前々回はネパールの、そして前回は古代の丸木舟について見たので、今回は現代の丸木舟を見てみよう。とはいっても、まわりには現役の丸木舟が見られないため、展示に限ったものなのですが。 ● アイヌの丸木舟と川漁 / 北海道博物館 2015年撮影(2015年に改称された) この年(2015)から博物館の名称も旧北海道開拓記念館より北海道博物館と改称され。アイヌに関する展示が一新し、アイヌへの教育普及の上でもより親しみやす...
古びたモノが好きです。日常の捕って付けたようなモノ・コトの紹介です。
どこか昭和を感じさせる生活道具や民具が好きです。”雑閑”では日々の雑記・展覧会・読書・映画・フリマ・骨董市などでの感想を、”モノがたり”では部屋のガラクタを、”一枚の写真”では昔の旅写真などを載せています。つたないモノコトの紹介ですがお愉しみください!
● ランタン 径74×高さ145ミリままごと遊び的な小さな道具がけっこう好きだ。このランタンも普通のものの半分以下となんとも小さい。各々の部品が簡素につくられ、火屋のガラスには型仕上げのバリがしっかり残されてはいるけれど、その下部には一条の波文様の装飾がみられ、おもちゃのような遊び心に富んでいる。照明具の技術進化はめざましく、ランタンもLEDのものが進出してずいぶん幅を効かせている。そちらは灯りの色味や照...
● 鉗子 長さ245×83ミリいったい何に使うのだろう、一緒くたに放出された古い医療器具のなかより、こんな鉗子を選んでみた。ハサミが身体に接する部分は、あたりを和らげるために動物の骨材らしきものが貼り合わせている。金属との剥離を押さえるように鋲止めも加えた念のいれようだ。そして噛み合わせはがっちりと、斜めに無数の切れ込みがはいっている。さらに握りはラチェット構造となっており、手の力を緩めてもしっかりと...
● 編み袋 幅260×高さ280ミリ秩父あたりのものという、この小さな編み袋は、野良や山仕事のさいに弁当でも詰めて、ナップサックのように負ったものでしょうか。運搬に際し網状の形状は、背中に適度に密着し、通風性に優れて汗もおさえられよくできたつくりです。使われている素材は定かではないですが。秩父地方には「スカリ」とよぶ、これとよく似た編み袋があります。そちらの材はイワスゲの縄で仕上げます。秋に採集されるイワ...
本日2月19日は先述したとおり、上岡馬頭観音での絵馬市だったのですが、やはり今年も伺えずに残念無念。 ● 住吉人形・神馬 70×25×高さ50ミリということで、馬繋がりで家にあったこんな小さな馬の土人形の紹介です。大阪の住吉人形には、福徳にあやかり年毎に増していく招き猫形の「初辰さん」、猿が小山となった「千疋猿」、そしてなんとも悩ましい表情をした「睦犬」などの動物もの、また風俗人形の「子守り」、「裸雛」など一風変わった...
● 上岡馬頭観音縁日 埼玉県東松山市/ 諏訪山妙安寺 2019年撮影2月19日といえば、関東で唯一残る絵馬市といわれる、東松山・上岡馬頭観音の縁日を思いだす。ここでは馬頭観世音菩薩の霊験にあやかり、かっては農耕・使役動物の花形とされた馬の7頭仕立ての飾り馬の絵馬『ツナ』が有名である。絵馬市では、馬以外にも牛、豚(東松山は焼トンで有名)などの家畜の図柄の絵馬が多く並び、近郊の農家の...
● たこ焼き器 182×150×高さ25ミリ粉もの文化圏の関西では、一家に一台たこ焼き器があると聞き驚かされる。小体な9個仕立て(球径35ミリ)のお一人様サイズながら、鋳物製でずしりと重い使い古されたたこ焼き器である。大阪人の知人がやると、その年季の入った手慣れた所作で生みだされ外カリッ内トロ~熱々の満点のたこ焼きにあやかれる。その後知人を真似て幾度か試せど、まるでその域に至らず、わずかに60点といった現状であ...
