chevron_left

メインカテゴリーを選択しなおす

cancel
小文化学会の生活 https://sho-gaku.hatenablog.jp/

小文化学会はメンバーが興味を持ったことについて記事を投稿するサークルです。いろんなジャンルの投稿があるので、ぜひ覗いてみてください!

小文化学会
フォロー
住所
未設定
出身
未設定
ブログ村参加

2021/04/30

arrow_drop_down
  • 今年はこういうの読みました2023

    2023年も終わりです。ゴールデンウィーク明けにコロナが5類になり、いよいよコロナ前の日常を取り戻していこうと思ったら円安で物価がどんどん上がっていく。インフルも大復活を遂げて、一難去ってまた一難という感じ。 ですが、どれだけ世界が変わろうと、ベッドの周囲半径3メートルは14歳の頃から変わっていないのが個人的なところ。人間、結局のところ自分の毎日が穏やかならそれでいいのよと冷笑してみたところで、それでも少しずつ何かが変わっていく。それが何なのかを振り返るには、読んだ本を振り返るのが一番。そんなわけで、毎年恒例の会員たちが今年読んだ本の紹介です。来年もよいお年を。 ぽわとりぃぬ 西村賢太, 20…

  • ナビエ遥か2Tのエロ同人を実際にやってみた-エロマンガのエロいエロくないを分析する④-

    ナビエ遥か2Tは唾フェチという点で稀有なエロ漫画家だ。商業では抑えめだが、現時点(2023年夏コミ)までに制作した同人(同人名はヌルネバーランド)ではその全てにおいて唾液プレイないし顔舐め[1]が描かれている。管見の限りではあるが、唾液をここまで好んで描くエロ漫画家は、世徒ゆうきがたまに描いてはいるものの、見つからない。そんなナビエ遥か2Tの唾液プレイないし顔舐めを、私は実際に風俗でやってみた。本稿では、その体験をもとに氏のエロマンガを読んでみる。 目次 1.ナビエ遥か2Tの作品歴 2.私が実際にやった唾液プレイ 3.読者の経験は読書体験にどう影響するか 1.ナビエ遥か2Tの作品歴 まずナビエ…

  • 『完全自殺マニュアル』鶴見済著1993年(太田出版)

    これまでの人生自殺したいなんて思ったことのない俺が、周りにいる死にたがりの道化どもより先にマニュアルに目を通したことで、もうやつらのリスカやODのごっこ遊びをみても動じなくなる。これが本書を読む第一のメリットだ。 さて、本書はタイトルそのまま、自殺についての方法、注意点等を紹介するものだ。首吊り、薬、飛び降り等メジャーな10種類とその他の方法が、苦痛や手間、致死度といった指標をもとに比較される。読んでみて驚いたのが事例研究の厚さだ。各方法について、成功例と失敗例がたくさんあげられ、なぜ失敗したのか、この死に方はよかったなど著者が批評する。これで死ねないのかとかこんなのでも死ねるのかという発見が…

  • 『くるまの娘』宇佐見りん著 2022年(河出書房新社)

    自分は水路だと思っていたら水だった、という勘違いに人はよく陥る。子供一人ひとりに綴っていた写真アルバムが、きょうだいは残されているのに俺の分だけなかったとか、かつて家族で行った遊園地を訪ねたら、目当てのメリーゴーランドが休業していたとか。あるいは、頻度こそ少ないが正反対の錯誤もある。抵抗できない親の選択や暴力の被害を受けてばかりいたと思ったら、たわいない会話で自己認識を押しつけ、弟を傷つけていたとか。 程度の差はあれど、思いえがいていたことがそうはならなかった経験を、どの家庭の親も子も持っている。家族とは、安易な言明は避けるべきだろうが、あえて言えばもっとも自然体でいられる場所だ。そうでないな…

  • 『夏の階段』梨屋アリエ著 2008年(ポプラ社)

    図書館へ行ったら夏の本特集みたいな名目で置かれていた一冊。 いわゆるヤングアダルト(YA)と呼ばれる中高生を対象としたジャンルに属する。栃木県内とおぼしき地方都市を舞台に、公立進学校に入ったばかりの高校1年生数人の視点を章ごとで切り替えていく群像劇。 読者層だったころは当該ジャンルの本をけっこう読んでいたが、ヤングでもなければアダルトにもなりきれない意味不明な存在になってからは、ほぼ読まなくなった。せっかくだし久々に読むか……と借りてみた。

  • 『不完全マーブル』のコマ割りについて-エロマンガのエロいエロくないを分析する3.4-

    このスピンオフも本記事が最後。きいの現時点での最新単行本『不完全マーブル』の分析でこのシリーズを終わりとする。 親記事にて調査したとおり、きいという作家は単行本を経るにつれ婉曲的な表現が多くなっていった。風景や身体の一部を切り取ってキャラの心情を暗示的に表現する。そういう語り方が得意な作家だ。『不完全マーブル』はそんなきいの現在の最先端なので、全二冊で指摘した特徴ももちろん表れているが、改めて指摘はしない。 ①日陰の詩 ②あきらちゃんはどうしてもチンチンをなめたい ③あきらちゃんはどうしてもチンチンをいれたい ④優惑 ⑤ヒメ♡ハジメ ⑥turn ⑦六月の雨の夜に ⑧ビビッてねーし! ⑨カサブタ…

  • ウィル・アイズナー『コミックス・アンド・シーケンシャルアート』を読む⑤

    ウィル・アイズナーがマンガについて論じた『コミックス・アンド・シーケンシャルアート』。その文献紹介も今回で最後となります。 今回扱うのは第7章と第8章。どちらもマンガ表現それ自体を扱うことはなく、第7章は社会におけるマンガの使用について、第8章は本書のまとめとマンガの未来について論じている。 7章 APPLICATION(The Use of Sequential Art) インストラクション・コミック ストーリーボード 8章 TEACHING/LEARNING Sequential Art for Comics IN THE PRINT AND COMPUTER ERA コンピュータとコミッ…

  • 群青ノイズのコマ割りについて―エロマンガのエロいエロくないを分析する3.3ー

    「お前、前の記事できいのエロマンガのコマを全部数えたらしいけど本当かよ?」という疑い(本当にそんなこと言う人がいるかどうかは不明)に応えるための作品レビュー。今回は『群青ノイズ』。 『放課後バニラ』のコマ割りについて①ーエロマンガのエロいエロくないを分析する3.1ー - 小文化学会の生活 『放課後バニラ』のコマ割りについて②ーエロマンガのエロいエロくないを分析する3.2ー - 小文化学会の生活 『放課後バニラ』の作品レビューをした前回、前々回の記事はこちら。 さて、本作は前作『放課後バニラ』に比べてページ数は変わらないものの、コマ数が増加し、密度が濃くなったのが特徴。2冊目の単行本できいがどう…

