 「つくしが帰るなら、送っていくよ。」なんて、親切に原田くんは言ってくれた。 でも、その原田くんの親切心は、今のあたしにとって困るものだった…。あいつに連絡しないと。だとか、絶対にあいつは怒っている。だとか、少しでも早く帰らないと。ってのが、出来ない。 しかも、原田くんに送ってもらったりなんかしたら!!頼んでも無いのにあいつが勝手に用意した、あの見た目からゴージャスでお金持ちしか住んでなさそうなマンション...Preciousname10

  • Precious name9

      初めての飲み会!飲み会中にスマホは見ないって、マイルールを作って参加する。 参加者は、大学から英徳に来た人たちばっかり。だから、あいつとあたしのことは知らないから、すごく気が楽なの。 学生っぽい話をたくさんした。卒論はもちろん、レポートのやり直しをいかに減らせるだとか…。今更知ってもって思うような話もあったんだけど、みんなといっぱい楽しく話した。 嫌なことや、なんとなく溜まってしまった色々な思い。そんなのを、全て忘れることが出来たってわけでもないけど。少しだけ、気持ちが浮上した。 あたしの大学の4年間は─────。楽しいことを我慢ばかりしていたのかなって、少しだけ思ってしまった。 ・・・・・。でも、そんなことを思っているのに…。どこかで、あいつに悪いかなって思うあたしがいた。 とっても楽しいのに───...Preciousname9

  • Precious name8

      俺が執務室で、今からの会議の確認をしていると、西田がノックと同時に入ってきた。 西田がこんな風に急いで入って来るっつーのは、あまりよくねー。俺にとって、何か悪い事が起きだしているっつーことだ。 仕事のことか?それとも、あいつのことか? なんとなく嫌な予感がする。どうか、仕事のトラブルであってくれ。こんな俺の願いは虚しく─────。 「牧野様付SPからの連絡です。牧野様は、本日19時からゼミの飲み会に参加されるようです。」こんな不吉なことを、西田が言ってきた。 ゼミの飲み会だと…。確かに、今日は俺の仕事の段取りで会えなかった。だからといって、飲み会に参加とかありえねー!フザケンナっ、あの女。なに考えてやがる。 今すぐにでも、あいつの行動を阻止したい。飲み会に参加する前に、あいつを俺の胸の中に閉じ込めたい...Preciousname8

  • Precious name7

      北大路との商談直前。西田が信じられねーことを言いだした。「牧野様より、本日はご都合により来られないと連絡がございました。」 あいつが来られないとわかった瞬間、俺は西田を睨みつけていた。そんな俺の態度にも、一切動揺もしねー西田。 そして、西田はいつもの業務連絡のように伝えてきた。「そのように、牧野様からメールが届きました。詳細はこちらで確認中です。ですが、今は、北大路様との商談にだけ集中してください。」 北大路との商談にだけに集中だ?あいつのキャンセルの理由に集中だろ! あいつの都合?体調が悪くなったのか?それとも、大学の提出物か?それとも、バイトに出ることになったのか? 気になるのは、あいつからの連絡が電話じゃなくメールってことだ。そんな大切なことを、あいつはメールだけで済ませることはしねーはずだ。っ...Preciousname7

  • Precious name6

      ~西田side~ ニューヨークで、社長から一から仕事を叩き込まれた司様。司様も英才教育の一環として、英語は得意でした。ですが、いくら日常英会話が出来たとしても、ビジネス英語が出来なければ仕事にはなりません。司様は睡眠を削って、アメリカでの仕事を覚えていかれました。学生時代に荒れ狂っていた時期が、信じられない程頑張っておられました。 司様の頑張る原動力は牧野様。その牧野様との約束の4年後。楓社長より日本支社の専務に任命され、帰国することが出来ました。 帰国後は、前任者からの引き継に挨拶回り。もちろん、通常業務もございます。休日はゴルフ、夜はパーティーに参加しないといけない日もございました。 時間のロスとのことで、専務は執務室の奥の仮眠室で、お休みになられるようになりました。これには、帰国と同時に始まった...Preciousname6

