生物屋は理想的な保全の姿を農業者に求め、農業者は現場での実行可能性を重視するというすれ違いがSNSなどで繰り返し目立ちます。どうしてすれ違いが繰り返されるのかについて、保全目標の重要性や専門家の活用の可能性の観点などからまとめます。
リスク学を専門とする研究者である永井孝志がリスク評価、リスクコミュニケーション、レギュラトリーサイエンスに関する情報などを提供します。
政府の外部有識者の選定基準:知識を生み出す能力と知識を社会に応用する能力は異なる
政府に外部有識者として呼ばれている人たちの中に専門家ではない人が混ざりますが、知識を生み出す能力と知識を統合して社会に応用する能力は別物であり、査読論文や被引用数は前者の能力の指標にしかなりません。後者の能力をどのように判断するかを考えてみました。
リスクをテーマとするブログを書いて3年が経ちました―半年間の実績を振り返る5―
2022年4月から2023年3月までの1年間のブログの実績を、Google Analyticsのデータを中心に振り返ってみます。この1年でアクセス数が着実に増えており、Google先生からの評価も一気に上がりました。アクセス数に加えて記事評価ボタンによる評価、Twitterでの反応など多角的なデータを収集しています。
リスクコミュニケーションもAIが担う新時代その4:SNSのデマ発信アカウントをAIに判別してもらおう!
リスクコミュニケーションにAIを活用する方法の一つとして、ChatGPTを使ったデマ判定方法を紹介する記事の第2弾として、ツイッターのアカウントのデマ傾向を判定する事例を紹介します。SNSプラットフォームが実装すると現状からの大きな改善が期待できます。
リスクコミュニケーションもAIが担う新時代その3:AIにデマを自動判別してもらおう!
リスクコミュニケーションにAIを活用する方法の一つとして、ChatGPTを使ったデマ判定方法を紹介します。ツイッターなどでは日々デマが拡散し、人力での対応は限界があるため、AIによってファクトチェックを自動化できると非常に強力なツールとなります。
大学生などの新生活にまつわる5つの身近なリスク:金銭、自転車、ネット、宗教、メンタル
4月は進学・就職などで新生活が始まる季節ですが、同時にさまざまなリスクに注意すべきタイミングです。「大学生が狙われる50の危険」という本をベースに新生活にまつわるリスクについてまとめた結果、特に注意すべきリスクとして「金銭、事故、ネット、宗教、メンタル」の5つが挙げられました。
コオロギ食についてネット上での炎上が続いていますが、Google Trends, YAHOO!知恵袋、Twitterを用いたソーシャルリスニングを行って、ネット上の反応を分析しました。コオロギ食は危険、コオロギ食推進は社会的不正がある、という大きく二つの反応が示されましたが、ネット上の情報の多くは不正確でした。
リスクコミュニケーションもAIが担う新時代その2:情報提供の内容をAIに書いてもらった
ChatGPTやStable DiffusionなどのAI技術を活用し、文書を要約させる、箇条書きから文章を生成させる、わかりやすい文章を生成するための注意事項を守らせる、文章の書き換えさせる、イラストを描かせるなど、リスクコミュニケーションにおける情報発信に役立てる方法を紹介します。
WHOのガイドラインでは「室温18℃以上」が勧告されており、冬の室内温度が低いことは健康リスクにつながります。こたつ使用率の低い北海道は室内全体が暖かく、冬季の死亡率増加が低くなっています。ここからこたつ使用による死亡リスクを試算してみました。
2022年11月1日から2023年2月19日まで国立科学博物館で開催された特別展「毒展」に行ってきました。今回はそこで感じたこと(人工物の扱いが残念だった)を書いてみます。リスク評価・管理の考え方が不足していたと思います。
感染防止のための献血制限の基準値:同性愛差別と血液不足との二つのリスクトレードオフ
感染防止のための献血制限の基準値として、狂牛病を発端とする英国滞在歴のある人の献血制限(1ヵ月)、日本の男性同性愛者の献血制限(6ヵ月)、米国の男性同性愛者の献血制限(3ヵ月、ただし見直し中)についてまとめます。数字の根拠はどの事例も大変興味深いものです。
シロアリ防除剤としてのネオニコチノイド系殺虫剤の使用時のリスクについてまとめました。まずシロアリ防除剤のリスク管理について整理し、次に論文の情報からネオニコチノイド系殺虫剤のリスク評価を行い、最後にシロアリ防除剤のリスク比較事例を示します。
リスク評価はファクトではないその3~リスク評価の中に潜む価値判断~
「リスク評価は専門家が行うものなので完全に科学的なもの」と言えるわけではなく、その中にはさまざまな価値判断も含まれています。特に「そもそも何を評価するか?」という部分には価値観が大きく反映されるので、専門家以外のかかわり方も重要になります。
アジャイルガバナンス:「法律を守っているので安全です」からの脱却
「法律を守っているので安全です」というこれまで企業の姿勢から脱却する方向性としてのアジャイルガバナンスについて紹介します。新しい技術は開発や社会の反応の変化が素早いため、法規制が追いつかず企業の自主管理がより重視され、ガバナンスも迅速にアップデートし続けることが求められています。
残留農薬基準値の決め方その3:「ADIを超えないように」決めたら良いのでは?
