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2020/05/29

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  • 輝く白髪

    私の頭に白髪が混ざっていた。 しゃがんで介助をする事が多いから、頭をよく見られる。 チヨさんが度々 「綺麗な頭だね」 と、言ってくれる。 「ええっ、こんなごましお頭の何処が綺麗なの?」 と聞く。 「白髪が綺麗だよ」 と、言う。 「そんな事言ってくれるのはチヨさんだけです」 と、ちょっと複雑な思いで鏡で確認してみる。 確かに見ようによっては白髪だけが輝いて見えるのかも、と思う。 でも、やっぱり髪が白いと老けて見えるし、みっともない気がする。 私は白髪染めをする。 暫くはチヨさんからお褒めの言葉はないが、また白髪が出てきたら褒めてもらう。そして私はまた白髪染めする。 チヨさんの賛辞を白髪染めの合図…

  • 輝く白髪

    私の頭に白髪が混ざっていた。 しゃがんで介助をする事が多いから、頭をよく見られる。 チヨさんが度々 「綺麗な頭だね」 と、言ってくれる。 「ええっ、こんなごましお頭の何処が綺麗なの?」 と聞く。 「白髪が綺麗だよ」 と、言う。 「そんな事言ってくれるのはチヨさんだけです」 と、ちょっと複雑な思いで鏡で確認してみる。 確かに見ようによっては白髪だけが輝いて見えるのかも、と思う。 でも、やっぱり髪が白いと老けて見えるし、みっともない気がする。 私は白髪染めをする。 暫くはチヨさんからお褒めの言葉はないが、また白髪が出てきたら褒めてもらう。そして私はまた白髪染めする。 チヨさんの賛辞を白髪染めの合図…

  • 今日はスペシャルデイ

    トモコさんは、 「いいの」「危ないよ!」「ダメよ~」 と、よく言っている。 とにかく身体に触られるのが嫌いだし、車椅子で移動するのも危ないらしい。 大概は 「いいの、いいの」 「危ないよ、危ないよ」 というように、1つの単語の連続だが、この3つの単語が一度に出て来るイベントがある。 それはトモコさんの爪を切る時である。 「いいの、危ないよ、ダメよ~」 と大騒ぎになる。 そんなに嫌がられると確かに危ない気がする。 しかし、どのスタッフも騒ぐのは分かっても、伸びた爪で靴下を履かせるのはもっと危ないので仕方なく半ば強引に爪を切らせてもらう。 慣れたスタッフは、 「はいはい、危ないね~ 危ない、危ない…

  • 謎の変換装置

    「今日は木曜日かね?」 『いいえ、今日は火曜日です』 「えっ、木曜日!歯医者来るね。歯を診てもらわないと困る」 『だから、今日は火曜日ですから、歯医者さんはお休みです』 「えっ、弁当?弁当なんて要らないよ」 『弁当じゃなくて、歯医者さんは、お・や・す・みです』 「えっ、饅頭貰った?」 『・・・・』 と、サチエさんとは、まあこんな漫才の様な会話を毎日している。 こちらが言った事が、全く違う言葉になって帰って来る。 『お昼ご飯ですよ』 「えっ!警察?」 とか、 『少し休みましょう』 「えっ!サンマが焼けた?」 とか。 サチエさんの耳は一体どうなっているのだろう。 特殊な変換装置でも付いているのでは…

  • 道産子の歌

    キヨさんは 「あんた何処出身?」 と質問するも、私が出身地を言ってもちっとも聞いていない。 そして、 「私は道産子」 と言って、不思議な歌詞の北海盆歌?を歌う。 その北海盆歌は出だしは 「はあ~北海名物数々あれどよ~♪」 と始まって、途中なんちゃらかんちゃらで、最後は 「ハア、売り手があっても買い手がない」 というものである。 何番もあって長いので、ゆっくり聴きたいけど中々ゆっくり聴く機会がない。 が、途中のなんちゃらかんちゃらの部分は何を言っているのか興味がある。 少しずつ覚える事にしたのだが、ただなんとなく聞くだけだと、何故か全然頭に入って来ない。 「あんた何処出身?」 が、あの歌を歌う合…