  • Precious name5

      あいつとの約束の4年後。なんとか約束通り、俺は日本に帰ってくることが出来た。 俺の帰国はトップシークレット。あいつの家に迎えに行くと、あいつは無言で俺だけを見つめてきた。あいつからすると、驚いて言葉が出なかっただけなんだろう…。 でも、それは、俺も同じだった。ビックリするくらい綺麗になっていた、あいつに目を奪われ─────。何も言葉が出なかった。 あいつのデケー目に、涙が浮かびキラキラと光った。それを見た俺の目にも、熱いものが込み上げてきた。 そんな情けねー姿を、4年も待たせたこいつに、見せたくなかった俺は、華奢なあいつを胸に閉じ込めた。 そして、そのままメープルに連れて行き─────。俺達は、初めて同じ夜を過ごした。 薄暗い部屋で、一糸纏わぬあいつの体に俺の体を重ねた。 俺が与える痛みを、必死に受け...Preciousname5

  • Precious name4

      あいつの結婚・あいつの名前呼びこの二つに、私の頭の中は占領されてしまった。 間違いなく、あいつとあたしが結婚することは無い。魔女が、あたしに何も言ってこないのは─────、あいつに婚約させるまで自由にさせようって程度のことだと思う。 あたしだって、大人の関係になったからって結婚だなんて思ってない。そうなれたら、一番なんだろうけど。あたし、好きでもない人となんて絶対に出来ないし…。 じゃ、あいつとあたしの今の関係ってなに?好きだから、付き合っている関係。好きだから、体を重ねている関係。好きだけど、将来が全くない関係。 そもそも…。あたしたちって、付き合っているの?あいつが日本に帰ってきてから、デートなんて一度もしたことない。 会うのってメープルばかり。しかも、こそこそと地下の駐車場から、あいつの部屋へ直...Preciousname4

  • Precious name3

      なにが『キョトキョトするな。』よ。あんたは、どうなのよ。 なにが『男に笑いかけるな。』よ。そのセリフ、あんたにそのままそっくり返すっつーの! こんなことを思っているのに…。どれだけ、あいつが週刊誌を賑わせても─────。 きっと違うはず…。って、思えるんだよね。 でも、そんな風に思っていても─────。やっぱり、あいつが、あたし以外の女の人と写っている写真なんかみたくない。それに、あいつがあたし以外の女の人に笑いかけているのは、嫌だなって思う。どうしてもモヤモヤしてしまう。 信じてないわけじゃない。でも…。あたしは、会いたいときに会えない。会える距離にいるのに、いつもあいつとは会えない。 それなのに、あいつは綺麗な女の人と楽しそうに過ごしてんだ。なんて、スゴク嫌なことを思ってしまう。  こんな風に沈み...Preciousname3

  • Precious name2

      テレビをつけた途端、またあいつの報道。あたしは、リモコンを手にし、すぐさまテレビを消した。嫌な報道は見ないに限る。 大きく息を吸って、頭から足の指先にまで意識して新しい酸素を送り込む。同時に、嫌なドロドロした気持ちを、少しでもあたしの中から追い出すことに意識する。 少しだけ軽くなった気持ちで、あたしは大学へ向かう。あたしの学費は、あいつが出してくれているから休みたくない。 でも、大学が近づくにつれ、あたしの気持ちが塞いできた。やっぱり休んだ方が良かったかな…。 あいつが報道された日って、絶対に良くないことが起こるんだよね。今日も、絶対に良くないことが起こる。  不安を胸に、校門を通り校舎へ向かう。時々、クスクスと笑い声が聞こえてくる。被害妄想とかでなく、あたしのことをクスクスと笑っているのが分かる。 ...Preciousname2