残留農薬基準は「農薬を正しく使用しているかどうか」という農業規範としての基準であり、健康影響の基準ではないため説明の際は要注意ですが、むしろ説明の仕方を注意するよりも運用を変えて健康影響の基準値(ADIから換算)に変えればよいのでは?という意見についてまとめました。
リスクコミュニケーションもAIが担う新時代?ChatGPTに安全かどうか聞いてみた
いま流行りのAIチャット「ChatGPT」で遊んでみました。餅、北朝鮮、統一教会、コロナワクチン、マイクロプラスチック、農薬について「安全か?」を聞いてみたところ、思いのほかの面白い結果が得られ、リスクコミュニケーションもAIが担う新時代の可能性を感じました。
今週は年末年始のためいつものブログ記事の更新はお休みです。かわりに過去記事を見ながら2022年を振り返ってみたいと思います。
残留農薬基準値の決め方その2:残留農薬ポジティブリスト制における一律基準値の根拠
残留農薬基準値が決められていない農薬-作物の組み合わせに自動的に適用されるポジティブリスト制に基づく一律基準0.01mg/kgの根拠を解説します。毒性がよくわからない場合であっても健康影響の懸念がない摂取量を推定した「毒性学的懸念の閾値」を応用しています。
残留農薬基準値の決め方その1:巷にあふれるの説明のほとんどが誤解を招いている
残留農薬基準の決め方の説明として巷にあふれている「ADI(許容一日摂取量)を超えないように決められています」は間違いです。まずADIから換算する基準値というのはどういうものかを説明し、その次に残留農薬基準の決め方(ALARA型)を解説します。
各地のごみ処理施設で火災が頻発するなど、リチウムイオン電池がごみに混じって廃棄される問題が大きくなっていますが、これまで「見過ごされてきた」リスクと考えられます。リチウムイオン電池のリスクと対策、これまで見過ごされてきた理由についてまとめます。
マイクロプラスチック汚染の本命はタイヤ摩耗塵?~新たなハザード6-PPDキノンとの関係~
マイクロプラスチックの排出源としてのタイヤの重要性を示し、タイヤ摩耗塵の健康・環境影響について整理し、新たなハザードとしての6-PPDキノンについてまとめます。6-PPDキノンはサケに対する影響が強いことから今後要注目です。
梨泰院で多数の死者が出た後も渋谷ハロウィンに多数の人出があったり、だんじり祭りや牛追い祭りなどの死者が出るような国内外の危険な祭りが継続されたりする理由についてまとめました。国内外の危険な祭り、祭りのコロナ感染リスク、祭りのリスクの許容レベルについてそれぞれ整理します。
家電メーカー3社を対象とした人権リスク比較事例として、各社の人権方針について比較を行い、ソーシャルリスニングの手法を用いて各社の人権についての評判(レピュテーション)をチェックしました。人権方針に大きな違いはないものの、レピュテーションには大きな差が見られました。
「人権リスク」その2:人権デューディリジェンスとは人権リスクマネジメントのPDCAサイクルのこと
企業活動における人権リスクマネジメントの全体像、その中の人権デューディリジェンスのプロセス、人権リスク評価の手法について解説します。人権デューディリジェンスは、自社や取引先などにおける人権リスクを特定し、防止・軽減し、取り組みの実効性を評価し、その結果を説明するという一連のプロセスです。
「人権リスク」その1:なぜ「人権リスク」に対応する必要があるのか?
