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  • 第109回 不健康自慢

    第73回で、20歳以降、綺麗に5年おきで腎臓結石を患ってきたことを述べたが、3年前、戦々兢々としながら迎えた45歳は、無事に乗り越えることができていた。ああ、これも転職して生活習慣が変わったおかげよと自己満足に浸っていたら、昨日、会議中に、全くイレギュラーに、そして全く突然に、尿路に異変を感じた。8年ぶり6回目の結石である。 これまた下の話で恐縮であるが、これまでと違ったのは、石が尿管に到達するまで気付かなかったこと、従って「死んだ方が楽」とさえ思える疝痛に襲われなかったこと、そして確かに石が尿管を通過するのを認めたのに、出てきたときに便器に当たるカチンという音がしなかったことである。恐らく、…

  • 第108回 遠くへ行きたい

    Osaka Metro本町駅の、御堂筋線と中央線の乗り換えエスカレーターに、「フェリーさんふらわあ」と鹿児島県による共同企画『2021年 鹿児島おおすみ12星座占い』のポスターが貼られている。大隅半島の絶景スポット・絶品グルメの12種類を「ラッキースポット」「ラッキーフード」として、今年の運勢を占うという企画である。 駅貼りの観光ポスターは往々にして、激しく旅情を掻き立ててくるので、旅好きには困った存在であるが、エスカレーターを上りながら一つひとつのポスターを観賞し、降り立つ場所にある最後のポスターにこんなフレーズが書かれていた。 「きっと未来は明るいでしょう。必ず会えると、すみっこから願って…

  • 第107回 親分の背中

    前職に、心の底から慕っていた「親分」がいた。 親分との出会いは22年前。親分38歳、私は25歳。夢破れ、無為な日々を過ごしていた私を拾ってくれたのが親分だった。モラトリアムと言いながらその実、この先の人生を模索することさえできず、しかし生きていかねばならないので、塾講師のアルバイトをしていた。塾なので夜の商売。昼過ぎまで寝ていたら、校舎長だった親分から電話がかかってきて、「お前な、その歳で定職にも就かずこんな時間まで惰眠を貪っとったらアカンやろ。社員登用の手続取っといたから、人事部に電話して面接の日程とか聞いとけ」、と。 3日後に人事課長との1次面接、さらにその3日後に役員面接、そしてその翌日…

  • 第106回 花道に雪が舞う

    吉本新喜劇の内場勝則・辻本茂雄が、座長を勇退した。就任から20年。今年で60周年を迎える吉本新喜劇の歴史の、実に3分の1もの間、屋台骨を支えてきたのだ。花紀京や岡八朗を「新喜劇の巨星」と呼ぶことに異論などあろうはずもないが、20年の重みはやはり大きく、2人は紛う方もなく、「新喜劇の歴史に残る名座長」である。それだけに、喪失感も大きい。 正直に言えば、内場座長はそろそろその日が来るのかな、とは思っていた。舞台やテレビドラマなど、新喜劇以外での活躍も増えていたし、若手の成長も目覚ましく、後進に道を譲るような予感というか、覚悟はできていた。しかし、辻本座長は、まだまだ集客力も高く、「筆頭座長」として…

  • 第105回 本屋さんの行く末

    昨日、仕事の所用で1年半ぶりに中百舌鳥駅に降り立った。引っ越したり転勤したりで離れた街は、その後必ず発展するというのが私の人生の常であるが、久々の中百舌鳥駅前はあまり変わっていなくて、少しほっとした。が、一つだけ、引っ掛かる光景があった。駅前のTSUTAYAが真っ暗なのだ。聞けば、9月末で閉店したらしい。前職で週に1回は中百舌鳥に通っていて、周辺でそれなりの品揃えがある書店はここくらいだったから重宝していた。それだけに、これは大いにショックだった。 我が家の近所でも、弁天町の大阪ベイタワーにあった、文教堂系列のキャップ書店が3月に撤退した。港区内には小さな書店が数店と、ライフ弁天町店の2階の書…

  • 第104回 入院回顧録(二)