  • Precious name1

      あたし、英徳大学4回生の牧野つくし。あいつはニューヨークに行って、4年後に本当に迎えに来てくれました。 えっと…。あいつが、あたしを迎えに来てくれたその日。その日の夜、いや、夕方? えっと、まぁ…。あたしたちは、やっと結ばれました。そして、普通より遅いくらいなのかも知れないんだけど…。恋人っていうか…。その、大人のお付き合いを始めることになりました。 大人のお付き合い始まったといっても…。相手があいつだから、普通のお付き合いでは無いんだよね。 メープル集合解散ばかり。これに関しては、正直デートみたいなことをしてみたいなって思うけど、そんなのは夢。 だって、メープルで会うことすら難しいんだよ。常に、延期や変更ばっかり。それなら良い方で、基本はドタキャン。 酷い時なんて、あいつからの連絡じゃなくて、西田さ...Preciousname1

  • コメント返信 このブログについて

      このブログについてのコメント返信haha様きゃー!こちらこそすみません。二通目も公開してしまっていたのですね。私のミスです。頂いたコメントだったので、どうしようかな…と迷っていてうっかり公開してしまっておりました。haha様のコメントの送信で大丈夫です。読みにくいことも全くありません。私も同じ所でコメント返信させてもらうのが一番なのですが、私が自分の利便性を取ってしまい記事で返信させてもらっているだけなんです。しかも、私の返事が遅いので…。本当にお気になさらないで下さいね。コメントの二通目の方は、画面からは消させてもらいました。わざわざありがとうございます。  haha様コメントありがとうございます!その後、体調の方はどうですか?ラストに向かうにつれ、術後、どうされているのかなと思っていたので、コメン...コメント返信このブログについて

  • まやかし婚 あとがき

      まやかし婚あとがきと今後のお知らせ 寒い日が続いていますが、お元気でいらっしゃいますか?カレンダーが最後の一枚となり、皆様もお忙しく過ごされていることだと思います。そんな中、いつも遊びに来て下さり、そして、たくさんの応援をありがとうございます。 長い話を、長い間お付き合いいただき本当にありがとうございました。この話はですね、話の途中でデバイスを二回も攻撃されてしまい…。引越しを二回もしました。皆様にはご迷惑、ご心配をお掛けして本当に申し訳ございませんでした。その上、途中で休んだり、毎日更新が隔日となったりと本当に申し訳ございませんでした。  少しだけまやかしの話の裏話を書きますね。この話、本来は…。二人は、契約で仕方なく一年結婚する。つくしちゃんは、司くんを好きになってしまって一年を迎えてしまう。でも...まやかし婚あとがき

  • まやかし婚220 完

      ~西田side~確かに、私は司様に牧野さんを紹介しました。だからといって、記者会見中に『有能な私の秘書からの紹介です。』このような余計な事を、言わなくてもいいのです。 これで私は、終身雇用確定しました。人生の半分以上を、司様に費やさなくてはならないのです。 少しずつ元気になってきた妻からは、「結婚する前に忙しそうにしていたのって、坊ちゃんの恋愛を応援していたのね。」と、見直されました。 正直に申し上げます。私は、応援などしておりません。自分が楽しむ為に頑張っていたのです。 しかし、一年前のことを覚えている妻の記憶力の良さに、動揺してしまいました。仕事もですが、家庭のこともしっかりしていかないと、大変なことになりそうです。 しかも、巷では、私は『キューピッド秘書』と呼ばれているようです。翌日、出社すると...まやかし婚220完

  • まやかし婚219

      私がお礼を言うと、ニッと笑った司。そして、司は時間を確認してテレビをつけると…。そこには、司の顔のアップ。 なんでニュース番組に司が出ているの?驚いて声も出ない私に、 「記者会見した。」他人事のように言ってくる司。 書面で報告じゃなかったの?リモコンで他の局にしても、司だらけ! テレビの画面は、赤札のことを謝罪している司が映っている。被害者の人たちに、司の気持ちが届きますように…。織部くんも、どこかで見てくれているといいな。 謝るって勇気がいることだよね。大勢の人の前で、謝罪するなんてスゴイ!でも、その頃、私は寝ていたなんて言えない。 テレビの司は、私の名前を伏せながら一年前に入籍したことを言った。このタイミングで、大河原さんの婚約発表がされたんだって。司が西田さんの紹介で知り合ったなんて言うから、西...まやかし婚219

