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心の温度 +2℃ https://plus2c.fc2.net/

世界の片隅のささやかな奇蹟

自分を、人生を、愛することは難しい。自分を変えることも。けれど、『なんかいい感じ』で過ごすことはできる。 心の温度が上がる物語にふれたなら。 そうして、なんかいい感じで過ごせるようになったら、不機嫌の波を受け止め、温かい波にして、世の中へ、他者へ、返していきたい。 自分と接したあと、誰かの人生が、ちょっとだけいいものになることを願って。

コウノトリの噛み痕
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2020/04/29

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  • 『生』へとつなぎとめるもの ~ おじいちゃん先生の聴診器 ~

    Photo Credit︰seyed mostafa zamaniハン・ガンさんの小説『回復する人間』「明るくなる前に」。こんな一節で、頁を繰る手が止まった。 *人を燃やすときいちばん最後まで燃えるのが何かわかる?心臓だよ。夜に火をつけた体は一晩じゅう燃えてるんだ。明け方に行ってみたら、心臓だけが残ってて、じりじり、煮えてたの。 *中学2年生のとき、見た目をからかうことから始まった小学校高...

  • 『ありがとう』をかさねて

    Photo by Evie S.友人が初めて開く、セミナーのお手伝いへと出掛けた。土日2日間開催で、両日共出たのだが、初日の片付けの折、どうにも好かん態度で接してくる男性が居た。特段仲良くなる必要もないなと思っていたから、挨拶やお礼などきっちり筋を通すところは通して、あとはみんなが気持ちよくお手伝いできるようにと心掛けたが、心証は良くないままだった。2日目。くだんの男性の態度が、朝の準備のときからやわらかくなって...

  • ことばの種を蒔く 八十四粒目

    Photo by Sabina Sturzuえぇかね。人生に、正解なんてないんよ。じゃけど、ただひとつ正解があるとしたら、腹括ったその道が、いつか正解になるんかもね。NHK FMシアター ラジオドラマ『勝縄』https://www.nhk.or.jp/audio/html_fm/fm2020027.html...

  • 枠からはみ出た『5』

    Photo by Sabina Sturzu『相変わらず、いい表情しとるねぇ』本屋さんで、新しく出版された絵本を眺めていたら、声を掛けられた。いつかに聴いた言葉。ふと見ると、懐かしい顔。一目で判った。小学校卒業以来一度もお逢いできなかったから、34年振りくらいだろうか。ぼくの心を救ってくれた恩師だった。まさか、あれから34年も経っているのに、横顔だけでわかるなんて。小学生の頃のぼくは、勉強も苦手。スポーツも苦手。おまけ...

  • ことばの種を蒔く 八十三粒目

    Photo by Kinga Cichewicz桂︰青比古!!一族の墓なら 丘の上にと指示しておいたぞ 行動迅速!!一致協力!!今ごろは埋葬もすんで そえる花でも捜している頃だ(振り返る青比古の瞳に心を突かれ)余計な事をしたようだな 貴公一人の手では幾日もかかると思ったんだ青比古︰いや... ...ただ 墓を作るのは 生き残った者のせめてもの務めと考えていたのでな桂︰それは我らとて同じ心持ちだ!!我らに死を悼む気持ちがないとでも思っ...

  • ことばの種を蒔く 八十三粒目

    Photo by Kinga Cichewicz桂︰青比古!!一族の墓なら 丘の上にと指示しておいたぞ 行動迅速!!一致協力!!今頃は埋葬もすんで そえる花でも捜している頃だ(振り返る青比古の瞳に心を突かれ)余計な事をしたようだな 貴公一人の手では幾日もかかると思ったんだ青比古︰いや... ...ただ 墓を作るのは 生き残った者のせめてもの務めと考えていたのでな桂︰それは我らとて同じ心持ちだ!!我らに死を悼む気持ちがないとでも思って...

  • ことばの種を蒔く 八十ニ粒目

    Photo by Alex Ivashenkoその答えを求め続けると気のふれる問いがある自分は何故ここにいるのか何処より来たりて何処へ向かうのか...実に人はこの問いを忘れる為に人を愛しこの問いから逃れる為に神を求める水樹和佳子『イティハーサ』1第壱部 神名を持つ國...

  • 目覚めない少女

    Photo by Christian Lueドラマ『掟上今日子の備忘録』第6話に、こんな場面があった。 https://www.ntv.co.jp/okitegami/story/06.html一度眠ると、その日の記憶がすべてリセットされるため(こうなる数年前までは憶えていて、その時点までリセット)、即日スピード解決がモットーの、置手紙探偵事務所所長 掟上今日子。そんな彼女へのドラマ上最初の依頼主であり、解決後は好意を寄せて助手のような形で行動を共にすることになる、...

  • ことばの種を蒔く 八十一粒目

    Photo by Szabo Viktorこれまで全力で走ってきた彼女だが、ここ数年で気持ちに大きな変化が訪れている。「2年くらい前までは、自分に足りていないことばかりな気がして焦っていたけど、最近ようやくそうじゃなくてもいいと思えるようになりました。例えば、SNSと距離を取るようにしたことも大きなきっかけだったと思います。雑音が入ってこない状況になり、今まで携帯を使用していた時間で、自分がどんなことをしたら楽しいか、今...

  • ことばの種を蒔く 八十粒目

    Photo by Etienne Boulanger脚本家 志崎︰前に、お聞きしましたけど、ここで名刺を作ると、仕事が増えるって。なんでだと思いますか?中村活字 店主︰さぁね、よくわかんないんだけど...活版って、鉛でできてるんだよ。『鉛』って、『えん』とも読むじゃないですか。ここで作った名刺が、人と人をつなぐ『縁』になってほしいという想いを込めて、活版印刷続けてるんですよ。まぁ、そんな想いが届いたんじゃないかな。カンテレ ドラ...

  • まだ見ぬ誰か

    Photo by Mohammad Mahdi Samei図書館で本を借りると、貸出図書の一覧と返却期限が印刷されたレシートを受け取る。ときどき、書名のすぐ下に、『次に予約でお待ちの方がいます』と印字されていることがあって、それを見つけると、なんだか嬉しくなる。『早く返さなくっちゃ』貸出期間は2週間もあるのに、前はプレッシャーというか、ストレスに感じていたが、いつからか、心境の変化があった。世の中には、星の数ほどの本がある。...

  • ことばの種を蒔く 七十九粒目

    Photo by John H.M. Tsang少年である君へ伝えたかったことは何も無理してはしゃいで楽しい日々を作ろうとしなくていいって事さつらくって、さびしくってよごれたあの日の思い出が突然、輝きだすことが人生にはある最後のページに私は「私」が好きでしたと書ければそれはすばらしい「私」という名の物語熊木杏里さんと共演した武田鉄矢さんがステージ上で語った、作詞した『私をたどる物語』への想い。...