● 目振り 幅28×110×11ミリ一見しただけではいったい何に使う物か分からないようなものがある。あるとき出会ったこの小さな道具もそんなひとつといえる。先端には切り込みらしき加工がなされ、この隙間に何か挟んで使うものだろうか・・・・と、そこまでの想像のまんましばらく時が流れた。そしてある時これの正体が知れた。鋸の目立ての際に、鋸歯を左右に振り分ける“アサリ”をとるための「目振り」なのだった。知ってしまえば「なる...
● 背負カゴ 中国、雲南省 1996年3月麗江の市場の片隅にカラフルなカゴがたくさん並ぶコーナーがあった。プラスチック素材は自然へ還らず、環境問題の観点からいろいろ問題もあるけれど。適度な強度や柔軟性、軽さや耐水性、可塑性に秀で道具の世界にいち早く普及した。 このようなカゴ編みでは、横まわしの部分ではプラスチックバンドの巻きからするすると取り出せるため、場所塞ぎとならないメリットもあるようだ。カゴ...
● 鉋 185×93×高さ97ミリ中学生の頃技術の授業で使ったようなよくある2枚刃の平鉋とことなり。この鉋にはネジ式で位置調整できるガイドがつき、なんとも複雑なかたちをしている。まず罫引のような2刃で溝の縁になる箇所に切り込みをいれ、あとにつづく1刃で鑿(のみ)のように深くさらっていく構造となっている。溝幅はわずかに3ミリ、細工物の薄板などをこれで仕上げた凹に嵌めるための加工用だろうか。簡素を旨とする日本の鉋...
● 背負カゴ 中国、雲南省 昆民 1996年3月22日昆民郊外の山頂にあった民族村、そこの石垣の工事現場で働く人夫が使っていたのが、角底口円形ゴザ目編みのこの背負籠です。 砕いた石を運ぶため、カゴに詰めると相当な荷重となるのでしょう、重心を上に保つため朝顔形でカゴの背負紐の位置をあえて縁より下に付けています。 このカゴで特徴的なのは肩紐部分で、細かな竹ヒゴを筒状に編んで紐に...
● 定規 620×33ミリどこの家の子の衣服も、まだまだ家庭での手作り率が意外に高かった子ども時代。裁縫用の竹の長い“ものさし”は、チャンバラごっこの格好のアイテムであったし。悪さをしたときの折檻では、もっぱらものさしでもって、ペシッと叩かれるのが定番だった。ゆるく曲線のついた、この定規<60㎝用>は家では見かけないものだったけれど、よくみると「田無洋裁学院」の印がみられることにより、洋裁用と知れた。とは...
● 被り物 中国、控色 1996年4月8日雲南省白族エリア、青空市で見かけたおんぶされた赤ちゃん。頭の被り物、ねんねこには刺繍でもってさまざまな文様が描かれている。このような文様には装飾的な美しさばかりだけでなく、魔除け的な意味合いもあるのだろうか。以前観た『承徳の民藝』展は、戦前の満州時代に現地にて蒐集された日常生活品の民藝展であった。そこでみた赤子の被り物も、前面は虎、背面にもなにやら色々な文様で...
● 枕 中国雲南省昆明の市場で求めた赤子用の枕である。縞模様こそないけれど側面には虎の顔がつく。虎にあやかるのは幼な児が健やかに逞しく育つのを願ったものか。また色が赤いのは富貴にあやかるのか、それとも魔除けなのか。いまは手元にないけれど、昼寝用にこの枕を随分と重宝した。この写真は2シーズン前の寅年の賀状に用いたもの。あの時代の賀状づくりでは紙焼き写真をカラーコピーして、逐一ハガキに切り貼りしていた...
● 線香時計 国立科学博物館展示より科博の時計展示のなかでも常に気になってみてしまうのがこの「線香時計」である。線香一本が燃え尽きる間に身を費やしてきた女性たちの、いわば負の歴史を想いながら、何故かいつもここで立ち止まってしまう。これまで遊廓がつくりあげた文化が消失し、すっかり謎めいたものとなってしまった。それでも赤裸々なそんな性の文化にどこか魅かれてしまう自分がいる。手前に置いてある「数取り」...