  • ウィル・アイズナー『コミックス・アンド・シーケンシャルアート』を読む④

    前回に引き続き、ウィル・アイズナー『コミックス・アンド・シーケンシャルアート(Comics & Sequential Art) 』を読む。今回は5章 "Expressive Anatomy" と6章 "Writing & Sequential Art"だ。 sho-gaku.hatenablog.jp 前回の"Flame"では、コマ割りからシーケンシャルアートとしてのコミックの作成手法が検討していた。そこではコマによって操作されるものがアングルと、アングルによって構築される読者の視点、および視点をとおして操作される感覚へ言及されていた。また、コマの概念と単位を拡張し、ページ全体をコマのように捉…

  • 軍儀戦略概論

    ハンターハンターに登場するボードゲーム「軍儀」の戦略を考察しました。

  • 刺し違えるセカンドベスト:『わたし、二番目の彼女でいいから』の関係分析Ⅰ

    目次 緒言 緒言 本記事では前回の記事*1でまとめた、既存の負けヒロインに関する論考が孕む分析上の課題への指摘と、筆者が唱えるアプローチをふまえ、ライトノベル『わたし、二番目の彼女でいいから』(西条陽著/電撃文庫刊)を分析対象として、負けヒロインと呼称される存在が、いかにして立ちあらわれるかという問いを検討する。考察ではV.Turnerの諸概念を補助線として援用するが、それらはあくまでも補助線であり、それらに対するキャラクターの「型はめ」が目的ではない。本論では、存在(=キャラクター)を抽象的な言葉へと置換する作業を営む過程で、対象-観察者の連関において価値判断を下す自己を俯瞰し、キャラクター…

  • キャラクターのあいだに挟まりたがる消費者――負けヒロインをめぐる思索と課題

    目次 緒言 負けヒロインと言論の関係 語る人と負けヒロイン 不当ではないが、前提にはならない営み 負けヒロインの関係の言論へ 参考文献 緒言 本記事は負けヒロインに関する諸論考における問題点の考察、およびそれらとは異なる分析方法の検討を目的とする。既存の言及には大別して2点の課題が挙げられる。自らの価値判断を密輸入し、それらを他者の同意なしに負けヒロインというカテゴリの前提とする点、負けヒロインに関連する諸要素を、負けヒロインというカテゴリのみならず、それに類されるキャラクターそのものにまで対応させていく点である。 これらは自らの思惟やテクストの外側にある事物を混淆させており、即時的に負けヒロ…

  • 今年はこういうの読みました2022

    どんどん1年の過ぎる速度が速くなっています。この調子だと10年ぐらいしたら12ヶ月なんて半日ぐらいで終わってしまいそうです。さて、今年はあいかわらずCOVID-19の影響を受けたり受けなかったりで、落ち着かない1年でした。こんな時、本を読むと日々の暮らしのなかからは得られない気付きや、暮らしを振り返るよいきっかけになります。そんなわけで、毎年恒例の会員による今年読んだ本の紹介です。来年もよき読書体験を!

  • 『放課後バニラ』のコマ割りについて②ーエロマンガのエロいエロくないを分析する3.2ー

    前回の記事はこちら ④群青 ⑤スカートの中の宇宙 ⑥VAMP!! ⑦コンティニュー ⑧「罪と…」 ⑨ソルトペッパーチョコレート おわりに-色んな最多と最少とヌけるヌけないとの接点- ④群青 本単行本から代表作を1作選べといわれたら、私はこれを選ぶ。異論がある人はいないと思う。それくらいきいという作家の個性が強く出ている。アオハルな舞台設定、キャラの心情を雰囲気で醸し出す曖昧な伝え方、それらを語るためのコマ割り。ただし、1ページ目にセックス未満のシーンを描き読者の気を引く語りは本話にはない。 瞬間型:4.9%、動作型:15.7%、主体型:43.1%、場面型:14.7%、局面型:20.6% ストー…

  • としまえんの定点観測

    としまえんの閉園から2年が経った現在の姿を記録しました

  • 『放課後バニラ』のコマ割りについて①ーエロマンガのエロいエロくないを分析する3.1ー

    前回の記事できいのコマ割りについて分析した。きいの作品全体を対象に他のエロマンガと比較するというアプローチを採り、きいという作家の語り方の特徴を明らかにしたが、個々の作品についての言及は薄くなってしまった。なので、各作品の分析結果を提示し、議論を補強したい。 本記事で取り上げるのは『放課後バニラ』だ。 その前に。マクラウドのコマ割り分類について ①スプラッシュ ②HITOMI ③といがーる ④布団の中の宇宙 その前に。マクラウドのコマ割り分類について きいのエロマンガを論じる前に、分析方法であるマクラウドのコマ割り分類について復習する。これもこれで手薄になってしまったからだ。 マクラウドが注目…

  • 生きづらさを抱えた主体であること――地下アイドルとスタートアップの交差点に立って――

    どうも、つおおつです。近況報告としては、最近サイコミというアプリをダウンロードしました。こちらはサイゲームズの運営する漫画アプリなのですが、1話あたりのページ数が14Pしかなく、1話1話がかなりあっさりしている印象を受けます。そして1日にデフォルトで1話+広告動画視聴で1話の合計2話が無料で読むことができるのですが、あっさりしている上に漫画自体がキャッチーなつい読みたくなるような題材の漫画*1が多く、まんまと毎日アプリを起動させられている今日このごろです。最近ちまちま読んでいるのは『東京深夜少女』『私がわたしを売る理由』とどれも水商売系です。ハイ。 2021年7月23日、私はZOC(現:MET…

  • ウィル・アイズナー『コミックス・アンド・シーケンシャルアート』を読む③

    はじめに 前回に引き続きウィル・アイズナーの『コミックス・アンド・シーケンシャルアート(Comics & Sequential Art)』を読んでいく。 sho-gaku.hatenablog.jp 3回目となる今回は第4章「FRAME」だ。本章で扱われるのはコマ割りとパースペクティブである。前回、時間表現に関連して論じられたコマ割りだが、ここではもっと具体的に画面作りの話が展開される。 コマ割りは時間を縁取るだけではない。イメージの動きを分節化するもので、そこには思考、アイデア、アクション、位置、対話という幅広い要素が内包されている。これに対面した際のプロセスは分析ではなく、認知的、知覚的、…

  • 掩蔽壕の精液とトイレのうんち

    そうして突き入れられて、銃をよだれでべたべたにしているときに、わたしの意識は生まれたの。 2053年、チェチェン山岳地帯。御冷ミァハの意識は、ロシア軍兵士に犯される日々のなかで「生じた」。本来ならば中脳で生みだされるとされるそれは、彼女においては大脳辺縁系が補完することとなった。 意識を獲得し、養子縁組を組むことで紛争地域から日本へと脱したミァハは、しかしながら、別の新たな地獄へ居を移しただけにほかならなかった。医療合意共同体、通称生府(ヴァイガメント)が統治する社会は、性徴を終えたのちに身体へWatchMeなる記録装置を埋めこみ、心身の状態に応じて治療を随時ほどこす個人用医療薬生成システム(…