  • 時間の国の私

    タマエさんは腕時計をしていないと不安になるそうだ。 何時も革ベルトのおしゃれな腕時計をしている。 時間もピッタリ合っている。 それなのに、 「今、何時?」 と、聞いて来る。 「時計してるでしょ?」 「字が小さくて見えないんだよ~」 と、時計を見ながら言う。 残念な事に、文字盤がとても小さいのだ。 「もっと見えやすいの買って貰ったら?」 「どうせ見えないからこれでいいわ」 それなら、腕時計の意味なんてないのでは?と思ったが、口には出さなっかった。 腕時計の意味なんてどうでも良くて、タマエさんにとって時計はお守りみたいなものなのだ。 時間は分からなくても、時計があると安心っていう気持ち、分からなく…

  • ノーベル○○賞

    タロウさんの友人の知り合いだか、知人の親戚だか、とにかく知っている人に近い人にノーベル賞を頂いた方が居る様な話を聞いた。 タロウさんは認知症で、今ではその話の真相を確かめる事は出来ない。 でもその事がとっても心に残っているらしく、何かにつけて「ノーベル賞」と言って、『ノーベル賞』を乱用するようになった。 大声で「ノーベル賞、ノーベル賞」と言えば、これは職員を呼んでいる。 「ダメだ、ダメだ」も「ノーベルダメ、ダメだ」とか言っている。 寝ている時寝言でも言っている。 固い物は食べられないから、 「ノーベル固いで賞」 そして、ついにはトイレに行きたい時 「ノーベルウ○チ賞~」と言うようになった。 「…

  • 今夜のドッキリ

    深夜の巡回で、「とうとう幽霊を見た!」 と思ってドキッとした。 4人部屋はカーテンで仕切られている。 薄暗い部屋のカーテンの下から2本の白い足が覗いていた。「もしかして、アイコさん立ってますか?」 カーテンを開けると普段は車椅子のアイコさんがベットの柵に掴まって、ちゃんと靴を履いて立っていた。こんな事は今までに無かった。一人で歩いて転んだりしたら大惨事になると思うと 2重のドッキリだ。 ああ、そうなる前に見つけて良かったと天を仰だ。他の職員が、「以前心臓が止まるかと思ったほど驚いたことがある」 と話をする。 「巡視時、AさんのベットにB さんも寝ていて、ベットから4本の腕が覗いていた」 と言う…

  • メッセージソング

    「ご飯まだですか?お腹すいたよ〜」と、フミさんが言う。 「はい、少しお待ちください。順番にお配りしていますから」 と、スタッフが答える。 するとフミさんはあの童謡を歌い出す。 『待ちぼうけ~♪、待ちぼうけ~♪』 「私を部屋に連れてって、早く帰りたいのよ」 と、フミさんが言う。 「少しお待ちください。順番にお連れしますので」 と、スタッフが答える。 するとフミさんはあの童謡を歌い出す。 『叱られて~♪ 叱られて~♪』 「さあ行きましょう」 と、手を出すと、(こりゃまた失礼しました)とでも言うように必ず 「アハハ」 と笑うフミさん。 私は長女に生まれたということもあり、あまりわがままが言えない。 …

  • ハッピーバースデー

    ヒロヨさんは96歳の誕生日を迎えた。 みんなで誕生日の歌を歌ってお祝いをした。 でもヒロヨさんは、 (はあ?なんのことでしょう) とでも言うように、知らん顔をしていた。 「今日はヒロヨさんの誕生日ですよ。おめでとうございます!」 と、耳元で言ってみる。 ヒロヨさんは 「へえ~」 と、驚いた様に小さな声で呟かれた。 私はこの仕事をしていて不思議に思うことがある。 お年寄りの年齢がちっとも覚えられないのである。 85歳を超えた辺りからあやふやになって、みんな年より若く見えてしまう。 90歳を過ぎている方は特にだ。 誕生日に「○○歳に成りました。おめでとうございます」と言っておきながら、1週間もすれ…

