ヴーヴレー散策01/ロワール川散歩#20
Les Hautes Roches の朝食のテーブルには、僕一人しかいなかった。 席につくと、若いガルソンが静かにコーヒーを運んできた。窓の外には朝の光が淡く輝いていた。 テーブルには、柔らかく焼かれたパン・ド・カンパーニュと、地元の蜂蜜、そしてほのかに酸味を帯びた手作りのヨーグルト。静けさの中に、ひと匙の贅沢が差し出されていた。 地元産だろうか、香り豊かなバターをパンに載せていると、後ろに気配を感じた。傍に、コンシェルジュが立った。年配だが、どこか若々しい笑顔をたたえた男性だった。 「おはようございます。ムッシュ。ソムリエからお預かりしておりましたものがございます」 そう言って差し出
2025/06/04 23:44