先の『民藝の100年』展では、手仕事にまつわる古い映像が3作紹介されていた。『琉球の手仕事』、『日本のやきもの』、そして戦中に撮られた日本の生活文化のドキュメンタリー映画『雪國』であった。会場では民具の写る箇所を3分程度に抽出した短縮版だったけど、そういえばDVDを持っていたなと久しぶりに全編(38分)を見直してみる。 ● 映画『雪國』 石本統吉監督 芸術映画社 1939年 より雪国・山形新庄を撮っ...
● 竹椅子 中国、江蘇省 同里 1997年9月13日竹橋へ『民藝の100年』展を観に行った。美術館でみるそれは、駒場の日本民藝館の空間でみるのとことなり、モノの美しさをどこか充分に引き出しきれていないかんじであったが。書簡などの文献資料が充実しており、現代まで続く民藝の流れを俯瞰するにはとてもよく出来た展覧会であった。後半部分の展示では朝鮮半島や台湾の民藝も紹介されており。台湾の...
● 電笠 径260×高さ220ミリかそけき赤い灯のもと目をこらして暗室作業に熱中したのも、すでに前世紀の思い出となってしまった。この電燈の笠はそんな写真の暗室で使われていたもの。光りを出来るだけ均質に照らすために、笠を無数の円形の凸凹で仕上げている。アルミ材の型成形で外側には緑のペンキが塗られている。クリップがつき角度もある程度自由に変えるような一工夫がなされているが、自在の回転部分にはなんと木の球が用...
● 薪を運ぶ ラオス、ルアンナムター 1994年12月13日北部ラオスを移動中にピックアップトラックが停止した場所で見かけた一枚。付近の山の集落より下りてきたのだろうか、藍染の民族衣装に脚に巻かれた白い脚絆(きゃはん)がなんとも眩しいランテン族の女性達が、小走りに駆け抜けていった。各々の背負カゴにはめいいっぱい挿された薪が突きでている。手前には子どもの手を引くお母さん。後列には園児ほ...
● 「菊乃友渦灰」 95×95×高さ40ミリ(外箱)ぐるぐる渦巻きの道具のイメージはなんといっても蚊取り線香。或る夏の倉庫での作業で、皆であれを焚こうぜとデッドストックのこれに火を点けた。煙たいだけでちっとも蚊が堕ちず、あの時は役立たずの烙印を押して、菊の商標にすっかり騙された気分であったけど、いまなら分かるアホな自分。「これって懐炉用じゃん」 ということで冬場のこの季節に紹介です。むかしの豆炭の炭団(たどん...
● 市場にて ラオス、ムアンシン 1994年12月13日北部ラオス=中国との国境近辺の市場にて、市場に驢馬のように小さな馬を引き連れて買い出しに来た人を見かけた。どこの民族だろうか、男達の濃い藍染の衣裳に、紅い布巻きの被り物と襟巻きのコントラストが美しく目を惹く。市場での買物品を米袋にみっちり詰め込んで、荷造りに熱中している。背後に見えるのは、馬の背に着ける荷鞍である。不鮮明な...
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前々回はネパールの、そして前回は古代の丸木舟について見たので、今回は現代の丸木舟を見てみよう。とはいっても、まわりには現役の丸木舟が見られないため、展示に限ったものなのですが。 ● アイヌの丸木舟と川漁 / 北海道博物館 2015年撮影(2015年に改称された) この年(2015)から博物館の名称も旧北海道開拓記念館より北海道博物館と改称され。アイヌに関する展示が一新し、アイヌへの教育普及の上でもより親しみやす...
これまで幾つかの縄文講座を聴講後、土器などに見るいかにも縄文然とした造形とはまた別に、一見地味に写る木製品の遺物についても、それがどのように加工され使われてきたのであろうかと想像を巡らせ、次第に興味を持つようになってきた。 となりまち東村山ふるさと歴史館のロビーには、下宅部遺跡出土の縄文時代の未製品の丸木舟がむき出しのままどーんと置かれており、当初はその大きさに圧倒されたものの、次第に慣れっこに...
