甘利備前守討死、これにより味方は崩れ去るかと思った時横田備中、小山田備中が敵の五頭の軍勢の中に駆け込み火花を散らすされども味方は入れ替わる兵なく、敵は十倍の大軍勢が入れ代わり立ち代わりで攻め寄せるついに横田備中守も鎧の隙間を突かれた槍傷三か所、鉄砲丸二か所に受けて乱戦の中に討死小山田備中は大小三か所の傷を負いながらも、なおも奮戦するこのとき戸石城中では守備兵が遠眼に見れば「スワ味方の後詰の大軍がやってきたぞ、我らも城内より打って出て晴信本陣へ突きかからん」と勢い立ち城門を開き二千三百騎いっせいに弾丸の如く走り出た。戸石城を取り囲んでいた武田方の先鋒の信州勢。栗原左衛門尉、芦田、川上、勝沼入道の中に突きいれば、信濃勢は後方での戦に気を奪われていたところに前からの城中の兵突きかかり、一度に崩れてしまった。我先...「甲越軍記」を現代仕様で書いてみた武田家76