リスクの対象が財産・健康・環境に加えて人権などに広がりを見せており、世の中で人権を軽視した場合の悪影響が大きくなっています。人権侵害の内訳とその経年変化のデータを示しながら、なぜ「人権リスク」に対応する必要があるのか?について解説します。
なぜコロナの死者数は増えているのに世間での関心は下がり続けるのか?
コロナの死者数はオミクロン株になってから増加していますが、反対にコロナへの世間の関心度は低下しています。世間の関心の低下度をソーシャルリスニングの手法を用いて示し、ニュースで取り上げられなくなった理由などを解説し、最後にリスク心理学的な考察を試みます。
2022年4~2022年9月の「リスク」を分析しました~SNS定点観測結果27~
Google検索履歴やTwitter、YAHOO!知恵袋、News APIを用いて「リスク」のトレンドを定点調査しています。2022年度上半期(4~9月)の調査結果から、ウクライナ情勢はトレンドから消え、コロナ第7波と猛暑による熱中症がトレンドとなっていました。
危険をあおるほどインパクトファクターの高い科学雑誌に論文が掲載されやすい、という近年の環境科学に対するへの違和感の正体について、(1)科学と社会運動(〇〇すべき)の混在、(2)「リスクを減らしたい」ではなく「悪いものに罰を与えたい」という感情、(3)「正しさ」の押し付け、という3つの視点から整理しました。
リスク比較のためのRisktools ver2を公開しました
リスク比較のためのWEBアプリ「Risktools」を作っています。今回公開した改良版(ver2)では、死因、年齢階級、評価する年、性別を選択すると、リスクのものさしに加えて経年変化・性別・年齢別のグラフが表示される機能を追加しています。特に経年変化は興味深い結果がいろいろと得られます。
送迎バス置き去りによる死亡事故から考える保育施設の死亡リスク
保育施設の送迎バスに子どもが置き去りにされて死亡した事件が大きなニュースとなっていますが、保育施設においてどのような死亡事故がどの程度の頻度で起こっているかというリスクを知るために、内閣府が取りまとめている保育事故データベースの情報を整理しました。
日本におけるがんのリスク要因は何か?世界疾病負荷(Global Burden of Disease)研究の結果を紹介します
世界疾病負荷研究(GBD study)が提供するツールを用いて、日本のがん死亡に対するリスク要因を整理しました。その結果、たばこやお酒、不健康な食事などの日常生活に起因するがんの影響は化学物質によるがんと比べてけた違いに大きくなっています。
除草剤グリホサートの健康影響その4:発がん性物質の受け入れられるリスクレベル
グリホサートのように発がん性ありなしの論争を続けるよりも、発がんリスクの大きさを評価してそれが十分に小さいかどうかを判断したほうがよい場合があります。リスクが十分低く安全と言えるのかどうか?という問いに答えるための方法・考え方について解説します。
除草剤グリホサートの健康影響その3:グリホサートの発がんリスクの大きさはどれくらいか?
農薬の発がん性は科学的に完全な白黒がつくものではないため、発がん性あるなしの禅問答は尽きません。その禅問答から抜け出すには、発がん性があると仮定してそのリスクを計算することが有用です。除草剤グリホサートを例に発がんリスクを計算する方法を解説します。
除草剤グリホサートの健康影響その2:農薬の疫学調査はなぜ難しいのか?
グリホサートの発がん性の根拠とされている疫学調査のメタアナリシスを事例に、農薬の疫学調査はなぜ難しいのか?を解説します。農薬の疫学研究が難しいのは、農薬の曝露量の推定が難しいことが一番の理由です。結果として、信頼性の低い研究を積み上げたメタアナリシスの信頼性もまた低いということになります。
除草剤グリホサートの健康影響その1:尿中から検出された際の健康影響の判断方法
食品中農薬濃度の残留基準値超過は定期的にニュースになりますが、最近では尿中から農薬が検出されたというニュースも目にします。このようなニュースの読み解き方の解説として、除草剤のグリホサートを例に摂取量への換算方法やリスク評価について説明します。
テロに巻き込まれた場合の3つの対処法:逃げる・隠れるともう一つは???
