chevron_left

メインカテゴリーを選択しなおす

cancel
tamaログ https://tamasan7.hatenablog.com

推理小説研究会出身。主にミステリの感想を書いています。すべてネタバレ前提です。

たまさん
フォロー
住所
未設定
出身
未設定
ブログ村参加

2021/03/09

arrow_drop_down
  • 54 夜の声 ウィリアム・ホープ・ホジスン

    ▶あらすじ あのH・P・ラヴクラフトが多大な影響を受けた鬼才ホジスンは、異界への憧憬と恐怖を大海原に求めた。本書には、闇の海から聞こえる奇妙な声が、キノコに覆われたとある島の怪異を語る傑作「夜の声」をはじめ、死の海サルガッソーや海に浮かぶ石の船、さらにはカビに呑みこまれた廃船などにまつわる海洋奇譚全七編に、<カーナッキ>シリーズの先駆「水槽の恐怖」を収録した。 (個人的な)点数 8/10 バミューダ海域やマリー・セレスト号の謎・・・大海原では説明のできない不思議なことがたくさん起こります。 本作は、海にまつわる怪異がつめこまれた怪奇短編集。船乗りだった作者の、海に対する畏怖の念が感じられる作…

  • 53 招かれざる客たちのビュッフェ クリスチアナ・ブランド 【古典ミステリフェア】

    ▶あらすじ 英国ミステリ史上、ひときわ異彩を放つ重鎮のブランド。本書には、その独特の調理法にもとづく16の逸品を収めた。コックリル警部登場の重厚な本格物「婚姻飛翔」、スリルに満ちた謎解きゲームの顛末を描く名作「ジェミニ―・クリケット事件」、あまりにもブラックなクリスマス・ストーリー「この家に祝福あれ」など、ミステリの神髄を伝える傑作短編集。 (個人的な)点数 8/10 昨年読んだブランドの「はなれわざ」が年間ベストにはいるくらいおもしろかったので、今回は傑作短編集と名高い本作をチョイスしてみました。 16篇が収録されていて、500ページ超えとボリューム満点。 前評判からハードルは上がっていまし…

  • 52 八百万の死にざま ローレンス・ブロック 【古典ミステリフェア】

    ▶あらすじ キムというコールガールが、足を洗いたいので代わりにヒモと話をつけてくれという。わたしが会ってみるとヒモは意外にもあっさりとキムの願いを受け入れてくれた。だが、その直後、キムがめった切りにされて殺された。容疑のかかるヒモの男から、わたしは真犯人探しを依頼されるが・・・マンハッタンのアル中探偵マット・スカダー登場。大都会の感傷と虚無を鮮やかな筆致で浮かび上がらせ私立探偵小説大賞を受賞した大作。 (個人的な)点数 8/10 みなさんはハードボイルドは好きですか? 私は、ミステリ研究会在籍中に、チャンドラーとロスマクドナルドを読みましたが、【長いお別れ】も【ウィチャリー家の女】も【さむけ】…

  • 51 妖魔の森の家 ディクスン・カー 【古典ミステリフェア】

    ▶内容紹介 長編に劣らず短編においてもカーは数々の名作を書いているが、中でも「妖魔の森の家」1編は、彼の全作品を通じての白眉ともいうべき傑作である。発端の謎と意外な解決の合理性がみごとなバランスを示し、加うるに怪奇趣味の適切ないろどり、けだしポオ以降の短編推理小説史上のベストテンにはいる名品であろう。ほかに中短編4編を収録。解説=中島河太郎 ▶収録作品 妖魔の森の家 軽率だった夜盗 ある密室 赤いカツラの手がかり 第三の銃弾 (個人的な)点数 9/10 最近ショックを受けたことがあります。 それは、年々、古典ミステリを読むことが減ってきているということ。 これはいかんと思い、【古典ミステリフ…

  • ㊿兇人邸の殺人 今村昌弘

    ▶あらすじ 廃墟テーマパークにそびえる「兇人邸」。斑目機関の研究資料を探し求めるグループとともに、深夜その奇怪な屋敷に侵入した葉村譲と剣崎比留子を待ち構えていたのは、無慈悲な首切り殺人鬼だった。逃げ惑う狂乱の一夜が明け、同行者が次々と首のない死体となって発見されるなか、比留子が行方不明に。さまざまな思惑を抱えた生存者たちは、この迷路のような屋敷から脱出の道を選べない。さらに、別の殺人者がいる可能性が浮上し・・・。葉村は比留子を見つけ出し、ともに謎を解いて生き延びることができるのか?!「屍人荘の殺人」の衝撃を凌駕するシリーズ第三弾。 (個人的な)点数 8/10 ※ネタバレを含みます。 剣崎比留…

  • ㊾ししりばの家 澤村伊智

    ▶あらすじ おかしいのはこの家か、わたしかー夫の転勤に伴う東京生活に馴染めずにいた果歩は、幼馴染の平岩と再会する。家に招かれ、彼の妻や祖母と交流し癒される果歩だが、平岩邸はどこか変だった。さああという謎の音、部屋に散る砂。しかし平岩は、異常はないと断ずる。一方、平岩邸を監視する1人の男。彼は昔この家に関わったせいで、脳を砂が侵食する感覚に悩まされていた。そんなある日、比嘉琴子という女が彼の元を訪れ・・・? (個人的な)点数 8/10 比嘉シリーズの4作目です。 今回は最強の霊媒師・琴子の物語。 彼女にとって、生き方を変えるきっかけになったししりばという化け物との因縁の対決が繰り広げられます。 …

  • ㊽異端の祝祭 芦花公園

    ▶あらすじ 冴えない就職浪人生・島本笑美。失敗の原因は分かっている。彼女は生きている人間とそうでないものの区別がつかないのだ。ある日、笑美は何故か大手企業・モリヤ食品の青年社長に気に入られ内定を得る。だが研修で見たのは「ケエコオオ」と奇声を上げ這い回る人々だった―。一方、笑美の様子を心配した兄は心霊案件を請け負う佐々木事務所を訪れ・・・。ページを開いた瞬間、貴方はもう「取り込まれて」いる。民俗学カルトホラー! (個人的な)点数 4/10 霊が見えてしまうことで、幼いころから孤独だった笑美は、大企業のモリヤ食品に思いがけず内定します。勤務初日に案内されたのは、体育館のような建物。そこで、行われて…