  • きい先生でヌきたい!ーエロマンガのエロいエロくないを分析する③ー

    1.はじめに 2.ヌけないエロマンガについての記述 3.兼ねコマ、LLマンガ、補完 4.分析方法 4-1.夏目房之介の「内包と多層」 5.分析結果 5-1.きいと『ギャルトモ♡ハーレム』と快楽天7月号 5-2.カメラ位置は変わっても人称視点は変わらない 5-3.きい、その話し方 5-3-1.唐突な時間ジャンプ 5-3-2.兼ねページ 6.おわりに 1.はじめに こんな記事を読むほどにエロマンガが好きなあなたにわざわざきいのことを説明するのもまだるっこしいが、きいはエロマンガ家で『放課後バニラ』、『群青ノイズ』、『不完全マーブル』の3冊を世に送り出した快楽天が誇る看板作家の1人だ。『放課後バニラ…

  • 地方で資金調達をしてスタートアップを始めるための前提条件についての一考察 ~実例と共に~

    どうも、つおおつです。 『小文化』2巻にも書いた通りですが、去年12月に私がやっている会社である株式会社あるやうむが資金調達をし、自分のペースでのんびりやれるスモールビジネスから色んなステークホルダーを巻き込みつつ急成長を目指すスタートアップへと変化*1しました。 さて、前のスタートアップ雑感記事にも書いた通りですが、私は札幌、ひいては首都圏以外の起業文化が盛んになるべく、札幌を始めとした地方でスタートアップをやろうとする人がベンチャーキャピタル(通称VC、初期のスタートアップに資金援助をし株式またはトークンを取得することにより、大化けした時に売却益を得ることを目的とした会社)から資金調達をで…

  • プレイヤー間に実力差がある場合の『ドミニオン』の戦略

    ドミニオンの戦略記事です

  • ウィル・アイズナー『コミックス・アンド・シーケンシャルアート』を読む②

    はじめに 前回に引き続き、ウィル・アイズナーの『コミックス・アンド・シーケンシャルアート(Comics and Sequential Art)』を読んでいく。 sho-gaku.hatenablog.jp 今回読んでいくのは第3章「TIMING」だ。本章でアイズナーはコミックにおける時間の表現について論じている。

  • 白ポストの中身が知りたくて――

    ポストといえば白だ。誰がなんといっても白。私のクオリアがイカれたわけではない。実際に白いポストはある。送る言葉ではなく唾棄すべき(と誰かが断定した)言葉を入れる、有害図書追放のために設置された通称「白ポスト」。 白ポストは1950年代後半から盛んになった悪書追放運動の一環で、1960年代前半に尼崎市に設けられたのが最初とされている。以降、自治体や市民団体が各地でどんどん増やしていった。ここらへんの詳しい経緯はWikipediaやWikiが参照した文献にあたってほしい。本稿の関心は白ポストは白ポストでも、その中身だ。 中身を知りたければ、素直に管理団体へ問い合わせると同行できるらしい*1。回収数…

  • ウィル・アイズナー『コミックス・アンド・シーケンシャルアート』を読む①

    はじめに 小文化学会では特に方針を定めず、会員がめいめい好きな事柄について筆を運んでいる。打ち合わせも特にない自由な空間で、だいたいの寄稿者が1度は焦点をあてているジャンル、それがマンガだ。おのずと手が伸びるほど読みなれているが、それゆえにマンガの分析は想像以上に難しい。 アメリカン・コミックス界の巨匠、ウィル・アイズナーが1985年に著した『コミックス・アンド・シーケンシャルアート(Comics & Sequential Art)』は、アメコミを対象としたコミック研究の古典である。氾濫する解釈の渦へ身を投げだすまえに、古典の本扉を開いてみるのもひとつの手だろう。ひとまず今回は、1章と2章に目…

  • 家庭料理という徴兵 暮らしに下限は設定できるか?

    リュウジの「至高のペペロンチーノ」を筆者が調理している場面。 パスタは熱湯に入れる段階で半分に折った。パスタおよび味付けのコンソメ顆粒にはトップバリュを使用。50円ほどのこの食事を、ヤマザキ春のパン祭りでもらった皿で食べた。 1.はじめに 2.家庭料理の手抜き 3.リュウジのバズレシピ 3-1.虚無シリーズ 4.おわりに。暮らしに下限を設定してみた。 1.はじめに この前の記事『今年読2021』で紹介した久保明教の『家庭料理という戦場 暮らしはデザインできるか』に触発されて本記事を書くことにした。この本に登場する人物は料理することを厭わなかったが、私たちは毎日進んで料理をしているわけじゃないと…

  • チ。あるいは、地、知、血、

    こんにちは、ヱチゴニアです。 この記事は『チ。-地球の運動について-』という漫画の考察記事です。 「サーチできにくくすることで、自分だけの意見を考えるきっかけに」してほしいとの考えから、作者の魚豊は本作を『チ。』と短く命名したそうです*1。 その思想に反するようで申し訳ないのですが、『チ。』について考えた事を書いちゃいました。 *1: tsutaya.tsite.jp

  • 札幌スタートアップ雑感(2021.11-2022.01)

    どうも、つおおつです。 『小文化』2巻にも書いた通りですが、私がやっている会社である株式会社あるやうむが資金調達をし、自分のペースでのんびりやれるスモールビジネスから色んなステークホルダーを巻き込みつつ急成長を目指すスタートアップへと変化*1しました。 prtimes.jp 一般的にスタートアップ企業が立地するのはほとんど東京であり、東京でなくても三大都市圏+福岡が殆どだと認識しております。わざわざ札幌に移住しスタートアップをやるというのはまあ狂気に近く、間違いなく小文化に該当するので今回はその雑感を、トピックベースでしたためられたらと思います。 札幌スタートアップ雑感(2021.11-202…

  • きれることの容易さ―きい作品を事例にⅡ―

    きい先生,単行本第3弾発売おめでとうございます。 www.wani.com 本稿は前回*1にひきつづき,きい作品を題材に用いて,負けヒロインはいかなる存在として受け手の前に現れるのかという問いへの思索を行う。「特定のキャラクターが思いを寄せる相手と相互思慕になるのが失敗したと客観的に判断された時,その判断を下す者が特定のキャラクターを規定する際に用いる範疇」*2*3と,定義をひとまず付けた負けヒロインについて記述を試みる際,大雑把に分けると2つの工程へとりかかることとなる。すなわち,特定のキャラクターが好意を寄せるキャラクターとのあいだに相互思慕の関係を構こうとする過程を追う作業と,かかる過程…

  • 今年はこういうの読みました2021

    早いもので2021年も終わりです。オリンピック・パラリンピックの開催、一昨年末から続くCOVID-19の世界的な感染拡大。世界で何が起きようと、世界がいかに変わろうと、結局は自分で決断して、生きていくほかありません。判断を他者に投げださないためにも、本から得られる知識や知恵はきっと有効な手立てとなるでしょう。もちろん、判断が求められつづけるばかりでは疲れてしまうので、休息のための読書もアリです。というわけで、今年も読んだ本の紹介で締めくくりたいと思います。よいお年を!

