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都合による詩誌に載せられなかった詩を掲載しています。全員が全員共感してくれるとは思いません。でも100人中、5~6人は共感してほしいな、という個人的希望を持っています。

牛田丑之助
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2020/08/27

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  • 余荷解屋

    余荷解屋(よにげや)の親父はいつも煙管を吹かして引き取って来た首を括った一家の店の商品を積み上げて泡銭を儲けているそこには栗鼠の骨や キャベツの芯や少女の脛が値札をつけていて藪蚊の集団の客が群がり自分の痘痕だらけの息子の自慰の扶けになるものを買い漁っている 何という親心だしかもどの商品もアリババで買えばその半額だでも中国人と商売したくないために 皆が余荷解屋を訪れるその内気な国民性と少しでも安く買...

  • 階段

    次元の裏からスコールがやってくる前の犀が横切る草原に階段がある登ると四段目がなく代わりに空海の頭を踏んでなお登り数えてみると七段あり階段が十三段あれば倖せがやってくるのに七段では誰も幸福にしない 不幸にもしないしかし僕は明日の深夜 月が静脈瘤破裂する前に 頂上まで登るつもりだ七段目からもう一歩足を進ませるだけでいい異界に首が出て十三色の金糸雀が煤けた声で喚き紫の雲がうんこ臭さとともにたなびき黄金の...

  • 救済

    絶望している時こそ救いの詩が綴れる失恋した時こそ愛の歌が歌えるそれは人が生きることを願っているからであり悴んだ指先が熱を帯びるのは生命の鼓動だ死の望みを持つ者に生の希望を語るのは難しい堕ちゆくイカロスを再び飛翔させるようにだから全ての表現は虚しい誰も掬い上げはしないにも関わらず私は生の希望を語るそれは自己満足だが少なくとも自分は救えるそれが全てであり物語の冒頭を告げる尖塔の鐘だからだ今夜も人は望み...

  • 私の履歴書

    名前牛田・アンクルレレレ・丑之助本籍あなたが淋しい時天を仰いでくださいその時に東の空にひときわ明るく輝く星があればそれが私の本籍です学歴バカ田大学文学部詩学科を平凡な成績で卒業食歴シイタケが食べられませんでしたが実はペンギンの肉だと知って大丈夫になりました特技知らない間にあなたの後ろに立つことそして耳元でささやきますこれ食いちぎっていい?好きなこと咳き込むこと身体の裏側中の全てが飛び出るくらいの勢...

  • 坂と少女と晩年の家

    坂のある街に住みたいと思っていた石段に猫と並んで座り屋根瓦の向こうの海峡の輝きを眺め日暮れには月3万円の貸家に帰って赤鯛の目玉でビールを飲るそういう早い晩年生活も素敵ではないかそれで家を探しに行った駅では十六歳くらいのセピア色の少女が改札に浮かんでいた少女は挨拶もなく先を歩きだし私は慌てて後を追った少女は五センチばかり地面から浮いていたので延々と続く細い石段をするすると登っていったがコンパスで楕円...

  • 荷台でGO

    大工である桜田君のお父さんの軽トラックの荷台にみんなで積み込まれ野球の試合をしに山間のグラウンドを目指してこの世からあの世に運ばれたしかし試合の記憶がちっとも残っていないのは例によって 三振とエラーと読経しかしなかったからかそして僕らはまた軽トラックの荷台にリンゴや材木や水道管として積み込まれて帰ったとても愉快だった毎日繰り返される両親の夫婦喧嘩にも行きたくもないオルガン教室にも輪郭のない級友ばか...

  • ウポポイ

    根室は北海道東端の細長い半島の付け根の小さな町だが、大地は思いのほか遥かに続いていた。赤茶色の大地に打ち捨てられたように建つ小学校の体育館が私たちの目的地だった。二階が屯田兵の資料館だったからである。階段を上がると部屋は五月だというのに熱気で耐えがたく蒸されており、管理をしている先生が窓を開けた。しかし風は寸分も通らない。仔熊を生贄にするために慈しんで育て盛大な焚火の周囲で祖先から伝わるユーカラを...