  • ㊼シャーロック・ホームズの冒険 アーサー・コナン・ドイル

    ▶あらすじ ホームズ物語は、月刊誌「ストランド」に短編が掲載されはじめてから爆発的な人気を得た。ホームズが唯一意識した女性アイリーン・アドラーの登場する「ボヘミアの醜聞」をはじめ、赤毛の男に便宜を図る不思議な団体「赤毛組合」の話、アヘン窟から話が始まる「唇のねじれた男」、ダイイングメッセージもの「まだらの紐」など、最初の短編12編を収録、第1短編集。 (個人的な)点数 8/10 名探偵の代名詞でもあるホームズを、これまでちゃんと読んだことがありませんでした。 中学生の頃、バスカヴィル家の犬を読みたくて、家にあった新潮版を手に取ったのですが、文字の小ささと文章の固さで読み切ることができず。それ以…

  • ㊻凶宅 三津田信三

    ▶あらすじ 山の中腹に建つ家に引っ越してきた、小学4年生の日比乃翔太。周りの家がどれも未完成でうち棄てられていることに厭な感覚を抱くと、暮らし始めて数日後、幼い妹が妙なことを口にする。この山に棲んでいるモノが、部屋に来たというのだ。それ以降、翔太は家の中で真っ黒な影を目撃するようになる。怪異から逃れるため、過去になにが起きたかを調べ始めた翔太は、前の住人の遺した忌まわしい日記を見つけ―。最凶の家ホラー。 (個人的な)点数 6/10 本作は、ホラーにしては珍しく、小学4年生の少年が主人公です。 そのわりには、容赦のない展開で、最後までヒリヒリしながら楽しむことができました。 曰く付きの家に越して…

  • ㊺トマト・ゲーム 皆川博子

    ▶あらすじ 壁に向かってオートバイで全力疾走をする度胸試しのレース、トマト・ゲーム。22年ぶりに再会した男女は若者を唆してゲームに駆り立て、残酷な賭けを始める。背後には封印された過去の悲劇が・・・第70回直木賞候補作の表題作をはじめ、少年院帰りの弟の部屋を盗聴したことが姉を驚愕の犯罪に巻き込む「獣舎のスキャネット」等、ヒリヒリするような青春の愛と狂気が交錯する全8篇を収録。恐怖と奇想に彩られた犯罪小説短編集。 (個人的な)点数 8/10 昨年は耽美派ミステリにドはまりし、皆川さんの作品も色々読みました。 「薔薇忌」「クロコダイル路地」「死の泉」「双頭のバビロン」「開かせていただき光栄です」-…

  • ㊹七人の証人 西村京太郎

    ▶あらすじ 十津川警部は帰宅途中を襲われ、不覚にも誘拐された。彼が気づいたときには、彼は奇怪な無人島にいた。しかもそこには、ある町の一部分がそっくり再現されていたのだ。次々建物から現れる人間は、皆或る事件の目撃者、そしてやがて展開される狂気のシーン。犯人の狙いは何なのか。意欲充満の会心サスペンス長編。 (個人的な)点数 8/10 西村京太郎=トラベルミステリーだと思って敬遠している方は、ぜひ本作を読んでいただきたい! 実は、電車や時刻表が出てこないミステリも書いているんです。 雪山で起こるクローズドサークル殺人を書いた本格ミステリ「殺しの双曲線」は有名ですが、私は本作のほうがおもしろかった! …

  • ㊸予言の島 澤村伊智

    ▶あらすじ 瀬戸内海の霧久井島は、かつて一世を風靡した霊能者・宇津木幽子が最後の予言を残した場所。二十年後<霊魂六つが冥府へ落つる>」という。天宮淳は幼馴染たちと興味本位で島を訪れるが、旅館は「ヒキタの怨霊が下りてくる」という意味不明な理由でキャンセルされていた。そして翌朝、滞在客の一人が遺体で見つかる。しかしこれは悲劇の序章に過ぎなった・・・。全ての謎が解けた時、あなたは必ず絶叫する。傑作ホラーミステリ! (個人的な)点数 6/10 帯に書かれた初読はミステリ、二度目はホラーという言葉に惹かれて購入。 初読はホラー、二度目はミステリは読んだことがありますが、その逆ははじめて。わくわくしなが…

  • ㊷魔界転生 山田風太郎

    ▶あらすじ 島原の乱に敗れ、幕府への復讐を誓う天草川の軍師、森宗意軒は死者再生の秘術「魔界転生」を編み出した。それは、人生に強い不満を抱く比類なき生命力の持ち主を、魂だけ魔物として現世に再誕させる超忍法だった。次々と魔界から甦る最強の武芸者軍団。魔人たちを配下に得た森宗意軒は紀伊大納言頼宣をも引き込み、ついに柳生十兵衛へと魔の手を伸ばす・・・。群を抜く着想と圧倒的スケールで繰り広げられる忍法帖の最高傑作! (個人的な)点数 8/10 天草四郎、荒木又右衛門、宮本武蔵・・・歴史に名を轟かせた7人の男たちが蘇る! 十兵衛3部作の2作目にあたる本作。前作では、終始余裕のみられた十兵衛も、今回はかなり…

  • ㊶などらきの首 澤村伊智

    ▶あらすじ 「などらきさんに首取られんぞ」祖父母の住む地域に伝わるなどらきという化け物。刎ね落とされたその首は洞窟の底に封印され、胴体は首を求めて未だに彷徨っているという。しかし不可能な状態で、首は忽然と消えた。僕は高校の同級生の野崎とともに首消失の謎に挑むが・・・。野崎はじめての事件を描いた表題作に加え、真琴と野崎の出会いや琴子の学生時代などファン必見のエピソード満載、比嘉姉妹シリーズ初の短編集! 個人的な点数 7/10 「ぼぎわんが、来る」「ずうのめ人形」に続く比嘉姉妹シリーズ3作目ですが、シリーズを読んでいない人でも楽しめるホラー短編集だと思います。 どの話も、最後の最後まで油断できま…

  • ㊵沈黙 遠藤周作

    ▶あらすじ 島原の乱が鎮圧されて間もないころ、キリシタン禁制のあくまで厳しい日本に潜入したポルトガル司祭ロドリゴは、日本人信徒たちに加えられる残忍な拷問と悲惨な殉教のうめき声に接して苦悩し、ついに背教の淵に立たされる・・・。神の存在、背教の心理、西洋と日本の思想的断絶など、キリスト信仰の根源的な問題を衝き、<神の沈黙>という永遠の主題に切実な問いを投げかける書下ろし長編。 あなたのために、多くの信徒たちが虐殺された。それなのに、なぜあなたは黙っているのか―。 キリシタン狩りが行われている日本で、司祭のロドリゴは何度も神に問いかけます。 本作は、カトリック教徒である作者によって書かれた、「神の沈…

