濃い灰色の雲が、重苦しく立ちこめる朝だった。鶏が鳴いても、太陽が顔を出さない。春とは名ばかりの、肌寒い日。 暖炉に火をつけるかどうか、姑と夫は軽く言い合いをしていた。 数日前、もう暖房は必要ないだろうと結論していたため、夫は火を炊くこと
<<はじめから読む!<5話 部屋は家政婦が来て、定期的に掃除をしているのだろう。この男に完璧な整理整頓は、無理だ。短い時間しか接していなくても、わかる。 涼を激昂させたのは、窓際に並んだ大小の植木鉢。並びは整然としているが、すべて枯れ果てて
<<はじめから読む!<4話 目的地周辺です、と女性的な機械音声が告げる。周辺って、と見回した涼の目に映るのは、ずっと続いている壁であった。「あ、玄関はもうちょっと行ったところです」「って、これ全部あんたんちかよ!」 彼の言う玄関は、家の入り
BL終わったので、非BLこれから三冊レビュー書く、予定。『追憶の烏 八咫烏シリーズ 』(阿部智里)↑Amazonの電子書籍ページに飛びます。八咫烏シリーズ最新刊。唯一文庫化が待てなくて全部単行本で揃えてる(イベントのタイミングによっては文庫
<<はじめから読む!<3話 錦織香貴、職業・俳優。 誰もが知る公式プロフィールは以上だが、ガーデニング趣味のある人間ならば、もうひとつ知っていることがある。 彼は教育テレビで絶賛放送中の「ガーデニングびより」という園芸番組のナビゲーターを、
<<はじめから読む!<2話 自転車を積み込み、ぐったりした青年を助手席に乗せた。帰り着いた自宅では、連絡を受けた母親が待ち構えていた。 青年よりも、花屋の力仕事を長年こなしてきた母の方が、圧倒的に逞しかった。涼が靴を脱ぐ間、支えるのを代わっ
<<はじめから読む!「まあ確かに、こんな金髪じゃあ、親父はキレるかもな」 ルームミラーに映る自身の姿を見て、独りごちた。 涼が「フラワーショップふじまさ」を継いだのは、二年前だった。いずれは二代目として花屋の店先に立つことは、規定路線だった
「あんた、せっかく可愛い顔してるんだから、もっと愛想よくしたら?」 これが母親の言であったなら、涼りょうは「うるせー」と、反抗期の少年のように悪態をついていた。 しかし、目の前にいるのは父の代からのお得意様。庭に植わっているバラの大半は、彼
真夏のBL読書ツアーもラスト。こないだまた数冊、本を買ってきたので読み進めたいと思います。(今回は非BL)「傭兵の男が女神と呼ばれる世界2」(野原耳子)異世界血みどろ戦争BL、待望の2巻です。↑前作はこちら↑個人出版さ...
真夏のBL読書ツアー中。「黒狼宰相は白銀の皇子を執愛する」(魚形青)↑Amazonの電子書籍ページに飛びます。魚形青先生、待望の二作目は、中華モフモフBLです。デビュー作のレビューはこちら。中世風西洋ファンタジー世界のオメガバースものです.
もう桃の季節が終わりですね……もう八百屋の品ぞろえが、梨になってきました。(梨も好き)まだまだ暑いですが、スーパーのおやつも秋仕様になってきてますね。秋もさつまいも・かぼちゃ・くり! と好きなものがいっぱいありますが、今日はまだ夏!桃スイー
真夏のBL読書ツアー中。「神使いの蝶は誓いの聖騎士に祝福を捧ぐ」(葵居ゆゆ)↑Amazon電子書籍限定ページへ飛びます。(電子書籍限定ss付)先日、アスタリスク・ポミエ文庫様主催のBL小説講座を受講しました(オンライン)。その際、講師をして
真夏のBL読書ツアー中。『冷酷アルファ王子と不屈のオメガ妃殿下』(椿ゆず)↑Amazonの電子書籍購入ページに飛びます。第21回角川ルビー小説大賞・読者賞受賞の作品。twitterでお世話になっている、椿ゆずさんの商業BL小説デビュー作とな
『騎士と王太子の寵愛オメガ~青い薔薇と運命の子~』(滝沢晴)
真夏のBL読書ツアー開催中。『騎士と王太子の寵愛オメガ~青い薔薇と運命の子~』(滝沢晴)↑Amazonページに飛びます滝沢先生の著作といえば、の印象が強すぎて、コメディが得意な作家さんという認識だったのですが、シリアスもめちゃくちゃよかっ.
