いた!けど、なんだ。あれが魔王だと。それは姿形というものではなかった。圧倒的な負の雲というべき形のない何かだった。モレールは神の及ばぬ影といい、リシェルは金剛十種の帯といった。誰も巻いたことのない世界王者の帯ということらしい。どっちにしろヴィルにとっては想定内のことだった。「あなたの力は絶対だ。それは誰もが知るところ。でもそれではゲームにならない。それも誰もが知るところ。ゲームは常に50:50だ。...
言葉で描くみえないこころ。 縦横高さ、時間軸、いつか 見えてくるでしょうか? 拙いながらの一綴り、ジャンルは絵のように…詩や小説の創作物を載せています。 どうぞお気軽にお立ち寄りください。
石柱をぐるぐると回って僕らは平原に飛び出した帰らぬ友を思い 空に願いを描き夏草揺らすハヤテを追って走った夏を疾走する生きものと同じで太陽に操られていると思えた何もかもが僕らの胸にしまってあった何かで夏は内から流行病のようにやってきた狂い鳴く蝉のように限りある時を歌い夕べにはアスファルトに転がったその骸は濡れた君のシューズのように重く僕の手紙のように黒くにじんで書けない文字を煙突は吐き出した僕らは思...
文字と文字の行間のごとく時間と時間の不連続のごとく現実から空想へ続く論理を飛躍していたるところに橋と断崖と暗黒を見る現実はいつも向こう側、 ここではないどこかここと同じように時が過ぎ分かれた肉片が散らばるきみはここではない場所で声を上げている自らの手を伸ばし目を瞑り自己を探っている現実の相の鮮やかさと深さをここではないどこかで僕はきみと出会いきみは幼くして逝った正と負が拮抗するこの心吹き荒れる...
いつかきみを連れて行くよリリーの花咲くポアレの道にゆるやかに道は登り小麦の穂のさざ波が奏でる丘の向こうに一匹の老犬を連れてゆっくりと空よりも青い海原と滑らかに白い港町へ道草しながら歩いて行こう時間をかけて歩いて行こういつかきみと夜を明かそう焚き火のそばでギターを弾いてときに火の周りを踊ってみよう月の刃に裂かれぬようにまあるく手をつないだ輪舞はくるりくるりと風車のようにひらりひらりと国旗のように星の...
時は戻らないかもしれないけれど未来へ続くきみとの約束はいつも懐かしい何をしていても何処をさ迷っていても世界も、時も、未来へと向かっている僕らが描こうとした場所へきみが求めた時間へ沈黙のまま時は進んでいる出会えた今日にただ「ありがとう!」といつか、そう言えるように心でそっとつぶやくよきみには聞こえているだろうけどぼくが隠した弱音もきみは帰ってこないかもしれないけれど過去のきみが今日の僕を支えていて明...
あなたがいなくなったなら屋根に上って見送るわたしは初夏の空を見上げるわたしは積乱雲に想い躍らせあなたの気持ちを推し量るでしょう「わたしがいなくなったなら黄色のパステルをどうぞ海へと投げてくださいわたしのこころを」ああ、そうともきみは黄色の魔術師だった小皿の水が空っぽになって餌が殻の山になったなら空いた窓から木を見上げ風をいっぱいに吸い込んで体に流れる気流になって肩甲骨に風を感じてさよならを告げるの...
静かに寄せくる波の手と心に寄せる潮騒の忘れもしない夏の日は砕けた鏡もきらきらと見渡す限りの波模様文を運ぶ風の郵便は屋根の上をくるくると坂の道をひらひらと空へ誘われ舞い上がる海へ誘われ流れ飛ぶ夏の陽炎はここそこに過ぎて戻って失われ泣いて笑って洗われてきみの時は止まったままでわたしの時は流れるばかり空に浮かぶは雲ひとつ瞼に浮かぶは笑みひとつ至る歳月の時雨どき見返す浜は夏の幽玄(ゆめ) 廻る季節は夏の羽...
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いた!けど、なんだ。あれが魔王だと。それは姿形というものではなかった。圧倒的な負の雲というべき形のない何かだった。モレールは神の及ばぬ影といい、リシェルは金剛十種の帯といった。誰も巻いたことのない世界王者の帯ということらしい。どっちにしろヴィルにとっては想定内のことだった。「あなたの力は絶対だ。それは誰もが知るところ。でもそれではゲームにならない。それも誰もが知るところ。ゲームは常に50:50だ。...
三人は綿密に計画をたてたはずだった。ボーイスカウトで身支度をしてもろもろ準備をした。モレールは『魔術大全』に聖書、ロザリオに肝心な十字架など、悪魔と対峙したときに必要と思われるものをかき集め、リシェルはヌンチャクに偃月刀、三節棍などを陰陽図を刺繡した巾着バックに詰め込んだ。ヴィルは山岳道具一式とクライミングシューズにハーネス、カラビナ・スリング・確保器などを準備する。それとリシェルに言われた電池...