● 丸木舟 ネパール、ナラヤンガート 1989年8月 撮影 丸木舟と裸ん坊の子どもたちが戯れた、そんな一枚があったなと探してみる。残念ながら見つけたのは、試しプリントの焼き縞が残った欠片のみ。逆光で子どもの表情が潰れており、川のスケール感もまるでとれていないけれど。それでも川面に舟を運び出す、あの時の子どもたちがはしゃぐ姿が活き活きと甦る。 ● 丸木舟の渡し ネパール、ラニガート 1989年8月 撮影 これま...
“読むを読む”と二重動詞のタイトルがつくこの本っていったいなんだろう?ということで元本である『土偶を読む』のいささかセンセーショナルな副題「130年間解かれなかった縄文神話の謎」をも踏まえ、『土偶を読むを読む』とを互読してみた。 まるで知らなかったけれど、『土偶を読む』は人類学者の竹倉史人が箸した、名のある学芸賞も受賞し、各界の知識人にも認められた一大ベストセラー本であった。これまで考古学者が土偶を考...
● 新宿区立「林芙美子記念館」 / 東京都新宿区中井 この建物は『放浪記』『浮雲』などの代表作で知られる作家・林芙美子が昭和16年(1941)8月から昭和26年(1951)6月28日にその生涯を閉じるまでに住んでいた家である。大正11年(1922)に上京して以来、多くの苦労をしてきた芙美子は、昭和5年(1930)に落合のこの地に移り住み、昭和14年(1939)12月にはこの地を購入して、新居の建設を始めた。 新居建設当時、建坪制限があったため、...
「世界の言葉でこんにちは!」博物館の懐かしもの展示に、日本万国博EXPO`70のチケットなどが並んでいた。なかでも企業パビリオンのリーフレットに、「明日の生活環境への試み」として、当時流行っていたSF映画にみるようなスペースデザインを取り込んだ、暮らしのシステムユニットが目を惹いた。日本の技術の粋を賭けた夢ある未来、全自動洗濯機よろしく、健康と美容に効果をあげる未来の浴槽「ウルトラ・ソニック・バス」なんていう製...
先日観た、プラハ在住の絵本作家『出久根育展』<武蔵野市立吉祥寺美術館> では、副題の「チェコからの風 静寂のあと、光のあさ」 とあるとおり、画面を通じて未踏の地チェコの物語や風物に触れ、はじめてながらもどこか優しく懐かしく、とてもあたたかい気持ちとなった。 エントランス・ロビー部分は写真撮影可能で、以前読んだ作家のエッセイ『 チェコの十二ヵ月 -おとぎの国に暮らす- 』の原画が展示されていた。原画の細部...
● 『葛と日本人』 有岡利幸 八坂書房、2022年 下:「大和国葛の粉製図」 本書より 酒井抱一の「夏秋草図屏風」の表紙が目を惹いたこの本には、よくみると秋草のなかに紫色の花をつけたクズが美しく描かれている。 本書では、クズの植物誌、古典文学や詩に詠まれた葛、葛の民俗、葛布、はたまた異常な速度で繁茂して現代の生活を脅かすクズ害についてなどと、あらゆる側面から葛と日本人の関わりについて紹介し考察している...
● 『そば猪口の文様 絵解き辞典』より 図書館の新着本にあったのが『そば猪口の文様 絵解き辞典』。そういえばうちにもあるなと、食器棚より出してみる。 ● うちの「そば猪口」 家のそば猪口は、簡素な模様のシンプルなタイプばかりで。そのうち無地のものを2点含み、実はこれが一等気に入っている。無地ゆえにコップのような器形の美しさが際だち、清酒を入れて光にかざすと微妙に磁肌に透けて見える光景がたのもしい。本書...