  • 花葬

    空色 瑠璃色 群青 ウルトラマリンブルー 紅色 朱色 臙脂 丹色 桜色 桃色 マゼンタ ワインレッド 緑 若草色 鶯色 エメラルドグリーン 黄色 鬱金色 山吹色 芥子色 マリーゴールド 紫 藤色 ラベンダー 茶色 黄土色 栗色 小豆色 鳶色 セピア カーキ 生成色 灰色 利休鼠 シルバーグレー 黒おまへがスカートを翻すように あらゆる色が旋回し 混晶...

  • 突っ伏すをんな

    をんなは私の卓につくなり五分寝かせてといって突っ伏したうなじにじっとりと汗をかきジュゴンが泳いでいるのが見えた私は待ち呆けを食いながら煙草をふかしたが卓と卓の間を大名行列が通り駱駝が歩き亡くなった祖父の影が過ぎカエサルとヒトラーとレオナルドダヴィンチが肩を組んで踊りながら通りスイートムーンが西から東へ昇って沈み二十三段のざるそばを重ねた蕎麦屋の自転車が走ったダンスタイムにマタイの葬送曲が三回流れ灰...

  • サンダーバードとイナズマヘビ

    サンダーバードが三十二ビートで天空にリズムを刻む引潮よりも速く土用波よりも圧倒的にあらゆる魂を蹂躙し強姦し収奪するそして自らは蒼空を気高く疾走する何者にも邪魔だてはさせない何者にも行く手は止めさせないひたすらに飛空しただすらに滑空するそれがサンダーバードだイナズマヘビが地中四百万尺から反動をつけて跳躍する太陽光よりも垂直に破裂光よりも眩くあらゆる愛を黙殺し否認し破壊するそして自らは青嵐の中を無垢の...

  • 社会

    世の中は創作者と解釈者で成り立っている大根を植え太く長く育てる人間と絶妙なふろふき大根にする人間がいるのと同じだふろふき大根を食べた百姓はそのほのかな甘さに驚きこれが俺の解離性自己崩壊が社会的黙契に転換しているということなのかと初めて頓悟するしかし往々にして創作者は解釈者の無見識を詰り解釈者は創作者の無定見を批判するしかしそれは鬼が死神と争っているようなもので何の生産性もない何の破壊性さえないそれ...

  • 番傘

    雨が番傘を鳴らす冷たい脹脛に泥水がかかりそれでも聾唖のように道端に立っている電信柱の広告はあかるい家族計画だ三輪トラックが掠め番傘が風に煽られるでも手放すわけにはいかない どうしても雨音に合わせて脈拍は打たれているから店主が首を括って閉じたバーバー頬白鮫の扉が誰もいないまま開いたり閉じたりしているいつも五厘刈りにしてもらっていたのにもうそれもできない今は自分でバターナイフで剃っているから頭は鬼が引...

  • M君

    低い窓から女のうなじへ鈍いナイフを投げるそんな言葉を紡げるのに三人でいれば必ず一人を仲間はずれにするような意地悪な性格をしている人だった 君はイスラム教に改宗すれば奴隷から解放されるそんなことさえ頭に浮かばず鎖につながれて櫂を漕いでいるそんな奴だった 僕は無自覚の阿呆ってやつ?そんな君は今や小児科医になって日がな泣き喚く子供をあやしながら喉の奥にバターナイフを突っ込んでいるでも心の奥ではやっぱりそ...

  • 手形

    手形の数だけ 人間が来た 洞窟の中にその数だけ命があったお前らは何のために手形を吹き付けた左手を岩肌に当て 右手の麦のストローで染料を吹き付けそんなのは生きている証しにならないのに生きている証しを遺す意味などないのになぜ痕跡を残して逝った夜中に手形が動き 握り合い じゃんけんをするそのような幸福な噂話さえ伝わらない手形は岩肌に張り付き 九千年間動かないお前らは なぜ手形を遺したお前らは なぜ遺そう...

  • 思い出し屋

    大事なことを忘れてしまったときには思い出し屋が役に立つ離婚届を書くときにマイナンバーを忘れてしまった爺さんを軽く一人轢き殺したときに自分の車のナンバーが思い出せない彼女とホテルに行くときに妻に今日は残業だと電話しようとしたが番号を忘れたそういう時に思い出し屋に依頼すればすぐ代わりに思い出してくれるしかしそれらは実は手帳にメモをしておけば済む話であって本来の思い出し屋の仕事ではないむしろ思い出し屋が...