  • ㊴宿で死ぬ 旅泊ホラー傑作選

    ▶あらすじ ひっそりと佇む老舗の旅館や、どこか懐かしいグランド・ホテルー。非日常に飛び込む旅の疲れを癒し、心やすらぐべき「宿」を舞台としたホラー作品は今も昔も人の心を惹きつけ続ける。その空間に満ちているのは、恐ろしさ、不気味さ、残酷さ、美しさ、そして・・・?「逃亡不可能」な短編を一挙集結!珠玉の傑作アンソロジー。 (個人的な)点数7/10 旅館やホテルが舞台のミステリやホラーが大好きなので、これはたまらんかったです。 旅泊ホラーが全11編収録されているのですが、バリエーションが豊かなので飽きません。 曰く付きの部屋に泊まって怪現象に遭ったり、ホテルそのものが邪悪な意思を持っていたり、宿泊客の中…

  • ㊳悪魔と警視庁 E・C・R・ロラック

    ▶あらすじ 濃霧に包まれた晩秋のロンドン。帰丁途中のマクドナルド首席警部は、深夜の街路で引ったくりから女性を救った後、車を警視庁に置いて帰宅した。翌日、彼は車の後部座席に、悪魔の装束をまとった刺殺死体を発見する。捜査に乗り出したマクドナルドは、同夜老オペラ歌手の車に、ナイフと「ファウストの劫罰」の楽譜が残されていたことを掴む。英国本格黄金期の傑作、本邦初訳。 (個人的な)点数 5/10 ミステリ界には個性の強い探偵や刑事がたくさんいます。 みなさんの推しはだれですか? 私は基本的に、探偵よりもワトソンを好きになりがちなんですが、探偵であれば、学生アリスシリーズの江神さん、京極堂シリーズの榎木津…

  • ミステリガイドブック

    ミステリを読んでみたいけど、何から読めばいいのか分からない・・・ ミステリが好きだけど、有名どころは読んでしまった・・・ そんな方に、わたしが愛用しているミステリガイドブックを紹介します! ①東西ミステリーベスト100 文藝春秋編 日本推理作家協会、各大学のミステリークラブ、ミステリー愛好会SRの会、各地の読書会、国内外のミステリー通、総勢387人のアンケートを元に作られたミステリランキングが載っています。作品ごとにあらすじと簡単な解説もあり、非常に読みやすいです◎ おそらく、ミステリ界において最もメジャーなガイドブックであり、初心者にもマニアにもおススメできる1冊です! ~おススメポイント~…

  • ㊲麦の海に沈む果実 恩田陸

    ▶あらすじ 三月以外の転入生は破滅をもたらすといわれる全寮制の学園。二月最後に日に来た理瀬の心は揺らめく。閉ざされたコンサート会場や湿原から失踪した生徒たち。生徒を集め交霊会を開く校長。図書館から消えたいわくつきの本。理瀬が迷い込んだ「三月の国」の秘密とは?この世の「不思議」でいっぱいの物語。 (個人的な)点数:5/10 湿原に囲まれた孤立した学園で、生徒たちが一人、また一人と殺されていく。 ホグワーツを彷彿とさせる全寮制の学校、忍び寄る霊の影、生徒たちの間で渦巻く疑念と悪意―オカルティックな雰囲気を存分に楽しめる作品だ。 恩田陸さんの小説は、「夜のピクニック」「ドミノ」しか読んだことがなく、…

  • ㊱幻燈辻馬車 山田風太郎

    ▶あらすじ 明治15年。年々文明開化の華やかさを増す東京を行く1台の古ぼけた馬車があった。それを駆るは元会津同心の干潟干兵衛。孫娘のお雛を馭者台の横に乗せて走る姿が話題を呼び、日々さまざまな人物が去来していく。ある日2人は車会党の恨みを買い、壮士らに取り囲まれてしまう。危機に晒されたお雛が「父!」と助けを叫ぶと、なんと無人の辻馬車が音もなく動き出した!そして現れたのは・・・?山風明治ロマネスクの最高傑作。 (個人的な)点数:8/10 朴訥だけれど情に厚い干兵衛と、干兵衛の孫娘のお雛。 干兵衛はささやかながらも穏やかな日々を送りながら、毎日辻馬車を走らせる。しかし、この親子馬車に乗車してくるのは…

  • ㉟鳥 デュ・モーリア傑作集 ダフネ・デュ・モーリア

    ▶あらすじ ある日突然、人間を攻撃しはじめた鳥の群れ。彼らに何が起こったのか?ヒッチコックの映画で有名な表題作をはじめ、恐ろしくも哀切なラヴ・ストーリー「恋人」、奇妙な味わいをもつ怪談「林檎の木」、出産を目前にしながら自殺した女性の心の謎を探偵が追う「動機」など、物語の醍醐味溢れる傑作八編を収録。「レベッカ」と並び代表作と称されるデュ・モーリアの短編集、初の完訳。 〝傑作集〟と謳われているだけあって、どの短編もレベルがバベルの塔並みに高い(?) デュ・モーリア作品は、代表作「レベッカ」と、第2のレベッカと呼ばれている「レイチェル」を読んだことがある。「レベッカ」は言わずもがな、「レイチェル」…

  • アニメ「オッドタクシー」~考察~

    *アニメ「オッドタクシー」についての自分なりの考察です。ネタバレしかないので、ご注意ください。 以下、8話までのネタバレあり。 ●小戸川の病気について これは自分で一から考えたのではなく、別の方の考察を読んだ人から、多くのヒントをもらってたどり着いたものなので、さらっと書きます。 先に結論を言うと、小戸川には「自分も含め人間が動物に見えている」のです。これが彼の病気です。 確かに、動物たちの世界に対し、いくつか違和感はありました。 3話くらいまでみて、登場人物たちが動物である必要はあるの?と思いませんでしたか?名前や行動は人間そのもの、彼らの生活する世界はわたしたちの住む世界と何も変わりありま…

  • アニメ「オッドタクシー」~紹介~

    現在、テレビ東京などで放映されているODDタクシーというアニメをご存じでしょうか?今年の4月に始まったアニメで、アマゾンプライムでみることができます。 あらすじ: 平凡な毎日を送るタクシー運転手・小戸川。身寄りはなく、他人とあまり関わらない、少し偏屈で無口な変わり者。趣味は寝る前に聞く落語と仕事中に聞くラジオ。彼が運ぶのは、どこかクセのある客ばかり。何でもないはずの人々の会話は、やがて失踪した1人の少女へと繋がっていく・・・(一部抜粋) 登場人物はみんな動物です。 動物というと、ふわふわした感じのアニメに思えますが、それは全く違います(笑) まず見た目は可愛くないし、主人公はテンションの低い4…