今回は夏休みのため、通常のブログ記事の更新はお休みします。その代わりに、「国際テロリズム要覧2022」という資料を読んでいて、テロに巻き込まれた場合の対処法の国際比較が非常に面白かったのでそれ紹介します。
AI農業のリスクとして、(1)ハッキングなどのセキュリティのリスク、(2)環境破壊のリスク、(3)大企業によるデータ独占のリスクが挙げられていますが、誤同定による被害、機器類の事故、ディープフェイクやAIボットによる社会の混乱のほうがよりリアルなAI農業のリスクとなりえます。
熱中症対策では塩分の補給が重要と言われていますが、一方でその必要性に疑問が提示され、塩分摂取の悪影響も懸念されています。現状の日本人は必要量よりもかなり多い食塩を摂取しており、汗をかいた程度で不足することはありません。なぜ熱中症対策として塩分摂取をする必要があるのかの疑問に迫ります。
セキュリティリスク:安倍元首相銃撃事件におけるSPの責任論をどう考えるか?
2022年7月8日に起きた安倍元首相銃撃事件では、SPなどによる警護体制の不備が指摘されましたが、この事件を例にセキュリティリスクについてまとめます。まず、セキュリティリスクの定義を示し、事件後の責任論について心理学的な解説を行い、最後にリスク評価をベースとした対策について解説します。
コロナ禍の2020年から2021年にかけて日本の死亡リスクのトレンドはどのような変化をしたか?
2021年の人口動態統計の死因別死者数によると、インフルエンザなどの呼吸器系疾患は2020年に引き続いて減少が目立ちました。自殺の超過死亡は損失余命で比べるとコロナによる損失余命と同等で、年代別に見るとその特徴が大きく異なり、若者ほど自殺の損失余命が大きくなります。
生態リスクを考える際のポイントその2~日焼け止め成分が紫外線により毒性が強くなる?
日焼け止め成分が紫外線照射により毒性の高い代謝物に変化するという内容の論文を例に、化学物質の生態リスクを考える際のポイントを紹介します。現実的な濃度よりも数桁以上も高い濃度で実験されており、実際の環境中で同様の影響が起こるかどうかを考えることがポイントになります。
解決志向リスク評価を阻害する要因は何か? 日本リスク学会シンポジウムの議論から
解決志向リスク評価を阻害する要因は何か?について、2022年6月24日に開催された日本リスク学会シンポジウムの議論をもとに整理しました。Jリーグの成功事例やコロナウイルス対策における問題などから、意思決定する側の意識・組織文化の問題が大きいと考えられました。
仕事で忙しい人がネタ切れせずに継続的にブログを書くためのコツを教えます【後編】
継続的にブログを書くため二つ目の問題「書く時間がない対策」について、記事の型をあらかじめ決めておく、記事の構成に沿って肉付けするために効率的に情報収集する、記事を書く時間をあらかじめ決めておいてタスクを分散して割りあてる、の3点に整理しました。
仕事で忙しい人がネタ切れせずに継続的にブログを書くためのコツを教えます【前編】
継続的にブログを書くための大きな問題の一つ「ネタ切れ対策」について整理しました。記事のタイプを考えて引き出しの数を増やす、定期的な情報収集により持ちネタを増やす、思いついたブログネタはすぐに決まったフォーマットに基づいてネタ帳にまとめる、の3点が重要です。
農家は長寿命説の文献を批判的に検証した記事に対するコメントへの返答として、職業別の平均余命、なぜ「農家は長寿命」説は信じ込まれやすいかの心理学要因、農家は認知症予防に効果があるのか、などを整理しました。結果として、農業が寿命や認知症に与える影響は明確ではありませんでした。
2021年10~2022年3月の「リスク」を分析しました~SNS定点観測結果26~
Google検索履歴やTwitter、YAHOO!知恵袋を用いて「リスク」のトレンドを定点調査しています。2021年度下半期(10~3月)の調査結果から、コロナ収束期(ワクチンリスクの最盛期)->オミクロン株による第6波->ロシアによるウクライナ侵攻とリスクのトレンドが移り変わったことがデータで示されました。
熱中症になるからマスクは外すべき? 一見リスクの話をしているようで実はそうではない例
リスクの話をしているようで実はそうではない」問題の一つと考えられます。マスク生活にうんざりしている人たちが熱中症のリスクみたいな(都合の良い)情報に「これだっ!」と飛びついて「マスクは外すべき」となることを、認知的不協和理論を用いて解説します。