  • エロマンガレビュー 新堂エル『変身』-その魔力の根源と暴走―

    「変わりたいと思う気持ちは、自殺だよね」 西尾維新著『零崎人識の人間関係』より。いーちゃんのセリフ。 いくつかのエロマンガには魔力がある。 名作と呼ばれるそれらは、読者の心に何か残るものを突き刺し、彼らをして友達に勧めさせたり感想をブログや商品レビューに書かせたりする不思議な力をもつ。 今回レビューする『変身』もその一つだ。魔力の効果とは人から人へ語り継がれることで、Dr.ヒルルク風に言うと「人に忘れられない、死なないこと」だといえる。 では一体、新堂エル氏の『変身』の魔力はどこに由来するのだろうか。本レビューはそれを考える。 ただし魔法という言葉に引っ張られて、作者や作品の描写に内旋していく…

  • 津和野を訪ねて

    わざわざ津和野に行けとは言わない。行きたいと思ったら行けばいいし、そうでなければ、それでもいい。

  • 雑誌『小文化』、2巻目が発行されます!!!

    2016年に設立したカルチャーメディア「小文化学会」。我々が2020年に満を持して創刊し文フリ東京にて配布した冊子『小文化』、その2巻目をこの度発行することとなりました。 今回は特集原稿と自由原稿の2本立て。35ページとボリュームアップして、もはや雑誌。特集テーマは「ゲーム」。文字通りのゲームにとどまらず、広く文化事象までも扱うものとなりました。自由原稿は各人が興味の赴くまま書き連ねた味わい深いもの。あなたの知的好奇心を満たすのはもちろんのこと、実践的な知識もおまけで身につきます。 以下、記事一覧をご紹介。 ――――― 特集「ゲーム」 ――――― 序―――自己完結しながらの開放 ぽわとりぃぬ …

  • 管理者が居ない金融の世界(DeFi)では何が起こるのか ――KimJongMoon備忘録 前編――

    どうも、つおおつです。最近のマイブームは、筋トレです。 とはいっても、ジムにあるトレーニング器具を使うガチのものではなく、体ひとつあればできる自重筋トレをしています。 プリズナー・トレーニング 圧倒的な強さを手に入れる究極の自重筋トレ 作者:ポール・ウエイド CCCメディアハウス Amazon 元々自己流でだらだら筋トレをやっていたのですが思った成果が得られず、この本を読んでやっているのですが、明らかに筋トレの効率が上がり、体が少しづつ頑丈になっているのを感じます。(まだ2週目) 自己流より明らかに筋肉ついてる&器具がいらないから続けやすいということで、早くこの筋トレを始めたら良かったなって思…

  • つながることの難しさ―きい作品を事例に―

    本稿は肉体を媒介に含む関係構築が、かかる行為の連想させる精神的紐帯、つまり恋仲の構築と必ずしも一致しないことの分析をとおして、成年コミックという媒体の特性により可能となる、負けヒロイン描写の複雑性の解明を目的とする。 筆者は当ブログで負けヒロインが主題の記事を数回、投稿してきた*1*2*3。折にふれて参照するが、それらの分析から産出された知見は1.負けヒロインとは、特定のキャラクターが思いを寄せる相手と相互思慕になるのが失敗したと客観的に判断された時、その判断を下す者が特定のキャラクターを規定する際に用いる範疇である/2.1の定義は、負けヒロインという範疇はキャラクターが望む関係構築の試みの失…

  • マサツグ様からミヤモトが削除されたのはなぜか

    1.はじめに 2.『マサツグ様』の書籍化 2-1.ウェブ版の『マサツグ様』 2-1-1.『マサツグ様』 2-1-2.徹底した俺TUEEEE 2-2.書籍での『マサツグ様』 ①マサツグの過去について ②クラスメイト、ならびにミヤモトの削除について ③ヒロインたちのキャラについて 2-2-1.ストーリー 3.分析 3-1.なろう小説の特殊性 3-2.ラノベの形式 3-2-1.ラノベの作法 4.おわりに 参考文献 1.はじめに 本記事は、なろう小説『異世界で孤児院を開いたけど、なぜか誰一人巣立とうとしない件』(以下、『マサツグ様』)を題材に、商業アートにおける商品の側面を考えるものである。『マサツグ…

  • としまえん一周忌

    としまえん閉園から1年を記念し、現在の姿を記録しました。

  • 都市圏人口と動物カフェの分化度合いについて「猫カフェはどれくらいの規模の街から立地するの?」~東北編~

    どうも、つおおつです。 この2ヶ月で一番大きな変化といえば、ZOCのライブに行ってきたことだと思います。ZOCというのは「孤独を孤立させない」という言葉をモットーに活動する6人組のアイドルグループです。 アイドルグループですが、「炎上上等」というフレーズが歌詞や合いの手に複数回出てくる、なかなかエッジの効いたグループであり、実際メンバーが不倫/薬物疑惑/未成年飲酒・喫煙etc...により定期的に炎上してしばしばメンバーが交代したりしています。(正直な話、アイドルという側面より大槻ケンヂ的な側面の強いグループだと思っております。) 高校生の時落ち着いてライブを聞くことができず主催者側に怒られたこ…

  • シュレーディンガーの負けヒロイン――箱へ入れるには負けヒロインが多すぎる!

    本稿は放射性元素を用意した密室にいる負けヒロインが、元素の崩壊を引金として室内の生命体を死に至らしめる仕掛けが発動した際、生きているのか死んでいるのかを考察する記事……ではない。同時に、生命の徒な科学利用を禁ずる倫理的訓話でも、量子が集合体状態の光子となる際、そこには勝ち量子と負け量子がいて、われわれの社会は原子レベルですでに構築されている可能性を論ずるポストモダン的白昼夢でもないことを、あらかじめ断っておく。 では何を書きすすめるのかというと、ライトノベル『負けヒロインが多すぎる!』を題材として、負けヒロインとはいかなる存在でありうるのか、その問いへの答えと、答えるための条件についての考察で…

  • キラーズはいいぞ

    キラーズ(The Killers)というバンドは日本じゃあまり知られていない。 その世界的な人気の割に、パッとしない。 現在までに発表した6枚のアルバムすべてがイギリスでチャート1位を獲得。ファーストアルバムの『Hot Fuss』はグラミー賞の五部門にノミネートされ、全世界で700万枚以上の売り上げ。5枚目の『Wonderful Wonderful』では全米チャート一位も獲得してるというのに、日本武道館での来日公演は空席が目立つ有様……。 詳しくは後半で書きますが、この世界とのギャップは単に彼らの音楽が日本人にウケなかったからという話でもないのです。それどころか、そもそも我々日本人は不運なこと…