  • まやかし婚218

      つくしは大きく息を吐き出し、体をくったりとソファーに預けた。「連絡もなかったから…。浮気とか、あの人のこと好きになったのかなとか…。ちょっと不安になってしまった。」つくしの小さな言葉で、スゲー不安に思っていたっつーのがわかる。 俺の浮気を疑う写真を、毎日見ていたんだ。マジでモガンぶっ潰す。 「俺は浮気もしねーし、あんな奴、好きにならねー。」俺の言葉に、緊張していたつくしの顔が少しだけ綻んだ。 そして、俺はスマホを壊した理由─────。能天気な親父にイライラして、スマホを地面に投げつけたことを話した。   もう!スマホみたいな精密機械を、地面に投げつけるなんてっ! でも…。不思議に思ったことを、私は口にした。「司なら、直ぐに新しい機種にしそうなのに。意外…。」 司なら、直ぐに機種変とかしそうでしょ。こん...まやかし婚218

  • まやかし婚217

      ♪trrr…司からのコールは、迷っている間に切れてしまった。どうして、私は、迷ったり考えたりする時間が長いんだろ。 私から掛け直そう。スマホをタップしてパスワードを入力しようとした途端、司からの着信。 通話の所をタップしようとした瞬間─────。画面が真っ黒になってしまった。 えっ!?えーー!まさかの充電切れ!そういえば、ずっと充電するの忘れてたっ。   ♪trrr…早く出ろ。どこにいる?声が聞きてー。会いたい。それより、写真のことを話したい。 っつー俺の祈りは、♪trrr……ブチっ。っつー音と共に終了した。 なんだ?ブチって切れてるじゃねーかっ。 俺は、もう一度つくしにコールした。が、俺の耳には信じられねー無機質な音声ガイダンスが聞こえてきた。【お客様のお掛けになられた電話番号は…。】 さっきまでコ...まやかし婚217

  • まやかし婚216

      俺が玄関のドアを開けると─────。家の中は真っ暗で、寒々としていた。 上り框につくしの靴がねー時点で、いねーっつーことくらいわかるが…。俺は全ての部屋のドアを開けて、確認した。 が、つくしの姿はどの部屋にも見当たらなかった。どこ行ったんだ? つくしにはSPもついている。何かあれば、連絡が来るはずだ。 まさか、滋とのキスのことで、怒って出て行ったのか?それはねーよな。 そもそも、滋とのキスはガキの頃だ。時効だ。高校の時のキスなんてノーカウントだろ。 リビングの時計は、19時を過ぎている。つくしは自宅待機だったはずだ。 調味料っつーのを、近くまで買いに行ったのか?キッチンを見ると、料理を作っているような感じじゃねー。 どこに行ったんだ?スマホからコールしてみたが、つくしが出ることは無かった。 SPに連絡...まやかし婚216

  • まやかし婚215

      終了予定より少し遅れたが、会見は無事に終わった。俺と西田も、広報部の社員と一緒に特別会議室をいつもの状態へ戻すのを手伝った。 片付けが終了し、俺と西田は役員専用のエレベーターに乗り込んだ。流石の西田も、顔に疲れが出ている。俺もスゲー疲れた。つくしに会いてー。 「出張からの会見と、お疲れ様でした。」少しだけ嫌味な音を含んだ西田の声。 俺が西田の紹介なんて言ったから────。俺の会見だっつーのに、西田も質問されまくっていたからな。 「サンキュ。西田のお蔭だ。」俺は、素直に礼を言った後─────、 「西田が、結婚の発表の前に赤札の発表をしろなんて言ってきたときには、マジでどうなるんだって思った。」俺の言葉に、西田が軽く笑う。 西田は笑ってっけど…。俺も、いずれ赤札の件で謝罪会見が必要だとは思っていた。が、ま...まやかし婚215

