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葉咲透織
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2020/03/24

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  • 保護中: 重低音で恋にオトして(10)

    <<はじめから読む!<9話「オレはとうとう、ダメかもしれない……」 試験が終わった。二重の意味で終わった。ギリギリ単位はもらえるはずだが、それ以上は無理だ。マクロ経済学のテストは、もしかしたら不可かもしれない。 自宅リビングのソファにぐった

  • 保護中: 重低音で恋にオトして(9)

    <<はじめから読む!<8話 もうすぐ期末試験の期間になるというのに、敬士はベッドに寝転んでスマホを弄っていた。 動画サイトにアクセスして、鈴ノ音屋のチャンネル登録者数を確認する。前に見たときよりも、じわじわと人数を伸ばしている。本当に、一万

  • 重低音で恋にオトして(8)

    <<はじめから読む!<7話 改めて、素面の状態で連れてこられた響一が暮らす部屋は、大学生の独り暮らしにはあはり、分不相応だ。3LDK、明らかにファミリー向けの物件で、しかも南向きの角部屋。 不躾にならない程度にじろじろと観察していた敬士であ

  • 重低音で恋にオトして(7)

    <<はじめから読む!<6話 あの日、響一自身の言葉が心に残っていると語ってから、彼はずいぶんと気を許してくれた。ようやく友人になれたのか、響一の口から敬語が消えた。 嬉しい変化であったが、もともとのお喋りの練習台という側面は鳴りを潜め(最初

  • 重低音で恋にオトして(6)

    <<はじめから読む!<5話「あれ~? 松川まつかわじゃん。それに鈴木も。お前ら知り合いだったのかよ」 耳障りな甲高い声で、しかも早口。顔を見なくてもわかる。石橋である。 少数精鋭を謳う医学部は、学生同士はみんな顔見知りなのだろう。響一は石橋

  • 重低音で恋にオトして(5)

    <<はじめから読む!<4話「響一、こっちこっち!」 SNSでの癖で、「キョウ」と呼びかけそうになって、一度飲み込んだ。所在なさげにしている響一に、手をひらひらと振る。「敬士くん。お待たせしました」 あからさまにホッとした表情を見せる彼に、敬

  • 重低音で恋にオトして(4)

    <<はじめから読む!<3話 自室のベッドの上、スマホを前にしてちょこんと正座した敬士は、緊張していた。 おかげで、待ちわびていたコール音とともにスマホに手を伸ばしたのはいいが、手が滑って落としてしまった。 一瞬、「やば!」と思ったが、コール

  • 重低音で恋にオトして(3)

    <<はじめから読む!<2話 土下座をなんとかやめさせた敬士は、キョウ……本名・鈴木すずき響一きょういちと、リビングダイニングのテーブルを挟んで向かい合った。 響一は、茶を出してくれた。湯呑みを持つ手が、カタカタと細かく震えており、敬士は慌て

  • 重低音で恋にオトして(2)

    <<はじめから読む! 目を開ければ、見知らぬ天井だった。 敬士がヤリチンと呼ばれる人種なら、隣に見知らぬ女性が……というシーンである。しかし悲しいかな、敬士は童貞。ベッドには、他人の温もりはない。 しばらくぼーっと、前夜のことを思い出してい

  • 重低音で恋にオトして(1)

    四人兄弟の三番目として生まれて、今年で二十一年。 そのおかげか、空気を読む能力には長けていた。 年上の新入生相手にどう対応すべきか悩んでいる先輩とか、タメ口になっては語尾だけ「……ッす」と、中途半端な敬語に直す同級生。 彼らの前ではおどけ

  • 不幸なフーコ(36)

    <<はじめから読む!<35話「おい。野乃花。遅刻するぞ」「遅刻するのは哲宏だけでしょ。私は余裕だもん」 自転車での道のりは、哲宏の学校の方が遠い。私はすでにショートカットルートを開拓しているのだ。もう少し遅くに出ても平気である。 春になり、

  • 不幸なフーコ(35)