  • 五次元チェスのもう少し詳しい話

    五次元チェス、あるいは5D Chessというゲームがある。正式には5D Chess With Multiverse Time Travelという名前だ。 2020年の7月にリリースされたこのゲームは、日本語でもいくつかの紹介記事*1*2*3*4 が書かれ、Twitterでも何度か見かけた記憶があるので、それで知った人も多いのではないだろうか。 おそらく、ほとんどの人はこのゲームのコンセプトを知って面白いなと思い、しかし、それだけだっただろう。数%の人は購入を検討したかもしれないが、実際に購入したのは私のようなよっぽどの物好きだけに違いない。 これはいたって自然な流れであり、ネットではよくある話…

  • 都市圏人口と動物カフェの分化度合いについて「猫カフェはどれくらいの規模の街から立地するの?」~北海道編~

    どうも、つおおつです。小文化学会では現状4人(つおおつ、ぽわとりぃぬ、エチゴニア、10nies)で隔週で輪番で記事を書いており、だいたい2ヶ月に一度記事を書く番が回ってくるのですが、前回の記事を書いてからのこの2ヶ月は濃厚な時間を過ごすことができて、濃厚すぎて何をしたかもロクに思い出せないここ最近という感じです。 閑話休題。今回は都市圏人口と動物カフェの分化度合いについて分析して行こうと思います。この疑問をもったのは今年の2月。私は中標津*1にいる友人を訪ねていたのですが、その時に行き先として猫カフェに行きたいということを私が言ったら、こう返されました。 中標津にはないんですが、釧路に小動物カ…

  • 人と会わなければ会話が弾む

    正確な割合は不明だし、関心としては二の次なのでわざわざ調べないけれど、感染対策としてオンライン講義を設けている大学は少なくないだろう。また、大学におけるオンラインの利用には劣るかもしれないが、テレワークが推奨されている企業も一定数ある。そんなことは飽きもせず全国の感染者数が読みあげられる日々に慣れたみなさんからすれば、不必要な情報共有にちがいない。 ところで技術的には可能だった授業や会議、業務でのオンライン活用は、その革新性のわりには評判がよくない。特に大学でのウケは悪い。たとえばこんな言われようされとる。 6月上旬には、対面授業を実施していない大学側を相手どった訴訟も起きている*1。訴訟とま…

  • 最近話題な地政学の用語集を作ってみた―学説史と用語集ア~セ―

    今回のテーマは地政学です。 英語でいうとGeopolitics。 国際情勢のニュースで専門家が「地政学的に~」とか「地政学上のリスクが~」というのを最近耳にしたことがあるかもしれません。 国家や国際関係について地理と政治を併せて考える学問が地政学。 雑誌「現代思想」が2017年に特集を組んだことがきっかけで一般的に認知されだしたそうです。 戦後「軍事的」だという理由で日本では禁止されていたけど、1970年くらいから復興。なんどかのブームを経て、現在もまたブーム中。 YouTubeには地政学を解説した霊夢と魔理沙の動画もたくさんあります。 なので今回はそれらを見始めた当時の私が欲しかったような用…

  • 最近話題な地政学の用語集を作ってみた―用語集タ~ロ―

    タ行 第一列島線・第二列島線 大西洋憲章 大日本帝国 台湾 チェルノーゼム チェーレン, ルドルフ チベット高原 中国 チョークポイント ドイツ トルコ ナ行 NATO(北大西洋条約機構) 南米 ニクソン訪中 日本 ハ行 ハウスホーファー, カール バランス・オブ・パワー バルフォア宣言 半島国家 1つのインド 非同盟 百年国恥 プーチン, ウラジーミル フセイン・マクマホン協定 フランス 米朝首脳会談 米軍基地 ベラルーシ ベルギー 北方領土問題 ラ行 ロシア ローマ帝国 後書きにかえて アフリカについての覚え書き タ行 第一列島線・第二列島線 鄧小平が打ち出した中国の軍事概念。シーパワー進…

  • 練馬大根の食レポ

    東京都練馬区の特産品、練馬大根をご存知だろうか。この記事は、幻の存在となった練馬大根の食レポである。

  • 札幌移住と起業(スモールビジネス)をして三年たって得た知見

    どうも、つおおつです。 最近はVivyというアニメにハマっています。 vivy-portal.com 最古の自律型AIが百年後に起こる人間とAIの戦争を防ぐために、百年後から来たAIと一緒にAIを滅ぼすお話です。 Vivyがウケているのは、私たちが潜在的にAIの発展に危機感を感じているも、私たちは人間社会ではAIを行使している人間*1よりも社会的に低位に置かれているため、AIの発展を止めることができず、AIの自滅によってでしかAIが私たちにもたらす危機を止めることができないからな気がします。 閑話休題。 早いもので、2020年3月に札幌に移住してから1年と2ヶ月が経ちました。2018年2月、大…

  • ゆめアールは無いけど花寺のどかの幻覚を見た

    図1 ゆめアール(イメージ)*1 みなさんは3月20日に公開された『映画ヒーリングっど♥プリキュア ゆめのまちでキュン!っとGoGo!大変身!!』を何回見ただろうか。たいして劇場に足を運んでいないのに、本作について記事を書くのは非常におこがましいと承知しつつ、備忘録がてら鑑賞して思ったよしなしごとをまとめておきたい。なお本編についての記述を含むが、その旨ご理解いただくよう、あらかじめ述べておく。 目次 1.作品紹介・映画のあらすじ 2.渋谷周辺の舞台となったスポット 並木通り 竹下通り のどかとカグヤの出会いの地、ガード下 スクランブル交差点とMIYASHITA PARK 3.映画についてのコ…

  • グロンギンゲゲルドギガヅンドグベギ

    タイトル訳)グロンギのゲゲルとギアツの闘鶏 ※ここではリントの言葉で書くよ。 去年の9月から始まった仮面ライダークウガのYouTube無料配信は、3月の13日をもって終了いたしました。 2000年の放送当時はまだ幼すぎて内容はよくわからず。でもドラゴンフォームが好きで最後まで見てたクウガ。 改めて一話から最終話まで見て。 やっぱりクウガ、最高やったな! 今回はそんなクウガの敵役であるグロンギの文化にスポットを当ててみたいと思います。 作中にてほとんど説明がされてなかったグロンギたちが人間を虐殺する理由。 それについて、考えていきましょう。

  • 瞬間、ハンタ読者の脳内に溢れ出した、存在しない記憶

    東堂葵 16歳 冬 己の肉体と術式に限界を感じ、悩みに悩み抜いた結果、彼がたどり着いたのは、一日一万回、感謝の拍手であった。 元ネタのネテロ会長の修行シーン このナレーションはHUNTER×HUNTERのネテロ会長の修行シーンを文字ったものである。 呪術廻戦 第132話の東堂葵の「腕なんて飾りさ 拍手とは魂の喝采!!」というシーンを見た瞬間に私の脳内で走馬灯のように上記のナレーションが流れた。 東堂葵が言い放ったその台詞から、HUNTER×HUNTERのネテロ会長の「祈りとは心の所作」という台詞を想起し、結果、東堂葵がネテロ会長のように修行している存在しないシーンが脳内に流れたのだ。 呪術廻戦…