  • 夢見るメガネ

    コウさんは寝る時もメガネを外さない。私は 「夢がよく見えるように掛けているんでしょ」 と、冗談で言っていた。 ところが、コウさんは本気でそう思っているんじゃないかなっと思うようになった。 コウさんは朝起きると 「目が見えないよ~」 と、言う。 長いまつ毛は、今時のつけまを付けた様で、私のと交換して欲しい。それはともかく、弱視で薄らとしか見えないらしい。 娘さんが面会に来ると声で分かるそうだ。 「昨夜、夢は見ましたか?」 と、聞くと 「見たよ」 と言う。 大体いつも娘さんの夢だ。 この前、夜中に目を開けて天井を見ながら子守唄を歌っていた。 娘さんに歌ってあげてるのかな? 夜中なので特別切なく聞こ…

  • おめえさん

    サトさんは、目の前の他人の事を「おめえさん」と呼ぶ。 「おめえさん達はえらいなあ。こんなババさんの世話をして」 と、いつもスタッフを労ってくれる。 サトさんの趣味は凄い。 道端に落ちている石や棒切れを拾って来たり、その辺に生えている草を取って来てはオブジェを作っている。 箱庭みたいにして並べたり、マジックで何か描いて並べてみたりしている。 外から帰って来てにこにこしている時、大抵シルバーカーの中やポケットに拾った物を隠し持っているのだ。 この間は拾ったジャガイモから芽が出ていた。 「おめえさん、これ見てごらんよ」 と、嬉しそうにジャガイモの芽を見せてくれた。 「お母さん、何を拾って来るの?部屋…

  • 猫とおじいちゃん

    とってもお茶目なおじいちゃんがいた。 『とんがりコーン』というお菓子が大好きでよく食べていた。 『明太マヨ』『バター醤油』など、色々な味がある事を教えてくれた。 とんがりコーンを食べる時、わざわざ人差指にはめていた。昔、そんなCMを見たような気がする。 ある時『とんがりコーン』がベットの下に4、5個転がっていた。最初は落としたのかと思って(あら、もったいない)と、拾って捨てた。 すると、次の日も同んなじ様に落ちていたので、拾って捨てた。 さすがに3日目になると、不思議に思い、どうしてベットの下に捨てるのか聞いてみた。 『猫が居るんだわ』 と、ぽつんと言われる。 猫? 落としたんでも捨てたんでも…

  • 写るんです

    エイさんは写真を撮られるのが大嫌いだ。理由はよく知らない。 大抵の方は 「写真撮りますよ~」 と言うと、にっこり笑ってくださるのだが、エイさんは逆に怒ってしまう。 なので、エイさんにはけして「写真を撮る」とは言わない。 「エイさ~ん、ちょっとこっちを見てください」 と言って、振り向いた時にささっと写すのが精一杯。 それでもカメラを見るとやっぱり怒ってしまう。 元々エイさんはあまり笑わない方。 笑顔を撮るのは至難の技。 普通の顔なら大成功なのである。 3月3日、ひな祭り。 顔の部分だけくり抜いて作った、お内裏様とお雛様の顔ハメ版から顔を出してもらって行事用の写真を撮る。 案の定エイさんは嫌がって…

  • 告白

    タカさんはとっても喋り方が面白い。 「はんやく(早く)」「まんだ(まだ)」 「いやんだ(嫌だ)」 何故か途中に『ん』が入って来る。 食べたい時、 「はんやく、はんやく」 食べたくない時、 「いやんだ、いやんだ」 と言う。 その特徴ある喋り方はとっても可愛らしい。そしてみんなを笑わせてくれる。 時々、職員が言った通りの言葉を繰り返す。 「タカさん、お茶を飲んでください」 と、お茶を渡すと 「タカさん、お茶を飲んでください」 と言う。 時々、突然全然関係ないことを言う。 「鬼に金棒」 などと言い出す。 オウムの様に繰り返す言葉や、突拍子も無い言葉が飛び出て来て、みんな笑う。 けれども私はもう一つ違…