  • ㉞暗幕のゲルニカ 原田マハ

    ▶あらすじ ニューヨーク、国連本部。イラク攻撃を宣言する米国務長官の背後から、「ゲルニカ」のタペストリーが消えた。MoMAのキュレーター八神瑤子はピカソの名画を巡る陰謀に巻き込まれていく。故国スペイン内戦化に創造した衝撃作に、世紀の画家は何を託したか。ピカソの恋人で写真家のドラ・マールが生きた過去と、瑤子が生きる現代との交錯の中で辿り着く一つの真実。怒濤のアートサスペンス! ▶ネタバレ感想 「楽園のカンヴァス」ではアンリ・ルソー、「たゆたえども沈まず」ではゴッホ、「ジヴェルニーの食卓」では印象派の画家たち、そして「暗幕のゲルニカ」ではピカソ。 原田マハさんのアート小説を読めば、何となくみてき…

  • ㉝ぼっけえ、きょうてえ 岩井志麻子

    ▶あらすじ ―教えられたら旦那さんほんまに寝られるんようになる。・・・この先ずっとな。時は明治。岡山の遊郭で醜い女郎が寝つかれぬ客にぽつり、ぽつりと語り始めた身の上話。残酷で孤独な彼女の人生には、ある秘密が隠されていた・・・。岡山地方の方言で「とても、怖い」という意の表題作ほか三篇。文学界に新境地を切り拓き、日本ホラー小説大賞、山本周五郎賞を受賞した怪奇文学の新古典。 ▶︎ネタバレ感想 岡山地方が舞台のホラー短編集。明治時代の遊郭や、閉鎖的な山村や漁村で起こる怪異が岡山の方言で語られる純和風ホラーである。 さて、それぞれの話には幽霊らしきものや得体のしれない化け物が出てくるが、わたしは怪異より…

  • ㉜黒死荘の殺人 カーター・ディクスン

    ▶あらすじ 曰く付きの屋敷で夜を明かすことにした私が蠟燭の灯りで古の手紙を読み不気味な雰囲気に浸っていた時、突如鳴り響いた鐘―それが事件の幕開けだった。鎖された石室で惨たらしく命を散らした謎多き男。誰が如何にして手を下したのか。幽明の境を往還する事件に秩序をもたらすは陸軍省のマイクロフト、ヘンリ・メリヴェール卿。ディクスン名義屈指の傑作、創元推理文庫に登場。 ▶ネタバレ感想 久々に古典ミステリを読んだ。恥ずかしい話、海外ミステリ(特に古典)は読んだのに内容を忘れてしまっているということが多い。カーも然り。「火刑法廷」「皇帝のかぎ煙草入れ」「ユダの窓」「三つの棺」は既に読んでいるのだがどうしても…

  • ㉛柳生忍法帖 山田風太郎

    ▶あらすじ 会津大名、加藤明成は淫虐の魔王ともいうべき暗君だった。諫言の末、主家を見限った堀主水は妖異凄絶の武術を持つ会津七本槍を差し向けられ、一族郎党を惨殺されてしまう。唯一生き残ったのは、かよわき7人の女。父や夫の仇討ちを誓う女たちは、剣豪・柳生十兵衛の助けを借り、命懸けの特訓を始める。奔放無類な十兵衛も陰ながら援護し、悪鬼のごとき形を討ち果たすべく凄絶な闘いを挑む!十兵衛三部作の記念すべき第一作。 時は寛永。歴史上の人物たちオールキャストで贈る女性の復讐劇!(*以下ネタバレなし) 本作は、大胆不敵な剣術の達人・柳生十兵衛が活躍する柳生三部作の記念すべき一作目だ。といっても、本作の主役は十…

  • ㉚あの日の交換日記 辻堂ゆめ

    ▶あらすじ 先生、聞いて。私は人殺しになります。お願いだから、邪魔しないでね?(教師と児童)私は彼女に合わせる顔がありません。毎日不安でいっぱいです。(上司と部下)交換日記を始めるにあたって、一つだけ、お願いごとがあります。このノートの中でだけ、今まで話してこなかったようなことを振り返ってみる。それって、なんだか素敵じゃないですか?(夫と妻)―さまざまな立場のふたりが繋ぐ七篇の日記が謎を呼び、そしてある真相へ繋がっていく―。 ▶ネタバレ感想 面と向かっては言えないことも、一人で抱え込んだ悩みも、交換日記を通してなら伝えられる。 「先生」が考えた生徒との交換日記は、ある時は支えとなり、ある時は架…

  • ㉙細い赤い糸 飛鳥高

    ▶あらすじ 次々と不可解な連続殺人事件が起こり、被害者のいずれも、鈍器で殴殺されたと推定される。第一犯行現場の唯一の遺留品は「細い赤い糸」。被害者の頭部に付着していた。被害者同士、何の面識もなく犯行動機がつかめない。ただ、手口の類似が同一犯人の犯行を裏付ける。「細い赤い糸」に秘められた殺人の謎を追う本格推理長編。日本推理作家協会賞受賞。 ▶ネタバレ感想 他者への無関心が産んだ悲劇 年齢も性別もバラバラな4人の被害者たちは、彼ら自身理由も分からぬまま突然何者かに殺害される。どうして彼らは殺さなれなければなからなかったのか? 本作のテーマは他者への無関心だ。 他者へ最も無関心になるのは、どんな時だ…

  • ㉘山田風太郎ミステリー傑作選1 <本格篇> 眼中の悪魔 山田風太郎

    ▶収録作品 眼中の悪魔 虚像淫楽 厨子家の悪霊 笛を吹く犯罪 死者の呼び声 墓堀人 恋罪 黄色い下宿人 司祭館の殺人 誰にも出来る殺人 ▶ネタバレ感想 粒揃いの短編集 短編中編をあわせて全10話収録されており、600ページ越えと結構な重量である。どの話も、山田風太郎らしい男女のどろどろした愛憎劇がメインなのだが、それぞれ一捻り技巧が凝らされているのでくどくない。 例えば、自殺しようとしている男の遺書から話が始まり、1人の女性を取り合う2人の男たちの日記が続く【笛を吹く犯罪】。これなんかはずいぶん人を食った作品だが、その思わぬ着地ににんまりしてしまう。 【厨子家の悪霊】は、横溝正史的な禍々しい…