先日観た清瀬市郷土博物館の民具展示では、布裂(ぬのきれ)がおもしろかった。いまのくらしではほとんど死語となり、どこかしら汚ならしくすら思えてしまう“ボロ(襤褸)”ながら。こうしてガラスケースに展示され、視点を変えてしげしげと一枚一枚を観察すると、一片の裂のなかに、さまざまな要素が凝縮されて見えてきてとても興味深かった。ボロの展示では、かって浅草にあった「アミューズ ミュージアム」の展示が一風変わっていて印...
数値にレバーを合わせ、ハンドルを回すと「ガラガラガラチン!」と鳴る機械式計算器は、地域の博物館の「むかしの道具」コーナーなどで、ときどきお目にかかる道具である。いまではそのアナログ的で一風変わったかたちが、子どもたちの目を惹く人気のアイテムとなっている。 機械式計算器での計算は、ソロバンでの珠算のように特別な習熟は必要とせず、誰しもが直感的な感覚でもって基本操作さえ行えば、難なく正確に答えを導くこと...
● テンバコ 675×405×高さ80ミリ 何故か家にあるのが、「地質學教室」の焼き印が押されたこんな古風なテンバコ。 90年代後期に東大・本郷キャンパスにて開催された「ヴンダーカンマー・驚異の部屋」展では、東大の所蔵する膨大な学術資料・標本を高名な海外デザイナーが参入し、「古きに新しさを見る」とでもいうのだろうか、古風な物品が現代風にお洒落にアレンジされた展示構成で、当時はその演出がとても斬新で魅力的...
となり町の図書館への道すがら、葬儀店のウィンドウにずらりと並んだ骨壺見本が気になっている。いつかしっかり見比べてみたいと思いつつ今回も見送ってしまった。普段は気にもとめない“葬い”もの、図書館にこんな本があり読んでみる。 ● 『葬いとカメラ』 金セッピョル、地主麻衣子 編 左右社 2021年 文化人類学・宗教学・社会学の研究者、映像アーチスト・彫刻家などが集い、“葬い”にちなんだ映像作品を視聴しての対談集...
家で使っているのが、こんな箒(幅180×230ミリ)と塵取(幅225×350ミリ)です。とあれ本来はそれぞれ別ものとして作られた道具です。小さな手箒はゴヨウマツの葉を束ねたヴェトナムのもの。韓国の道具にも、ゴヨウマツの葉を円錐形に束ねた刷毛のようなものを見たことがありますが。こちらはヴェトナムの木版画「ドンホー版画」の刷りに用いられる撫で刷毛で、いわばバレンのように使うもの。2分れ3カ所を結び竹箆で押さえ平らにさせた末...
台湾の歴史的建造物にみられる和製マジョリカタイルを考察した、台湾人著者によるこんな一冊をみつけた。副題には「台灣老花磚的建築記憶」とある。 ● 『台湾 和製マジョリカタイルの記憶』 康鍩錫 TWO VIRGINS 2023当初は英国のヴィクトリアン・タイルの模倣品として製造された日本のビクトリアン風彩色タイルは、通称和製マジョリカタイルともよばれ。後に海外への輸出品へと販路を拡大し、それぞれの地域への市場に向けてさま...
● バングラデシュのリキシャ 『うるおうアジア』展<中村研一記念 小金井市立 はけの森美術館>にて 日本発祥の人力車とリヤカーの長所を、自転車にうまく纏めた“自転車型力車”は、東南アジアや南アジアなどの地で、いまでも庶民の足として大活躍している。先月観た福岡アジア美術館収蔵作品の巡回展『うるおうアジア』展<中村研一記念 小金井市立 はけの森美術館>でも、数ある作品のなかで一番目を魅かれたのが、このバング...
この新春はひさしぶりに昭島の拝島大師の“だるま市”へ行ってみました。コロナ禍も幾分落ち着き、初詣の凄い人混みにすっかり押され、今回は系統立てた「だるま分析」はいまひとつ振るいませんでした。近年ではアマビエをアレンジしただるまも登場したとのことですが、そちらは確認できず終い、それでもいくらか新種の変わりだるまがありました。こちらは前回のときの“だるま考察”の記録です。 ↓http://utinogarakuta.blog.fc2...