日本は男女差別の面で遅れており、犯罪に関してもフェミサイド(性別が女性であることを理由に男性に殺されること)大国などと一部で呼ばれています。性犯罪以外の犯罪については被害者の男女割合は同程度が男性のほうが多くなっていました。ただし、安心感の男女差は諸外国と比較して大きくなっています。
知床観光船事故から考える、事故が起こってからの規制強化と事前のリスク評価ベースの安全対策の違い
知床観光船沈没事故を受けて船舶の規制強化が議論されようとしています。事故が起こってからの規制強化と事前のリスク評価ベースの安全対策という二つの安全のカタチがありますが、船舶安全の分野ではFormal Safety Assessment(FSA)という後者のフレームが整っています。
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生物屋は理想的な保全の姿を農業者に求め、農業者は現場での実行可能性を重視するというすれ違いがSNSなどで繰り返し目立ちます。どうしてすれ違いが繰り返されるのかについて、保全目標の重要性や専門家の活用の可能性の観点などからまとめます。
2023年4月から2024年3月までの1年間のブログの実績を振り返ってみました。アクセス数や人気記事、記事評価ボタンによる評価などをまとめました。ただしこの間にGoogle Analyticsの仕様が大きく変わり、これまでのようなデータを取得するのが難しくなりました。
小林製薬が製造した紅麹サプリメントによる腎臓疾患が報告されましたが、天然物による健康影響は原因物質の特定が非常に困難です。腎臓病を引き起こした類似の事例として、ヨーロッパのバルカン地方で発生した謎の腎臓病の原因物質を特定するに至るまでの興味深い出来事を紹介します。
農林水産省の補助金を受ける場合に環境負荷低減の取組が義務化されます(クロスコンプライアンス制度)。欧州では2005年から義務化されており日本は制度的に遅れています。一方で実際のリスクの比較として残留農薬基準の超過率を日欧で比べてみると興味深い関係が明らかになります。
IARC(国際がん研究機関)はPFOSを「発がん性がある可能性がある」、PFOAを「発がん性がある」に分類しましたが、日本の食品安全委員会は証拠は不十分としています。仮に発がん性がある(+遺伝毒性あり)とみなした場合の発がんリスクを計算した結果を紹介します。
飲酒ガイドラインの正式版が公表され、業界への配慮と飲酒量を減らそうというメッセージの両立を目指す修正がなされました。ガイドラインの案と正式版の違いを紹介し、ガイドラインに関連するX(旧ツイッター)のリプライを解析し、どのような反応(特に誤解)が生じているのかをまとめます。
飲酒ガイドラインの正式版が公表され、業界への配慮と飲酒量を減らそうというメッセージの両立を目指す修正がなされました。ガイドラインの案と正式版の違いを紹介し、ガイドラインに関連するX(旧ツイッター)のリプライを解析し、どのような反応(特に誤解)が生じているのかをまとめます。
性犯罪歴のある人を教育現場から排除するための日本版DBSの検討が進んでいますが、これは性犯罪者は再犯することを前提としたシステムです。性犯罪の再犯率について実際のデータを整理し、それと一般の人がイメージしている性犯罪の再犯率が大きく異なっていることを示します。
水道水から農薬が検出された場合に、欧州における水道水中農薬基準0.1μg/Lと比較されることがありますが、この基準は健康リスクと無関係です。実際には健康影響の目安となる別の基準が設定されており、そちらのほうと比較するべきでしょう。これらの基準値のからくりについて解説します。
農薬の規制と有機農業の推進はセットで語られることが多いのですが、この二つは似ているように見えてまったく違います。規制は経済への介入となるため慎重さ・科学的根拠・国際調和が求められ、推進はそれよりもお気持ちが通りやすく暴走しやすいという特徴があります。
リスク教育はリスクを学ぶための強力な手法ではありますが、間違った方向に進むという教育リスクもあるため、学校でのリスク教育にはあまり期待しすぎないほうがよさそうです。教育リスクの特徴は「教育は善いことなのでリスクはつきもの」という考え方からリスクを軽視することにあります。