  • 負けヒロインと出会う方法

    1.緒言 2.負けヒロインはどこから来たのか 3.負けヒロインはどこからも来ていない 4.結言 5.謝辞 1.緒言 前回の記事では『聲の形』のキャラクターに焦点をあてて、負けヒロインは何に負けたのか、ということについて考えた。結論を引用すると、彼女たちは好意を寄せた相手との望む「関係の構築に失敗した(=負けた)」(『植野直花から学ぶ負けヒロインの生き様(下)』)のだ。本定義の照合はオリジナル内部で完結するため、恣意的な一般論へ横滑る社会反映論や、記号への還元を強いるデータベース消費と一線を画している。 上記は方法論における長所だが、負けヒロインという対象への更なる探究をとおして、有益とみなせる…

  • クジラックスの『ろりとぼくらの』をアッサンブラージュする――エロマンガのエロい・エロくないを分析する②――

    『ろりとぼくらの』として誕生する前の『ろりとぼくらの』 久しぶりにエロマンガをテーマに記事を書きたいと思います。 分析対象をクジラックスの『ろりとぼくらの』とした本稿は、エロいエロくないというよりかは、ヒットの分析となりました。なので正確には、以前投稿した記事の亜流として位置づけられます。 sho-gaku.hatenablog.jp 「エロマンガのエロいエロくないも分析できるよ」といって終わっちゃった前回に続き、今回は具体的に分析をしてみようと思います。なお、シリーズタイトルはこっちのがキャッチ―かもという判断で「エロマンガのエロい・エロくないを分析する」に変更。 さて、多くのエロマンガ好き…

  • お前はLil Bubbleを知っているかーー洋楽替え歌×仮想通貨という新境地へ

    どうもつおおつ(29おじ)です。 最近整体がプチマイブームです。 弱った体がよみがえる 人体力学 作者:井本 邦昭 発売日: 2011/12/10 メディア: 単行本 この本、体の悩み事(腰痛、肩こり、胃痛、冷え性、etc...)ごとにやるべき運動を紹介してくれるんですが、やると症状(私の場合肩こり、胃痛)がかなり改善されてぐっすり眠れます。所要時間も1つの悩み事につき3分ほどで忙しい現代人にも相応しいエクササイズな気がします。これをやってから安眠するのがプチ*1マイブームであります。 *1:毎日やりたいが、仮想通貨トレードで1日が終わり気がついたら寝ているような日もあるためサボってしまうこと…

  • 【推しの子】 アクアはアイになりたいのか

    こんにちは。ヱチゴニアです。 今回は『【推しの子】』という作品の考察をしようと思います。『【推しの子】』は赤坂アカ原作、横槍メンゴ作画で週刊ヤングジャンプにて2020年21号より連載中の漫画で、推しアイドルの子供に転生した双子が成長し芸能界へと足を踏み入れていく、というストーリーです。 本記事は主に原作を第三十話まで読んでいる人を対象に書かれているので、盛大なネタバレを含みます。また、できるだけ補足しつつ書きましたが、それでも原作未読の人が読むには説明不足な部分が多々あると思いますので、ご了承ください。

  • 植野直花から学ぶ負けヒロインの生き様(上)

    1.はじめに 人と人が関わる時、そこにはいくつもの関係が生まれる。もっとも基本的な類では好き-嫌いが挙げられるだろう。集団内では複数人の好意が特定の人物へ集中する事態が発生しうる。その際、好意を寄せられた対象が好意を寄せた成員から1名を選び、当人のかかる感情を是認すると*1、必然的に実を結ばなかった好意を抱く者が現れる。このような状況を観測する第三者は、1人の被恋慕者に好意を寄せる複数の恋慕者について勝ち-負けで分類することが可能となる。男性を被恋慕の立場とした異性愛が前提のコンテンツ――主にマンガ・アニメ・ゲームのポップカルチャー――において、後者に選り分けられる女性は一般的に負けヒロインと…

  • 植野直花から学ぶ負けヒロインの生き様(中)

    4.ヒロインは何に負けるのか ようやく本題に入る。分析対象は漫画『聲の形』である*1。別冊少年マガジンで2011年2月に読み切りが掲載されたのち、週刊少年マガジンで2013年36・37合併号(8月7日発売)から2014年51号(11月19日発売)まで連載し、単行本は全7巻発刊された。聴覚障碍を持つ西宮硝子と石田将也の交流を中心にコミュニケーションでの困難とその克服を描いた作品、という要約で間違っていないと思う。 大雑把な時系列を先に記しておくと、第1巻の1話から4話までは石田の通う小学校に硝子*2が転校してきた小学6年次の1年間に紙幅の大半が割かれ、それ以外は第6巻に収録されている主要キャラク…

  • 植野直花から学ぶ負けヒロインの生き様(下)

    5.おわりに 以上、長くなったが植野の視点から物語を俯瞰した。ようやく前節で掲げた問い、すなわちヒロイン=植野は何に負けたのかについて答えが出せる。

  • 今年はこういうの読みました2020

    中国でよう分からん肺炎の症例が確認されたと思ったら、あっという間に世界中へ感染が拡大して振り回された2020年。家にこもって活字を読む機会が多かったのではないでしょうか(読む量が増えたかどうかはさておき)。来年もきっと続くであろう新しい生活様式にむけて、会員が今年読んだ本を紹介します。面白そうなのがあったらチェックしてみてください。それではよいお年を!

  • ファクトフルネスと/はフィリピンの妖怪

    今回は読書感想文。 課題図書はここ最近話題になった意識高い本『ファクトフルネス』。 すごい金持ちのビル・ゲイツとかバイデンの元上司のオバマが絶賛したとかで話題になって、YouTubeで検索してみればオリラジの敦ちゃんをはじめ内容を要約してくれた動画が山のように見つかる。 それ見て面白かったので自分でも実際に読んでみた。で、読んでみたら要約系動画に劣らずかなり面白かった。 だから自分もこの本で原稿書いてみようと思ったものの、今更ただ要約しただけじゃ遅すぎる。その辺に転がる謎のアニメーション使って解説してる動画と差がない。 というわけで本稿ではファクトフルネスな生き方の対極に位置するかに見える人類…

  • おじろく・おばさについての論文紹介

    11月22日の文フリ東京のブースにいらしてくださった方、本当にありがとうございました。私、つおおつも文フリで1万円弱冊子を買ったのですが、最近何かと忙しくほとんど読めていない状況で、恥ずかしい有様です*1。 忙しかったのにも訳がありまして、11月18日に会社を設立、それまで個人でやっていたいくつかの小さな事業を法人に移しました。また10月は売上が明らかに減ってしまったため設立後すぐ新型コロナウイルス融資を日本政策金融公庫に申請、12月8日に担当者の方と面談をし、なんと翌日に可決を頂け、昨日14日に借用書にハンコを押して郵送した次第です。財政自体はそこまで危機的ではないのですが、法人化に伴う圧倒…

  • 第三十一回文学フリマ東京に参加しました!

