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デジタル社会の展望 https://researchnetwork.jp/

デジタル社会に向けてメンバーとの議論を通じ知りえたこと、内外の識者から学んだことなど、様々な観点から問題提起します。よりよい社会に向けた議論のたたき台になればと考えています。

Kazuo Adachi
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2021/05/18

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  • 幸福な社会とは何か?

    今回は、<幸福な社会とは何か?>という少々哲学的なテーマについて考えてみたいと思います。“デジタル社会の展望”という極めてファッショナブルなテーマを扱う当ブログで“幸福とは?”といった根源的なテーマを選んだ理由は、これからの社会というものの目的をしっかり見据えておく必要があると考えたからです。言い換えれば、“デジタル社会”自体が、これから築かれる社会のための手段に他ならないと思うのです。その意味では、真っ先に取り上げるべきテーマだったのかもしれません。 今回は、その初回として“幸福度とは?”について考えてみたいと思います。 幸福度を測る指標とは? 私が学生時代を過ごした1970年代は高度成長期の真っただ中にあり、経済的な成長こそが幸福をもたらす唯一無二の指標だとされていました。 その一方で、高度成長がもたらした様々なひずみも社会問題として取り上げられつつあった時代でした。四大公害病[efn_note]熊本水俣病・イタイイタイ病・新潟水俣病・四日市ぜんそく[/efn_note]に代表される公害問題が全国に波及し、東京などの大都市の空はスモッグで灰色に覆われ、河川の多くは魚も住めず黒く濁って悪臭を放っていました。 それでも経済の成長神話は決して揺らぐことはなく、『モーレツ』という流行語が象徴するように、経済発展=所得の拡大こそが唯一の幸福につながる途といった共通の価値観で当時のわが国の社会は構成されていたのです。 もちろんこうした時代でも、“経済成長+所得拡大=幸福の実現“という考え方に異を唱える学者もいました。法政大学の力石定一教授などはその代表格で、当時の経済指標であったGNP(Gross National Products)に対し、彼はNNW(Net National Welfare)を指標にすべきと主張しましたが、産官学全てから一顧だにされなかったばかりか、社会問題化していた学生運動の首謀者とまで非難された[efn_note]力石教授は東京大学在学中の1948年に全学連(全日本学生自治会総連合)を組織したことから、こうした解釈が生まれたと言われている[/efn_note]ことを覚えています。東大の同期生で共に学生運動に身を挺した渡邊恒雄氏が率いる読売系のマスコミが「力石教授は今の近代社会を土とはだしの原始時代に戻そうとしている」などといった極端なキャンペーンを行っていた記憶も

  • 国民に受け入れられるデジタル改革方針とは

    政府のデジタル改革基本方針で感じる違和感 先週のブログで、政府骨太方針で次の時代をリードする新たな成長の柱の一つに「官民挙げたデジタル化の加速」が挙げられていると書きましたが、このベースとなったのが2020年12月25日に閣議決定された『デジタル社会の実現に向けた改革の基本方針』です。 デジタル改革基本方針では、「デジタルの活用により、一人ひとりのニーズに合ったサービスを選ぶことができ、多様な幸せが実現できる社会」というビジョンが掲げられていますが、率直に言って私には食い足りなさを感じています。 第四次産業革命とも称されるデジタルによる社会の変化は、18世紀の産業革命における蒸気機関にも匹敵する大きな社会変動をもたらすもので、今後どのような社会像を構築していくかのビジョンが最も問われる課題だと思います。残念なことに、上記デジタル改革基本方針も、さらにこれに先立ち2020年3月31日に技術検討会議が決定した『デジタル・ガバメント実現のためのグランドデザイン』でも、この点における明確なビジョンの提示が欠落しているように思えてならないのです。 デジタル改革基本方針には『何のためのデジタル化か』と題する節があり、それを受けて「デジタル化は目的ではなく手段に過ぎない」と述べています。これは至極当たり前の指摘ですが、その後の記述は「デジタル化によって、多様な国民がニーズに合ったサービスを選択でき、国民一人ひとりの幸福に資する『誰一人取り残さない、人に優しいデジタル化』を進めることとする」と書かれているのみで、羊頭狗肉の感を禁じ得ませんでした。つまり、冒頭で手段であると断っておきながら、その直後には手段であるはずのデジタル化を『誰一人取り残さない、人に優しいデジタル化』という曖昧な表現で濁しているように読め、肩透かしを食った気分になります。これでは、何のためのデジタル化なのか?という重要な問いへの答えにはなっていないばかりか、文章自体が自己矛盾を生じているようにしか思えません。 その他、全般的に観念的な記述ばかりが目立ち、デジタルによって何を実現したいのか?どのような社会を築こうとしているのかが一向に見えてきません。「多様な国民がニーズに合ったサービスを選択でき」という表現も、国民の意思を尊重した表現というより、国民任せのような感じすら抱いてしまうのです。 この文書の肝は、やは