  • ㉗錯迷 堂場瞬一

    ▶あらすじ 神奈川県捜査一課生え抜きエリートの萩原哲郎に突然の異動命令が下された。赴任先は重大事件が希な湘南・鎌倉南署。しかも署長職。実はこの異例人事には密命があった。それは女性前任者の不審死の謎を署長として潜入捜査せよというもの。協力者もなく孤立無援の中、萩原は秘密裏に捜査を始めるが署員たちの口は固く容易に進まない。そんな時、管内で殺人事件が発生。それは過去の未解決殺人事件と繋がっていた・・・。正義を貫くべき警察官たちが頑なに隠蔽していた真実とは一体何なのか。組織トップの孤独と葛藤、渦巻く人間模様を描く堂場瞬一警察小説の到達点。 ▶ネタバレ感想 女性署長の不審死という謎に、怪しい動きをする鎌…

  • ㉖郵便配達は二度ベルを鳴らす ジェイムズ・M・ケイン

    ▶あらすじ 街道沿いのレストランで働き始めた俺は、ギリシャ人店主の美しい妻コーラにすっかり心を奪われてしまった。やがて、いい仲になった彼女と共謀して店主殺害を計画するが・・・。緻密な小説構成の中に、非常な運命に搦めとられる男女の心情を描きこんだ名作。 ▶ネタバレ感想 ハートボイルドとノワール小説 ハートボイルドって聞いたことあるけど、ノワール小説って何だろう?と思う方は多いかもしれない。わたしもその一人だ。本作の解説で諏訪部浩一氏は以下のように述べている。 「ハードボイルド小説」と「ノワール小説」の違いを明確にするのは難しいが、前者が主人公の「キャラクター」に力点を置く作品であるのに対し、後者…

  • ㉕甲賀忍法帖 山田風太郎

    ▶あらすじ 400年来の宿敵として対立してきた甲賀・伊賀の忍法二族。彼らは服部半蔵の約定によって、きわどい均衡を保っていた。だが慶長19年、家康によってついにその手綱が解かれる。三代将軍の選定をめぐる徳川家の紛争を、両里から選ばれた精鋭各10名に代理させようというのだ。秘術の限りを尽くし、凄絶な血華を咲かせる忍者たち。だが、そこには流派を超え、恋し合う2人の名も含まれていた・・・。山風忍法帖の記念すべき第一作! ▶ネタバレ感想 エンターテイメント小説の金字塔!! あらすじを読むと何だか古臭そう、と感じるかもしれない。しかし、本書の魅力は時代をも超える”新しさ”だ。アニメや、映画、漫画化もしてい…

  • ㉔ジヴェルニーの食卓 原田マハ

    ▶あらすじ ジヴェルニーに移り住み、青空の下で庭の風景を描き続けたクロード・モネ。その傍には義理の娘、ブランシェがいた。身を持ち崩したパトロン一家を引き取り、制作を続けた彼の目には何が移っていたのか。(「ジヴェルニーの食卓」)新しい美を求め、時代を切り拓いた芸術家の人生が色鮮やかに蘇る。マティス、ピカソ、ドガ、セザンヌら印象派たちの、葛藤と作品への真摯な姿を描いた四つの物語。 ▶ネタバレ感想 芸術にわかは原田マハ作品を読むべし! 美術館に行くのが好き。作品を語れるほどの知識はないが、有名な画家や作品は分かる。全作品を網羅しているわけではないが、好きな画風の画家がいる・・・。 こういう方に原田さ…

  • ㉓だれもがポオを愛していた 平石貴樹

    ▶あらすじ エドガー・アラン・ポオ終焉の地、米国ボルティモアの郊外で日系人兄妹が住む館が爆破され、泥沼に潰えた。テレビ局にかかった予告電話の通り「アッシャー家の崩壊」さながらに始まった事件は、ほどなく「べレニス」、「黒猫」の見立てに発展、捜査は混迷を呈していく・・・・。オーギュスト・デュパン直系の名探偵がクイーンばりの論理で謎を解く、オールタイムベスト級本格ミステリ。 ▶ネタバレ感想 クイーンの血を引く隠れた傑作! 長年ミステリにアンテナを張っていたわたしですが、恥ずかしながらこのミステリの存在は最近知った。 ポオとクイーンを堪能できる一冊、つまり、ミステリ好きを語るには落としてはならない作品…

  • ㉒ラスプーチンが来た 山田風太郎

    ▶あらすじ 日露戦争中、ロシアの内乱を企て日本を勝利に導いた男、怪男児明石元二郎の若き日の物語。明治23年、ひそかに来日し暗躍していた怪僧ラスプーチン。彼はロシア皇太子襲撃を画策していた!?チェーホフ、二葉亭四迷、乃木希典、森鴎外までをも巻き込んで日本とロシアの大怪物の対決は続く。 ▶ネタバレ感想 ラスプーチンって何者?? まずはじめに。 このネタバレを読んでいる方には不要だと思うのだが、ラスプーチンって誰?という方に、説明しよう。 のちにロシア革命で虐殺されるロシア皇帝のニコライ2世と皇后の間には、後継ぎとなる男の子がなかなか生まれなかった。(女の子は4人いて、そのうち末娘が世界のミステリー…

  • ㉑たゆたえども沈まず 原田マハ

    ▶あらすじ 19世紀後半、栄華を極めるパリの美術界。画商・林忠正は助手の重吉と共に流暢な仏語で浮世絵を売り込んでいった。野心溢れる彼らの前に現れたのは日本に憧れる無名画家のゴッホと、兄を献身的に支える画商のテオ。その奇跡の出会いが"世界を変える一枚”を生んだ。読み始めたら止まらない、孤高の男たちの矜持と愛が深く胸を打つアート・フィクション。 ▶ネタバレ感想 アンリ・ルソーにスポットをあてた「楽園のカンヴァス」が良かったので、今回はこちらの作品を読んでみた。 正直、ゴッホは特別好きな画家でもないし、耳を切り落としたことや自殺したという有名なエピソード以外はほとんど知らない。彼の絵も、ひまわり、種…

  • ⑳依頼人は死んだ 若竹七海

    ▶あらすじ 念願の詩集を出版し順風満帆だった婚約者の突然の自殺に苦しむ相場みのり。検診を受けていないのに送られてきたガンの通知に当惑する佐藤まどか。決して手加減をしない女探偵・葉村晶に持ち込まれる様々な事件の真相は、少し切なく、少しこわい。構成の妙、トリッキーなエンディングが鮮やかな連作短編集。 ▶ネタバレ感想 葉村シリーズっていやあな気持ちになるんです。 もう読みたくないって思う。 それなのに、しばらく経つと手をのばしちゃう中毒性がある。 ショッキングな描写とか、ごみくずみたいな最低人間が出てくるわけじゃない。 ありふれた小さな悪意のお話。読み進めていくごとに、毒素がじわじわ沁みてくる感じで…