  • まやかし婚214

      2022.01.3117:00道明寺ホールディングス東京支社特別会議室 「本日はお忙しい中、また急な案内にも関わらず、弊社東京支店、支店長、道明寺司の会見にご出席賜りまして、誠に有難うございます。時間となりましたので、始めさせて頂きます。」この西田の挨拶から、俺の緊急記者会見は始まった。 今日に帰国出来るかどうかすらわからなかったっつーのもあって、さっき西田が言った通り、この記者会見はスゲー急な案内だった。広報部の社員が総出で、動き回ってくれていたらしい。 急だったっつーのに、人、人、人。この特別会議室は、マスコミ関係者の人間で溢れかえっている。熱気がスゲー。この社屋の一番デケー会議室が、狭いと感じるほどだ。 西田の挨拶終了後、俺は特別会議室に入った。入った途端、カメラのフラッシュが俺に集中する。しか...まやかし婚214

  • まやかし婚213

      司が大河原さんとキスしたこともショックだけど…。それ以上に、嘘をつかれていたことが悲しい。 大河原さん、綺麗だもんね。でも!大河原さんは紀明さんと付き合っていて、司とキスするのどうかと思うし、司もそんな大河原さんとキスするってどうなのよ。 脳裏に、クリスマスイブの日のことが浮かんでくる。なにが『シテねー』よ。司の嘘つき。 あの写真も本当なんじゃないの?浮気者。なんてことまで思えてくる。 そんなことを思いながらも、嘘であって欲しいって願っている私がいる。司のことで悲しんで辛い思いして…。なんでこんな思いをしているんだろ。 大きな溜息をつきながら─────。溜息と一緒に、こんな嫌な思いが出て行ってくれたらいいのに…。なんて思いながら、私はいつものように自分のデスクに座った。 座った瞬間、思い出した西田さん...まやかし婚213

  • まやかし婚212

      2022.01.31結局、私は一睡もしないまま夜を明かした。家に1人でいるのが辛くって、朝早くから出社した。 出社しても、司が支社長のこの会社。どこを歩いても、司のことを考えてしまう。そんな自分に大きな溜息をついて、私はエレベーターを待った。 本当の写真なのか?合成なのか? 仕事でホテルの部屋に入ることってある?仕事でこんなに密着することってある? ってことは、浮気!?でも、司から直接聞いたわけじゃない。 そうよ。司を信じよう。 なんて思っているのに…。浮気じゃなかったら?本気であの人のこと好きになっていたらどうしよう…。 ママが、これから色んな事があるって言っていたけど…。こんなに直ぐに起こるってどうなの? ポーンって機械音と共に、エレベーターが開いた。人が降りてくる気配がして、端による。 そんな私...まやかし婚212

  • まやかし婚211

      西田から受け取った解毒剤は直ぐに効き、一点に集中した血液が解放されていくのがわかった。 直ぐに、俺はカルフォルニアの親父に連絡した。ゴチャゴチャ言ってる親父を黙らせ、モガンからのコーヒーを飲むのを止めること。そして、病院を受診するよう伝えた。同時に、コーヒーを検査に出すように頼んだ。 親父が言うには、このコーヒーを飲むと嫌なことを忘れ幸せな気分になったらしい。っつーか、それだけで十分怪しいだろ!中毒とかになってねーよな? ババアは、親父の行動を間近で見ながら『なんとなく変だとは思っていたけど、もともと、変だったからわからなかったわ。』なんてことを言ったから、西田が返答に困っていた。 そんな西田が言うには、ジェイコブ氏はモガン親子の事を相当恨んでいるらしい。結婚直前で破談にされたら、そうだよな。俺がジェ...まやかし婚211

  • まやかし婚210

      ~西田side~皆様、お久しぶりです。お元気でいらっしゃいますか?西田の『クルクル上司のおバカ日記』ですが、皆様にお届け出来るのも残りわずかとなってきました。 さて、司様が連れ込まれたルームナンバーは1228。奇遇ですねー。牧野さんのお誕生日です。なんて呑気な事を言っている間にも、司様の貞操?の危機なので西田が奮闘いたします。 このホテルはメープルより、格下のホテルです。その格下のホテルで、うちの坊ちゃんに薬を盛って部屋に連れ込むのなら、最上階のスィートクラスが良いか等、余計なことを思ってしまうのですが…。モガン商会親子の懐の狭さに、感謝です。 このホテル、最上階のスィート以外は旧式のドアロックでした。この旧式のドアは、クレジットカードで開けることが出来るのです!! なぜ、西田がそんなに詳しいと思われ...まやかし婚210

