鞄 考えていた終わり方とは随分と違った それでも、確かに終わったのだと男は思った 使い古した鞄をその場に残して 列車に乗り込んだ それからもう、何も振り返らないと決めていた なのに、 もう会うはずもない人たちからもらった 小さな紙切れの塊が 鞄の中で、思いがけず小さくて あまりにも軽かったので 列車が駅を離れる時にもう 心は振り向いていた 目には冬の海の 冷たい波を見るだけなのに ***** Google Geminiによる解説 暖淡堂「鞄」の解説 作品の全体像 暖淡堂の詩「鞄」は、別れと記憶、そして人間の心の奥底にある複雑な感情を繊細に描き出した作品です。使い古された鞄を置き去りにした男の、…