  • ⑲荊の城 サラ・ウォーターズ

    ▶あらすじ スウが侍女として入ったのは、俗世間とは隔絶した辺鄙な地に立つ城館。そこに住むのは、スウが世話をする令嬢、モード。それに、彼女の伯父と使用人たち。訪ねてくる者と言えば、伯父の年老いた友人たちだけという屋敷で、同い年のスウとモードが親しくなっていくのは当然だった。たとえその背後で、冷酷な計画を進めていようとも。計画の行方は?二人を待ち受ける運命とは? ▶ネタバレ感想 少女たちの愛憎劇 初のサラ・ウォーターズ。 あらすじからは予想もしない展開が続き、ページをめくる手が止まらず。 さながら、両手をとってワルツを教えてあげていたらいつの間にかこちらが導かれ振り回されていたというような・・・。…

  • ⑱蒼海館の殺人 阿津川辰海

    ▶あらすじ 学校に来なくなった「名探偵」の葛城に会うため、僕はY村の青海館を訪れた。政治家の父と学者の母、弁護士にモデル。名士ばかりの葛城の家族に明るく歓待され夜を迎えるが、激しい雨が降り続くなか連続殺人の幕が上がる。刻々とせまる洪水、増える死体、過去に囚われたままの名探偵、それでも―夜は明ける。新鋭の最高到達地点はここに、精美にして極上の本格ミステリ。 ▶ネタバレ感想 タイムリミット探偵、モラトリアムを超えて 前回は山火事、今回は洪水― 死が差し迫る危機的状況の中で推理する葛城のことを勝手ながらタイムリミット探偵と呼ばせていただく(笑) 紅蓮館での出来事から、探偵としての存在意義を見失い、推…

  • ⑰見えないグリーン ジョン・スラデック

    ▶あらすじ ミステリ好きの集まり<素人探偵会>が35年ぶりに再会を期した途端、メンバーのひとりである老人が不審な死を遂げた。現場はトイレという密室―名探偵サッカレイ・フィンの推理を嘲笑うかのように、姿なき殺人鬼がメンバーたちを次々と襲う。あらゆるジャンルとタブーを超越したSF・ミステリ界随一の奇才が密室不可能犯罪に真っ向勝負!本格ファンをうならせる奇想天外なトリックとは? ▶ネタバレ感想 荒っぽい部分もあるが技巧が光る 正直、トイレの中でゴムボードを膨らまして殺したという第1の事件のトリックはバカミスすれすれだし、犯人の行動が高いリスクを伴う割に必要性が乏しく、はたしてそんな危険な橋を渡る必要…

  • ⑯出雲伝説7/8の殺人 島田荘司

    ▶あらすじ 山陰地方を走る六つのローカル線と大阪駅に、流れ着いた女性のバラバラ死体!なぜか首はついに発見されなかった。操作の結果、殺された女は死亡推定時刻に「出雲1号」に乗車していたらしい・・・。休暇で故郷に帰っていた捜査一課の吉敷竹史は、偶然にもこの狂気の犯罪の渦中に・・・。好評、本格トラベル・ミステリーの力作! ▶ネタバレ感想 時刻表トリックは眺めているだけじゃ解けない。 ”もう一つの占星術殺人事件”と言われている本作だが、メインは時刻表トリックだ。 正直、時刻表トリック=地味なイメージがあったけれど、この作品を読んでなかなか奥深いことに気づいた。 時刻表トリック好きの方には「何を当たり前…

  • ⑮狩人の悪夢 有栖川有栖

    ▶あらすじ 人気ホラー小説家・白布施に誘われ、ミステリ作家の有栖川有栖は、京都・亀岡にある彼の家、「夢守荘」を訪問することに。そこには「眠ると必ず悪夢を見る部屋」があるという。しかし有栖が部屋に泊まった翌日、白布施のアシスタントがかつて住んでいた家で、右手首のない女性の死体が発見されて・・・・。「俺が撃つのは、人間だけだ」臨床犯罪学者火村英生と相棒のミステリ作家アリスが、悪夢のような事件の謎を解く傑作長編!! ▶ネタバレ感想 実は悪夢はあまり関係ない?? あらすじにある“必ず悪夢を見る部屋”というのが気になって読み始めたのだが、ほとんど関係なかった(笑) 悪夢がキーワードな割には、あまり事件の…

  • ⑭UFO大通り 島田荘司

    ▶あらすじ 鎌倉の自宅で、異様な姿で死んでいる男が発見された。白いシーツを体にぐるぐる巻き、ヘルメットとゴム手袋という重装備。同じ頃、御手洗潔は、この男の近所に住むラク婆さんの家の前を、UFOが行き交うことを聞き及ぶ。果たして御手洗の推理とはいかに!?「遠隔推理」が冴える、中編「傘を折る女」も収録。 ▶ネタバレ感想 御手洗シリーズは事件が騙し絵になっている! これはめちゃくちゃ個人的な感想なんだけど、御手洗シリーズって、事件が騙し絵みたいなんだよな。 普通の人間の犯行なんだけど、様々な要因で人間技とは思えない不思議な力が働いているように見える。 騙し絵をすぐに見抜ける人って、直観力と洞察力に優…

  • ⑬偽のデュー警部 ピーター・ラヴセイ

    ▶あらすじ 花屋の店員の恋の相手は歯科医だった。歯科医の妻は女優で、彼女は喜劇王チャップリンを頼ってアメリカに渡ると言い出した。二人の恋を実らせるには、この妻を豪華客船上から海へ突き落すことだ。偽名を使い、完全犯罪を胸に乗船した二人だったが・・・やがて起こった意外な殺人に、船上に登場した偽の鳴警部が調査を開始する。英国推理作家協会賞ゴールド・ダガー受賞。本格ミステリ黄金時代の香り豊かな新趣向の傑作! ▶ネタバレ感想 犯人が探偵役を演じることになる滑稽な展開。 本来クリッペン博士の立場であった彼が、デュー警部を演じることになるなんて。 別人ですよって言えばいいのに、つい引き受けちゃうウォルター。…

  • ⑫魔神の遊戯 島田荘司

    ▶あらすじ ネス湖畔の寒村ティモシーで、突如として発生した凄惨な連続バラバラ殺人。空にオーロラが踊り、魔神の咆哮が大地を揺るがすなか、ひきちぎられた人体の一部が、ひとつ、またひとつと発見される。犯人は旧約聖書に描かれた殺戮の魔神なのか?名探偵・御手洗潔の推理がもたらす衝撃と感動・・・。ロマン溢れる本格ミステリー巨篇。 島田さんの作品の魅力は何と言ってもスケールの大きさ! 謎を解く御手洗さんもすごいけど、謎を作ってる島田さんってもっとすごいよなといつも感心してしまう。風呂敷を広げすぎちゃって、たまにファンタジーの域にはいるんだけど、それでも普通の人間による犯行なのだからすごい。 あらすじを見ると…