    さて、入院は1か月近くにも及んだので、勤務先には大層な迷惑を掛けた。人生で初めての転職をし、昨年7月から今の会社でお世話になっている。11月からは店舗のマネジャーを任され、新店の立ち上げをしたところだった。そして評価をいただき、2月に契約社員から正社員に切り替えていただくことになった、その矢先で開けた大きな穴だったので、ただただ申し訳ない気持ちに苛まれ続けた入院生活だった。 しかし、入院翌日には、事業部長と人事部長がお見舞いに来てくださり、「向こう1ヶ月は他店舗のメンバーで応援する布陣を組んだので、何ら心配することなく、療養に専念してください」と言ってくださった。次の日には、応援に入ってくださ…

  • 第103回 入院回顧録(一)

    1月末から昨日まで3週間余り、入院していた。病名は心不全である。 11月の中ごろ、逆流性食道炎を患い、近所の消化器内科に通院していた。胃カメラ検査も行い、薬を飲み続けていたが、一向に良くならない。再診の度に薬を一つずつ増やされては「これで暫く様子を見ましょう」と言われるのだが、咳が日に日に酷くなるし、前に屈むだけで胃酸が逆流してくる感じがしてとにかく辛い。そのうち、食欲の減退と反比例してなぜか体重が増え続け、夜も眠れぬほどに呼吸が苦しくなってきたので、これはおかしいと思い、別の内科を受診したら、レントゲンを見て医師が一言、「心不全や。紹介状を書くけど、すぐ入院やで」。心臓の大きさが通常の2倍以…

  • 第102回 吉本新喜劇の「不易流行」

    吉本新喜劇が大好きである。土曜の半ドン授業を終えて小学校から帰宅し、昼飯を食べながらテレビで放映される新喜劇を見ていたから、幼いときからずっと親しんできた。時間に余裕のできた最近は、なんばグランド花月(NGK)やよしもと祇園花月の舞台をしばしば堪能している。ライブの迫力はまた格別で、四十路を迎えて、ますますその魅力にハマっている。 ところで、ある週の毎日放送の放映で、辻本茂雄座長の公演回を見た人たちによる、毎回同じでつまらないというネット上の書き込みを目にした。確かに「毎回同じ」である部分は多いが、「毎回同じ」ところでちゃんと笑いは起きる。私は、この回の公演をライブで観ているから、その笑いがサ…

  • 第101回 新・北国の春

    新卒入社以来、20年余に亙って勤めてきた会社を辞めた。毎日毎日、ゾンビのように屹立してくる仕事に立ち向かい、自らを省みる心的余裕もあまりなかったが、どこかに「このままでよいのか」という、漠然とした閉塞感も覚えていた。第99回でも綴った、1年前の義父の死をきっかけに、もう少し家庭を顧みたいとも思うようになったし、手に職をつけてキャリアアップを図りたいとも考えた。 そういう訳で、退職を機に、というのも皮肉ではあるが、社会人になって初めて、有給休暇というものを行使し、所定の公休もつないで1か月まるまる休んだ。それまで残業や休日出勤の日々であったから、この落差はあまりに大きく、定年退職した人はきっとこ…

  • 第100回 百物語

    2008年の正月に始めた拙ブログも、途中、3年ほど放置したこともあったが、漸く100回を迎えることができた。私が拙文を認(したた)めるに際して範とした方のブログがあるのだが、この方は1997年に開始され、2005年に368回を以て擱筆された。そこまで続けられるかどうかは分からないけれども、まずは「100回」を目標としてみた。週に1本というペースを確立し、そのペースで行けば、2014年の秋くらいに100回に到達できるという算段だったが、これで生計を立てている訳でなし、誰かから次回を心待ちにするファンレターが届く訳でなし、徒然の慰みに書き散らしているだけの駄文であるから、これだけの歳月を要してしま…

  • 第99回 決意を翻して決意する

    2016年1月1日午前0時、タバコをやめた。「強い決意を持って、禁煙など断じてしない」と公言していたにも関わらず、である。「やめた」とかな書きにしたのは、「止めた」で表現は合っているのだろうが、心情的には「辞めた」という気もするからである。禁煙と言うより「卒煙」と記した方がしっくりくる。それにしても、およそ四半世紀に亙って続けてきた生活習慣を、急に変えることができるのか。1月の中旬には大きな仕事を抱えていたので、せめてそれが終わってからではダメか――などと家人に泣きついてみたが、「あかん」と一蹴されて終わった。そう、この「卒煙」は、家人の強い命令の下に遂行されたものなのである。 もともと家人は…

