根無し草 ㉑

根無し草 ㉑

時は遡り、父親とおかあさんが離婚協議していたあの頃。私8歳。私は生みの母親と2週間程過ごした事がある。狭いアパートの2階、お風呂も無く銭湯に通った。私は写真しか見たことが無かったが、写真そのままの人で優しい声の母だった。母と夜に遊園地に行った母の友達数人もいた。母はまだ20代で、おそらくその友達はまだ独身だと思われた。私は流行っていたドラえもんの話を機関銃のようにしゃべりまくった。母はベンチの端で泣いていた。母の友達が私のハイテンションの相手をしてくれた。私は母の涙に気づかないフリをしてはしゃぎまくった。父親とおかあさんが離婚するので私を引き取れないかと、打診したようだった。母は、「私の事はもう死んだと思ってくれ」と言った、とおばあちゃんから聞いた。実際どこまで本当か分からないけどね。後に、その話を永遠と聞かさ...根無し草㉑