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勝鬨美樹
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2020/12/27

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  • ヴーヴレー散策01/ロワール川散歩#20

    Les Hautes Roches の朝食のテーブルには、僕一人しかいなかった。 席につくと、若いガルソンが静かにコーヒーを運んできた。窓の外には朝の光が淡く輝いていた。 テーブルには、柔らかく焼かれたパン・ド・カンパーニュと、地元の蜂蜜、そしてほのかに酸味を帯びた手作りのヨーグルト。静けさの中に、ひと匙の贅沢が差し出されていた。 地元産だろうか、香り豊かなバターをパンに載せていると、後ろに気配を感じた。傍に、コンシェルジュが立った。年配だが、どこか若々しい笑顔をたたえた男性だった。 「おはようございます。ムッシュ。ソムリエからお預かりしておりましたものがございます」 そう言って差し出

  • ホテル・レ・オート・ロシュ02/ロワール川散歩#19

    夕方7時少し前に、僕は階段を降り、ダイニングへ向かった。Les Hautes Rochesのダイニングは、まさしく「石の聖堂」だった。壁も天井も、柔らかく削られたトゥフォー石。照明は控えめで、まるでロウソクのように揺れていた。音が吸い込まれ、言葉を慎むような空間だった。客は僕を入れて三組だった。 テーブルに通され、着席してしばらくしてから、年配のソムリエが現れた。黒いスーツに蝶ネクタイ。声は低く、抑制された調子だった。 「アペリティフに、地元のスパークリングはいかがでしょうか?」 僕は頷いた。 選ばれたのは、Domaine Vigneau-Chevreauのヴーヴレ・ブリュット。ビオデ

  • ホテル・レ・オート・ロシュ01/ロワール川散歩#18

    セラーを後にしたとき、太陽は少し傾いていた。 遅い午後の光は柔らかく、川沿いの風がほんの少し冷たくなっていた。 僕はそのまま、ヴォフォイナール通りを東へ向かって歩いた。川べりの車道へ歩いて戻ることにした。目的地は、今夜の宿となるLes Hautes Roches(レ・オート・ロシュ)。ヴーヴレの崖に張りつくように建てられた、洞窟ホテルだ。 ロワール川を前方に見ながら、足元の小道をゆっくりと進む。畑の間を抜けると、ロワールの川面が広がった。川向こうには、石の建物がいくつか見える。川の音はしない、風だけが耳元を通っていく。 やがて、崖の中腹に白い石のファサードが見えてきた。Les Hau

  • きざみ終え 静かに坐せる みほとけは 目を待ちわびて いのちを乞いぬ

    ときおり「どちらへ行かれたことがありますか?」と尋ねられることがあります。 そんなとき、僕はむしろこう聞かれたいと思うのです「どちらには、行かなかったのですか?」と。 というのも、過去五十年という歳月のあいだ、僕はまるで風に押し出されるように、世界を彷徨い続けてきました。けっして計画的な旅ではなく、むしろ場所に呼ばれ、意味に導かれるような移動でした。 そして多くの人がこう言います。 「いろいろな文化をご覧になれて、よかったですね」と。 もちろん、それは善意からの言葉です。けれども、どこか僕の実感とは少しずれているのです。 僕が求めていたのは「形」ではありませんでした。 華やかな建築や、

  • ラグランジュ点文明の台頭

    僕が50年間ずっと語り続けてきたことがあります。 それは、人類は今世紀中に、生産拠点をラグランジュ点へと移行させるという確信です。 この話をすると、笑う人と夢中になって話に乗って聞くる人がいる。 僕が、お付き合いの程度を考える里程標が・・じつは「ラグランジュ点文明」の話なんです。(笑) 少しそんな話をします。 産業革命以降、人類は地表を拠点にあらゆるものを築いてきました。農地、工場、鉱山、都市、そして巨大なロジスティクス・ネットワーク。 しかし、この「地表依存型文明」には致命的な限界がある。まず第一に、物理的空間の制約です。都市部では土地の価格が天井知らずに高騰し、工業地帯は公害やエ