能登半島地震により真冬の避難生活が続いていますが、寒い室内での生活には高い死亡リスクがあります。ただし、夏の熱中症ほどには冬の寒さのリスクはあまりニュースになりません。本記事では熱中症と低体温症のリスクを比較したり、心筋梗塞などの寒さによる間接的な死亡リスクの大きさを整理します。
飲酒ガイドラインの目安量(男性40g/日、女性20g/日)と比較して日本人の飲酒量はどれくらいか?、アルコール摂取量と死亡率に関するJ型カーブの謎(なぜまったく飲まない人よりも多少飲む人のほうが死亡率が低くなるのか)、お酒の種類や休肝日の影響について調べた結果、をそれぞれまとめました。
今週は年末年始のためいつものブログ記事の更新はお休みです。かわりに過去記事を見ながら2023年を振り返ってみたいと思います。
生活習慣病のリスクを高める飲酒量として男性40g/日・女性20g/日という数字を示した飲酒ガイドラインの内容を紹介(実際には飲酒量の基準を示したものではない!)し、男性40g/日・女性20g/日はどこから出てきた数字なのかの謎を解き明かします。
農家の自殺リスクは高いのか?の検証として、業種別自殺リスクとそれらの経年変化をまとめました。農業は就業者総数に比較して自殺リスクが高いのですがその解釈は単純ではなく、農業という業種の影響、自営業であることの影響、就業者総数の自殺リスクの過小評価など、考慮すべき点が複数あります。
自殺のリスク評価の第1回として、年代別の自殺リスクについてまとめます。自殺リスクはかつては高齢者が多かったのですが、若者ほど増加傾向で高齢者ほど減少傾向となっています。リスク指標として死亡率で見るか、損失余命で見るかでイメージが大きく変わります。
BMIと死亡率の関係はU字型のカーブとなり、やせでも肥満でも死亡率が高くなりますが、標準体重(BMI22)よりも多少肥満よりで死亡率が低くなります。肥満の死亡率が低くなる「肥満のパラドックス」とやせの死亡率が高いことについて、いくつかの研究を紹介しながら深掘りしてみます。
線引き問題の一つとして、肥満の指標となるBMI(Body Mass Index)をめぐる基準値問題に着目します。BMIの起源や問題点、肥満の線引き、BMIに代わる指標やメタボ診断の基準などについて整理していきます。BMIの使用には人種・性別・年代・筋肉量・皮下脂肪と内臓脂肪の区別などの考慮に課題や問題があります。
農家はうつ病になりやすいのか?を検証するため、米国の質の高い疫学調査における農薬使用とうつ病との関係を調べた結果を紹介し、さらに日本の職業別悩み・ストレス・心の状態のデータから農家のストレス度を比較します。いずれも結果の解釈が難しく注意が必要なことがわかりました。
政府に外部有識者として呼ばれている人たちの中に専門家ではない人が混ざりますが、知識を生み出す能力と知識を統合して社会に応用する能力は別物であり、査読論文や被引用数は前者の能力の指標にしかなりません。後者の能力をどのように判断するかを考えてみました。
2022年4月から2023年3月までの1年間のブログの実績を、Google Analyticsのデータを中心に振り返ってみます。この1年でアクセス数が着実に増えており、Google先生からの評価も一気に上がりました。アクセス数に加えて記事評価ボタンによる評価、Twitterでの反応など多角的なデータを収集しています。
リスクコミュニケーションにAIを活用する方法の一つとして、ChatGPTを使ったデマ判定方法を紹介する記事の第2弾として、ツイッターのアカウントのデマ傾向を判定する事例を紹介します。SNSプラットフォームが実装すると現状からの大きな改善が期待できます。
リスクコミュニケーションにAIを活用する方法の一つとして、ChatGPTを使ったデマ判定方法を紹介します。ツイッターなどでは日々デマが拡散し、人力での対応は限界があるため、AIによってファクトチェックを自動化できると非常に強力なツールとなります。
4月は進学・就職などで新生活が始まる季節ですが、同時にさまざまなリスクに注意すべきタイミングです。「大学生が狙われる50の危険」という本をベースに新生活にまつわるリスクについてまとめた結果、特に注意すべきリスクとして「金銭、事故、ネット、宗教、メンタル」の5つが挙げられました。