  • 私をたどる物語

    Photo by Ekaterina Shakharova夜眠れないという友人へ、以前拝読した心療内科医 海原純子さんの習慣、『良い言葉にふれる』を伝えた。黙読でもいい。声に出すのもいい。ふれることで、心の芯がほんのりあたたかくなる、ホットミルクのような、ホットココアのようなぬくもりを抱いて眠りにつくことを勧めている。意識しないと、汚い言葉、鋭い言葉に埋め尽くされてしまう時代になった。『ありがとう』で始まり、『ありがとう』で終...

  • ことばの種を蒔く 七十八粒目

    Photo by Olia Gozha死んでしまったらすべておしまい、と思って苦しむ人もいる。でもそれは少し違うのではないか。あなたが死んでしまっても、あなたが生きていたことの「香り」は残るのである。夏の夕方、散歩していると、枯れた夕顔がしぼみ、しばらく経つと小さな種が地面に落ちているのに出会うことがある。夕顔は枯れても、その生の名残を地面に残したのである。そして土にかえっていったのである。もしあなたが「自分は独身...

  • 新しい私になって

    Photo by takasuii友人宅から、早朝、駅まで歩いていた。おおきな河に架かる橋を渡っていたら、歌声が運ばれてきた。女性が、熊木杏里さんの『新しい私になって』を唄っていた。視線は、夜明け前の地平線。熊木杏里さんとはまた違う透明感ある声が心地良く、足を止め、ぼくも夜明け前の地平線を眺めた。ふいに、歌が止んだ。『あの、唄い終わるまで、隣に居てくれませんか』断る理由はない。なにより、彼女の歌声を聴きたかった。...

  • 君待橋 * another story

    Photo by takasuii小学校高学年から見た目を理由したいじめに遭っていたぼくは、同じ学区のクラスメイトがそのまま進学する中学校でもいじめに遭っていた。連中は徒党を組んでいじめをしていたから、助ければ今度は矛先が自分に向くことを恐れて、助けてくれる人は皆無だった。今では虐待ととられる厳しい躾によって男らしさを求め、いじめられることを軟弱と考える両親には相談できず、学校の先生にも小学校のとき相談したことは...

  • ことばの種を蒔く 七十七粒目

    Photo by takasuiiカヨさん、初めてお手紙差し上げます。わたしは、地元のラジオ局でパーソナリティーをしている、前園ことりと申します。カヨさんのお手紙にふさわしいものが書けるかわかりませんが、どうしても言葉を綴りたくなりました。わたしは、ラジオの仕事がずっとしたくて、こどもの頃からの夢を叶えて、この仕事に就きました。念願の仕事に就くことができて、そして、ラジオパーソナリティなら誰もが夢見るこんな素敵な...

  • 君待橋

    Photo by おじゃぱ友人まひろから、結婚式の招待状をいただいた。ふたりの馴れ初めが素敵だった。高校へ進学したまひろは、入学前から楽しみにしていた、近くの桜の名所として知られる山崎川へと学校帰り向かった。桜の通り抜けには、石川橋(いしかわはし)から白雲橋(はくうんはし)向田橋(むかえだはし)石川大橋(いしかわおおはし)かなえ橋鼎小橋(かなえこはし)萩山橋(はぎやまはし)左右田橋(そうだはし)瑞穂橋(み...

  • ことばの種を蒔く 七十六粒目

    Photo by Arisa Chattasaアキコさん、年齢とは次官の流れを言います。ただの時間の過ぎゆく長さです。人生とは心の時間です。心の時間には長さがありません。そこにあるのは永遠の記憶です。そこにあるのは永遠の思いです。わたしはその事に気づきました。この事に気づいてから、わたしの心は、一層あなたへの思いで満ち溢れています。どうか手紙を下さい。毎日毎日ポストを開けて、あなたの手紙を探します。敬具1987年8月2...

  • ことばの種を蒔く 七十五粒目

    Photo by takasuii流行りに乗っかるのが嫌なわたし(=藤)と、趣味に寄り過ぎるのが嫌な綾子(=藤とカフェの共同経営を夢見る友人)。同じ方向を向いていると思っていたのに、具体になると、お互いのエゴと信条がぶつかってしまう。別に、仕事が嫌いなわけじゃない。人間関係だって悪くない。最近はいろいろ任されるようになって、責任も感じ始めた。でも、なにか物足りない。もっと、自分らしくやりたい。けど、なかなかうまく...

  • 風の香りがする人

    Photo by おじゃぱ病院へ、お見舞いへと出掛けた。検査から帰ってくるのを待つ間フロアのラウンジに居たら、高校生くらいだろうか、女の子から声を掛けられた。『おひさまの香りがしますね』駅から病院へ来るまでちょっと歩くから、そのとき、おひさまをいっぱいに浴びてきたからかもしれない。なんだか、外干ししたお布団みたいだ。しばらくして顔を見に出掛けたら、ラウンジの入口で、この前の女の子とまた出逢った。 『風の...

  • 命と向き合う作家

    Photo by おじゃぱドラマ『掟上今日子の備忘録』第7話に、こんな場面があった。 https://www.ntv.co.jp/okitegami/story/07.html一度眠ると、その日の記憶がすべてリセットされるため(こうなる数年前までは憶えていて、その時点までリセット)、即日スピード解決がモットーの置手紙探偵事務所 所長 掟上今日子。推理小説作家 須永昼兵衛の大ファンである今日子は、須永自らが企画し、別荘で編集者たちに次回作の原稿を探し出して...

  • Photo by HaoJan夕立ち後の名古屋の空に、おおきなおおきな虹が架かった。あんなにも見事な虹なのに、行き交う人たちは、足を止めない。まるで、ぼくのところだけ、時間が止まったようだ。消えてしまう前にと写真を撮り、LINEで、同じように心躍るであろう友人たちへと送った。男性の友人から、虹の写真が届いた。同じ虹を見ていた。『あの虹を渡って君の元へと駆けつけたい』このひとことで失恋した。甘酸っぱい思い出が添えられ...

  • ことばの種を蒔く 七十四粒目

    Photo by Tiko Giorgadzeひろと︰お兄ちゃんはぼくがきらいなんだ......昇︰!! なんだい いきなりーー ひろと︰でも ムシされるよりはずっといいんだって だからいいや昇︰?? ムシされるよりはいい?誰がそんなことを?ひろと︰あーーさっき黒い服着た人がきて おしえてくれたの昇︰黒い服?ひろと︰背の高い 長い髪の男の人 パパよりはずっと若い...... 自分は 死の国の使いだっていってた昇︰まさか...その人なんてー...