  • 安価に大量の人を殺せる機械を作る人々#02

    ウクライナによるロシア本土へのドローン攻撃は、戦争の歴史における新たな転換点となりました。従来の軍事戦略や抑止理論では想定されなかった戦術が、実戦において現実の脅威として姿を現しつつあります。特に今回の攻撃で注目されたのは、トラクタートレーラーに搭載されたコンテナから数百機の自爆型ドローンを一斉に発射し、ロシア国内1000キロ以上の範囲にわたって複数の空軍基地を襲撃したという点です。 Ukraine just mounted an attack that marks a turning point in the history of warfare Hundreds of dro

  • 安価でハイテクな人殺しの機械を作る人たち

    かつて、山の中でライフルを手に戦ったゲリラたちは、国家という巨大な存在に対抗するため、自らの命を差し出して戦うしかありませんでした。しかし今、ウクライナの空を飛ぶのは兵士ではなく、群れを成した無数の小さなドローンたちです。彼らには感情も、疲労もありません。ただ、人工知能によって与えられた目標に向かって、同時に、効率的に、正確に動くのです。 2025年6月、ウクライナ軍が実行した「スパイダーウェブ作戦」は、まさにそのような新しい戦いの象徴でした。いわば、それは現代の「低コストで人命を消耗しないゲリラ戦」だったとも言えます。 Will Russia’s Retaliation T

  • 現在のウクライナ政権が、アメリカの軍産複合体やNATO内の一部勢力、いわゆる「ディープステート」の意向に強く従属している事実

    Deprcon Warning Nuclear threat (Free) gnseconomics.substack.com 2025年6月初旬に起きたロシアへのいわゆる「核の三本柱」への攻撃は、特に危険な転換点であると考えられます。大陸間弾道ミサイル基地、潜水艦基地、そして戦略爆撃機部隊はいずれも、冷戦期以来、相互確証破壊(MAD)という抑止論理を支える中核であり、これらを標的にした攻撃は通常戦争の枠組みを超え、戦略核ドクトリンに抵触する行為と言えます。 Deprcon Warning Nuclear threat (Free) gnsec

  • 通貨・国家・格付け: アメリカと世界が向かう「次の形」 Kindle版

    世界秩序が静かに崩れ、あらたに編み直されつつある時代を読む 通貨・国家・格付け: アメリカと世界が向かう「次の形」 www.amazon.co.jp 300円 (2025年06月02日 08:56時点 詳しくはこちら) Amazon.co.jpで購入する ドルはいつまで「世界の通貨」であり続けるのか。 アメリカは、借金漬けの財政構造を放置したまま、その通貨への信認を維持できるのか。 そして「国家」という概念は、分断と統合を繰り返す世界のなかで、なお有効な枠組みであり得るのか。 本書はこうした問いに対し、経済だけで

  • ドメーヌ・ブーリヨン=ドルレアン02/ロワール川散歩#17

    このロワール特有のやわらかな石は、建築材としても用いられるが、同時に優れた保湿性と断熱性をもち、こうしてワインの熟成に理想的な環境をつくってくれる。 足元は湿った砂利。壁にはほの暗いランタンが灯り、天井のアーチが重なる静かな奥行きを照らしていた。 セラーは迷路のように枝分かれしていて、右手には瓶熟成用の横穴が伸び、数千本のボトルが眠っていた。左にはオーク樽の並ぶ空間があった。 「この辺りは、中世には修道士の隠れ礼拝堂としても使われていたそうです」 案内役の青年の言葉に僕は立ち止まり、天井に浮かぶ微かな苔の線を見つめた。 この石の壁は、祈りも、労働も、沈黙も、すべて記憶している。 壁を手

  • ドメーヌ・ブーリヨン=ドルレアン01/ロワール川散歩#16

    食事の時にTAXIの手配を頼めるかどうか聞いてみた。店主は快諾してくれた。 「どこまで?」 「ヴーヴレのDomaine Bourillon-Dorléanまで。14時に予約してある」 「すぐに来るよ。でも食事は急がなくていいよ」と彼は笑いながら言った。 食事の時に、ふと思い出してタクシーの手配を頼めるかと店主に声をかけた。 彼はすぐに「もちろん」と頷いたあと、ナプキンを手にとって言った。 たしかに、急ぐには惜しい食事だった。 窓に光がゆっくりとカーテンをなぞって落ちていた。そしてグラスに注がれたVouvray Secにその影が揺らいでいた。それでも店の前に、らしき白い小型のタクシーが着

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