    <<はじめから読む!<34話 冬休み中に謝らなければならない人は、もうひとりいる。 青い顔をしていた私に、「ついていこうか?」と、哲宏が申し出たが、断った。私が向き合わなければならない問題だ。これ以上、哲宏を煩わせるわけにはいかない。 待ち

  • 不幸なフーコ(34)

    <<はじめから読む!<33話 思い立ったが吉日、私は風子の家に向かった。彼女の祖父母にどう思われているかわからなかったので、呼び出しは哲宏にしてもらった。「天木、今は出かけてるって」 今日は朝から冷え込んでいて、空もどんよりと曇っている。雪

  • 不幸なフーコ(33)

    <<はじめから読む!<32話 次の日から、少しずつ私は、普通の生活リズムを取り戻していった。 朝起きて、昼に活動し、夜に眠る。その繰り返しは、どんな手段よりも、私の心と身体を正常な状態へと近づけていく。 朝食の席に姿を現した私を見て、綾斗は

  • 不幸なフーコ(32)

    <<はじめから読む!<31話 学校を休む理由のレパートリーって、実はほとんどない。お腹が痛いとか、頭が痛いとか。 熱のあるなしは、体温計で測ればすぐに数値化されてバレてしまうが、痛みや気分は自分の感じ方の問題だから、誰も強く言えない。 母親

  • 不幸なフーコ(31)

    <<はじめから読む!<30話 文化祭二日目は、途中で帰ってしまった。当番もまだ残っていたのに、すべて投げ出した。具合が悪いとか、適当な理由をつけることはできた。 けど、電車の中でスマートフォンを片手に、誰に連絡をすればいいのか、わからなかっ

  • 不幸なフーコ(30)

    <<はじめから読む!<29話「なんであんたがいるのよ!?」 ヒステリックに叫ぶと、周りにいた人たちが何事かとこちらを向く。そして目つきの悪い学ランの金髪男を視界に入れると、慌てて視線を逸らし、そそくさと逃げていく。 風子は周囲の様子など気に

  • 不幸なフーコ(29)

    <<はじめから読む!<28話 一日目の土曜日は、校内の生徒しかいない。そこまで盛り上がるようなものでもなく、仲間内でやりとりした各模擬店の食券を使って飲み食いをしたり、自分の当番のときは、「いらっしゃいませー」と声を張り上げてみたりした。

  • 不幸なフーコ(28)

    <<はじめから読む!<27話 文化祭までの日々は、長く感じられた。 普通はあっという間だった、というのだろうけれども、私は早く日常に戻ってほしかった。 風子のクラスに様子を見に行けば、ギャルたちがわざと聞こえるように、嫌味を言ってくる。かと

  • 不幸なフーコ(27)

    <<はじめから読む!<26話 真っ直ぐ家に帰らずに、哲宏の家に寄った。庭に自転車があるのを確認してから、ピンポンを押す。 インターフォンのカメラに私が映っているのが見えたのだろう。返事はなく、ただ、ガチャ、と鍵が開く音がした。「お邪魔します

  • 豊嶋玲子に関する考察

    『豊嶋とよしま玲子れいこは、A県出身の女優だった。昭和〇〇年に上京し、Xという劇団に所属した。地元では評判の小町娘だったが、舞台では主役はおろか、せりふのある役につくこともほとんどなかった。 彼女が有名なのは、女優としての功績ではない。日本

  • 不幸なフーコ(26)

    <<はじめから読む!<25話 文化祭の出し物は大きく分けて三種類。展示とステージ発表と模擬店だ。文化部は自分たちの日頃の成果を発表する舞台として、作品展示をしたり、体育館ステージで音楽や演劇を行う。 クラスの出し物は、ほとんどが模擬店だ。共

  • 不幸なフーコ(25)

    <<はじめから読む!<24話 夏休みが終わるまでに、私は哲宏と仲直りをすることがなかった。 風子の宿題の手伝いも、私だけが風子の家に行き、自分の家に呼ばなかった。哲宏と私の間に何があったのか、風子は何も気づいていない。 哲宏も哲宏だ。 綾斗

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