● 『鍵盤ハーモニカの本』 南川朱生(ピアノニマス) 春秋社 2023年 自分もこの写真の時代は小学生だったはず。 ** 鍵盤ハーモニカのかわりにトンボ・ハーモニカを添えて** モラトリアムな時代のあの日、不思議ちゃん女子がくれたカセットには“曲:ピアニカ前田”と書かれていた。小学生の音楽の時間、黒い唄口や蛇腹のホースをくわえ、演奏の度に内部で結露した唾液を吐きだすピアニカが、どこか不潔で嫌だった。「トホホ、...
前回は鷹匠の道具について触れてみたけれど、鷹狩りはどのように行われるのかについては、まったくもって知識ゼロの状態。そんな理由で図書館にあった書籍や動画にあたってみた。日本の鷹狩りの伝統は徳川幕府の下、各大名が庇護し研磋琢磨を重ね粋を究めたものの。幕府解体後それらのシステムが一旦崩壊し、明治を迎えあらたに宮内省が鷹狩りを管理するようになる。 そんな天皇の鷹匠をされていた諏訪流の鷹師の方の伝記本や、...
上京した頃の最寄り駅は、江戸幕府の鷹場(たかば)の名残りをとどめる「鷹の台」という場所だった。東京の西域多摩地区にはかって幕府の広大な鷹場が拡がっており、近在の博物館の近世の歴史展示にも鷹場に関するコーナーが設けられている。とはいえ鷹狩りに関わる鷹匠(たかじょう)が用いる道具についてはこれまで一度も見たことがなかった。この度 瑞穂町郷土資料館にて『オオタカ -鷹とその文化- 』展があり、江戸時代には尾...
巷に溢れる便利グッズって、実のところどれほど便利なのだろう・・・・ ● 木柄にボルトとナットで仕上げたミャンマーの栓抜き 25×175×30ミリミャンマー土産で頂いた栓抜きは、モアイのような木彫りの把手になんとボルトとナットで仕上げている。なんともふざけた風情で自分ではまず選ばないような栓抜きながら、このかたちが意外と便利と知る。梃子の力点と作用点の兼ね合いから、王冠を抜いてもまったく疵がつかないのである。...
● 『戯れる江戸の文字絵』 ヤン ショオジェ著 マール社 2022年「へのへのもへじ」のように、画面のなかにその人物をしめす仮名文字がたくみに組み込まれた図絵に見入っている。原本は十返舎一九『文字の知画(もんじのちえ)』登場人物は、江戸の町で働く商人や町人を中心に、花街の人々や旅人、武士、また町中をあてもなく彷徨う者など、老若男女総勢41人に犬1匹・・・・・・・当時の庶民にとっては当たり前に読めた、ただの平仮名の...
● 『アジア「窓」紀行』 田熊隆樹 著・写真 草思社 2022年図書館の新着本にあった一冊は窓の写真のオンパレード、その名も『アジア「窓」紀行』副題の -上海からエルサレムまで- とあるとおり若き建築学徒が撮ったアジア各地の建物の魅力的な窓の写真で溢れている。かって自分が歩いたアジアの地域と重なる場所は少ないのだけどそれでもイランのエスファハンの金曜モスク内を撮った一枚は自分も同じようなアングルの写真(...
● 刀杼 595×60×厚み32ミリ仲間と離れぽつりと古物に流れていた機具(はたぐ)が目を惹いた。古いかたちの杼の刀杼(とうひ)である。一枚の布をしっかり織りあげるには、いったい幾度こんな杼を往復させるのであろうか。ぴんと糸を張り長らく打ち込みつづけたものか杼にはその証しのように糸目の痕跡がしっかりと刻まれている。タイのカレン族の村でみた地機織りの様子を参考に添えて・・・・・ ● 地機 タイ、メイホンソン州 1989年...