「ダ―マン家ではな。十二時を過ぎると悪魔の時間なんだ。夜半の街へ行けば分かるだろう狂乱と犯罪が増えてる。目が覚めてたらお祈りをつづることになってる。」「あっ、そ。けどね、いつの時代もゆく手には壁があるの。社会の、年齢の、仕事の、性もそう。現実は悪魔よりも広汎性があって、悪意すらある。わかんないの。」「へえ、言うじゃない。日中は誰もがそれぞれの歯車を規則正しく動かしてる。小さな自由を夜に行使しても...
その日の深夜のこと。ヴィルは突如目が覚めた。耳鳴りの中、部屋の壁が細かに振動している。いや、そうではない。自分の視覚がおかしいのだ。身体がおかしいのだ。淀んで腐った水に漂うボウフラ。そんな気分になった。足元がふらふらする。酒を飲みすぎた親父が、廊下で大きな音を立てるのを思い出した。トイレへもまともに行けない親父。ヴィルは震える自分の足に笑みを浮かべ、窓際に近づいた。新鮮な空気を入れなくては。窓に...
『怠け者はぜったいに魔術師にはなれない。魔術はすべての時間、すべての瞬間にまたがる修練である。快楽の誘惑、食欲、そして眠気にも打ち克てることが。立身出世にたいしてだけでなく、低い身分にたいしても平気でいられることが必要である。その暮らしは、一つの理念によって導かれ自然全体によってかしずかれる一つの意志の現れでなければならない。そのためには先ず五官を精神に従属させ、五官と照応する宇宙の諸力の中にお...
僕たちは頭も感情も混乱していた。恐怖とも違う。逃げ出したいとも違う。モレールとリシェルの姿に自分の中で何かが目覚めた。気づくと飛び出していた。カンテラを振り回してハクスリー先生に突っ込んだ。モレールの手から魔術大全を奪い取るとカンテラの傘を外し火を点けた。「何を!」モレールは驚いて叫んだ。お構いなしに火を点けた。古い本はすぐに燃え出すと、炎が辺りを照らし出した。リシェルが全身を黒く染め数体の彼らと...
その時刻、ベンダー湖の東岸に一台のセダンが止まった。湖の北側には夕日を浴びた森が続き、南側の街道沿いに街が続いている。ミルズ校は湖の反対側、岸から五百メートルほど行ったところにあった。「なあベティ。これからどうする?ドライブが終わってもうしまいか?食事でもしないか?モーテルの脇にダイナーがあるだろう。あそこのイタリア料理は絶品だ!そしてさ…」「そして何?モーテルでわたしのフルコースでもいただく?」...
金属は錆びるが、木造は朽ちていく。時代と無数の虫に喰い荒らされていく。まるで腐敗臭を放って腐っていくようにも見える。本当であれば木は死んでも生きている。地中で炭鉱にもなるし、壁も柱も呼吸している。人間のように老いると愚痴も言うし、老骨を鞭打って悲鳴も上げる。昔気質の祖父はよく言っていた。そんな悲鳴が上がる階段を暗い方へ暗い方へと下っていた。懺悔室にはいかないのか?と訊くと、まずは石膏像がしまい込...
《…過ぎ去る夏の足音が、ときにタップのように踊りだした後、そろりと忍び寄る猫のような毛並みと共に秋は忍び寄り、秋と共に見たこともない妖艶な女性の教師が赴任してきた。妖艶とはなんだろうといつも考えたが、よくわからない。そのわからないあたりが妖艶なのだ。以前悪童で名が知れ渡っていたリザリーが親父の「playboy」を持ってきたことがあったが、女性たちは妖艶とは似ても似つかないもので、もちろん自分にとってはだが...
オールド・ミルズ校は百年の歴史を壁や柱や床に、あるいはその外観を見ただけでも古き良き時代のモダンさを骨董色の肌に染み込ませ、開拓者たちの息吹き、その気骨を受け継ぎ、柱一本一本に鞭打って今日も町の外れに建っていた。しかし、そう思えるのは良き学生時代を過ごした者の贔屓といってもいい。制度に翻弄され、差別と懲罰の地雷に触れた者、あるいは、教師の行使する権力の独裁とに踏みにじられた者からすれば、特に後者...
雪明かり 冬の日暮れの 路地便り 冷たき風の 耳裏の音空高く 成層の青 開け見る いつかのわたしの 無心の空を空気裂く バイクの爆音 受け止めて 夜へと返す 雪壁の道...