  • ⑪孤島の来訪者 方丈貴恵

    *ネタバレです。 「時空旅行者の砂時計」の続編で、今回は加茂が救った竜泉一族の子孫が主人公。 前回はタイムトラベル×ミステリということで、まだ馴染みのある組み合わせだったが、今回の特殊設定はかなり攻めている。 喰らった生き物に擬態する能力を持つマレヒトという謎の生命体。孤島に集まった番組制作会社の一団の一人が猫に擬態したマレヒトに殺されたことを皮切りに、次々と殺人事件が起こっていく。誰がマレヒトに擬態されているのかを探っていくストーリー。 ・・・いやあ、これは「屍人荘の殺人」ばりの特殊レベル(笑) 黒猫が犯人だと言い出したときは急すぎる方向転換に振り落とされてしまったけれど、読者への挑戦状付き…

  • ⑩ジョン・ブラウンの死体 E・C・R・ロラック

    *ネタバレです。 全く前知識を持たずに読んだけれど、これはおすすめ! 社会的地位が低く忌み嫌われる浮浪者のありえない証言を調査し、隠された殺人を暴くという設定が何だか好きだ。 ブラウンが遭遇した死体遺棄事件と、人気作家の剽窃疑惑事件がきれいに繋がっていくプロットも見事。 海外ミステリ、しかもイギリスの古典とくれば読みにくいんじゃないの?と思いきや、驚くほどするする読める。事件自体はどちらかといえば地味で、探偵役のマクドナルド警部が聞き込みをしながら真相を追うという退屈しそうなストーリーだが、登場人物の一人が犯人に襲われたり、思いもがけない人が途中で登場したり、ストーリーに起伏があるのでダレない…

  • ⑨時空旅行者の砂時計 方丈貴恵

    *ネタバレです。 タイムトラベル×ミステリの特殊設定でありながら、呪われた一族、孤立した館、密室、見立殺人とミステリ好きにはたまらないガジェットがふんだんに盛り込まれている。 こういうベタな設定大好き!! 変化球もいいけれど、これぞミステリの系譜というべきベタベタな設定が本当に愛おしいし、それを書いている作者にも親しみを感じる。 さらに読者への挑戦付きだったので、久々にメモをとりながら本気で挑戦! その結果は・・・ 一つ目の事件と密室の謎は完全に解けた!! いやあ、中々健闘したのではないでしょうか。探偵にはなれなかったがワトソン君としては有能なほうではなかろうか。 事件を一つずつ振り返りましょ…

  • ⑧ベーシックインカム 井上真偽

    *ネタバレです。 作者の井上真偽と言えば、「その可能性はすでに考えた」で新たな世界を見せてくれた次世代ミステリの作家さん。 ベーシックインカムは、経済本のようなタイトルだが、テクノロジーの発達した未来を舞台にしたSFミステリ短編集。そのせいか購入した本はちょっと近未来ぽい?珍しい装丁だった(笑) どの短編もテクノロジーが発展した世界での問題や希望が謎を通して描かれていて良粒◎ 特に「もう一度、君と」と「目に見えない愛情」が良かった。 「もう一度、君と」はVRにハマっていた妻が突然失踪し、残された夫は妻を探すため、妻が失踪直前にみていた怪談系VRの世界へ飛び込み手がかりを探していくというストーリ…

  • ⑦天使の殺人 辻真先

    *ネタバレを含みます。 作者の辻真先さんは、「たかが殺人じゃないか」で2021年度このミス1位をとっている。なんと御年88歳だとか。恐れ入りながら著作を知らなかったので、調べてみたところ、別名義=牧薩次(辻真先のアナグラムだ!)で「完全恋愛」を書かれていた。 今回は、実際に舞台で上演された「天使の殺人(完全版)」を購入。 これ、完全版ということで、本編と戯曲版が収められていて、本編が小説版天使の殺人、戯曲版は実際上演されたものの準備稿である。なので、あらすじ以外はまったく違う内容なのだが、前知識の全くなかった私は本編と戯曲版をあわせて1つの内容だと思って読んでしまったので混乱した。勿体ない! …

  • ⑥人間の顔は食べづらい 白井智之

    *ネタバレを含みます。 食用クローン人間が売買される時代のSFミステリ。 新型コロナウイルスが流行り、家畜の感染により肉食をやめた人間たち。その結果、子どもの危機的な栄養不足という社会問題が起こり、その解決策として可決された法案が食人法である。 しかし、クローン人間は高額なため、買えるのは一部の富裕層のみ。金持ちの趣味の悪い娯楽としか機能していないから不愉快だ。 また主人公?でもある柴田が本当にクズすぎる。チー坊というクローン人間を地下室で違法に飼っているのだが、暴力を振るうのは日常茶飯事。さらにわざとなのか無神経なのかは不明だが、チー坊に本や新聞を与えるという鬼畜の所業。 結局、知識を与える…

  • ⑤Another 綾辻行人

    *ネタバレを含みます。 Anotherを初めて読んだのは、ちょうど10年くらい前だ。 当時、漫画化・アニメ化と世間はAnotherフィーバーだったのを覚えている。館シリーズで新本格の入り口に立ったばかりのわたしは、Anotherこそが綾辻さんの代表作だと言われているようで気に入らず、端的に言うとアンチAnother派だった。昨年、Another2001が発売されたということで、復習しようと思い再読した。朧げに覚えていたのは、階段から落ちたクラスメイトが悲惨な死に方をすること、死者が三神先生だったこと。クラスに死者が紛れており、クラス関係者が次々死んでいくという設定は再読でも十分ハラハラした。3…

  • ④ラグナロク洞 霧舎巧

    *ネタバレを含みます。 お気に入りの<あかずの扉>研究会シリーズ3作目。 このシリーズは、鳴海さんと後動さんと2人の探偵が出てくるが、私は鳴海さん推しだ。 作中でカケルが「今の鳴海さんの推理は―(省略)―決して瑕疵のない唯一無二の回答というわけではない。―(省略)―だが、それを言いきってしまえるのが鳴海さんだし、そういうはったりにも似た推理が見事に的中してしまう人物こそが、名探偵なのだとぼくは思う」と鳴海さんを評していた。推理力では後動さんのほうが上なのかもしれないが、私はカケルと同様に、鳴海さんの名探偵であろうとする姿勢、名探偵の誇りを持っているところが好きだ。 今回の作品は、館の仕掛け、密…