  • 一花

    Photo by Nathan Dumlao名前が、嫌いだった。幼少期から高校卒業後就職で実家を出るまで、厳しい躾と称した虐待を両親から受けていた。勢いよく飛んでくる矢が刺さるように、鋭く名前を呼ばれると、虐待が待っていた。名前を呼ばれることは、生き地獄のファンファーレ。 実家という、家族という、強制収容所を逃げだしてからも、ほうぼうで名前を呼ばれると、ビクッとしてしまっていた。そんなぼくを変えてくれたのが、10代の終...

  • ことばの種を蒔く 七十三粒目

    Photo by Jacob Rank朝比奈︰朝霧さんは、教授と離婚されてからも、お親しいんですね。...すみません、変なことを。とても仲が良いので、どうしてだろうって。忘れてください。朝霧︰そうね。なんで離婚したのかしらね、わたしたち。まぁ、あの頃は、彼のくれるやさしさと、わたしの求めるやさしさが、こう、ずれてたのかしらね。ほら、恋とか愛とかって、時に、人を愚かにさせるものじゃない?でも、わたしたちは、その、お互いの...

  • 君に逢いたい 金時計

    Photo by René Porter東京 ←→ 名古屋日本 ←→ アメリカ13年間の遠距離恋愛の末婚約した愛しき女性を、挙式直前に病気で亡くした。13年という時間は、数字上では13年というただの長さだけれど、ぼくらにとってはただの数字の13年ではなく、もっともっと濃密で、生の鼓動が波打つもの。『花も嵐も踏み越えた仲』『生涯を共にした伴侶』と言ってもいいくらいだった。それほどの人だったから、一生分の恋愛をしたと思っていた。...

  • ことばの種を蒔く 七十二粒目

    Photo by Basil Samuel Lade木村︰あのさぁ、こよみちゃん。こよみ︰なに?木村︰フレミングの法則とかさ、サインコサインとか、今までなんかの役に立ったことある?こよみ︰そうねぇ。まぁ、買い物するときに、サインもコサインも要らないよね。テストでもあったの?木村︰いや、そのさ、なんの役にも立たない知識をさ、学ぶのにさんざん時間を費やすのって、なんかバカげてない?こよみ︰わたしの生まれ育った町には、冬の終わり...

  • ことばの種を蒔く 七十一粒目

    Photo by Sven Brandsma行助君。60年間、一日も欠かさずに、日記をつけている老人がいました。その彼が、ある日突然、それまでの日記をすべて、庭で燃やしてしまったんです。60年分、そのまま。次の日、老人が目を覚ますと、いつもと同じような一日を過ごし、眠る前にまた新しいノートを開いて、その日の行動を克明に書き始めたそうです。そのおじいちゃんの60年は、どこへ行ってしまったんでしょうね。 *前...

  • 君に逢いたい 東山線

    Photo by JD X去年、レタープレス(活版印刷)のワークショップで、『シフォンさん』というニックネームの女性と出逢った。その名の通り、ふわふわした感じのなんとも言えない魅力を秘めた女性で、お顔立ちも含め、モデルや女優として活躍されている、本田翼さんのような人だった。お互い活版印刷や紙が大好きで、意気投合。話しても話しても話題が尽きず、話しても話しても話し足りず、ワークショップが終わってからも、ごはんへ...

  • ことばの種を蒔く 七十粒目

    Photo by JD X(むかついたり、まだどこか期待したり。幸せだった頃を思い出したり、海外赴任した元カレのぬか床をいいものにして褒められたいと思ったり。変わらない、変われないを揺れ動くコピーライター春野 藤は、SNSで心惹かれた『乙女建築』を撮影する植草千明と出逢い、名建築を巡りながら耳にする千明の言葉に、心動かされていく)(2回目の名建築ランチ 自由学園明日館を前に)藤︰ここだけ時間が止まってるみたいで、不...

  • ことばの種を蒔く 六十九粒目

    Photo by Jennifer Latuperisa-Andresenおはようおやすみありがとうごめんねたったひとことにささえられすくわれてきたこともいつのまにか人はわすれるわすれられる作・甲斐みのり 絵・福田利之『ふたり』...

  • 君に逢いたい 〜 東京駅 〜

    Photo by takahiro taguchi東京 ←→ 名古屋日本 ←→ アメリカのちに13年間に及ぶ遠距離恋愛をすることになる女性と出逢ったのは、ぼくが東京へ出掛けたときに、友人が紹介してくれたことがきっかけだった。その後は遠距離ということもあり、直接逢うことはなかなか叶わず、呆れるほど電話で話したり、毎週のように文通をして、心の距離を縮めていった。そうして、やりとりを重ねること一年。お互いのスケジュールがようやく合い、...

  • ことばの種を蒔く 六十八粒目

    Photo by Mpho Mojapeloぜ〜んぶ、表ならいいのにね。表だけの世界。悪い人が捕まって、頑張ったら報われて。正しいことした人が、後悔しないですむ世界。羽野麦(愛称 ハムちゃん)金曜ドラマ『MIU404』#9 或る一人の死https://www.tbs.co.jp/MIU404_TBS/story/vol9.html...

  • ことばの種を蒔く 六十七粒目

    Photo by takasuii(商社でデキる女として評判の阪上は、プレゼンテーションでありえないミスをしてしまったが、後輩の篠原が自分のミスだとフォロー。以来篠原のことを意識するようになり、お礼にと、毎日のように通っているなどと噂がひとり歩きしていた銀座の寿司屋でごちそうすることになった。慌ててグルメサイトで目星をつけようとしていると、一匹の黒猫に導かれ、高校の同級生が嫁いだ寿司屋に。デキる女のキャラの手前ボ...

  • ことばの種を蒔く 六十六粒目

    Photo by takasuii離婚するって、お互いの気持ちを重い扉で閉ざし、特注の鍵をかけることなのだろうか?たとえ理解し合えないところがあっても、わかり合える部分で交流を重ねれば見えてくる明日があると、そう考えるのは、あたしが幼すぎるから?村上しいこ『イーブン』6 それもDVだよ...

  • 見上げた空はつながってる

    Photo by takasuii読書家のガールフレンドから、『今、なに読んでるの?』LINEで聞かれ、『村上しいこさんの「イーブン」を読んでる』と伝えた。読みながら、付箋を貼った言葉をLINEで送っていたら、彼女も送ってくれた。『なんとか明日に、命をすべり込ませるだけの毎日です』作品中、性暴力に遭った女性が、フラワーデモと思われるデモで、自身の体験を話したときの言葉だ。ガールフレンドに過去、なにがあったのかはわからない...