  • 今でも現役

    毎朝目覚めると、ナースコールを押して 「もしもし、私、仕事してるかね?」 と、聞いてくる。 トモエさんは96歳だ。 昔は小料理屋を営んでいたらしい。 お役所の近く小料理屋だったので、常連客には役人さんが多かったとのこと。 愚痴を言ったり、相談したり、酔い潰れている客を、カウンターの向こうから優 しく見守るトモエさんの姿が目に浮かぶ。 店は随分繁盛したらしい。 96歳にはしては、お肌もツヤツヤで、結構な美人さんだ。そして、生涯独身。 「私、仕事しているかね?」 と聞かれて、私は最初、自分が夢を見て慌てて飛び起きた時に、(あれ、今日仕事はどうしったけ?)と、混乱している感覚なのかと思い込み 「仕事…

  • あっちの世界

    何時も笑っている。 それもただニコニコしているのではない。 「ワッハハハハ~、アハハハハア」 と、声を上げて笑っている。 まるで笑袋だ。 ご飯を食べながら、お風呂に入りながら、寝ながら笑っている。 その笑い声を聞いていると、こちらも自然と笑えてくる。 そして誰もが言う。 「この人は幸せだね」 「こんな風にボケられたら最高!」 「完全にあっちの世界に行っちゃてるね」 ヒロシさんの目は宙を泳ぎ、私たちには見えないものを見て笑っている。 腕を上げて指差したり、時々 「ハイ、ハイ」 と、手を叩いて拍子を取ったりしている。 見たい。 私もヒロシさんの見ている世界が見たい。 そこには無数の妖精や天使が飛び…

  • あんパン効果

    ミワコさんは朝ごはんを口にするなり、開口一番 「今日も不味いな~」 と、お隣のお友達に言う。 お隣さんは 「そうだな~」 と相槌を打つ。 「不味いな~」 と言いながら、美味しそうに食べて、完食される。 私はそのギャップが面白くて好きだった。 ミワコさんの家族がある日あんパンを差し入れに持って来られた。 小さな丸いあんパンが5個一袋になっている物だ。 ミワコさんはその一袋を、家族の前でいっぺんに平らげてしまった。 そして言うには 「あんパンは上手いな~」 その事に快くした家族は、毎回面会時にあんパンを差し入れてくれるようになった。 いっぺんに食べるのはやっぱり良くないと、スタッフが預かる事にした…

  • 努力の昼夜逆転!

    ヨシコさんはポータブルトイレを使っている。人の手は絶対に借りたくないのである。 でも腰を痛めてしまい、立位を取るのが難しくなってしまった。ポータブルトイレも無理なんじゃないかと思われたが、何としても 「自分で行く」 と仰る。 そこで、ヨシコさんがトイレに立ったら分かるようにセンサーマットを引いた。 夜勤日、早速センサーが鳴り訪室。 時間は掛かるが、何とか御自分でトイレに行けて、やれやれ・・・・ ワーカー室に戻るとまたセンサーが鳴る。 (あれ、どうしたのかな?)と、またヨシコさんの居室へ急ぐ。するとまたトイレへ行こうとされている。 仕方なく見守る。 5分後、またコール。今度はセンサーマットのコー…

  • 風散歩

    トキさんは可愛いプードルを飼っている。今は家族が面倒を見ていて、週に1度面会に連れて来ては可愛がっている。 ある秋の日、近くの公園までトキさんと他何名かで散歩に出掛けた。 黄花コスモスがゆらゆら風になびいていた。 トキさんは車椅子に座って、じっと目を閉じて、気持ち良い風を感じているようだった。 皆は 「わ~コスモスが綺麗ね」 とか、 「昔は鳩が沢山いたけど、今は一羽もいないのね」 「あら、あの鳩、中国人がみんな食べちゃったって噂よ。嘘か本当か知らないけど・・・」 などとお話が弾んでいた。 ただトキさんだけはじっと目を閉じていて、お話も聞いているだけだった。 向こうからプードルを2匹連れたおじさ…