  • 第98回 運のない男

    年賀状の発売が、既に10月末から始まっていたということを知らなかった。例年は11月に入ってからの発売開始だったように記憶している。昨今では年賀状を出す人も年々減少していると聞くが、早くから売り始めて話題化を図り、発売枚数を少しでも伸ばそうとする戦略なのであろうか。だとすれば、早くから売り始めたことすら知らなかった人間がここに1名いる訳であって、もっと派手に訴求を図るべきではないのだろうかと余計な心配をしてしまう。年賀はがきの販売ノルマに苦しむ郵便局員たちは自爆営業に走り、金券ショップに売り捌く際の差額は自腹というのだから、かかる憂慮は尚更である。 それはさて措き、年賀状というものは、出す(書く…

  • 第97回 「ございます」の美学

    先日、料理研究家の岸朝子氏が、91歳で死去した。氏の名を広く知らしめたのは、申すまでもなく、テレビ番組『料理の鉄人』であった。番組が終了して既に16年が経過するので、そんな番組があったことを知らないという若い人も多いだろうが、それでも逝去に際しての報道で、初代の鉄人3人からのコメントが寄せられるあたりに、今でも、この番組での姿こそが氏の印象として人々の記憶に刻まれていることが伺える。中でも、「おいしゅうございました」は、氏の人となりを表す決め台詞として夙に知られる。 そんなことを考えながら、「ございます」とは何と美しい表現であろうかと、今更ながらに思うのである。英語では何であってもbe動詞で済…

  • 第96回 夏炉冬扇

    大阪港に引っ越してきて、2度目の夏を迎えた。一昨日から私も休暇だが、今日は終わらぬ仕事を片付けに、誰もいない会社に出向いたから、全く心身が休まらない。それはさて措くとしても、夏休みに入って、朝から海遊館への観光客が地下鉄大阪港駅に降り立ち、その大群を掻き分けながら都心向きの電車に乗り込む日々であるから、出勤前から疲弊している。 しかし、疲弊の原因は、我が住まいにもあるのである。 夫婦2人暮らしに広い部屋は持て余し気味ということで、1部屋を減じた物件を選んだのであるが、今の物件の1部屋はロフト式なのである。ロフトにしては十分に広く、天井も低くないのでよいのだが、暮らしてみて初めてわかったことがあ…

  • 第95回 「お疲れさま」を巡って

    社を挙げての大きなイベントがあって、昨日まで3日連続、毎朝5時に起床していた。会場ではずっと走り回ったり大声を上げて回ったりで、さすがに最終日の3日目は立ったまま意識を失うことができるほどに疲労の極致に達して、今日は普通に出勤の家人に叩き起こされる形で一旦目覚めたものの、本気の二度寝を実践して、正式な起床に及んだのは西陽が差さんとする16時半である。よくまあ眠れるものよと我ながら感心するが、そんな私は今日から夏期休暇だ。 そのイベントで、撤収作業に最後まで立ち合い、全スタッフを見送ったのは我が上司である部長である。汗臭さ全開の体を引き摺って会場を後にするスタッフたちの個々に、「お疲れー!」と声…

  • 第94回 ホテルで会ってホテルで別れる

    過日、藤原竜也主演の『ハムレット』を観に梅田芸術劇場へ行ったときのことである。「梅田」を名乗るものの、地下鉄で行くなら御堂筋線の中津で降りる方が近いので、そのようにしたのだが、最寄りの4号出口を出て、地上の様子がおかしいことに気付いた。どうも空が広いのである。振り返ってみると、そこに聳えていたはずのビルがない。ここに建っていた三井生命ビルが、いつの間にか解体されていたのだ。 このビルの上層階には「三井アーバンホテル大阪」があって、地下鉄の車内放送でも、長らく「三井アーバンホテル大阪、大学受験の河合塾大阪校へお越しの方は、次でお降りください」と流れていたから、記憶にある方も多いだろう。 話は今か…