● 小皿 ヴェトナム 155×高さ33ミリ桜が散ると一気に新緑が萌えはじめ淡い緑が眩しいヴェトナムのバッチャン焼のうつわは友人からの土産品ちょっと前の屋台でも使われていたものだろうか焼が甘く貫入もほどよくはいり使い古された地肌の風合いは好みだけれど器面には日本のやきものではちょっと見かけないような大胆な筆致と彩色でもって花が描かれている咲き始めた山吹を添えて・・・・・・...
● 栓抜 85×40ミリ散りゆく花のもとコップに泡をそそぐ相棒のヱビスの瓶じゃないけれど福の神にあやかりこんなかたちの栓抜で!...
● 計数枡 220×120×45ミリ 覗き窓四角い枡を押しつぶしたような歪な菱形のこんな枡がある。なにかの余材を転用したようなアルミっぽい鋳込みの合金製。1層100個、5層で500個を数える覗き窓が側面につく。まるい玉を計るにはざくっと掬い、鋭角の隅よりきれいに放てるこの形状が理に適っていたのだろう。この枡も日本の娯楽文化ならではで独自に生まれたかたちかもしれない。1発打ちのあの時代、この1枡でいったいなにに替...
● 角皿 173×132×高さ25ミリ近所の農家へ野菜を買いに行ったはずが、こんな角皿があったのでチャリンと100円入れて連れ帰る。郷里の祖母の家にあったようななんとも昭和チックなうつわです。今日から4月の新シーズン、とはいえ昨日とまるで変わりばえしないスタート。せっかくだから新シリーズとして、モノが生み出す“模様”に特化していきたい。描かれた舟のように、帆に風をおおきくはらみ新たな海原へ歩みだそう・・・...
● 『賢明』 ピーテル・ブリューゲル 224×298㎜、ペンとインク、1559年 ブリュッセル王立美術館蔵ブリューゲルの目玉作品『バベルの塔』を東京都美術館で観たのはもう6年も前のこと。蟻粒大の人々が建設現場で蠢くその筆致の緻密さに目を奪われた。とはいえそれは3DCC映像(拡大複製画)によるもの、視力の落ちた肉眼ではいくら実物を前にしても到底無理であった。それに反して同時に出展されていたペン画や版画の数々は...
お酒を持って一人お花見へ、めざすはとなり町の都立東大和南公園。満開の桜に囲まれて、花壇や周囲に巨大な碍子(がいし)がオブジェ風に配置されたシンボル的な建物がある。旧日立航空機株式会社変電所の建築で、戦中に戦闘機からの機銃掃射を受けた悲しいほどにあばた顔の外観である。それは東大和市指定文化財(戦災遺産)とされたこんな建物である。 ↓http://utinogarakuta.blog.fc2.com/blog-entry-357.html絶縁器具の陶磁器...
● へら 18×長さ175ミリ朝のラジオで片付けコーディネーターが「検索すれば済むことでしょう・・・捨てましょう!」とさかんに“検索”を連発。たしかにネットは便利で一理あるけれど。やはり紙もの資料はとっておきたいし、モノとの出会いや取捨選択は効率だけではつまらないと思っているから、“何でも捨てましょオバサン”のその発言が気になった。しょぼけた道具ながらも、前回は“○”のかたちだったので、今回は“-”ものの紹介です。...
● 芯切り 径70×9ミリお酒を持ってひとり花見の予定が今日の雨で流れてしまった。ストーブもそろそろしまうつもりだったけど今日は寒いからひさしぶりにたいてみよう。むかしの灯油ストーブはシンプルなつくりながらメンテナンスにはこんな綿芯切りが必要だった。 ↓http://utinogarakuta.blog.fc2.com/blog-entry-1178.htmlわずか1インチ芯用のこんな小物をネットが普及していなかったころさがしだすのに随分苦労した。ブ...