  • お熱いのがお好き

    キヨシさんは戦時中、腸の病に掛かり大変苦しい思いをされたのだが、医者が名医だったので一命を取り留めたそうである。その時医者に 『何でも温かい物を食べなさい』 と言われた事を今日まで頑なに守り通している。 これが功を奏したのか、キヨシさんはもう直ぐ100歳だ。 そして今では温かい物と言うより、熱 い物になっている。 食事は全て食べる直前に何でもかんでもレンジでチンする。 温かいものでも熱々になるまでチンをする。 レンジでチンは良いのだけれど、漬物や酢の物等、味が壊れる物や、匂いがきつくなる物もある。 そんな時親切な看護婦さんが、 「これも温めるんですか?これは温めなくても大丈夫ですよ」 と 、声…

  • カキバタさん

    チヨさんが 「カキバタさんがいなくなった」 と言う。 カキバタと聞いて、私の頭の中に浮かんだ柿畑という漢字。 私は最初『柿畑さんが亡くなった』のかと思った。 「大好きな柿畑さんが何処かへ行ってしまった」 と言う。 「昔の恋人の事ですか?」 と聞いてみたら 「恋人みたいなもんよ」 と言う。 恋人の柿畑さんが何処かに行ってしまった。 昔の事だから戦争か何かで会えなくなってしまったのかな? チヨさんが結婚すると聞いて、チヨさんの前から姿を消したのかな?l 色々と想像してみる。 しかし何故、急に柿畑さんの話をするのか? 何かの拍子に昔を思い出したに違いない。 「大好きな柿畑さんが何処かに行っちゃったん…

  • 替え歌でgo

    ランコさんはとっても陽気なおばあちゃんだ。 歌が大好きで大きな声でいつも歌を歌っている。 でもカラオケだと全然ダメ。伴奏を無視して勝手に歌ちゃうから。 歌に強弱があって、変な所で突然ボリュームUPする。 それにみんなで何かの歌を歌っていると、突然別の歌を歌い出したりする。 勝手気ままな歌姫なのである。 そんなランコさんの十八番は『東京のバスガール』。 "🎵わたしは東京のバスガール 『発車オーライ』 明るく明るく走るのよ~🎵" 何時も最後の『走るのよ~』の『るのよ~』だけが大音量になる。 そしてこの曲はランコさんがトイレに行く時のテーマソングで、自分で替え歌にして歌っている。 "🎵わたしは東京の…

  • 音の無い足音

    大体足音で、誰が歩いているのか、誰が車椅子で動いているのか分かる。 特に夜は、移動している人が限られているので所在確認にもなっている。 キュキュキュと、今夜もまだ眠れないS さんが車椅子を自操する音がフロアーに響いていた。 (S さん 、もうそろそろ休む時間かな?) S さんを居室に案内して休んで頂く。 深夜私はパソコンを打っていた。静かな時間だった。 「あの~」 そこへス~ッとNさんが顔を出した。 ドキッ! あんまり無音で出て来られたのでびっくり、びっくりだ。 「あの~喉乾いちゃって・・お茶一杯くれる?」 私はコップにお茶を入れてお渡しした。 暫くすると先程休まれたSさんがキュキュキュと、起…

  • ようこそジーバーランドへ!