コオロギ食についてネット上での炎上が続いていますが、Google Trends, YAHOO!知恵袋、Twitterを用いたソーシャルリスニングを行って、ネット上の反応を分析しました。コオロギ食は危険、コオロギ食推進は社会的不正がある、という大きく二つの反応が示されましたが、ネット上の情報の多くは不正確でした。
ChatGPTやStable DiffusionなどのAI技術を活用し、文書を要約させる、箇条書きから文章を生成させる、わかりやすい文章を生成するための注意事項を守らせる、文章の書き換えさせる、イラストを描かせるなど、リスクコミュニケーションにおける情報発信に役立てる方法を紹介します。
WHOのガイドラインでは「室温18℃以上」が勧告されており、冬の室内温度が低いことは健康リスクにつながります。こたつ使用率の低い北海道は室内全体が暖かく、冬季の死亡率増加が低くなっています。ここからこたつ使用による死亡リスクを試算してみました。
2022年11月1日から2023年2月19日まで国立科学博物館で開催された特別展「毒展」に行ってきました。今回はそこで感じたこと(人工物の扱いが残念だった)を書いてみます。リスク評価・管理の考え方が不足していたと思います。
感染防止のための献血制限の基準値として、狂牛病を発端とする英国滞在歴のある人の献血制限(1ヵ月)、日本の男性同性愛者の献血制限(6ヵ月)、米国の男性同性愛者の献血制限(3ヵ月、ただし見直し中)についてまとめます。数字の根拠はどの事例も大変興味深いものです。
シロアリ防除剤としてのネオニコチノイド系殺虫剤の使用時のリスクについてまとめました。まずシロアリ防除剤のリスク管理について整理し、次に論文の情報からネオニコチノイド系殺虫剤のリスク評価を行い、最後にシロアリ防除剤のリスク比較事例を示します。
「リスク評価は専門家が行うものなので完全に科学的なもの」と言えるわけではなく、その中にはさまざまな価値判断も含まれています。特に「そもそも何を評価するか?」という部分には価値観が大きく反映されるので、専門家以外のかかわり方も重要になります。
「法律を守っているので安全です」というこれまで企業の姿勢から脱却する方向性としてのアジャイルガバナンスについて紹介します。新しい技術は開発や社会の反応の変化が素早いため、法規制が追いつかず企業の自主管理がより重視され、ガバナンスも迅速にアップデートし続けることが求められています。
残留農薬基準は「農薬を正しく使用しているかどうか」という農業規範としての基準であり、健康影響の基準ではないため説明の際は要注意ですが、むしろ説明の仕方を注意するよりも運用を変えて健康影響の基準値(ADIから換算)に変えればよいのでは?という意見についてまとめました。
いま流行りのAIチャット「ChatGPT」で遊んでみました。餅、北朝鮮、統一教会、コロナワクチン、マイクロプラスチック、農薬について「安全か?」を聞いてみたところ、思いのほかの面白い結果が得られ、リスクコミュニケーションもAIが担う新時代の可能性を感じました。
今週は年末年始のためいつものブログ記事の更新はお休みです。かわりに過去記事を見ながら2022年を振り返ってみたいと思います。
残留農薬基準値が決められていない農薬-作物の組み合わせに自動的に適用されるポジティブリスト制に基づく一律基準0.01mg/kgの根拠を解説します。毒性がよくわからない場合であっても健康影響の懸念がない摂取量を推定した「毒性学的懸念の閾値」を応用しています。
残留農薬基準の決め方の説明として巷にあふれている「ADI(許容一日摂取量)を超えないように決められています」は間違いです。まずADIから換算する基準値というのはどういうものかを説明し、その次に残留農薬基準の決め方(ALARA型)を解説します。
各地のごみ処理施設で火災が頻発するなど、リチウムイオン電池がごみに混じって廃棄される問題が大きくなっていますが、これまで「見過ごされてきた」リスクと考えられます。リチウムイオン電池のリスクと対策、これまで見過ごされてきた理由についてまとめます。
マイクロプラスチックの排出源としてのタイヤの重要性を示し、タイヤ摩耗塵の健康・環境影響について整理し、新たなハザードとしての6-PPDキノンについてまとめます。6-PPDキノンはサケに対する影響が強いことから今後要注目です。