  • ことばの種を蒔く 六十五粒目

    Photo by HaoJan(榊がドイツに住んでいた頃、日本文学全集の編纂という大きなプロジェクトの一員に日本人でただひとり選ばれたが、先輩教授が病に倒れ、代わりに教鞭を執ってほしいと頼まれると、二つ返事で引き受け、帰国した)朝比奈︰教授。教授は、ドイツで大きなお仕事をなさっていたんですね。榊︰朝霧君だな?まったく、口が軽い。朝比奈︰素敵だと思いました。先輩教授のために、日本へ。榊︰中には、私が日本へ逃げ帰っ...

  • この一文に出逢うために生きてきたの

    Photo by Kait Herzog読書家のガールフレンドから、『今、なに読んでるの?』LINEで聞かれ、『村上しいこさんの「イーブン」を読んでる』と伝えた。読みながら、付箋を貼った言葉をLINEで送っていたら、彼女も送ってくれた。『なんとか明日に、命をすべり込ませるだけの毎日です』作品中、性暴力に遭った女性が、フラワーデモと思われるデモで、自身の体験を話したときの言葉だ。ガールフレンドに過去、なにがあったのかはわからな...

  • バースデーカード

    Photo by Oleg Ivanov友人へ贈る、バースデーカード。なんて書こうか。『誕生日おめでとう』は、ありきたり。誰からも言われるだろう。『生まれてきてくれてありがとう』は、ちょっと素敵。でもこれも、誰かが言うだろう。そういえば先日、誕生日を巡る物語を聞かせてくれた男の子が、『The Best Gift is YOU.』って教えてくれた。 これも素敵だが、英語だとどうだろう。英語圏の友人に尋ねたら、こんな言葉を教えてくれた。The wo...

  • Photo by HaoJan風が、強く吹いていた。図書館へ借りていた本を返そうと歩いていたら、急に横風に。自転車専用レーンを走っていた女性が、あおられて自転車ごと倒れた。すぐに駆け寄り、自転車を起こす。『怪我はないですか?』心配で、尋ねた。前カゴから放り出された空色の鞄を拾い上げながら、『大丈夫です』を繰り返す。ホッとして、自転車を預け、『気をつけて』図書館へと向かって歩きだした。向かい風になった。振り向くと...

  • ことばの種を蒔く 六十四粒目

    Photo by Jamie Street春野︰『乙女建築』っていうから、わたし、てっきり、女性だとばかり。植草︰乙女心って、女性だけのもんじゃないでしょ。ロマンチックに物事をすくいとる乙女心って、男女問わず、誰の心の中にもある。その乙女心を刺激される建築だから、『乙女建築』と読む。春野︰いつも、ひとりでまわってるんですか?植草︰うん。ほぼほぼ、ひとり。春野︰いや、誰かと一緒のほうが、楽しいんじゃないかなと思って。植...

  • ことばの種を蒔く 六十三粒目

    Photo by Alif Caesar Rizqi Pratamaその人の人生の、最後の一ページだけは、誰にもわかんない。最後の一ページはどこにもない。その一ページを見るためにみんながんばってるのが、人生なのかも。昔話みたいに、そうしてみんな仲良く暮らしました、かどうかなんて、誰にもわからない。わかってるのは、人は誰の人生も背負えないってこと。村上しいこ『イーブン』8 あたしとパパと、ママとあたしと...

  • ことばの種を蒔く 六十二粒目

    Photo by Anastasia Vityukova人は、何度でも産まれることができる。そこに、温かい眼差しがあれば。公認心理師 真壁由紀NHK BS​プレミアム特集ドラマ『ファーストラヴ』https://www.nhk.or.jp/dramatopics-blog/20000/416432.html...

  • 気持ちを聴かせて ~ 透明なゆりかごから ~

    Photo:Dance like no one is watching By HDC PhotographyNHKドラマ10『透明なゆりかご』第9回『透明な子』に、こんな場面があった。https://www.nhk.or.jp/drama10/yurikago/html_yurikago_story_09.html4年制高校の准看護学科に通う青田アオイは、アルバイトの看護見習いとして由比産婦人科へやって来た初日早々、体調不良で倒れた看護師に代わって、アウス(人工妊娠中絶)の現場に立ち会うことになった。今まで教科書などで映...

  • ことばの種を蒔く 六十一粒目

    Photo by Alberto Lucas Pérezあたしはわれたガラス窓を見た。窓は開くためにあるのか。それとも、窓は閉じるためにあるのか。どっちなのだろう。ひとつ言えることは、開かない窓はたたき壊される。村上しいこ『イーブン』1 空き巣泥棒の背中...

  • ことばの種を蒔く 六十粒目

    Photo by zenad nabil朝比奈︰この前の雛。怪我が治って、良かったですね。あとどれくらいで、空に羽ばたいていけるでしょうか。榊︰...雛を助けたことが良かったのかどうか、わからない。朝比奈︰巣から落ちた雛が、生存競争に敗北した弱い雛である可能性が高い。生きる力が弱い雛が、これから生き延びられるかどうか。朝比奈︰...私は、あの雛と同じかもしれません。私は、未熟です。私は、広く世の中を見る目が欠けていました。...

  • ことばの種を蒔く 五十九粒目

    Photo by Providence Doucet朝霧︰Jeder ist seines Glückes Schmied.(イェーダー イスト ザイネス グリュッケス シュミート) わかる?朝比奈︰えっと...ドイツ語の慣用句で、『幸せは、自分の手でつくりだすもの』...ですか?朝霧︰そうそう。ちなみにドイツでは、『煙突掃除の人にさわると、幸運が訪れる』って言われてるの。まっ、すすだらけになるんだけどね。朝比奈︰(クスッと笑い)本当ですか?朝霞︰それ!朝比奈︰えっ...

  • ことばの種を蒔く 五十八粒目

    Photo by Giulia Bertelli(院生のゼミの飲み会の席。馴染めず、お手洗いへと逃げるように席を立った朝比奈を気に掛け、教授の榊が声を掛ける)榊︰朝比奈君。調子でも悪いのかね?朝比奈︰教授。いえ。ただ少し、こういう雰囲気に慣れていなくて。場の空気に合わせられなくて、申し訳ありません。こういうところ、本当は直したいのですが...榊︰直す必要はない。自分の人生は、他人に合わせたり、他人に評価されるために、存在し...

  • ○○のクソ野郎

    Photo by Elijah Hiett10年来の親友と互いに言い過ぎてしまったものの、シンクロニシティで出逢った漫画『蝶のみちゆき』の一場面の言葉から仲直り。カトリック系の女子校に通っていた親友が、ふと思い出したと言って、聖書の一節『復讐は、あなた(人間)のすることではない。私に(神に)、任せなさい』を教えてくれた。怒りが受容されていることに、安堵した。人間は、完璧じゃない。怒りは、感じてはならないものではないの...