    ここはディズニーランドですか? いえいえここはジーバーランドです。 片方の靴を何処かに落としてくるシンデレラガール、シンデレラボーイ。 「ありのーままのー姿見せるのよー♪」って、いきなり服を脱ぎ出しちゃう。 「アア~アアア~」とターザンのように響き渡る声。 お風呂場には、寝台で上半身を上げたまま入浴するリトルマーメイド。 「鏡よ鏡、世界で一番綺麗なのはだ~れ」って鏡を覗くご婦人。 眠り姫。 そして、極めつけは【座コール】(転倒防止で椅子から立ち上がるとメロディーで知らせてくれるセンサーマット)。 座コールのメロディーが(白雪姫と7人の小人)の『ハイ・ホー』。 『ハイホー、ハイホー ・・・・♪』…

  • 『チャリンチャリン』リラクゼーション

    ナカさんの手はゴットハンドだ。 ちょこちょこと肩を撫でられただけで、とっても気持ちいい。 「ちょっとあんた、ここに座ってごらん」 と、誰彼構わず呼び止めては肩揉みを施してくれる。 力はそんなに入っていない。ただ軽く押さえる程度なのに、たった30秒位で本当に疲れがさ〜っと抜けていく感じなのだ。 何でも姉弟5人いて、女はナカさんだけだったから、父親の肩をよく揉まされたのだそうだ。 "ああ、お金を払ってもいいからずっと 揉んでもらいたいな~" とは不思議と思わない。 ちょこちょこと癒されるのが心地良いのだ。 「わたしは郵便局で働いていたからお金の計算は得意なんだよ。 こうやって揉んでやって、頭の中で…

  • 夢は続くよどこまでも②

    ユメ子さんの悩みを解決すべく、リハビリの先生が立ち上がった。 歌会始に出席するにはお金が掛かると言う悩みだ。 「もしユメ子さんの歌が選ばれたなら、僕が街頭に立って募金を募る」 と、申し出てくれたのである。 「でもね~私一人じゃ行けないから・・誰か付き添いがいるでしょ?」 「付き添い分のお金も募金で集まったら僕が連れて行きますよ。それに娘さんだって付いて行ってくれますよ」と、先生は前向きだ。 「天皇陛下に会うのよ。一体どうすればいいの? もう困っちゃうから短歌は考えたんだけど・・・送るのはやめるわ。 それにね、妹に頼んで送って貰うのも面倒だし・・・」 と、いう訳で短歌の問題は送るのを諦めて解決し…

  • 夢は続くよどこまでも♪

    ユメ子さんは夢見る夢子さんなのです。 とにかく夢が大きいので悩みが絶えない。 今の夢は小説を書いて芥川賞を狙うこと! 「ねえ~、小説を書くって難しいわね。書きたいことは決まってるんだけど、文章にならないわ」 「何を書くんですか?」 「娘のこと・・・題名は『ひまわり』、私って若い頃モテたのよ」 「じゃあユメ子さんの娘時代のことですか?」 「いいえ、娘のことよ。あの子は良い子だから」 芥川賞頑張ってください。 「それからね、歌始に出す短歌も考えないと。でもそしたら皇居まで行って、一晩はホテルに泊まって、着ていく服も買わなきゃならないでしょう?お金が掛かるのよ。そのお金どうしよう」 はあ、、 「バイ…

  • 衝撃発言

    トメさん百歳、小さいおばあちゃん。 トメさんには、トメさんそっくりなかしまし娘さんがいて、週に一度3人で面会に来る。 面会に来ると居室からはガハハ、ガハアハと笑い声が聞こえて来る。 確かにトメさんは居るだけで周りを和ませる力があるのだが・・・ 「いつも楽しそうでいいですね」 と、興味津々で聞いてみた。 「だって、おばあちゃん、私たちのこと忘れちゃってるのよ。 『どなたさんで?』とか『分からんけど、ありがとうございます』って・・アハハ」 「長女の私に『私の子供?でもあんたは旦那が違う』って言うのよ。アハハ、 じゃあ誰の子?って聞くと『隣の家』だって。百歳にして初めて明かされる新事実!! 衝撃でし…