7月の原稿地獄を抜けたので、今月は読書や! とばかりにBL小説買ったので、ちょいちょいレビューをします。『ご主人さまと謎解きを』(楠田雅紀)↑Amazonの通販ページに飛びます。『海辺のリゾートで殺人を』でミステリを割とガチに書いてくださっ
<<はじめから読む!<106話「明日川くん。皆さん。ちょっとお付き合いいただけますか?」 呉井さんが言い出したのは、修学旅行の自由行動中だった。 彼女の誕生日の翌日、月曜日。無事に投稿した呉井さんを見て、柏木は泣きながら抱きついた。山本は、
<<はじめから読む!<105話「トラックに跳ねられて異世界に行けるっていうんなら、俺も連れていけよ。なんなら学校から飛び降りたっていい。ここは二階だから微妙だけど、運がよければ死ねる」 俺は鎖を引いた。繋がった手錠によって、呉井さんの身体は
<<はじめから読む!<104話「瑠奈ちゃんには、私しかいないの。明日川くんには、私以外にも友達がいるでしょう? 山本くんも、柏木さんもいる。瑠奈ちゃんには、私だけなの」 それも洗脳のひとつの手段だったのだろう。お互いにお互いを、唯一の人だと
<<はじめから読む!<103話「瑞樹さんと、恵美に聞きましたの?」 この期に及んでも、気取ったテンプレお嬢様口調を崩さない呉井さんに、少しだけ腹が立つ。半分はね、と俺は言った。最初に気がつくきっかけをくれたのは、その二人ではなくて山本だとい
<<はじめから読む!<102話「学校……?」 やってきたのは夜の学校。日曜日だし、修学旅行も近いので、部活の練習もすでに終わっている。職員室も薄暗い状態で、誰もいない。門も閉まっているはずなのだが、一応は学校関係者の仙川に頼んで、開けてもら
<<はじめから読む!<102話「学校……?」 やってきたのは夜の学校。日曜日だし、修学旅行も近いので、部活の練習もすでに終わっている。職員室も薄暗い状態で、誰もいない。門も閉まっているはずなのだが、一応は学校関係者の仙川に頼んで、開けてもら
<<はじめから読む!<101話 十一月。季節は秋も秋、晩秋という奴だ。日が落ちるスピードは、合宿で歩いた夏の夜とは段違いだ。 六時になる前に、薄暗くなった。電車に乗って、帰路につく。遊び疲れた呉井さんは無言で座っていて、時折うつらうつらと頭
<<はじめから読む!<100話適当なところでランチにして、それからショッピングへ。「明日川くんは、何か見たいお店はないのですか?」 呉井さんの好きそうなテイストの店は、昨日柏木から仕入れている。彼女は何度もこのショッピングモールに足を運んで
中学生になって、初めての授業参観日だった。来なくていいよ。朝出かけるときに、寝ぼけ眼のおいちゃんにはそう言ったけれど、来てくれたのは嬉しかった。ママは仕事が忙しくて、なかなか来られなかったから。 たとえ襟のゆるいTシャツにジーパンなんてい
<<はじめから読む!<99話「頑張って!」「う、あ、えええ? いやあああ」 経験上、ゲームには人間の本性が表れると思っている。パズルゲームで連鎖をめちゃくちゃ組む奴と、三連鎖くらいを連打する奴は性格が異なる。穏やかで、常に誰かのために行動す
<<はじめから読む!<98話 デートは柏木の意見も参考にして、地元の高校生の定番コースにした。県内に遊園地はあるが、車でないと交通の利便性が悪い。そのためうちの高校の人間は、だいたい電車に乗って、隣県にある大型ショッピングモールに向かうのだ
<<はじめから読む!<97話 土曜日は柏木たちと買い物に出かけた。山本がくっついてきたのは、「呉井さんとデートに行くことになってんのに、あたしと二人で出かけてたの見られたら、明日川の評価は血に落ちるよ」との言い分によってだった。 軍資金は母
<<はじめから読む!<96話「嘘……やだよ。呉井さんが死んじゃうなんて、嫌だ」「俺だって嫌だよ」 あと二日の命だなんて、信じたくない。こうやって二人に話していることすら、俺にとっては現実逃避みたいなものだ。「なるほど。その瑠奈っていう奴は、