  • まやかし婚209

      毎日届く封筒。気にしないって思っているのに…。考えるのは、写真の司と綺麗な女の人のことばかり。 そして、明日が司の誕生日。私は、日曜だというのにエントランスの郵便受けまで行ってしまう。 今日はいつもより分厚い。封筒が『早く見なさい。』とでも言っているみたい…。 リビングのローテーブルの上に、封筒を置く。嫌な思いをするくらいなら今日は、見ない。見て嫌な思いをするなら、見ない方がマシ。 心の中で何回も唱えたように─────。私は、何があっても司のことを信用しているの。司から直接聞くこと以外、信じないの。 どんな写真が届いても、そんなのは嘘。インチキだよ。合成されているかもしれない写真だもん。見ても仕方ない。そもそも、コンシェルジュさんの不在時間に郵便受けに入れられているようなモノをどうして信用するのよ。 ...まやかし婚209

  • まやかし婚208

      司と綺麗な女性の写真は、毎日送られてきた。なんとなく親密に見えてしまうのは、私の気のせい? ううん。絶対、気のせいなんかじゃない。一番目に送られてきた写真より、二人の距離は近くなっている。 不安。でも、私が不安に思ったりしたら、この写真の送り主の思う壺。司からの連絡が、全く無いのが気になるけど、便りの無いのは良い便りって言うもん。 大丈夫。何かあって連絡できないだけ。司は、あんなに私のことを大切に思ってくれていたじゃない。司のことを信じよう。こんな風に、私は何度も自分に言いきかせた。  そして─────。いよいよ明日は司の誕生日。司と西田さんが、日本に帰って来られるかどうかはわからない。 何度か、西田さんに連絡しようかとも思ったんだけど…。仕事をしている時に、西田さんの奥さんが、西田さんが渡米して直ぐ...まやかし婚208

  • まやかし婚207

      司がニューヨークに行って、話せたのは、あの時の一回だけ…。やっぱり、時差って大きい。辛いな。 こんなことなら、社食でスマホが鳴った時に出ていたら良かった…。あの時、ワザと出なかったから天罰なのかな…なんてことまで思ってしまう。今までの出張なら帰ってくる日がわかっていたけど、今回はいつ帰られるのかがわからない。 いつ帰ってくるのかな。いつになったら会えるのかな。会えないなら、せめて声だけでも聴きたいって思ってしまう。 でも、時差が邪魔して電話なんて出来ないよ…。メールって思ったりもしたんだけど…。もしかしたら商談中かな?とか、寝ているかもとか思うとなかなか出来ない。 同じように、司からのメールも減ってきてしまった。シンガポールや上海への出張の時は、メールはたくさん届いていたのに、今回は少しだけ。仕事が忙...まやかし婚207

  • まやかし婚206

      ニューヨークに来て1週間。親父の仕事は減らなかった。そして、商談は全く進まなかった。つくしへの連絡も、なかなか出来ねー。 ニューヨークに来て10日も過ぎると…。パーティーに参加させられるようになった。 西田が言うには、「ニューヨークでも、仕事の繋がりは大切です。」だそうだ。 「シンガポールや上海では、パーティーに出なかったぞ。」っつー俺の意見も「こちらは、本社です。」っつーので片付けられた。 こんな西田の様子が、数日前からおかしいのが気になる。表面上はフツーだ。何がおかしいかって聞かれると、わからねー。でも、何か西田の表情が引っ掛かった。 西田とパーティーに出ると…。あの露出狂のバカ娘が、俺に纏わりついてくる。完全無視していても、このバカ娘には通用しねー。 何のためのパーティーなんだよ…。知らねー奴ら...まやかし婚206