  • 通じるって、いいな

    Photo by Arun Kuchibhotla10年来の親友と互いに言い過ぎてしまい、酷暑の街へ飛び出した。アイツは、振り返ろうともしない。頭から、湯気が出そう。クールダウンが必要だなと、『Book & Cafe』の文字が目に入って、足を踏み入れた。涼みながら、店内をぐるり。一冊の本と、目があった。高浜寛さんの漫画『蝶のみちゆき』。初めて知る漫画家さんだった。なぜだか無性に心惹かれ、即購入。待ちきれず、珈琲を注文して、扉を開いた...

  • 家族写真

    photo credit:susivinh via Flickr3年前、末期がんで逝った父。かかりつけ病院へ入院する前、確定診断を得るために、院外で受ける最後の検査へとタクシーで向かった帰り。車内で父が、『家のもん、処分しといてくれんか』ぼそっと言った。『全部?』聞き返す。『うん』頷き、前をずっと見つめたままだった。今思えば、『入院したら、もう家には戻れない』判っていたのかもしれない。洋服書類本雑誌唯一の趣味 カメラと写真『捨て...

  • ことばの種を蒔く 五十七粒目

    Photo by Karsten Gohmチャンスというのはめぐりあわせであり、それをのがすともう二度とめぐりあえない、ということがある。チャンス、はお金では買えないのだ。やっととれた休みも、やっととれた部屋の予約も、それをのがすともう二度とめぐりあうことがないこともある。チャンスは一度だけ、宇宙のリズムと自分のリズムが何らかの拍子に出会った時に生まれるものである。海原純子『「やすらぎ」と「癒し」のメッセージ』9 今し...

  • ことばの種を蒔く 五十六粒目

    Photo by Masaaki Komori失うのがこわいからもとうとしない、というのは単なる「こわがり」である。好きになっても嫌われるのがいやで相手に近づけない、というのは単なる心の怠慢。どんなに注意しても結局は死ぬのだ、といって自暴自棄の生活をするのは死からの逃避にすぎない。海原純子『「やすらぎ」と「癒し」のメッセージ』10 まず、すべてを許すこと さわやかに生きる姿勢...

  • ことばの種を蒔く 五十五粒目

    Photo by Alana Harris誰かに出会うことで自分が変わるのではないか、と思っている人は案外多いのではないだろうか。誰か素敵な人に出会って自分の人生を変えてみたい。誰かが人生を変えてくれるのではないか。しかし、残念ながら、そんなことはまずない、といってよいと思う。もし、誰かに会って自分が変わるとすれば、それは「誰かに会わなくても自分で自分を変革する資質をすでにもっている」ことを意味している。誰かに会うこ...

  • グーをパーにする声

    Photo:touching lips By Send me adrift.20代、本屋さんで働いていた頃。労働アレルギーから一刻も早く逃げ切り、アーリーリタイアするため、早朝は新聞配達、昼間は本屋さんで正社員としてフルタイム勤務、夜は会員制の高級クラブでバーテンダーとしてそれぞれ働いて、アーリーリタイアを加速させるための資金を貯めていた。そのとき、お店で No.1 のホステスだった『楓流(ふうる)』さんに、なんのご縁だったか、いつしかぼく...

  • The Best Gift is

    Photo by Joshua Clay絵本を架け橋になかよしになった男の子。学校で、英語圏の外国人のお友達ができて、誕生日パーティーに誘われた。みんな思い思いにプレゼントを準備して行くことを聞いていたが、男の子は母子家庭。コロナ禍のあおりもあり、家計に余裕はなかった。 今更『行けない』とは言えず、せめて『おめでとう』だけは伝えようと、お友達の家へ向かった。先に4人来ていて、プレゼントを渡していた。 手ぶらは、自分ひ...

  • ことばの種を蒔く 五十四粒目

    Photo by Senjuti Kundu「もしも、早く死にたい、という思いが出てきたら、すぐに『まあ、いいか』という言葉を心の中でつぶやいてみてください。実はこの言葉が、脳が形成した『べき』思考や、『ねばならない』思考の神経回路を切るためのとても有効な言葉なんです。ただ単にお経のように、心の中で『まあ、いいか、まあ、いいか、』とつぶやけばいいだけです。最初は、言っている言葉にまったく実感が伴わないし、こんなこと、な...

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    Photo by Arisa Chattasa12345678910111213141516171819202122232425262728293031323334353637383940414... 2...!『なにかお困りですか』『ここから降りられなくて』商業施設の入口で、シルバーカーを手押しするおばあちゃんが、歩道へと出る段差の前で立往生。ぼくは一旦通り過ぎたが、なにか気になって、踵を返していた。先にシルバーカーからそっと段差を降ろし、続いてシルバーカーにつかまって降りるおばあちゃんを...

  • 思い、思われ

    Photo by Ekrulilaアーリーリタイアする前の、最後の職場の同僚女性が、仕事でバイクに乗れるようになりたいから教えてもらえないか、練習に付き合ってくれないかと連絡をくれた。土曜日の朝、ギア式バイクの乗り方を、イチから丁寧にレクチャー。彼女が前を走り、ぼくが後ろを走る形で最後は仕上げ、都合1時間半くらい練習に付き合った。彼女からなにかお礼をと後日、名古屋の酷暑を乗り切るために、甘酒が大好きで飲んでいると...

  • ことばの種を蒔く 五十三粒目

    Photo by Elia Pellegriniジョン︰仕事に熱中してて、時間を忘れてた。 今夜も...済まない。包む時間がなくて。誕生日、おめでとう。(数学美のクリスタルガラスを差し出す)(待ちぼうけを繰り返され不機嫌な彼女)ガラスのカット面で光の波長が分散して、覗くとアリシア︰色の洪水。(彼女を誘った初めての食事の席)(会場に飾られた絵画を振り返り)ジョン︰あのパーティーで、『神は画家だ。色を創造したから』と。アリシア...

  • バカ正直

    Photo by Monica Gozalo友人へ、クラウドに上げたバースデーカードにする写真を渡そうと、印刷のため、駅近くのコンビニエンスストアへと入った。親子連れが先にマルチコピー機に居て、猛暑で火照った体を涼みがてら順番を待っていると、操作しているママさんのすぐ後ろに年配の男性が並んだ。ぼくには気づいていないらしい。時間には余裕を持って来たから、『まぁ、いいか。涼しいし』待っていたら、咳払いを始めた。『早くどけ』...