  • ポケットいっぱいの秘密

    ペーパーに執着する人が多い。 ティシュペパーなんぞは絶好の獲物だ。 新しいティシュの箱を開封するやいなやペーパー大好き人の餌食と化す。 ティシュだけではない、ハンドペーパー、トイレットペーパー。 しかし、なぜ? 胸に詰め込み、一夜にして巨乳のおばあちゃんに変身。 トイレに行きズボンを降ろすと、パラパラと丸めたペーパーが限りなく出てくるマジシャンみたいなおばあちゃん。 シルバーカーに詰め込んで、ペーパー売りでもしてるんですか?と言うおばあちゃん。 沢山集めては、人に配り歩く配達ばあちゃん。 おばあちゃんに多いのも特徴だ。 いつか、ありとあらゆる服やズボンのポケットにペーパーを詰め込んでいるおばあ…

  • 名調査員の足元

    ミツエさんは電動車椅子に乗っている。 正義感が強く、社会的に弱い人の立場に立って、色々な活動をしてきた。その経験を生かして、施設の内外に何か不具合は無いかと見回りに余念がない。 「今カーテンを調べてるの」 と、他人様の居室に遠慮なしに入って行ってカーテンを念入りにチェック。 床にきしみがないかチェック。 狭い所にも、車椅子をカチャカチャ操作して強引に入って行き、一体何がしたかったのかさっぱり分からないが、とにかくチェック。 散歩と偽り外に出て行き、側溝にひびが入っていないかチェック。 調査、調査の毎日です。 そんなミツエさんから 「私の足元見てくれる?」 と調査の依頼が来た。 「ほら、ほら、こ…

  • 入れ歯の行方

    カズオさんは森のくまさんみたいな大男だ。何時もお腹を空かせている。 「何か食べるものちょうだいな」 と、手を差し出してくる。 そんなカズオさんの仕事は廊下をうろちょろして、何か口に入る物を探すことである。カーテンの留め具、洗濯ばさみ、その辺に飾ってある小物、クリップやマグネットなど・・・。 で、とうとう究極のものを探し出して口に入れていた。 Sさんの入れ歯が無くなったと、職員全員でゴミ箱から洗濯物の中などを探し回っていた。 そこへカズオさんがやって来てニヤリと笑った。 その口元にSさんの入れ歯が覗いていた。 まさか、まさかだよね!! 入れ歯を2重に入れたその笑顔は、クマと言うよりマントヒヒであ…

  • もう手遅れ?

    『青魚は認知症予防になる』というニュースをやっていた。青魚に含まれているDHAが良いのだそうだ。 Kさん :「おい、婆さん。青魚食べると認知症にならんだってよ」 Aさん :「私は海辺育ちだから良く青魚は食べてたよ」 Kさん :「それじゃあ食べ過ぎてボケたのけ?」・・・ 「ここには青魚食べなきゃならん人がいっぱいいるだろう。毎日青魚をメニューに入れときゃいいんじゃないか?」 Aさん :「そうだなあ」・・・ 「それで、青魚ってなんでえ??」 こんな会話が聞こえてきた。( ´艸`)

  • タイムトラベラー

    ぬり絵を楽しんでもらおうと思い、今日届いた『月刊デイ』のぬり絵の部分をコピーしてお渡しした。 「わし、昨日これ塗ったから」 と、紙を見ようともしない。 入浴にお誘いする。 「もう昨日入ったから、今日はいいわ!!」 と、頑として動こうとしない。 ニュースで『有名人の○○さんが亡くなった』と告げていた。 「〇〇さんならとっくに死んだよ。去年の今頃」 ええっ~と思う、時をかけるじいさんや、ばあさんが結構いますね。

  • 正月さん

    正月さんは365日、ある日の正月を迎えている。 「あけましておめでとうございます」から始まる祝辞を長々と述べた後「乾杯!」までを何度も繰り返している。 何かの代表として大舞台で挨拶することがあったと想像する。 嬉しいような困ったような表情は、娘の結婚式の親父という感じなんだけど・・・出だしが「あけましておめでとうございます」だからなあ? 華麗なる一族で、正月には親族が一堂に会えす中でいつも新年の挨拶をしていたのか? なにしろめでたい挨拶を毎日しているのでこんなにめでたいこともない。