  • 来訪

    カミは旅人として訪れる笠を被り蓑を纏い身長より長い杖を携え潔斎した家にある夜突然現れるカミはにわか雨のように玄関前に立ち滑るように家の中に入って来るだからどの家も常に主人は紋付き袴で過ごし厳選した米だけで醸した老香(ひねか)のない酒と裸で海に入り身を清めた男が釣った魚を用意しておかねばならないカミは笠と蓑をつけたままひと言も発せず音もたてずに酒を飲み魚を素早く食した後小さく舞って家を後にしてまた旅...

  • 木魚と頭蓋

    木魚ではなく頭骸ですか撥ではなく尺骨ですかあなたが祈るのは亡母の救済ではなく地獄の祭礼ですか頭蓋骨を木魚にするほどこの巷には晒された亡者が多いのですか確かに亡者は頭蓋骨が叩かれることで罪障のひとつひとつが陰徳に変ずると申しますが亡者が累々と列を作って審判の門に並ぶこの國では心臓から指先まで生きている人間を探す方が難しい人は生きながらにして徐々に溶け徐々に死んでいっているのだ...

  • 兄の帰還

    塩酸消毒液の臭いを漂わせ三十八年間不明だった兄が 還って来た兄の話題はその間一度も食卓に上らず夕方 仏壇の掃除をしながらの母の呟きにも出なかったので私の脳裏から全く兄の存在は消えていた兄は緑の蛇が隙間をすり抜けて入り込むように現れ私の皮膚に逆毛を立たせた兄は当たり前のように座卓の一方に坐りサツマイモの天ぷらを食べご飯を三杯お代わりした 全くの無言で家族全員も無言で俯き箸が茶碗に当たる音だけがした兄...

  • 恩寵なのか羽化なのか

    ささやかな才能と本能だけで言葉を紡いでいた僕が解説をしろと言われたら やっと これは何だと言えるようなものを書けるようになったこんな幸せな瞬間が祝祭日でもない無感動な深夜に不意に訪れると僕はもうすぐ死ぬのではないかと思ってしまうでもそれは神がもたらしたものではなく膨れに膨れた僕に細く鋭い一本の針が刺されてくるりとゴムが捲れたようなものなのだもちろんそれはまだ僕の内部の変容であって生んだ卵が黄金にな...

  • トシドン

    トシドンがやって来る蒼い首無し馬に乗って濃灰色の雲の切れ間から降下してくるそして村中を蹂躙して回る女を犯し男の肛門に紅いマラ棒を突っ込み子供を恐怖で発狂させ犬の声帯を剥がし去る子供を四つん這いにして餅を背中に載せて歩かせ落とすと小突き大声で威嚇するそしてひとしきり村中の人間の尊厳を破壊した後上等の酒と山海の珍味でもてなされるやがて満足したトシドンは徐(おもむろ)に新しい年を異界の向こうから引き寄せ...

  • ムッシュ・マカロンよ

    ムッシュ・マカロンよ にやけるな確かに世の中には可笑しい問題がたくさんだ犬と猫が交尾したり それも正常位で善良なものが邪悪なものになったり 当たり前のことだが敗戦国が戦勝国にいつまでも非難されたり ありがちだが優しい人に限って迫害を受けたり これもよく見る風景だがだからと言ってにやけるのはいかがなものか世間の紳士はそういうものが視界をかすめても 笑いを押し殺しすまし顔で口元をハンケチで拭うものだム...

  • 黒部

    黒部は墨のような曇天が渦を巻いていた黒部で一軒だけのホテルのフロントの小さな窓から顔を出したのは双子の老婆でねっとりとゴムの仮面が歪み割けた口で同時に笑い声を合わせて「お泊りですか」と言った街には雑貨屋が一軒だけあり 河童の店主が愛想よく「これが最新刊ですちゃ」といって薔薇族をすすめたが私は少ない選択肢から三カ月前の女性自身と姓名判断の本を買った最近の運の悪さは名前から来ている気がしたのだもう一軒...

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