  • ことばの種を蒔く 五十二粒目

    Photo by Monica Gozalo新型コロナの影響でライブも撮影も中断。どのような意識の変化をもたらしたのかという問いかけに対して。 *まぁ、音楽をつくってて、その、自粛期間中とかアルバムをずっとつくってたんですけど、そんなかでこう、何回も何回もこう不要不急っていうことばをいろいろ聞いたんですけど。生活に於いて、一番必要最低限を絞っていきましょうっていうふうに考えると、まず音楽家っていうの...

  • ことばの種を蒔く 五十一粒目

    Photo by Benjamin Sow志摩︰(トランクルーム)部屋番号 48。ここに、大熊が住んでた。事件からの日付。ここで、時効を待ってたんだな。伊吹︰ここに10年…なぁ、志摩。志摩︰うん?伊吹︰10年あったら、なにができるかな。志摩︰う~ん...英語がペラペラになれそうだな。伊吹︰うん。志摩︰プロの料理人。伊吹︰いける。志摩︰世界中の刑事ドラマを全部観る。伊吹︰いいね。志摩︰なんでもできそうだ。伊吹︰オレが交番に飛ばされ...

  • ことばの種を蒔く 五十粒目

    Photo by Gian Cescon蛍︰ウケるよね。初音︰はっ?蛍︰勝ち組ぶってたくせに、ちょっと調べたら、小物だってまるわかり。初音ちゃんが憧れてたのも、その程度だったんだよ。初音︰...正義の味方にでもなったつもり?アンタになにがわかんのよ。生きるために人に媚びて、しあわせになろうとすることのなにが悪いの?蛍︰そう思うなら続ければ?初音︰なに、その言い方。蛍︰その生きかたが良ければ、どうぞ勝手に続けなよ。初音︰...

  • ピンクムーン

    Photo by Sharon McCutcheon会社員のガールフレンドの、仕事帰りにデート。ほろ酔いの彼女がぶらぶらしたいと甘えてきたので、月下を歩いた。『そういやきょう、スーパームーンってラジオで言ってたな』思い出して見上げながら、『スーパームーンには、願い事を叶えてくれるジンクスがあるらしいよ』囁いた。立ち止まった彼女。素直ないいコ。手を合わせ、願った。そこへ、仕事帰りの同世代の女性が通りかかった。ぼくとガールフレ...

  • ことばの種を蒔く 四十九粒目

    Photo by KAL VISUALS其の水が何処にあろうとも亦其の水が清くとも或いは澱みたるものでも皆同様に月を映す小説『波の窓辺』著者 九条ちひろTVアニメ『恋は雨上がりのように』第9話『愁雨』http://www.koiame-anime.com/...

  • ことばの種を蒔く 四十八粒目

    Photo by Jonathan Fink私がブツブツ言ってる時よく言われたのがありのままの自分を受け入れるのよでしたでもこんなネガティブ思考クイーンな自分受け入れられるかっていつも思ってましたハイ私もよく本に書いたりするので一体どういうふうにするとありのままを受け入れられるんですか?って聞かれます何もしなくていいってことなんです何もしなくていいってことなんですねじゃあ 私はずっとブツブツ言ってていいんですねブツブツ...

  • ことばの種を蒔く 四十七粒目

    Photo by Ja San Miguel相手が自分に期待してる役割というのは本当に自分が引き受けなければいけないものか引き受けたいものなのか考えてみるなんだか このままでいい気もしてくるどんな人間関係も相手もフツーに仕事したり学校行ったり自分ができることをして生活して日々一生けんめい生きてる人なんだと思えばだいたいのことは許せるカンペキな人はいないよみんなそれなりに頑張ってるんだよ『それでいい。 自分を認めてラクにな...

  • 元カレ席

    Photo by Septian simon出産後間もなく、名前を授けた赤ちゃんを亡くし、その後おつきあいしたぼくを結婚式に招待した『あきちゃん』。おうちに初めて呼ばれたとき、産まれて間もないときの赤ちゃんの写真と骨壷に入ったお骨が置かれていて、普段のおちゃらけた言動の裏にある哀しい過去を知った。あきちゃんとは、13年間の遠距離恋愛で婚約した女性を挙式直前に亡くした後、一年間ほどおつきあいしていた。女の子の赤ちゃんを亡...

  • ことばの種を蒔く 四十六粒目

    Photo by Ryoji Iwata育児をうまくできていない気がして苦しく、夫に話しても思う通りに受け取ってもらえない時期が続きました。今思えば純粋な気持ちからではなかったと分かりますが、他に好きな人ができ、夫に「離婚したい」と伝えたことがあります。夫には「好きな人がいるのは構わないけど、離婚しても何も変わらないよ」と冷静に指摘されました。問題は自分の内面にあるのに、「離婚したら何か変わるはず」と家庭の外側に逃げ...

  • ムーンデート

    Photo by Channey満月の日にだけ逢う女性がいる。フルネームではない名前や仕事など知ったことはあまたあるが、連絡先は交換していない。彼女の仕事帰りに、前回逢った時に決めておいた待ち合わせ場所で再会。終電までが一緒に過ごせる時間だ。映画『ビフォア・サンライズ 恋人までの距離』https://filmaga.filmarks.com/articles/1166/ のジェシーとセリーヌのように、街を歩き、食べて、月を愛で、話して話して話す。最初の頃は...

  • ワンワンとワンとワンワンワンワンと

    Photo by Richard Brutyo買い物に出掛けたときのこと。雨が降り出しそうだったので傘を持って出掛けると、自転車置き場の角、鉄製のポールと自転車の後輪に輪っかをつくるようにリードがくくりつけられ、ダックスフンドかな、ワンちゃんが飼い主さんを待っていた。真向かいの半地下にカフェがあるので、たぶんそこに居るのだろう。 肌に感じるかどうかくらいの小雨が降り始めてきていて、しきりに吠えるワンちゃんとぼくは目が合...

  • ことばの種を蒔く 四十五粒目

    Photo by Marc-Olivier Jodoin今だけではない未来を見据えるんだ。フォックスとスパイラルが手を組めば、この世界に大きな利益と便利さをもたらすことができる。その未来をイメージしながら交渉しろ。そして森山、忘れるな。大事なのは、感謝と恩返しだ。そのふたつを忘れた未来は、ただの独り善がりの絵空事だよ。これまでの出逢いと出来事に感謝をし、その恩返しのつもりで仕事をする。そうすれば、必ず明るい未来が拓けるはずだ...