    予告していたとおり、11月22日に東京流通センター第1展示場で開催された文学フリマ東京に参加しました。ブースに来ていただいた方に、あらためてお礼申しあげます。初参加かつ従来とは違う状況でしたが、とてもいい経験になりました。備忘録も兼ねて、参加を決めてから冊子編集、作成、印刷、配布にいたるまでの道のりを残しておきます。

  • 推しの暗渠に有名になってほしくない

    それは、推しのアイドルに有名になってほしくないオタクの心情と少し似ている。アイドルだって地形だって、有名になって注目を集めれば否が応でも変わらざるを得ない。その変化を嘆く“古参ヅラ”はどこにでもいるのだ。 今これを読んでいる貴方はラッキーだ。まだ有名になっていない素晴らしい暗渠が山ほどあるのだから。ただし油断してはいけない。情景は刻一刻と更新され続けている。今回は、その油断ならない一進一退の攻防を紹介したいと思う。

  • 第三十一回文学フリマ東京に参加します!

    当ブログ『小文化学会の生活』でトップに固定しているご挨拶の記事「小文化学会の案内」では、具体的にする活動のひとつに「記事をまとめた冊子の作成、配布」を掲げています。で、なんかつくって配ったの? ……ありません。1回もありませんでした。これまでは。 2016年9月に設立して早や4年が過ぎ、満を持して会誌創刊&同人誌即売会への参加が決定しました。タイトルにもあるとおり、11月22日に催される第三十一回文学フリマ東京にて、冊子『小文化』創刊号を配布いたします。

  • ママはママでもママじゃないママはな~んだ

    正解は崖です。 「ママ」は長きにわたり関心を持たれてきた。たとえば、江戸時代後期の国学者は由来を「土が心のままに崩れるからだよ」と述べている。親父ギャグじゃん、と一笑に付している方に言いたい。私も同感だ。 これを著書で引用した研究者もこじつけとみなし、そのうえで真面目な検討を重ねている。彼の名は柳田國男。日本の民俗学の先駆者のひとりで後代の人々におおきな影響を与えた。1937年に刊行された『地名の研究』は、地名に関する研究の基礎史料といってよい。 「ママ」に関する論攷は同書のなかで短いながら堅実に展開された。「ママという地名は東部日本に充満している」。そして具体例をいくつも挙げて、「土堤の敷地…

  • 虚構の終身雇用の虚構 あるいはなぜ我々は仕事を辞めないのか

    サラリーマンは気楽な稼業ときたもんだ~♪ ご存知かの有名な喜劇俳優植木等のサラリーマンどんと節の一節である。1962年の『サラリーマンどんと節気楽な稼業と来たもんだ』という映画で歌われ、当時人気だったらしい。 ナウでヤングなみなさんにはむしろウッチャンと出川哲朗のレモンサワーのCMでのパロディのほうに耳馴染みがあるかもしれない。 サラリーマンは気楽な稼業と……いえねえよお! てやつ。 個人的にもこの類のパロディのが元ネタよりも聞いたことがある。特に、サラリーマンに批判的な意識高い新しい働き方を提案する系の本を読むと、この一節が良く引用されている。 私が読んだことある限りでいうと、この歌をフック…

  • 京阪京津線の車内広告と仮想通貨バブル崩壊

    どうも、つおおつ(29おじ)です。最近、普通四輪の運転免許を取得しました。これで一番ありがたいのが、タイムズカーシェアのナイトパックが使えること。今はキャンペーンで18:00-9:00の15時間がなんと770円……移動手段と宿泊場所がくっついているのにこの値段ですから、破格という他はありません。ミソなのが、日の出が5時なら日が出ている時間帯に4時間も運転できるということ。アニメの聖地巡礼のために訪れた駅の駅前でナイトパックのカーシェアを借り、日没までにスポットにたどり着き現地で車中泊。日の出と共に巡礼を始めるというコスパ最強ムーブを思い付いたのでぜひ来年の夏至付近で実行したいです。 閑話休題。…

  • 『図書館の魔女』と地下水道

    こんにちは、暗渠が大好きなヱチゴニアです。これまで何度か暗渠を探索する記事を書いてきましたが、今回は少し趣向を変えて、小説の中に登場する暗渠についてです。 2017年末の記事でわずかに触れましたが、暗渠は文学作品の中にときどき登場します。こういった文学作品を読み込むときの最もシンプルな方法論として対立軸に注目するやり方がありますが、例えば、暗渠は開渠であった頃と時間軸上で対比されることが多いものです。 さて、今回は髙田大介による小説『図書館の魔女』を取り上げて、その中で暗渠がどのような役割を果たしているのか考えてみます。ただし、長い作品であり、全体を俯瞰 すると1つの記事におさまりが悪くなって…

  • 名鉄小牧線でゆくOMMCツアー

    飲み会にはコールというものがあるそうだ。平凡な人生を送ると無縁の存在だが、その気になれば簡単に関わりを持てる。そもそも酒のなかにはコールがすでにあるとはいえ(「アルコール」だからね)、コールを唱えればもっと楽しくなるかもしれないし、虚しくなるかもしれない。すべては気の持ちようで変わる。 代表的なコールは、と紹介しようとしたところでまったく知らないことを思いだし、ググってみた。ご丁寧にまとめてくれている方が何人もいるのでいくらでも引用できるが、活字にされたものに目をとおすと漫才をミュートで見るようなもどかしさが湧いてきて、すぐにブラウザを閉じてしまった。申し訳ない。「飲み会 コール」で検索すると…

  • 「自称アスペ」はテリヤキバーガーか

    これはお前の話じゃない。 コミュ障、アスペ、ADHD、発達障害、鬱……あなたはどの病に苦しんでいるだろうか。 いや、この聞き方は正しくない。あなたはどの病を選んだだろうか。 本稿は上記の病気の存在を否定しない。 理解なく甘えと切り捨てたりもしない。 本稿で問いたいのは病を自称するという行為だ。ここでいう「自称」とは、その病気が自分にも当てはまる状況を経験しているが医学的な診断を受けてはおらず、自己認識に留まるという曖昧な領域だ。つまり、客観的に症状があるかどうかは関係なく、あくまでも自身でその病気にかかっていると思っていることが重要だ。 病院で診察を受けたわけでもないのに、「私はコミュ障だから…

  • 仮想通貨と県民性

    どうも、つおおつです。コロナ禍により外出がままならない中、つおおつのような図書館でしか進捗を出せない人間は大変です。進捗何も出てません。(泣) さて皆さんは、仮想通貨を聞いて何をイメージしますか?「怪しい」と思う方から、「なんかよくわからないけどピザが食べられるんでしょ*1?」とある程度知ってる人、「仮想通貨じゃねーんだよ暗号資産って言え!」というクリプトガチ勢*2まで、色んな方がこの記事を読んでいると思いますが、「仮想通貨と県民性」という関連については何も知らないはず。 この記事では、仮想通貨と県民性の間にどのような関連があるのかについて、量的な掘り下げを試みます。 目の色が¥マークになって…

