根無し草 ㉖
弟があのニュータウンの家に帰って行く日。本当に辛かった。その頃の私は絶望の中にいた。希望が無いのでは無く自分の人生に絶望していた。それから何ヶ月か経ち、私達の生活が大きく変わる事になる。かつて、父親、おかあさん、私、弟の4人で、幸せに暮らしていた、あの家。知らないオヤコ4人に乗っ取られたあの家。山を切り拓いてつくられたニュータウンのあの家。それを処分して、父親が仕事で知り合った人と再婚する事になった。中一の夏休み最後の日に飛び出して、とうとう戻ることが無かった。幸せな日もあった。あのお家にサヨナラもありがとうも言えなかった。これからどうなるのだろう‥弟が幸せになってくれたらそれで良い。私はこの団地でおばあちゃんと一緒に住んでいく。そう思っていた。根無し草㉖
2021/12/28 12:40