霜

機関車の肌はヌルッと暾(とん)に霜 み

空風

空風(からかぜ)の音のせぬ夜は不完全 み

枯桑

ブチブチと枯桑(かれくわ)が刺す鬱(うつ)の雲 の

おでん

割り箸がヘンに割れたぞ、おでん喰う み

寒落暉

望郷の念が燻(くす)ぶる寒落暉(かんらっき) み

冬の霧

母の一歩にのしかかる冬の霧 み

湯々婆

湯々婆(ゆたんぽ)をオシャレに売るの六本木 み

早梅

断片化した記憶で嗅ぐ早梅(そうばい) み

焼鳥

焼鳥を5本買う。ちょっと温(あたた)か み

嚏

トイレから夜の街へ響け嚏(くしゃみ) み

風呂吹大根

半端に残った大根、風呂吹きに み

日向ぼこ

このままじゃ百億年や日向ぼこ み

冱つ

冱(い)つる駅、途方に暮れる時刻表 み

炬燵

ミケはミケ、ポチはポチ、炬燵(こたつ)は炬燵(こたつ) み

絨毯

絨毯(じゅうたん)をマクロレンズで見る勇者 み

積雪（せきせつ）

雪の積もった信号機、ピッポ―ピ… み

霜夜

六等星まで見えてたあの霜夜(しもよ) み

冬

『冬のリビエラ』を聴く。日本語ラジオ み

雪道

証拠の雪道をポチが駆け回る み

鴛鴦、離鴛鴦

鴛鴦(おしどり)が奇数羽、どれか離鴛鴦(はなれおし) み

マフラー

マフラーをするりと抜ける艶(つや)の髪 み

初釜

初釜は火傷(やけど)しそうな缶コーヒ み

仕事始

予定では仕事始めだ仮眠室 み

福良雀

振袖の福良雀(ふくらすずめ)はミッキー似 み

福引

福引や『良性』の二三(にさん)の病(やまい) み

雪暗

雪暗(ゆきぐれ)に寺の燈(ひ)か無調の諷経(ふぎん) み

五日

「キャッチボールしよう」と緩(ゆる)やか五日 み

四日

システム再起動せず。四日の朝 み

三日

三日の夜(よる)、システム異常終了 み

賀状

切り取られた事実が散らばる賀状 み

去年今年（こぞことし）

去年(こぞ)は夢 今年(ことし)は不安 「明けまして」 み