  • 第93回 修学旅行の本義

    先日、知り合いの小学生の子が修学旅行に行ってきたと言うので、「どこに行ったん?」と問うてみた。答えて曰く、「明治村と、名古屋港水族館と、ナガシマスパーランド」と。 更に続けてみた。「ふうん。ところで『修学旅行』というのは読んで字の如く、『学問を修める旅行』なんやけど、明治村ではどんな学問を修めてきたん?」と。しかし、「……」と答えに窮している。可哀想なので、「『学問を修める』というのは、それによって学びを完成させることを言うねん。開国以降の明治時代の文化や文明について、学校の授業で習ったようなことがあれこれとリアルに再現されていて、ほっほーんと思ったやろ?」と助け船を出してみた。けれども、ます…

  • 第92回 保険屋ガールズ

    昼休みの時間になると、勤務先に某保険会社のセールスレディが現れるのだが、あれがどうも苦手である。 最近は忙しいので、会社の1階にあるコンビニで弁当を買い、自席に持ち帰って食べるのが習慣化しているのだが、さて昼休みなのでコンビニに行こうと思ってエレベーターホールに行くと、そのセールスレディが屹立して待ち構えている。昼休みは、どの会社も一斉にランチに繰り出さんとするから、3台あるエレベーターもなかなかやってこない。じっと待っているしかないから、“エア羽交い絞め”よろしく近寄ってくるのだ。 「こんにちはー、○○生命です! この度、△△から私、□□に担当が代わりましたので、ご挨拶させていただきます。よ…

  • 第91回 事件は現場で起きている

    秋風の心地よさを感じるようになった今日この頃に、夏休みのことを未だにねちねち言うのはどうかと思うが、緊縮財政下、今年も夏の逃避行が叶わなかったのは痛恨の極みである。9月以降の三連休は全て三連勤、今日など台風と闘いながらそれでもやはり「三連休は三連勤」なものだから、方々へ旅行に行ったという人様の話を聞けば、恨み節の一つや二つも言いたくなるというものである。自宅で地図を広げては“妄想旅行”に出掛けるのが、せめてもの慰みだ。 基本的に海外には興味がほぼ皆無で、それよりは死ぬまでに国内の全都道府県を制覇したいと願っている。未踏の地は、青森、大分、宮崎、鹿児島の4県を残すのみ。これらの踏破も急ぎたいとこ…

  • 第90回 夏の忘れ物(二)

    怒涛の如き忙殺の日々を経て、漸く夏期休暇に入っている。夏休みだけはしっかり7日間もらえるので、旅行に出る社員も多いようだが、私は休みになると体調を崩す、というより、それまで抑圧してきた病原が休みに入った途端、一気に顕在化して体を蝕むのが常であるから、よくできた身体と言うべきか、とにかく夏風邪でダウンである。サービス業従事の家人は盆休みなど関係ないので、誰もいない静かな部屋で、普段では考えられぬ怠惰な時間を過ごしている。 しかし、悠長に休んでいる場合でもなく、溜まる一方である目前の課題を思うと、全く落ち着かない。その中の一つに、来年の6月に某大手出版社から刊行される実用書の執筆があって、休み中と…

  • 第89回 つばさよつばさ

    先日、購読しているANAメールマガジンから「需要喚起2」と題し、本文には「sample2」とだけ記されたメールが届いて、少々吃驚した。ANAに搭乗したのはこれまでの人生の中で僅か4回、しかも出張など必要に迫られて乗っただけである。マイレージも、出張時のチケット手配が楽だからと総務部に勧められてカードを作っただけでほとんど貯まっていない。もともと飛行機に乗るなら基本的には鶴のマークを選んでいたが、別にANAが嫌という訳ではなく、マイレージカードはJALしか持っていなかったからというだけのことで、JALの搭乗回数だって知れているのである。そもそも飛行機というものが苦手であったから、時間や距離の関係…