  • 安心・安全なネット利用環境に向けて

    増え続けるネット犯罪 まずは、先日私に届いたメールをご覧ください。 ともに銀行から発信のメールですが、『三井住友カード』と書かれたメールは巧妙なフィッシングメールです。ちなみに、メールの中身は次のように書かれています。 *** 三井住友カードをご利用のお客さま利用いただき、ありがとうございます。このたび、ご本人様のご利用かどうかを確認させていただきたいお取引がありましたので、誠に勝手ながら、カードのご利用を一部制限させていただき、ご連絡させていただきました。つきましては、以下へアクセスの上、カードのご利用確認にご協力をお願い致します。 *** ここで不用意にURLをクリックして要求項目に入力をすると情報が盗られてしまうことになります。 こうしたメールの真偽を確認するには、メール差出人のアドレス(このメールの場合は“三井住友カード <srnbc-co-jp@ejafyajk.asia>”と書かれていました)を確認することが最も確かな方法ですが、少々面倒な上ネットの知識がないと難しくもあります(このメール発信元のドメインは“.asia”となっており、いかにも怪しげでしたが)。 一方、三菱UFJ信託銀行からのメールは一見して正しいメールと分かります。それは、電子署名とS/MIME(Secure/Multipurpose Internet Mail Extensions)が付与されていることから確認できます。ただ、こうした成りすましやフィッシングメールに対する安全性措置が、一般にあまり浸透していないことは事実です。また、証明書を取得するには費用が掛かるため、金融機関など一部機関を除き大半のメールには反映されていないことも事実です。 下のグラフは、警察庁が公表した『令和元年の犯罪情勢』からネット犯罪に係る検挙数の推移ですが、年々増加傾向にあることが見て取れます。ただし、この件数は刑事告発され検挙に至った数であり、未遂もしくは立件に至らないケースも含めると氷山の一角でしょう。それ以外に数字には表れないSNSなどによるいじめや炎上などを含めると、この数十倍は生じていることになります。 また、同資料には2019年9月に全国15歳以上の男女1万人を対象に行ったアンケート調査結果もまとめられています。それによると、過去1年間にサイバー犯罪の被

  • 社会保障を中心にOECD主要6カ国と比較する

    国民皆保険制度、生活困窮者への手厚い保護など、わが国の社会保障制度は世界的にも充実した制度と言われています。一方で、高齢化の進展や生産年齢人口の減少など、社会保障財源が今後ますます高騰しており、財政へのインパクトが日々高まっていると懸念もなされています。 そこで、今回はOECD主要6カ国が公表しているファクトデータに基づいて、社会保障に関連する様々な実態を客観的に比較したいと思います。対象とした6カ国は日本・アメリカ・イギリス・ドイツ・フランス・スウェーデンです。 税収構造 まず、財務省『国際比較』に基づいて、2018年時点の国税と地方税を合算した税収の税目別構成比について考察します。 このグラフから、わが国の税収構造は、個人所得税と消費税の割合が少ない反面、法人所得税の割合が大きいことが分かります。 また、同資料によると国税と地方税の割合(直間比率)にかなりの相違もあるようです。 上表ではスウェーデンが抜けていますが、スウェーデンの税収構造は下図のようにかなり複雑になっています。 すなわち、地方税率は固定ですが、国税は年収が約22万クローネに満たない世帯は免除され、それ以上の所得世帯は年収に応じた税率が定められています。消費税の税率は25%ですが、6%[efn_note]交通機関(バス、タクシー、電車、国内飛行機)、コンサート・サーカス・映画・劇場・バレエ・オペラ、図書館・博物館・動物園、スポーツイベント、書籍・新聞・雑誌、CD・カセットテープ・楽譜、地図が対象[/efn_note]と12% [efn_note]食料品・飲み物(アルコール度数の低いビール含む)、宿泊費、レストラン飲食・ケータリング、キャンプ施設利用が対象[/efn_note] の軽減税率が適用されています。 また、アメリカの直間比率はわが国以上に国税の割合が大きく、税収に占める個人所得税の割合も54.7%と極めて高い国ですが、所得水準に加え養育対象の子どもの数に応じた税額控除が行われています。 アメリカの税額控除と類似した仕組みは、イギリスの就労税額控除[efn_note]フルタイム就労への移行を促すために、カップルのうち1人が最低週30時間就労するか、1人の就労時間が最低週16時間で2人の就労時間が合計で最低週30時間となる場合には、控除額が追加

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