  • スマイルクッキー

    Photo by Luca Upper新聞販売店で朝刊配達の副業をしている友人。同世代の同僚女性とは互いにその存在を励みにして、本業との両立をキツイなと思う日々も乗り越えてきた。インフルエンザでダウンした以外、めったなことでは休まない彼女が、週の半ばから、4日連続で休んだ。体調が悪いんだろうか。それとも、忌引だろうか。理由を社員さんに聞くこともできたが、しなかった。週が明け、一週間して再会した。理由は、聞かなかった...

  • ことばの種を蒔く 四十四粒目

    Photo by Jacqueline Munguía洋一︰料理人になりたかったんですか?板前︰いや。洋一︰じゃ、どうして?板前︰ここに立って料理をしている親父の背中を見ているうちに、なんとなくこの仕事を始めた感じですかね。洋一︰後悔とかはなかったですか?板前︰わかりません。洋一︰でも、料理人に向いてたから、今も続けてられるんですよね?板前︰この仕事が向いてるなんて、思ったことありませんよ。ただ、親父の味を守ることだけを考...

  • ことばの種を蒔く 四十三粒目

    Photo by Jelleke Vanooteghemどうしてかしらね。歳を取れば取るほど、人に言えないことが増えていくような気がする。若い頃は素直に言い合ってたようなことでも胸の奥にしまって、なんかその、『敢えて言わないことが大人だ』みたいな空気で。みんな、いったいなにを守ろうとしてるんだか。幸村チカ幸村・上杉法律事務所 代表弁護士『SUITS/スーツ Season1』STORY#4https://www.fujitv.co.jp/SUITS/story/index04.html...

  • 手紙を愛する人

    Photo by Flavio Amielお店や会社、オーナーさんやスタッフさんの素敵なヒト・モノ・コトを、ファンレターで応援したり。訪って、『なんか、いいなぁ』と心の温度があがったことを、サンキューレターで伝えて、はたらくひとたちを応援したり。普段からポストカードや手紙をよく贈ることもあって、切手やレターセットを常備している。ただ、毎日のように贈るので、特に切手を切らしてしまうこともしばしば。郵便局へ切手だけを買い...

  • まぁまぁ

    Photo by Hutomo Abriantoちいさいながらも、地元の人たちから愛されるパン屋さんを受け継いだ友人夫婦。早朝、寝静まる頃から夕方まで、ふたりでお店を切り盛りしている。生まれて間もない赤ちゃんは、引退した、一緒に暮らすおばあちゃんが見てくれている。お互い、パンへの熱量が半端なくある。馬車馬のように働き、より良いパンを目指して、より美味しくの高みを目指して、日々改良を、新作を生み出すことを惜しまないために、...

  • だいすき だいすき

    Photo by Wolfgang Hasselmann世界でたったひとりの人のために、世界で一冊だけの絵本を手作りし、贈ったおんなのこから、お礼のお手紙をいただいた。まっしろな画用紙の、端から端まで。クレヨンの、色という色を使って書いてくれた。ひろおにいちゃん えほん ありがとう だいすき だいすき だいすき だいすき だいすきだいすき だいすき だいすきだいすき だいすき だいすき だだいすき だいすき だいすき『だ...

  • ビオラの切手

    Photo by Luke Chesser思い悩んで命を投げ出した友人が、『往復書簡』と呼ばれる直筆の手紙のやりとりをはじめたのは、3年前の夏だった。手紙の相手となる僧侶さんとは、顔を合わせることはない。知っているのは、往復書簡事務局の住所と、僧侶さんのお名前。消印からわかる県名。1往復2週間。手紙が届かないからといって、干渉されることはない。想いの雫が、言葉になるのを待つ。待ってくれる。どんな想いも吐露できる、安全...

  • 誰もが通り過ぎてゆく日にぼくだけは立ち止まりたい

    Photo by Abdulaziz Alfawzan東京 ←→ 名古屋日本 ←→ アメリカ13年間の遠距離恋愛の末婚約した愛しき女性を、挙式直前に病気で亡くした。13年という時間は、数字で見れば13年だけれど、ぼくらにとっては13年ではなく、もっともっと濃密で、花も嵐も踏み越えた仲、生涯を共にした伴侶と言ってもいいくらいだった。それほどの人だったから、一生分の恋愛をしたと思っていた。『もう人を好きになることなんてないのかも』『も...

  • 晴れるといいね

    Photo by resulアーリーリタイアする前の、最後の職場の同僚女性が、仕事でバイクに乗れるようになりたいから、教えてもらえないか、練習に付き合ってくれないかと連絡をくれた。土曜日の朝、ギア式バイクの乗り方を、イチから丁寧にレクチャー。彼女が前を走り、ぼくが後ろを走る形で最後は仕上げ、都合1時間半くらい練習に付き合った。彼女からなにかお礼がしたい、明日雨なら、こどもとの予定はキャンセルになると言われ、ぼく...

  • ことばの種を蒔く 四十二粒目

    Photo by Andy Hayあ笠松︰朝のカレー。美味しかったわよ。島崎︰やったぁ!あっ、こんなうれしいんですね。あぁ、だったら、オレも一回ぐらい女房に『カレー、美味しい』って言えばよかったなぁ。...あぁ、すいません。前の女房の話なんかしちゃって。笠松︰うぅん。わたしも、夫に美味しいカレー、作ってあげればよかったなぁ。...いいんじゃない?島崎さんも、わたしも、過去があるから、ここに居るんだもん。木曜ドラマ『BG~...

  • ことばの種を蒔く 四十一粒目

    Photo by Jeremy Lishner伊吹︰なんかもう、なんつって言っていいのか、わかんなかったわ。国の罪は、オレたちの罪なのかな。志摩︰熱でもあんのか。伊吹︰オレが『ごめんね』って言っても、何十万ものロボットにされた人たちは、救われないんだよ。みんな、どうして平気なんだろ。志摩︰見えてないんじゃない?見ないほうがラクだ。見てしまったら、世界がわずかにズレる。そのズレに気づいて、逃げるか、また目をつぶるか。伊吹...

  • ことばの種を蒔く 四十粒目

    Photo by Siora Photography高校3年のあの秋の日あのとき「うん」と言った瞬間から僕の運命は回りだしたのたうちまわって苦しんだ自分とひとを傷付けた愛するひとの肉体を奪って子供さえつくった多くの間違いを犯したけれど間違う自分すら愛されているんだと知った僕はひとより不倖だったかもしれないけどそのぶんだけ深くひとに愛されることとひとを愛することの悦びを学んだ今も 時折甦る白昼夢あのとき「うん」と言わなければ...

  • 夫婦箸

    Photo by Farrinni幼少期。両親や姉は、これに盛りつけたり入れたらさぞ美味しいだろうなと思える、陶器の町で有名なところで買い付けてきた、どっしりとした器で食べていた。ぼくの食器は、学校給食で使うようなプラスチックでできた器で、しかもカラフルだった。あまりにどぎつい色ばかりで、同じごはんを食べているのに、実に味気なかった。両親や姉の箸は、これで食べたらどんどん食が進むだろうなと思える、父の知り合いの職...