  • 第88回 私の頭の中の消しゴム

    先日、来春入社予定の新卒内定者たちを前に、30分ほど話をする機会があった。弊社の魅力とか、新卒に期待することとか、そういうことを話せばよかったのだろうし、もとよりその予定だったのだが、“まくら”のつもりの、入社からこれまでの自分の歩みを語るだけで時間が来てしまい、本題にまで行き着けなかった。人事部のメンバーが苦笑しているように見えたけれども、喋っている当人こそが最も情けなく思っている。 ただ、こういうことは、私にとっては極めて日常茶飯事である。あること(A)を話していているうちに、付随する話題(B)が思い浮かび、そっちへ話が及ぶ。そのうち、今度はBから派生する別の話題(C)を喋ってしまう。かく…

  • 第87回 引越顛末記(二)

    大阪港(やはり「天保山」と言わねば通じないが、めげずに第一声は「大阪港」で通している)での新生活も、驚くほどあっという間に1週間が経った。漸く諸々が落ち着いたところであるが、引っ越しって、肉体にも精神にも財布にも、こんなにきついものやったんかいなと、大概疲れ果てている。 引っ越し代を少しでも安く上げようと、レンタカーを借りて、細かい物品は自分たちで運んだのだが、三国と大阪港の間を3往復もするのに、淀川左岸線が開通して画期的に速くなったからと阪神高速を使ったものだからその料金が嵩み、あまり意味がなかった。北浜にある営業所に車を戻せたのが23時。それから地下鉄で新居に帰り、何とか寝床だけでも確保し…

  • 第86回 引越顛末記(一)

    昨日、大阪港への引っ越しと相成った。相変わらず「天保山」と言わないと通じない人が多いが、住所は港区築港1丁目、何と言われようと「大阪港」である。引っ越しの理由も前回記したが、我が家の財政状況を鑑みて、「今より3万5千円以上、家賃を抑えよう」というところから、物件選びが始まった。 第27回でも綴ったが、私の人生は正にジプシーであって、今度で8つ目の住まいである。平均すれば5年に一度転居している計算になるが、なかなか根を下ろして「その土地の人」になれない。出身は枚方であるが、ここで暮らしていたのもわずか4年ばかり、“生まれ故郷”のことを時々抒情的に語ってはみるのだが、私のどこを叩いても、北河内の匂…

  • 第85回 君の名は

    今月末に、大阪港へ引っ越しをすることになった。子どものいない夫婦二人暮らしに2LDKのマンションは些か持て余し気味であり、1部屋は実質的に物置のようになっているから、それなら部屋を1つ減らし、物も減らして、身の丈に合った住まいにしようではないかと考えての決定である。共働きで休みも限られているから、準備はなかなかに大変であるが、とりあえず、私にとっては最も苦手な「断捨離」の実行中で、「1年以上見ていないものは処分」というルールを決め、休みの日ごとにゴミ袋10袋ほどずつ捨てている。 ところで、方々から「どこに引っ越すん?」と当然訊かれるのであるが、「大阪港」と答えると、10人中9人に「?」という顔…

  • 第84回 迷子の子猫ちゃん

    勤務先は商都大阪のど真ん中、本町の御堂筋沿いにある。Wikipediaを見ていると、「『淀屋橋-本町の会社に就職すること』がステータス・シンボルと言われる傾向がある(東京人の「丸の内」に匹敵するブランド・イメージ)」といった記述がある。「どこで働いてんの?」と訊かれて、放出だの千林だの花園町だの駒川中野だのと答えるよりは、「本町です」と言った方が聞こえがよいということなのだろうが、現業時代に下町の店舗を経験してきた私にすれば、スーツ姿の人たちが、言葉も交わさず足早に歩き去ってゆくようなところよりは、ヒョウ柄の衣裳をお召しになったおばちゃんがずけずけと寄ってきてあめちゃんをくれるような、ど厚かま…

  • 第83回 ヤバいよヤバいよ

    4月も半ばを過ぎた。新入社員たちの前に、間もなく立ちはだかる壁は「五月病」だと思っていたら、それを待たずして、僅か1週間で「会社に来なくなる」事例があちこちで起きているという。これが話題になった端緒は、ある参議院議員が自身のブログで明かした、「新人秘書が2日目に腹痛で休み、3日目に電車遅延で遅刻、4日目は朝9時にトイレに立ち、そのまま戻ってこなかった」という話であろう。辞めたければきちんと手順を踏めばよいのに、どうしてこういう夜逃げ(朝逃げ?)のようなフェードアウトの仕方をするのだろうか。どんな理由があったにせよ、トイレに行ってそのまま帰ってこないなんて、凄いことを考えるものである。 世のすべ…

