春はあけぼの
春はあけぼの。夏は夜。秋は夕暮れ。冬はつとめて。覚えたよね。昔昔。あの頃は単純に、清少納言はこんな感じが好きだったんだって思ってたけれど、これって、全部、朝方とか夕暮れから夜だよね。今思うと平安貴族の女性は、ただただ、夕暮れから朝にかけて情緒的に生きていたんだとも思える。昼日中、気持ちのいい青空の下で白い雲を見上げることは少なかったんじゃないだろうか。春。厳しい寒さが和らいできた頃。通ってくる男を見送りに、羽織もの一枚で外が見えるところまで行ける季節になった。長い寒い冬が終わり、久しぶりに見る明け方の空。男と離れ難き時を過ごしているうちに、共にその美しさに佇む時もあるだろう。2人で見る明け方の空は格別だろう。あるいは、男が去った後、愛おしさの余韻覚めやらぬまま、1人、夜が明けつつある静謐の時を眺めている。そんな...春はあけぼの
2021/03/23 06:15