先日のタイル展では導入口にあった世界のタイルの変遷でイスラームタイルの一群が目を惹いた。 ● イランの旅でみたタイルの数々 1997年撮影かって駆け足で見学したイランの旅では、モスクなどに多用されている装飾タイルの華麗さに目を瞠った。まるで万華鏡を覗くように、精緻な幾何学文に草花文、コーランの聖句が記された流麗なアラビア文字が複雑に絡み合い一体となり生まれる装飾タイルによる絵曼陀羅。プルシャンブルー、...
いよいよ花見の季節の到来です。今年はいち早く開花のもよう、ぽかぽかの陽気に誘われて久しぶりに江戸時代からの桜の名所、小金井公園の江戸東京たてもの園へ行ってみました。目指すは大好きな建築のオーナメントともなるタイル『 日本のタイル100年 -美と用のあゆみ- 』展です!(2023年3月14日) ● 『日本のタイル100年 -美と用のあゆみ-』展 江戸東京たてもの園 / 東京都小金井市 会期 2023/3/11-8/30本展は、...
子どもの頃実家の玄関には父が蒐めた古銭の額が飾られていた。楕円形の天保通寶以外は、いずれもドラマで銭形平次が飛ばす投げ銭のようなどこか冴えない一文銭の類である。父亡きあとは物置に放されており、いつだか帰省の折に持ち帰ってみた。ながらく部屋に放っぽったままだったけれど、図書館に寛永通寶の本があり、この度よい機会と借りて軽い気持ちで分類してみるも、素人にはあまりに複雑でハードルが高すぎてお手上げだ。 ...
● ケロシンストーブ ネパール 220×276×高さ139ミリ前回は、珈琲とスェーデン製のクラッシックなケロシンストーブの紹介でしたが。 ↓http://utinogarakuta.blog.fc2.com/blog-entry-1224.htmlこちらはおなじ加圧式でも、どこかチャイが似合う、ネパールのもう少し雑多な造りのもの。カトマンドゥでは王宮前のバサントプルを定宿とし、毎朝広場の路上で飲む一杯のチャイを無上の喜びとした。そんな熱々の本式のチャイ...
● リュックサック チェコお気に入りのチェコ映画にイジー・メンツル監督『英国王給仕人に乾杯』 2007年 がある。ホテルのレストランで給仕される料理の数々、食器やカトラリーのいずれもが素晴らしく。食の映画としても充分楽しめるおもしろい作品だ。 この度、原作であるボフミル・フラバルの『わたしは英国王に給仕した』 を読んでみた。「これからする話しを聞いてほしいんだ」に始まり「満足してくれたかい? ・・・おしまい...
今日はたのしいひな祭り~♪実家にあった五段飾りのお雛様を飾っていたのは、姉が小学生の頃までだったか。晴れ着姿の着物にぱちくりと化粧されて得意げのポーズできめた姉の写真がむかしのアルバムに納まっていたはずだ。あのお雛様はすでに家には無いはずだけどいったい何処へやったのだろう・・・・・・いつだかの市で、古いお雛様が出されていたことがあった。江戸時代のものだろうか時を経てここまで辿り着くまでにいったいどういう...
● 小平市ふれあい下水道館 東京都小平市わが町の博物館は一風変わったテーマの地下潜行型で『ふれあい下水道館』という。その名のごとき地下5階は府中街道真下にある下水道に直結しもわっと饐えた臭いの下水道(直径4.5m)を間近に体感できる。 博物館の特別展では、やはりそんな下の関連でかため「トイレグッズコレクション」 展が開催されていた。あの有名な中国のおまる“馬桶(マートン)”をはじめ世界各国のおまるがずらりと並...
抽斗の角よりほじくり出した小さなもの2点。江戸時代の貨幣制度では金貨は数量貨幣で数をかぞえ、1両=4分(ぶ)=16朱=4,000文対して銀貨は秤量貨幣で重さをはかり、1貫=10,000匁=100,000分(ふん)であると知った。改めてみると、先日観た「そろばん博物館」の展示にあった、算盤の新旧の作りと算術の仕方の違いではないけれど、金貨の数量の単位は4の倍数、銀貨の秤量の単位は10の倍数と、それぞれの単位のしくみが異なる点がどこ...