  • 「空が真っ青」

    ウメさんが居室に帰るのは、夜寝るときと、日中おシモの交換のときだけで、あとはデイルームで過ごしている。デイルームでは何となく決められた中央の席に座っているので窓の外を眺めることもあまりない。 そんなうめさんを日中居室にお連れした時、青空が目に飛び込んで来たようだ。 目をまん丸にして、開口一番 「あら、空が真っ青。神様ありがとうございます」 と仰った。 ズド~ンとわたしの胸に突き刺さった! そして今もその言葉は突き刺さったまま、何度も何度も胸の中を回っている。 『空が真っ青、神様ありがとう』 『空が真っ青、神様ありがとう』

  • ガラケーさん

    ガラケーさんは車椅子に座っているのだが、頭が下を向いて膝の上に乗っかっているか、もしくは膝下まで垂れているので、密かにガラケーさんと呼んでいる。 ガラケーさんは普段は二つに折れている。ご飯を食べる時、無理やり両肘を机の上に乗せられて45度まで開くが、45度では机と目の高さがほぼ水平で、お茶碗の中に顔が入りそうになってしまっている。が、しかし不思議な事に、ふと見ると茶碗の中の物が綺麗に無くなっているのである。 ガラケーさんの不思議はそれだけではない。特殊な耳をしていて、こちらの言ったことがかなり変換されて、全然違う言葉に変わってしまうのだ。 「夕ご飯ですよ」→「えっ、警察?」 「美味しそうなお魚…

  • 妖怪差し替えババア

    誰もいない部屋に入って行き、クッションや小物を、あっちの物をこっちへ、こっちの物をあっちへと差し替えては、きちんと整頓する、人呼んで妖怪差し替えババアが存在している。 「あれ?これ、〇〇さんの使ってたクッションじゃん。何でここにあるの???」 何時も一瞬、妖怪の存在を忘れて思うのである。 そんな妖怪だが、人と会うと全く普通の人である。 この間、タオルケットを抱えて廊下を歩く妖怪の姿を見かけて、話しかけてみた。 「これから何処へ行くんですか?」 「私はちょっと、その、あの、#◎%*!◻?△✳€$~」 やっぱり、さっぱり訳が分からなかった。 そんな差し替えババアが最近、別の術を覚えたらしい。他人様…

  • ありがたい言葉

    たまさんは、いつも変な所で言葉を伸ばす。「ありが~~~~とう。お~~だすかり!」と言うのが口癖だ。 声も非常に大きい。 そしてご飯が運ばれると、「まあ、随分あるね。どれ~~~から食べる?と必ず聞くが、これと言って差し出した器から手にしたことは一度もない。 しかし、その「ありが~~~~とう」には、非常に心が和まされる。 たとえ時々目が三角になって、机ごとお盆をひっくり返しても、トイレで指示が入らず、勝手に立ち上がって大失態になっても、暴れて突き飛ばされても、入れ歯が外れなくて噛まれても、何をされても憎めないのである。 「ありが~~~~とう」よありがとう(♡˙︶˙♡)

  • なみさん出て行く

    ショートステイでお泊まりのなみさん。 明日帰るというのに、なみさんは出て行った。 エレベーターにあわよく乗り込み、たまたま壊れていた男子更衣室の扉を開けて夜の闇に姿を消した。 なみさんがいないフロアーは何か違和感があったが忙しさに紛れてしまった。 気が付いて警察に連絡した時には既に警察に保護されていた。 ああ〜なみさん、何故そんなに上手に出て行かれたのか? なみさんは山形出身で、独特のなまりがある。 「そこのよ、坂を登って行ったんだ。公園の木の間を何本も通って行ったんだよ。親切な人がよ車に乗せて警察まで連れて行ってくれたんだ。警察でちゃんと名前言ったよ」 戻って来たなみさんはとっても楽しそうで…

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