  • まやかし婚205

      つくしとの通話がいつ終わったのかもわからねー。いつの間にか、部屋のカーテンの隙間から眩しいほどの光が差し込んでいた。 これからも俺は、第二・第三の織部の存在を気にしながら生きていくのか?俺だけならいい。社員はどうなる?つくしは?いつか産まれてくるかもしんねー俺たちの子供はどうなる? 学生時代の過ちはいつ無くなるんだ…。高校時代の俺。幼なじみのあいつらと、バカなことばかりしていた時代。消したい過去。消し去りたい過去。あの頃に戻ることが出来るのなら、絶対にしねー。 ・・・・・。どうしたらいいんだ?時間を戻すことは出来ねー。だからといって、このままっつーのは無理だ。 どのくらい考えていたのかはわからねーが─────。気付いた時には、俺の隣には西田が立っていた。ウォッ!!気配を消して俺の隣に突っ立ってんじゃね...まやかし婚205

  • まやかし婚204

      やっぱり男の人ってお喋りだ…。すっとぼけ部長ならわかるけど、西田さんまでが喋っていたなんて…。 だから、【そんな噂はどうでもいい。】この司の言葉に少しホッとした。だって、司って天草主任に厳しすぎるんだもん。 ホッとしたのも束の間。【そんなことより、お前は天草に笑いかけるな!視界に入れるな!見つめ合うな!微笑むなっ!】なんてことを、司は言ってきたんだ。 天草主任に笑いかけるなとか、視界に入れるなとか、見つめ合うなとか、微笑むなって、何それ?視界に入れるなとか、そもそも無理でしょ。どうやって社内を歩くのよ…。 それに、見つめ合ってなんかいないっつーの。笑いかけるなと、微笑むなって一緒じゃないの?相変わらず日本語バカなんだからっ。私たちのことを黙ってくれている、天草主任に感謝とかないの? 呆れている私に、【...まやかし婚204

  • まやかし婚203

      そうだったんだ。西田さんと部長って親戚だったんだ。だから、私の名字の変更とかが秘密に処理されたんだ。でないと、完全に秘密なんて無理だよね。 ってことは…。部長には、司と私の結婚がバレていたってことなのかな?すっとぼけた部長だけど、西田さんに噂のこととか言ってないよね。部長が西田さんに噂のことを言ったとしても、西田さんは司に余計なことを言わないよね。 ・・・・・。なんとなく不安になる。男の人ってお喋りだからな…。でも、あの西田さんが余計なこと言うわけ無いかな? なんて思っていると─────。私のトートバッグの中から、ブーンブーンブーンと嫌な振動がする。 まさかだよね?このタイミングで司から着信があるわけないよね? そうだよ。シンガポールに上海と出張に行ったけど、司からの連絡はひたすら(異常なほどの)メー...まやかし婚203

  • まやかし婚202

      ニューヨークへ向かっている機内で、俺は織部が退職することを知った。「あ?織部が退職?」「はい。今朝一番で、営業部から辞表が届きました。」 「我が社は15日締ですので、年明けからは有給消化されるようですね。ですので、織部くんの最後の出勤は、年末の仕事納めの日となったようです。」西田の言葉に引っ掛かる。 年末の仕事納めの日は、つくしの誕生日だった。その日に、織部はつくしを連れ回したってことだ。あの日、織部がつくしに渡したのは、誕生日プレゼントでは無く因島の土産。プレゼントを渡さねーで、土産だけにしたのに意味はあるのか? 「年明けから出社していないこともあり、社内では既に社内では噂になっていたようですね。牧野さんから、聞いていませんか?」ニヤってしながら言ってくる西田にムカつく。 根性の悪い西田は、俺が知っ...まやかし婚202

  • まやかし婚201

      牧野の家から帰ると…。何故か、我が家のリビングで仕事をしている西田さん。そして、私たちを見ると申し訳なさそうな顔をした。 でも、私は思わず引いてしまった。なんで人の家に勝手に入れるの?鍵はどうしたの?なんてことを私は思ったんだけど…。 司の思うところはそんな所じゃなくって─────。スゴク低い声で言ったの。「俺は絶対に、出張には行かねー。」 えっ?出張の話?それよりも、どうして入って来られたのってことを聞かないの?って、突っ込みたくなったんだけど…。 そう─────。西田さんを見た司は、直ぐにわかったみたいなんだけど…。司は、西田さんと一緒にニューヨーク出張が決定していた。 それを聞いた時、思わず『私も、一緒に行きたい。』なんて言ってしまったのは…。公私混同しているわけじゃないんだよ。ただ、さっきパパ...まやかし婚201