<<はじめから読む!<95話 被服室は呉井さんが来るかもしれないから、と、俺たちは学校最寄りのファストフード店に飛び込んだ。特に腹が減っているわけではないが、ハンバーガー屋に来たら、ハンバーガーを注文してしまう。「ポテトLにして! あたしも
<<はじめから読む!<94話 十一月八日。明日は土曜日で学校はない。だから、チャンスは今日しかなかった。放課後、解散する前に俺は素早く呉井さんの近くに寄って、ありったけの勇気を振り絞った。「呉井さん」「はい?」 緊張にこわばった顔をしている
<<はじめから読む!<93話「そういえばさ。瑞樹先輩から聞いたんだけど、呉井さん、もうすぐ誕生日なんだってね」 なんとなく気が引けて、誕生日の話題を出すことは控えていたが、かまをかけるために、口に出してみた。呉井さんの反応は、可哀想なくらい
<<はじめから読む!<92話 十一月になった。なってしまった。呉井さんの誕生日、すなわちデッドラインまであと十日。彼女を説得する方法はいろいろ考えているが、どれも決め手に欠ける。俺が戦う相手は、日向瑠奈だ。弟である瑞樹先輩に、「天才」と言わ
<<はじめから読む!<91話「僕はそんな姉さんを不気味に感じて、子供ながらに距離を置くようにしていた。母も同じだ。自分がお腹を痛めて産んだ子が、なんだか不気味で仕方ない。そう感じてしまう罪悪感で、次第に心を病んでいった」 父は娘の操り人形と
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濃い灰色の雲が、重苦しく立ちこめる朝だった。鶏が鳴いても、太陽が顔を出さない。春とは名ばかりの、肌寒い日。 暖炉に火をつけるかどうか、姑と夫は軽く言い合いをしていた。 数日前、もう暖房は必要ないだろうと結論していたため、夫は火を炊くこと
ゲゲゲの謎コラボカフェ@渋谷モディに行ってきました。予約抽選発表日は、どこもかしこも外れた! の悲鳴が上がっていましたが、 ・ど平日 ・真っ昼間 ・ひとり の条件で第一希望当選したので行ってきました。 一番乗りで並んできました。外からの撮影
五月の連休が明けても、時折肌寒い日がある。名残の桜がひらりと舞い落ちるのを後目に、俺は校門を急ぎ足で一歩踏み出す。 「川崎かわさき、お前、本当に部活やらなくていいのか?」 中学の部活は必修じゃない。転校以来、先生がしつこく誘ってくるのは、
九月の夜。東京と比べて涼しいと見越して長袖を持参したが、必要なかったかもしれない。 店内は冷房が稼働しているにもかかわらず、宴会場の襖を明けた瞬間に、熱気がこちらへと向かってきた。 「今日の主役がようやくお出ましだぞー」 長い大学の夏休
ゲ謎応援上映@チネチッタに行ってきました~。 川崎は3つでかい映画館があるのですが、利用頻度でいうと、 109>チネチッタ>>>>>TOHOシネマズ って感じ。でも同じ映画を複数回通ったというと、断然チネチッタ。なぜならば、 「ウルトラマン
今年もやって参りました、創作TALKのお時間です。昨年までの記事は↓です。 twitter(死んでもtwitterと言う)のリンクなどから飛んできた方向けの自己紹介。 ・プロの小説家になりたくてもがいて早○年・主な投稿先はBLとライト文芸系
<<はじめから読む! <【25】 「レイ。これはここにやっていいのか?」 「あ、えーと。それはサム爺に……サム爺! これってどうするの?」 ある秋の日、レイナールはジョシュアとともに、庭に出ていた。一角を整備してもらい、レイナール専用にし
<<はじめから読む! <【23】 帝国には、過去、白金の王族が送り込まれていた。レイナールは、帝国にもヴァイスブルムの伝承が残っていることに賭け、皇帝に手紙を送った。 帝国の歴史について、遠く離れたヴァイスブルム出身のレイナールが知るこ