くわえ煙草のアンニュイな朝はどっちもこっちも にっちもさっちも沈んだ気分は深海魚今日という日はすでにあった過去のようで経験し終えた情報のようで通信手段の量子化は経済活動をしり目に新たな神を見せている猥雑さは想像力の翼を萎えさせるそして経済活動は貧弱な幸福感を餌にして一生の大半を牛耳っているそんな世界に馴れ合うこともできず自己満足と倫理が混合し合った善の押し売りに辟易し言葉の端々にぶら下がる自己責任...
ビジネスの 行き着く果てから ゴミの山 大地も海も 地球のそらまで落ち葉舞う 唸る北風 打つ粒の 雨も凍える 雪に変わりて常世から 帰り花咲く ヒガンバナ 終し赤にぞ 秘めたる心は...
薔薇は自らが薔薇であることを証明もせず咲き誇る血の鮮やかさで、皮膚を裂く棘の上に瞑想している獅子は自らが獅子であることを証明もせず僕は僕であることを恐れはしない約束された生死はすでに過去のもの明日死す者はすでに契約の内に死んでいる世界に隠れた知恵は隠すことでありのままを現すそのありのまま が美なのだ鳥は賢しい手技を空に捧げ風で設計された翼を手に入れた人間の翼への進化は思考に結実し時間と思...
秋深し 人間同士の 黄昏か 死体を並べて 国土を讃うこころして 祈念が届く 神ならば 込めた思いが 世の有り様こもり人 生産性あらば 経済人 社会の参加 多様にありて...
人間は 同じ成分 同じ五感 前頭葉にふる スパイスの違い左右の手 神を似せたか 神真似の 生かすも殺すも エゴと知りえば投票率 最初に半分 放棄して 僅かな残りに 支持率争いて...
未来にも 過去にも起きた 始まりは 人は偏見を 学び直すこと喜びは 生きていることと 笑む子等の 希望に隠した 社会の保険夜には 目が見えぬのに 昼にも 見えぬ心うち 誰ぞあざむく ...
階段を 夜の明かりが 這っている 光も疲れて 背を伏す今日と明日へと続く 行く先知らない 労働は 明日に終わる 人々を知らず憎しみの 相貌(すがた)が魚に あったなら 鳥にも牛にも あったなら...
忍び寄る 終(つい)を見るか アキアカネ 道の上にて 天を眺める青空に 何を急ぐや 紅葉狩り 静かに座して ただ山となれコスモスに 止まるビードロの 秋津かな せわしく動く 球体の星で...
香ばしき 匂いたつかな 安銀座 煙も油も 甘き焼き芋も 血流に 耳を澄ませば 月の浜 赤き潮騒に 人は眠れる月も鳴く 時の奴隷の その中で 身を置き馳せる 壁の向こう側 ...
花冷えの 新芽に雨の 涙かな 喜びにみち ふるえて空へいろいろな新芽がふき出してきたと思ったら寒い風と冷たい雨が降ったそれでも草木は喜びに包まれているように見える期待に満ちてつぼみをふくらませ空にひかりを求めている弱く、まだ優しげだがいのちは激烈であるああ…ごきげんよう!まぼろしの春おまえが姿を変えるひとときに住むすべての生きものたちよぼくとともに季節に目を見張れ!...
笹やぶを かきわけて住む 赤鳥居 稲荷古びぬ たえて来ぬ人道を横にずれる丸木を組んで石を敷き詰めた階段入ってみる木々の枝が張り出し空を見上げると壊れたかごのようだ赤鳥居があり、その奥に稲荷がある稲荷も歩いていたぼくは歩いて来たともに旅路を歩いている木々のつぼみも草花のつぼみも芽吹いて太陽にむかって歩き出すぼくも歩き出す目覚めた蜘蛛も、蟻もせっせと歩き出すみんな運ばれていくぼくも踵をかえして...
陣を張る 腐葉の下は 古戦場 隊列組んで 水仙並ぶいつ芽が出たのかつぼみがそろって顔を上げている思えばここは古戦場だったらしい戦いで散った花はいつも徒花だった…それでも散り行くことにはちゃんと意味があったのだろうと思う帰りは神社に参拝でもしていこう日を追うごとに春である...
地蔵さま? ここにおわすは 道祖神 足もと開ける 若葉の道次まだ落ち葉や雪折れの枝が散らばる遊歩の道をあるいた。進むとヒガンバナの群生がある秋までに花の養分をためるためであろうか威勢がいい落ち葉の下にも新芽の草葉がかくれている目を覚ます春の道をこころに問いかけぼくに示しているようである...
大宇宙 山端をなぞる 星の海 夜をふかめて かおる梅花はいつの夜も新しい。朝に限らず。夕に限らず。強迫的な昼に限らず。魂をいざなうような神秘さで心を開いてゆく…宇宙よ。地球を包んでさすらう大いなる魂よ。ただ野生であれ、憐憫も、同情もなく、ただ鮮烈であれ。その鮮烈さゆえに生きとし生けるものの鏡なのだから。...