  • まやかし婚200

      ~西田side~牧野さんの家から幸せそうな顔で帰って来られた司様と牧野さん。お二人は、玄関前で待っていた西田の顔を見るなり顔を引き攣らせました。 ま、仕方ありません。お二人は新婚なのです。今から二人きりの甘い時間を過ごそうと思っていたとは思うのですが!!今から、司様にはニューヨークへ出発してもらいます。帰国は未定!! 西田の名誉に掛けて申し上げますが、これは、決して嫌がらせではございません!いくら妻が実家でお気楽で快適、尚且つ二次小説三昧の生活を送っているとはいえ、私の子を妊娠しているのです。帰国がいつになるのかわからない出張なんて行きたくありません。 でーすーが!今回ばかりは、出張に行かなければならないのです。 なぜ出張に行かなければならないかですが…。その理由は会長です。 なんでも、会長が仰られる...まやかし婚200

  • まやかし婚199

      写真の裏に書かれた、10年前のパパからのメッセージ。疑っていたわけじゃないけど…。パパが私のこときちんと大切に思ってくれていたんだってことに、目が熱くなってきた。 保険証や印鑑を勝手に使われたりしていたから…。どうしてもね。私の中で、パパって私のことをなんだと思っているんだろって思った時があったんだ。 そんな私の気持ちが伝わったのか、司は私の頭をポンポンってしながら「遅くなったな。帰るか。」なんて、優しい顔で言ってきてくれた。 司の言葉に頷きながら─────。私が帰る家は、ここじゃなく、司と住む家になったんだ。って、少し寂しく思ってしまった。こんな思いをしながら、私は、牧野つくしから道明寺つくしになっていくのかもしれない。 帰り際、玄関でパパが真剣な顔をしながら言ってきた。「司くんのお父さんとお母さん...まやかし婚199

  • まやかし婚198

      パパとママとの話が一段落すると─────。何を思ったのか、司が言ってきた。「つくしの使ってた部屋を見てみたい。」 えっ?私の部屋。今、どんな状態なんだろ?司に入ってもらって大丈夫? まさか、パパとママのモノで溢れたりしていないかな?でも『安物買いの銭失い』の我が家だ。なんてことが頭に過ぎったんだけど…。パパとママは、私の部屋をそのままの状態にしてくれていた。 ドアを開けた途端、全てが視界に入ってしまうような小さな私の部屋。まだ一年も経ってないのに、懐かしさでいっぱい。 部屋をゆっくり見渡した後、「なぁ。ガキの頃の写真とかねーの?」思わず絶句してしまうようなことを、司は言ってきた。 「写真!?そんなの無理っ!恥ずかしいから、絶対イヤっ!!」って、抵抗したんだけど…。 何故か織部くん(弟くんの方ね)が、私...まやかし婚198

  • ~1月31日という日~ あとがき

      この話は、浮かびそうで浮かばない。消えそうで、やっぱり消えてしまう…という最悪な状態の中で、司くんの誕生日当日を迎えてしまいました。 楽しみにしてくださってる方には申し訳ないけど、もう諦めようと思い、夕方、テレビを付けながらアイロンをしていました。その日は、たまたま日曜日でして…。私はアイロンをしながら、毎週放送されるご長寿番組を見ていました。 実はこの番組、私が子供の頃からよく見ていた番組でして…。そしたら、その番組で司会者の方が『1月31日は何の日か知ってますか?』なんて言っているんですよね。私は『知ってるー。司くんの誕生日。話、まったく浮かばへん。』なんてくさくさとしていたら─────。司会者の方が『愛妻の日。愛妻感謝の日なんです。知ってました?』なんて言われたんですよね。 その言葉から、この話...~1月31日という日~あとがき

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