玉ねぎの皮をむきながら語る作家として成功するまでの軌跡
読み終わったばかりの本です。ノーベル賞受賞作家でもあるギュンター・グラスの自伝『玉ねぎの皮をむきながら』。 まさに玉ねぎの皮を一枚一枚むくようにして、グラス自身の記憶の層を少しずつめくりめくり子供時代から作家としてデビューするまでを語ります。自伝という位置づけにはなっていますが、本の中で自分のことを「彼」とか「この彫刻家は」(グラスは作家でもあり彫刻家でもあります)とか三人称で呼び、自分自身の人生を他者として観察しているかのように描写しています。 ですのでいわゆる自伝、私はこんな少年だった、少女だった、私はこう思ってこう決断した、なんていう単調なものではなく、物語を読んでいるかのような面白い読…
2020/10/03 01:37