  • 『あら』と『あら』

    photo credit:HaoJan via Flickrガールフレンドの夏もの買いに、一緒に出掛けた。このコは、映画『きらきら眼鏡』の大滝あかねみたいに感動の天才で、一緒に居ると、とにかく気分がいい。だから、あちこち連れて行きたくなる。ひとしきり買いまくって、カフェで休憩したいというおねだりで、落ち着いた感じの店に入った。表通りから伸びる、何本もある脇道のひとつを入っていく前から気になっていたお店で、隠れ家気分が味わえる。...

  • ことばの種を蒔く 三十九粒目

    Photo by Bruno Nascimentoおれさぁ...夢って、叶わなくてもいいんじゃないかなって思うんだよ。この間テレビ観てたら、サッカー選手になりたかったって人が出てて。そのどうも、外の人だって、夢は必ず叶うわけじゃないみたいで。でも、自分に夢があったことがすごく良かった。夢なんて夢なんだから、叶わなくてもいいんだって言ってて。...その、だから...夢ってどうも、叶うから持つもんじゃないっていうか。叶うか叶わないかわ...

  • ことばの種を蒔く 三十八粒目

    Photo by Cheewit Dtit App短歌と読者との出会いは、それぞれが会うまでに過ごした時間によって、決まるような気がする。十代の読者には十数年分の、八十代の読者には八十数年分の、生きてきた重みがあるわけで、その重みを受けとめながら、歌が人の心に何かを投げかけられたら、それこそが幸せな出会いだ、と思う。短歌が過ごした時間、というのは、短歌が生まれるまでに作者が過ごした時間でもある。三十一文字という短い言葉で...

  • ダジャレー・ヌーヴォー

    Photo by photo-nic.co.uk nic3月小学生の男の子が、卒業を迎えた。どこにでもある、見慣れた光景だ。でも、ぼくにとっては、特別な光景になった。出逢いは、3年ほど前だった。その男の子は集団生活になじめず、不登校になっていた。終日学校に居ることが、苦しくてたまらない。1限、また1限と、教室に居られる時間が減っていった。居場所は、教室から保健室になり、やがてそれもできなくなった。おうちで過ごす日々になったけ...

  • ことばの種を蒔く 三十七粒目

    Photo:Secret Garden By Jose Luis Mieza Photography恋の歌については、「ほんとうにあったことなんですか?」ということを、しばしば聞かれる。歌が生まれるきっかけやヒントになる人は、決して架空の人物ではない。が、この歌集を読んで、思いっきり思い当たる人もいれば、まったく身に覚えのない人も、いるだろう。そのまんまやないかと思う人もいれば、なんでこうなるの?と思う人もいるはずだ。つまりそういうことで、確かに...

  • おかえりなさい

    Photo by Treddy Chen高校卒業まで、祖父母の元で暮らしていたガールフレンド。仏間の近くに自身の部屋があったことから、祖父母の焚くお線香の匂いやお香の匂いが充満し、服に匂いが染みついて、学校で『お葬式』などと陰口をたたかれるのが嫌だった。よく祖父母とケンカになるのは、雨の日に洗濯物を、ふすまの上の木のでっぱりに引っ掛けて乾かしておいたり、祖父母が乾いて取り込んでくれた洗濯物を、彼女があとで自分で畳むた...

  • ことばの種を蒔く 三十六粒目

    Photo by Ava Solこの歌集のなかの何首かを読んだ友人が、ぽつりと言った。「会いたいときに会えないような、辛い恋をするもんじゃない」。彼は、結婚して二年になる。「でも、会いたくなくても、会えちゃうんでしょう?結婚って」と、私は返した。ついでに「どっちが、愛を育てるかしら」という強がりも添えて。もう一つ強がりを言うと、私は出会いというものを、このうえなく大切に思っている。あと何年早く出会えていたら、とか...

  • パパ

    Photo by Vanessa Serpas今春、大学へ進学するため一人暮らしを始めた娘から初めての手紙が届いたと、友人がはしゃいでいた。こんな想いが綴られているのを話してくれた。家の中に、パパの姿を見たことがなかった。まだわたしが眠っている間に出勤。眠りについてから帰宅。まるでマンガみたいだけど、写真でしか見たことがなかった。あまりに居ないから、『離婚したの?』真顔で聞いたこともあった。中学生になった頃、『なんか臭...

  • ことばの種を蒔く 三十五粒目

    Photo by Tim Mossholderある母親は絵本の読み聞かせをした時、主人公の女の子が牛乳を注ぎ損ねた場面で、三歳の息子が喜ぶのにびっくりした。息子はこぼれた牛乳ではなく、コップにちょっとだけ入った牛乳を見ているのだと気づき、失敗を怒るのをやめ、できたことを褒めようと考えたという。中日新聞2020年7月18日(土)夕刊コンパス 『気づきを超えて』...

  • ことばの種を蒔く 三十四粒目

    Photo by Stefan C. Asafti中川沙織︰わたし、どうしたら本物の料理人になれますか?菊池隆一︰素材の声を聴けばいい。中川沙織︰素材の声...菊池隆一︰素材の声に、耳を傾けるんだ。料理の仕方は、素材が教えてくれるよ。料理人の仕事とは、よく耳を澄ますこと。それだけだ。NHK BSプレミアム 特集ドラマ『56年目の失恋』https://www.nhk.or.jp/dramatopics-blog/20000/429581.html...

  • ことばの種を蒔く 三十三粒目

    Photo by Julien Sarazin美味しいね。好きな人の顔を見ながら、美味しい料理を食べる。こんなふうに毎日を過ごせたら、きっと、幸せな人生だろうね。NHK BSプレミアム 特集ドラマ『56年目の失恋』https://www.nhk.or.jp/dramatopics-blog/20000/429581.html...

  • 報われる

    Photo by Timothy Eberly今では友人となった『たまき(名字ではなく下の名前)』と仲良くなったのは、ぐっとこころの距離が縮まったのは、こんな感性が互いに合ったからだった。ぼくには、『先約があるとうれしい』そんな想いがある。DVDを借りようと思って TSUTAYA へ出掛けたら、お目当ての作品が借りられていた。洋服を見に出掛けて『これいいな』と思ったら、欲しいサイズや色が売り切れていた。求人広告を見て『ここで働きた...

  • ことばの種を蒔く 三十二粒目

    Photo by Lili KovacBeauty is everywhere, but not everyone sees it.Jessica Lewis...

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