  • 第82回 子どもは大人の鏡

    いきなり下の話をして誠に恐縮であるが、今日、外回りから戻る途中に腹痛を催し、命からがら会社まで戻ってトイレに駆け込んだ。ところが、事無きを得て安堵したのも束の間、さてと思ったときに、我が身に降りかかった悲劇に気付いたのである。トイレットペーパーがストックを含めて皆無なのだ。こんなときに限って、ポケットティッシュの持ち合わせがない。トイレ内に誰もいないのを入念に確認した上で、隣の個室に瞬間移動を図って何とかなったのであるが、前屈みでいそいそと移動する様は、大の大人の姿として、あまりに情けなかった。 勤務先が入居するビルというのは実に清掃がよく行き届いたところで、テナント入居の社員どもが狼藉の数々…

  • 第81回 通勤天国

    3月も下旬となって、新年度の準備に慌ただしい人も多いだろう。この春から、進学や就職で新生活のスタートを切る人にとって、住まいをどこに構えるかというのは、ちょっとした問題ではないかと思う。 私が通ったのは、千里の丘に聳える某マンモス私大であったが、大学近傍には「学生街」が形成されていて、スーパー・コンビニから飲食店やビデオレンタル店、果ては雀荘に至るまで、一通りのものは揃っている。日常生活を営むのには全く事欠くことはなく、親元を離れた生活を営む人で、卒業して就職した後もそこに住み続けるケースは少なくない。ただ、最大のネックは、ご学友の方々に屯(たむろ)されることである。私は決して人付き合いが苦手…

  • 第80回 さよならのこちら側

    往年の名優、沢村貞子は、立ち上がるときに「どっこいしょ」と言った自分に衰えを覚え、女優引退を決意したのだという。方や、座るときに「よいしょっ」と言ってしまう私は、自らの去り際を見出すこともできず、死に後れた老兵よろしく、怠惰の日々を重ねている。 最早、自身の年中行事と化してしまったので、周囲には「今年もまたか」と呆れられるのであるが、この時期、去りゆく仲間たちの門出を見送っては、正に死に後れた老兵のような思いに駆られ、鬱屈した気持ちになるのでよろしくない。いや、彼らは戦場に散っていった訳では勿論なく、むしろ次のステージに向かって力強く羽ばたいていくのであるが、別れの哀しみや淋しさを覚えるととも…

  • 第78回 続・それぞれの場所

    「来年の話をすると鬼が笑う」と言うが、去年の話をいつまでもやっていたら鬼は怒るのだろうか、それとも深く悲しむのであろうか。何にせよ今になって昨年末の話をして申し訳ないのだが、第65回紅白歌合戦における『あまちゃん』特別編があまりに素晴らしくて再び「あまロス」を発症し、年が明けて2ヶ月あまりが経とうというのに、未だに寛解の兆しすらないのである。 私は大晦日まで仕事だったので録画をしていたのだが、末代まで残さんとする部分だけをトリミングして編集し、繰り返して見た回数はおそらく既に100回を超えている。そして、同じ箇所で笑い、同じ箇所で涙を流す。 アメ横の奈落で臥薪嘗胆を重ねてきたGMTたちが、NH…

  • 第77回 「ゆとり」の矜持

    『リーガル・ハイ2』が先日フィナーレを迎えた。最終回の視聴率は18.9%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)で、同じ堺雅人が主演の『半沢直樹』のそれが40%を超えたことを思うと敗北感がなくもないのだが、個人的な面白さは本作の方が明らかに、「倍返し」ならぬ「倍以上」であった。堺雅人の長尺の台詞回しには毎回舌を巻いたが、とりわけ最終回における、岡田将生演じる羽生晴樹と対峙する法廷での弁舌は、演者が役柄に入り込んだというより、「古美門研介」という役柄が演者に憑依したと言って差し支えのないものであり、これにはもう、圧倒される他なかった。ただ、それ以上に度肝を抜かれたというか椅子から落ちそうになったのは、羽…

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