またひとつ 明かりの消えし 街裏で ひとり迎える 可惜夜の月春になるとベランダから夜の街を見るのが好きだ。街路灯の後ろで落葉の梢が動き始めている。もうすぐ闇に思い思いの顔をあらわすだろう。存在感を増して、それぞれの言葉で語りだすのだ。それは… もうすぐ。アパートの明かりが消えた。夜の明かりは不思議にこころをくすぐる。明かりはなにか存在の証明(照明)なのだ。空を見上げる。傾いていく月を見...
足しげく 通いなれたし セコイアの ゲートのさきに ユべリアの窓遠くなった過去を思い出した。うたのように足しげくというわけではないが、足しげく通えばよかったと何度も思った。今は通わなくなった公園にはセコイアやマロニエ、オオヤマザクラ、また低木のツツジやアベリアのブッシュがある。ベンチで待つことも楽しかった。公園を出るところに、道を挟んで宝石店があった。四季によってか少しづつ展示演出がかわっ...
春分けて こよみの中の 三月は きみと祈りと 彼岸に渡して…何年となく春はいつも分けてきた。季節を、過去を、わたしとあなたを、此岸と彼岸を…その永遠の刹那は、今ここに生きている私たちの刹那でもある。時は取り返せない。もし取り返すことができたとしても、その時は、いつも未来の時間となるだろうし、その未来の時間は、つねに過去の時となってゆく。まるで、時とはうつろう美のようだ。ただ、後になって振り返...
ものほしで 風に手をふる コートかな 寒凪のそらに わかれを告げて陸橋を越えてショッピングモールまで歩いた。風が心地よく、線路は立ち並ぶ家々に消えてる。ふと見渡すと洗濯物が多い。日光浴をしているようにもみえる。寒の虫干しといえるだろうか。東北にも早い春が来る。若い風があしにまとわりつく。腕にも肩にもまとわる。これは少年たちだな、とかんじる。そして、まだ少年であれ、とおもう。人と同じようにそ...
あゆむ子ら かげもゆらいだ あかね道 こだまかえして 行きゆきて聲茜空の道を数人の小学生が歩いている。それはいつの日の光景だっただろう。伸びた影が重なりあって恥を知らない声はよく通る。思わずハッとするその声は遠い過去から届く自分の声だ。それはまっすぐで心地よい。いつかまっすぐに話せなくなった者にはうらやましささえ覚える声だ。過去に思いをはせながら、歩きながら、自分の内奥の声に耳をすました。...
地上へと のびるひかりの 春の手は 枝もわたしも 小鳥も抱いて風が光を運んでいる。小さな庭に出る。ワームムーンの翌日、日なたの壁をクモが動いている。啓蟄も六日に過ぎた。土が活動を始めている。豆乳とトースト食し庭に出た。葉が生い茂り、日陰になる一角にスペースを作り、シェードを張ろうかと考えた。初夏には木陰でひととき思索にふけるのもいい。庭に出ているときガス設備の保安点検のしらせが来た。昨年...
残雪に 浮かぶウサギの 耳たてて 見下ろす里にも 春がくるかもひがし山の一角に残雪か見えるどことなくウサギに見えるそれは右耳が欠けている今季の大雪のせいだろうかしかしそれがまたいい雲はこぶ陽風に聞き耳をたてているようにも感じる散歩をしている姿も多い土曜日はまた道行く車も多かった春は足元から空へ向かって動き出している春鳴りの音もまた 鼓動のように聴こえるはるはやて(春疾...
枯草に つたいし清き 雪しろの 産声かさね とうとうと春…東南に面した斜面にある古き桜の古道を歩く。まだ雪深い東北にも日々春が近づく。雪で折れた桜の枝があちらこちらに散らばっている。古道には残雪も残り、溶けさった下からは去年の落ち葉が顔を出す。水分を含んでふかふかした腐葉土にも感じる。三寒四温、春は近い。断捨離にたえた樹からも、地面からも、まもなく今年の子らが顔を出すに違いない。...
清爽(かわらか)な 思索は天に届き 秋の道は 薄焼き煎餅の音がする……ひとときÓlafur Arnalds で「 Particles ft. Nanna Bryndís Hilmarsdóttir」を...
草むらにきえる君のように ― 消えていきたい風の歩調に歩調を合わせて触れることもなく― 過ぎ去っていきたい時のように無心にひとかけらの細胞も残すことなく消えていきたいボクは大気を広がり時間の鼓動となってとけさるように 薄れゆくひかりのように流れゆく川のように 浮かぶ雲のように遠いほしぼしのようにソラ(宇宙)のようにように ように…ヨウ二離れ去り 離れさる地球はボクの肉体だったあふれる海はボクの血液だっ...