  • ③キングを探せ 法月綸太郎

    *ネタバレを含みます。 タイトルが秀逸である。この作品はタイトル自体にトラップが仕掛けられているのだ。 最初に犯人視点で計画のあらましを描くことで、読者はある程度の真相をあらかじめ知ることになる。しかし、りさぴょんとカネゴンの対象(殺してほしい相手)は明示されておらず自分で考えなくてはいけない。 この時点では、JとX(としておく)の対象は、J=りさぴょん・X=カネゴンでもJ=カネゴン・X=りさぴょんどちらでも当てはまる。それが確定するのは、3番目に殺されたジョウシマがりさぴょんの兄だと分かったときだ。この時、残りのカードをKだと思い込んでいると、当然ジョウシマはJであるから、J=りさぴょん・K…

  • ②あいにくの雨で 麻耶雄嵩

    *ネタバレを含みます。 解説で千街さんが書かれているように、麻耶雄嵩は破壊者だ。「翼ある闇」や「夏と冬の奏鳴曲」でこてんぱんにされた読者は分かると思う(笑) 千街さん曰く、ミステリというのは事件の解決とともに救済がもたらされ、非日常から日常に戻ってこられるのだが、麻耶雄嵩は強烈な真相を提示することで、登場人物たちの世界を破壊してしまうのだそうだ。 しかし、この作品は、世界を壊されるような衝撃はない。 夏と冬の奏鳴曲などが破壊される物語だとするならば、この作品は腐敗していく物語かもしれない。 というのも、この作品にはピリオドが打たれていないからだ。 ミステリにおいて、ピリオドというのは登場人物に…

  • ①ナイン・テイラーズ ドロシー・L・セイヤーズ

    *ネタバレを含みます。 2021年の初読みはナイン・テイラーズ。 意図せず大晦日から読み始めたけれど、この作品を読むには、365日中一番ふさわしい日だった。 この作品の主人公である鐘については、説明があるものの縁がなさすぎて、仕組みや歴史などいまいち分からなかった。挿絵があれば分かりやすかったかもしれない。 だけど、縛られた人間が、9時間もの間(いつこと切れたは不明だが)鐘の轟音のもとに放置されていたらどうなるかは想像に容易い。拷問でも音楽を大音量で聞かせるというのがあるけれど、それのレベルマックスである。 この作品は読み終えたあと、どこか薄気味悪さを残す。この落ち着かない薄気味悪さはきっと、…

  • 6月の一口忘備録☔️

    ※ネタバレを含みます。①天使の囀り 貴志祐介 心底気持ち悪かった。アマゾンの奥地に発生していた未知の寄生虫に調査隊の1人が感染してしまう。寄生されると人はそれぞれが忌避するものに対する恐怖や危機感を失い命を落とす。 寄生虫の描写の気持ち悪さと言ったら。銭湯で大勢が喰い殺されているシーンなど悲惨や悲惨。 細菌パニックならぬ寄生虫パニックは目新しかった。 ②アリス殺し 小林泰三 メルヘンシリーズの一作目!小林泰三といえば玩具修理者と大きな家の小さな密室しか読んだことないのだけど、めちゃくちゃ癖のある作家さんだと思ってる。最初は序盤の屁理屈揚げ足取りの応酬に辟易したけど、慣れると中々おもしろい。 た…

  • 【幽霊の2/3】ヘレン・マクロイ

    *ネタバレを含みます。 マクロイの傑作の1つと言われている本作。 マクロイを語れるほど読んでおらず、またマクロイの魅力を十分とらえられていないので、いまいちどのあたりが傑作なのか分からなかった。(ごめんなさい) この時代にこういう作品がでたことへの評価とかはその時代に詳しくないのでわからない。これまでにないタイプだったかもしれないけど、それもわからない。 何点か特徴的だった点を挙げる。 ①タイトルのダブルミーニング 幽霊の2/3というゲームと、3人のゴーストライター。結構これは際どいタイトルである。わたしは気づかなったけれど、作家が殺されたといえば、まず考えるのはゴーストライターの存在だ。タ…

  • 【名探偵の証明】市川哲也

    *ネタバレを含みます このミステリにおいては事件はもはや脇役だ。名探偵の栄光と没落の物語である。 かつては一世を風靡した名探偵・屋敷啓次郎は、今では世間に忘れられ家賃も払えない哀れな姿に。 歳をとるにつれて推理力が鈍っていく恐怖や、名探偵ゆえに事件を呼び寄せてしまう苦悩などが綴られる。 この物語では、名探偵の受ける風評をシビアに描く。 探偵というのは事件を呼び寄せる。テレビや新聞に取り沙汰される名探偵レベルにもなると、探偵に挑戦するために犯罪を起こす人間がでてくる。ゆえに探偵は疫病神だとして、一部の者に厭われ憎まれ、最終的に啓次郎は刺し殺されてしまった。 いやはや何というバッドエンド。この理論…

  • 【湿地】アーナルデュル・インドリダンソン

    *ネタバレを含みます 本作はアイスランドミステリである。 アイスランドでは、単純で杜撰で行き当たりばったりな犯罪が多いらしく、複雑に入り組んだ事件などは少ないらしい。そのため、その複雑さこそ醍醐味であるミステリという文化はあまり流行らなかったそうだ。 そんな中、アイスランドでミステリブームの火付け役となったのがこのエーレンデュル警部シリーズである。 多くの感想に「まさに湿地のような作品」とある通り、この本はじめじめして鬱々しており、非常に重たい。なにしろキーワードは強姦と遺伝子疾患である。 わたしがこの作品で唸ったのは、ミステリでよく挙げられる謎の1つ「なぜ殺人が起こったのが今なのか」に対して…

  • ミステリとは

    わたしはミステリが好きである。 ミステリと一口に言っても、日常の謎から、血みどろな惨劇まであらゆる種類があるけれども、やはり人が人を殺すミステリが好きである。 「tamaの読む本は殺人ばっかりで怖い」と両親や友人によく言われる。 殺人事件を扱う本がめちゃくちゃに好きというのは、確かに一見気味が悪いものかもしれない。 自分でも長年不思議であった。特にサイコパス味があるわけでも、とりわけ好奇心旺盛でもない自分がなぜこれだけ殺人を扱うミステリに惹かれるのか。自分には隠れた残虐性があるのかと悩んだこともあった。 わたしを長年悩ませてきた謎の答えもまた、ミステリの中にあったのだ。 わたしの大好きなミステ…

arrow_drop_down

ブログリーダー」を活用して、たまさんさんをフォローしませんか?

ハンドル名
たまさんさん
ブログタイトル
tamaログ
フォロー
tamaログ

にほんブログ村 カテゴリー一覧

商用