秋といいつつ、10月~12月の3か月に読んだ本です。 図書館で集中して書き、本を借りて帰ってくるサイクルはやはりいいですね。 「獣神様とは番えない~アルファの溺愛花嫁さま~」(村崎樹) 我らがたつるん先生の獣人モノオメガバース。 運命の番っ
<<はじめから読む! <【22】 冬の風が吹く。首筋がひやっとして、レイナールはぶるぶると身体を震わせた。短く切りそろえた白金の髪は防寒には頼りなく、カールが差し出したストールを、ぐるぐると巻きつけた。 「まだいらっしゃいませんよ。家の中
<<はじめから読む! <【21】 ジョシュアが旅立って、三日経った。 アルバートが手の者をこっそりとつけているので、一行があと二日で国境を抜けるという情報が入ってきていた。本当なら、とっくに隣国に入り、帝国まで続く街道をひた走っている頃
<<はじめから読む! <【20】 ジョシュアが旅に出るまでの日々、レイナールは彼と睦み合った。言葉を交わせば、「行かないで」「ひとりにしないで」と縋りついてみっともなく泣いてしまいそうだった。 肉体の交わりは、レイナールから意味ある言葉
<<はじめから読む! <【18】 「十日後、ここを立つ」 疲れた顔のジョシュアが、重々しく告げたのは、年が明けてすぐのことだった。 新年の祝いもほとんどせず、周囲の貴族の挨拶も断っていた。軍閥貴族と言われる家系は、ジョシュアの置かれた立
<<はじめから読む! <【17】 以降、何度もジョシュアはレイナールの部屋を訪れ、話し合いをしようとしたけれど、応じる気になれなかった。アルバートが来たときには、さすがに扉を開けたけれど、ただそれだけ。彼の話を聞いても、聞き入れようとは一
産みの親と育ての親が違うのは、まれによくある。 積極的には言わないけれど、親密になるにつれて、打ち明け話をするようになる。一般家庭の子には同情され、腫れ物扱いされる場合もあるけれど、「実は……」と、お互いの秘密を共有する友人もいた。 人
<<はじめから読む! <【16】 ジョシュアの言う「今度」は、なかなか訪れなかった。 すっかり回復したボルカノ王が、軍を振り回しているせいで、ジョシュアは家に帰ってこられない日が増えた。朝も早くに出ていくため、朝食の時間くらいしか、話す
<<はじめから読む! <【15】 夜会の日から五日、ジョシュアは家に帰ってこなかった。 彼が先頭に立って、医師団と連携を取り、腹痛の解明に挑んだ結果、食中毒であることがわかった。夜会の前に、側近中の側近である貴族を集めての晩餐会があり、
<<はじめから読む! <【14】 城を見上げるのは、二度目だった。 一度目は、自分の命を守ることだけを考えていた。母国にとっては、レイナールが生きようが、この地で死のうが、どちらでも構わなかった。死ねば開戦、生きて根づけばそれはそれで使
巷で話題沸騰中のディオール展、ようやく行ってきました。4月の前売りチケットの発売初日、「つ、繋がらない!」と言いながら、スマホで頑張って取りました。10時半で予約していたのですが、行ったらもう、当日券終わってましたね。クリスチャン・ディオー
3月もミステリ三昧しておりました。いつかは書きたいミステリ……。「何がなんでもミステリー作家になりたい!」(鈴木輝一郎)小説講座をやっている先生のミステリ小説の書き方についての本。ミステリBL書きたいな~、とぼんやり思っていて参考になればと
こんにちPOWER!!!!!!!現在ジャニーズWESTのツアーが開催中。横浜アリーナでの公演に運よく当選したので、行ってきました。レポは熱いうちに書け! ということで、印象に残ったところをレポしておきます。ちなみに密録はもってのほかだし、メ
1月全然読めなかった反動で、2月はいっぱい読みました。(原稿をしろ!)「獣はかくしてまぐわう」(沙野風結子)沙野先生の警察&バディものが好きなので、2巻目も読了しました。私は受けの後輩のコツメカワウソちゃんが可愛くて好きです。「O...