  • としまえん閉園に際して

    こんにちは、エチゴニアです。お久しぶりです。 コロナによって世界は色々な変化を余儀なくされていますが、東京都の遊園地『としまえん』の閉園の準備も、そのかげでひっそりと進められてます。閉園については今年の2月に第一報が流れ、6月12日に公式ホームページで正式に発表がなされました。 この記事では、そんな閉園直前のとしまえんについて、正確には、その周辺について書きたいと考えています。

  • 人間はいつになったらクイズの出題をやめられるのか

    そこで、悪魔はイエスに言った。「神の子なら、この石にパンになるように命じたらどうだ。」イエスは、「『人はパンだけで生きるものではない』と書いてある」とお答えになった。(ルカによる福音書第4章3‐4節) みなさんは大学入学共通テスト(以下共通テスト)の問題作成方針が今年の1月末に変更されたのを憶えているだろうか。ごく簡単にいえば、記述式を諦めた。その理由として採点の精度への疑問、自己採点の難しさ、費用対効果の不確かさが挙げられている*1。英語民間試験の導入も見送られ、結果的に共通テストとセンター試験の目に見える変更点は「数学Ⅰ」「数学ⅠA」の時間が70分になったこと、英語の得点配分が記述200点…

  • ヌける/ヌけないエロマンガへの接近①

    こんにちは、ぽわとりぃぬです。エロマンガを研究するうえでつぎの2冊は必読です。永山薫の『エロマンガスタディーズ』と稀見理都の『エロマンガ表現史』。前者をエロマンガの歴史と社会的意義を考えた本と位置付けるなら、後者はエロマンガの技術的価値を考えた本と位置付けられるでしょう。 そんな両巨頭の肩に乗っかれば楽なのにもかかわらず、本稿でエロマンガのヌける/ヌけないを分析しようと試みるのは、私が常々、エロマンガに限らず作品を考察するときに鑑賞体験が扱われないなと思っていたからです。 ある作品を論じるといったとき、おおよそがその作品の社会背景や意味を探ったり、その作品の技術の高さを分析したりで、肝心の感情…

  • アンチ就活アンチ

    こんにちは、ぽわとりぃぬです。あなたは就活嫌いですか、好きですか。やりたくないけどやんなきゃいけないからリクスー買ったりインターンシップ行ったりしてますっていう人多いですよね。 何であれ物事にはアンチが存在します。そろそろ就活アンチが元気になる季節です。本稿は彼らの批判を批判してみようと思います。果たしてアンチのいう通り、周りと同じ格好に身を包んだ就活生はヒツジでしかないのか(逆に、アンチはオオカミなのか)。なお、本稿で扱う就活とは(文系)大学生が参加する新卒一括採用のことです。概要とか専門用語の解説は紙幅の都合で割愛しちゃいました。ごめんね。

  • 今年はこういうの読みました2019

    ここ最近活動していないので、小文化学会は冬枯れた野原のように息の根が止まってしまったと思ったそこのアナタ! ぶっちゃけ否めません。とはいえ〆るところはきちんと〆ます。来年がんばるために、せめて今年の足跡を留めておきたい。毎年恒例の「今年はこういうの読みました」を書いて、本年の活動はおしまいです。来年は読んでくださった方にとっても、我々小文化学会にとっても実りある1年にできるよう努力していきましょう。

  • コミュ障はハゲか妖術か

    こんにちは、ぽわとりぃぬです。このインパクト重視なタイトルを言い換えるとこうなります。コミュ障は社会的に構築された病(ハゲ)か、それとも集団幻想(妖術)か。コミュ障という得体の知れないレッテルについて、ハゲと妖術に関する人類学的知識を参考に考えていこうと思います。

  • カルチャーと社会のスムーズな接続 ―AVにおける「文系女子ブーム」から「草食系男子」へ―

    こんにちは、ぽわとりぃぬです。みなさんAVは好きですか。私は好きです。おおっぴらに言うのは憚られるものの、男子はみんな(最近では女子も少なからず)好きだと思います。今回はそんなAVのブームを題材に、カルチャーと社会の関係について考察していきます。夜中こっそり見るのが当たり前のAV。だからこそ、私たちの姿をグロテスクなまでに反映するのです。 テーマは「文系女子ブーム」です。2019年9月号のソフト・オン・デマンドDVDに「このところ、にわかにリリースが増えている『文系女子』作品(p51)」とあるように、現在日本のAV界においては、文系女子がブームなのです。この「文系女子ブーム」の背景にいかなる要…

  • 路上でクルージング@中村遊郭跡

    先日の「路上でクルージング@中村遊郭跡」はお天気にも恵まれ、無事に開催できました。来てくださったみなさん、ありがとうございました。今回はその報告をしたいと思います。 集合した中村日赤駅から、最初に向かったのは素戔嗚神社。駅にいちばん近い遊郭の角になります。この神社、昭和8(1933)年に当地へ移されたのですが、境内でみられる灯篭や鳥居には遊郭とその経営者と思わしき人々の名前が刻まれています。年月日は大正12(1923)年が多く、遊郭が大須から移転される際に関係者各位が商売の成功を祈願したことが窺えます。なかでも遊郭ならではのユニークな字面が、石灯籠で見受けられました。 家内安全ではなく廊内安全…

  • 活動報告 エロマンガ読書会

    皆さん、春ですね。ぽわとりぃぬです。新入生、新学年、新入社員といった新たな環境をよろめきながらも歩き始めた頃かと思います。あらゆる繋がりがリセット/更新されるこの時期、何か新しい楽しさはないかとネットをポチポチしてみたりもするでしょう。 そうしてうっかり当学会に辿り着いてしまったあなたに、本稿では、小学が開催したエロマンガ読書会の活動報告をしたいと思います。我々は去年の夏から秋にかけて、勇敢にも旧帝大にエロマンガを持ち込み、計3回読書会を行いました。結果的には女性も参加してくれ、また新たに会員となってくれた方もいました。 小文化学会はこのようにメンバーの探求心に寛容です。というより、あなたの自…

  • 新歓のお知らせ

    多くの大学では春学期の講義が開始したころだと思います。いかがお過ごしでしょうか。私は残された長期休みのひとかけらを心惜しく過ごしております。 春学期の講義が始まったということは、多くのサークルで勧誘活動も始まったということを意味します。きっと夕飯やその他オリエンテーションで、新たなメンバー獲得に精を出しているはずです。いやはや、青春ですな…… などと爺くさい静観を決めている場合ではありません。何を隠そう小文化学会、今年の9月で丸3年を迎えるのに、これまでほとんど新たな会員の方に入っていただけていないのです。胡散臭い神様の教えや販売ノルマがある洗剤の類を押しつけていないのに。これは由々しき事態と…

arrow_drop_down

ブログリーダー」を活用して、小文化学会さんをフォローしませんか?

ハンドル名
小文化学会さん
ブログタイトル
小文化学会の生活
フォロー
小文化学会の生活

にほんブログ村 カテゴリー一覧

商用