弟があのニュータウンの家に帰って行く日。本当に辛かった。その頃の私は絶望の中にいた。希望が無いのでは無く自分の人生に絶望していた。それから何ヶ月か経ち、私達の生活が大きく変わる事になる。かつて、父親、おかあさん、私、弟の4人で、幸せに暮らしていた、あの家。知らないオヤコ4人に乗っ取られたあの家。山を切り拓いてつくられたニュータウンのあの家。それを処分して、父親が仕事で知り合った人と再婚する事になった。中一の夏休み最後の日に飛び出して、とうとう戻ることが無かった。幸せな日もあった。あのお家にサヨナラもありがとうも言えなかった。これからどうなるのだろう‥弟が幸せになってくれたらそれで良い。私はこの団地でおばあちゃんと一緒に住んでいく。そう思っていた。根無し草㉖
弟に会いたい…その願いが叶う時が来た。春休みの間、おばあちゃんの所で弟を預かる事になった。私はとても嬉しくて早く来ないかなと、その日を待った。待ち焦がれていた、久しぶりに見る弟は…ガリガリに痩せていて、眼つきや言葉遣いが酷く悪くなっていた。それでもかわいい弟だった。近くの公園やスーパーに手を繋いで連れて行った。夜はおばあちゃんと私と弟の3人で一つの部屋で寝た。夜中寝静まった頃、突然弟がむくりと起き出して、床をドンドンと蹴ったり壁を叩いたりした。私はびっくりして、「どうしたん?!」と何度も声をかけたが、弟はやめなかった。弟の目はしっかりと閉じられていた。翌朝、弟は全くその事を覚えていなかった。それは毎晩続いた。何日か経った日に、下の階の人が見慣れないバスタオルを持って訪ねてきた。ベランダに落ちてたんだけど、おたく...根無し草㉕
母親と月に一度買い物に行ける生活になり、随分心が軽くなった。修学旅行の準備も難無くクリアできた。自分でも不思議だったのが、甘えたいとか、一緒にくらしたいだとかそんな感情は全く無かった。ただ、あのニュータウンに置いてきた幼い弟の事が気がかりだった。もう小学生になっているはずだった。母親と会ったその後は、虚しさとともに弟に対する申し訳無い気持ちがこみ上げた。会いたいなぁ。自分にはどうする事も出来ない無力よなぁ。根無し草㉔
「ブログリーダー」を活用して、てのさんをフォローしませんか?
指定した記事をブログ村の中で非表示にしたり、削除したりできます。非表示の場合は、再度表示に戻せます。
画像が取得されていないときは、ブログ側にOGP(メタタグ)の設置が必要になる場合があります。