<<はじめから読む!<18話 勝手知ったる自分の家とばかりに、キッチンでコーヒーを淹れた。お互いにこだわりがないので、インスタントを適当に。新調したばかりのおそろいのマグカップを手に、司が部屋に戻ると、花房は愛おしそうにギターを抱きしめ、爪
<<はじめから読む!<17話 怪我人はベッドに寝かせたまま、司は彼の股間に顔を埋めた。毛を掻き分けて陰嚢を指で撫で回し、立派にそびえ立つ陰茎の側面を唇だけで銜え、刺激を与える。上目遣いで窺う花房の表情は、興奮の赤に染まっている。 自分の愛撫
<<はじめから読む!<16話「ほ、本当にする?」 ベッドの上に移動した司は、ウブなヴァージンに戻ってしまったかのような気分で、震えた。枕元に手をついた花房が、「いまさら、でしょう?」と笑う。 公的な場面での爽やかイケメンスマイルではなく、獰
<<はじめから読む!<15話 さすがに夜中に大立ち回り(とはいえ、司自身は何もしていない)があったうえに、授業も花房の欠勤の穴埋めをしなければならず、疲れた。「今日は、早く帰ろ……」 アルバイト講師も全員帰したところで、最低限の仕事をして、
<<はじめから読む!<14話 そのあとのことは、あまり覚えていない。警察署で取り調べを受け、非行少年として補導されかけた子どもを庇い、その親に引き渡した。河原の母は泣いて息子の無事を喜んだし、鈴木の母は息子の頭を問答無用でぶん殴った。 もし
<<はじめから読む!<13話 名乗ることも忘れていた母親を落ち着かせて話を聞いた。彼女は河原の母親で、残業を終えて帰宅したところ、息子が家にいないと泣いて訴えた。 部活と勉強の両立を目指し、滅多に塾を欠席することもない河原だが、司は彼を退塾
<<はじめから読む!<12話 自分が花房の夢を妨げてしまった。その事実に、夜も眠れないほど悩んだ。 同じ教室で、いずれは室長として切磋琢磨したい。自分の密かな夢は、花房の夢を踏みにじった上にしか成立しないのだと、改めて思い知らされる。 司が
<<はじめから読む!<11話「花房先生、めっちゃくちゃかっこよかったです!」 興奮した口調、拳を握って振り上げるのは菊池だった。すでに生徒を見送り、電話営業もできない時間帯だから、今日の仕事のまとめと明日の準備をのんびりとやっている。 花房
<<はじめから読む!<10話 一度倒れたことで、花房は吹っ切れた。 休日出勤の代休もしっかり取るようになったし、授業前にはおにぎりや菓子パンを頬張って、エネルギー補給をしてから臨む。急いで飲み込もうとしている姿を見て、「ゆっくり食えって」と
<<はじめから読む!<9話 朝六時に鳴り出したスマホのアラームを、開始三秒で止めることに成功した。寝室は静かで、司はホッとする。 台所を借りて、朝食を作った。起きたときに少しでも食べてもらえればいい。 ハムと卵、レタスのサンドウィッチに野菜
<<はじめから読む!<8話 自分が入れる授業は入り、どうしても無理なところは今日は出勤していないアルバイトに急遽来てもらい、なんとか事なきを得た。授業中は花房を沢村に任せ、おかげで彼女も残業になってしまった。 頭を下げると、彼女は司のことを
<<はじめから読む!<7話 花房を見守っていた司だが、そうはいっても、彼もいい年をした成人男性である。当然、手のかかる子どもたちを多数抱えている状況で、そこまで注意していられるはずもない。 顔を合わせてはちゃんと食べているのか、寝ているのか
<<はじめから読む!<6話「蓬田先生、お時間いいですか?」 丁寧な口調は声音も朗らかで、司は一瞬、呆けてしまう。「お前誰だ?」が顔に出ていたようで、花房は途端に、うろんな顔つきになる。慌てて取り繕って、「大丈夫」と笑うと、彼は気にした様子も
<<はじめから読む!<5話「えー? 歓迎会開いてもらってないのー? ダメじゃないか、蓬田先生。新人を受け入れる、その姿勢が大事なんだから」 折しも、今日は土曜日。明日はテスト対策の特別授業も入っておらず、普通に休みであることを告げると、湧田
<<はじめから読む!<5話「えー? 歓迎会開いてもらってないのー? ダメじゃないか、蓬田先生。新人を受け入れる、その姿勢が大事なんだから」 折しも、今日は土曜日。明日はテスト対策の特別授業も入っておらず、普通に休みであることを告げると、湧田
<<はじめから読む!<4話 男――花房は、最低でも週に三回は、駅前で弾き語りをしていた。帰りに彼の歌を聞くことが、司の楽しみになっていた。観客はいたりいなかったり。通りすがりの一見客ばかりの中、常連になっていた司のことを、彼も認知していたは